18才に責任は問えない…/原ゆみこのマドリッド

2019.03.01 14:50 Fri
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「またコパ・デル・レイ決勝は他人事か」そんな風に私が肩透かしを感じていたのは水曜日、準決勝2ndレグのクラシコが終わった後のことでした。というのも2013年にアトレティコがお隣さんをそのお膝元、サンティアゴ・ベルナベウで破って戴冠したのに続き、翌年はレアル・マドリーの方がバルサをメスタジャで倒して王者に。それ以降、マドリッド勢のコパ最高成績は2015年、2016年にアトレティコが準々決勝でそれぞれバルサ、セルタに敗退、2017年もアトレティコが準決勝でバルサに敗退、昨季は大健闘した弟分のレガネスがセビージャを前に準決勝で力尽きたといった具合で、タイトルの懸かった大一番との縁がずっと切れていたから。

それどころか、今季のコパはマドリッド勢にとって失望続きで、いえ、16強対決でレガネスが2ndレグには1-0と勝利したにも関わらず、兄貴分のマドリーに2年連続で恥をかかすことに失敗したのは仕方ないんですけどね(総合スコア3-1で敗退)。もっと悲惨だったのはアトレティコで1stレグに1-1と引き分けた後、ワンダ・メトロポリターノでは劣勢から、終盤にグリーズマンのゴールで感動的に勝ち越しながら、最後はジローナに3-3に追いつかれ、アウェイゴール差で敗退という体たらく。更に準々決勝では弟分ヘタフェが1-0と先勝、尚且つ2ndレグで序盤に先制し、後半ロスタイムまで勝っていながら、土壇場で2失点して大逆転敗退というショッキングな出来事もあったため、準決勝まで進んだマドリーには期待していたんですよ。

決勝は5月25日、ベティスのホーム、ベニト・ビジャマリンで開催とあって、キャプテンのセルヒオ・ラモスの呼びかけに応えた大勢のマドリーファンがサンティアゴ・ベルナベウ周辺の道でチームバスをお出迎えする混雑時(https://bit.ly/2IDL5eq)を避け、スタジアムに着いた私もセビージャ(スペイン南部、ベティスのホームタウン)なら、AVE(スペイン高速鉄道)で3時間ぐらいだし、ホテルも沢山あるから、応援に行くのもいいかもなんて考えていたものですが、いやいや、とんでもない。いくらカンプ・ノウでの1stレグで1-1と分け、スコアレスドローでも決勝進出が決まるといっても相手はバルサ。やっぱり世の中、そう甘くはありませんって。

ちなみにその試合がどんなだったか、お話していくことにすると、いやあ、前半はマドリーが精力的に攻めていて、何度も得点のチャンスがあったんですけどね。ビニシウスなど、バルサのDF陣をかわして4度もシュートを撃ったんですが、問題は当人に怖いぐらい決定力がないこと。ええ、ここまで出場した試合でシュート52本中、枠内に飛ぶのが半分で3ゴールのみという記録を見れば明らかなんですが、何せまだ18才、ブラジルから来たばかりの新人ですからね。その辺はあまり辛抱強くないベルベウのファンでもよくわかっていて、応援がpito(ピト/ブーイング)に変わったりはしなかったんですが、せっかくフリーでビニシウスのパスを受けたベンゼマまで、GKテア・シュテーゲンの正面に撃ってしまってはどうしたらいいものやら。

それでもその日はメッシに精彩がなく、0-0のままハーフタイムに入ったため、だったらもう後半は守るだけでいいんじゃないかと、私などは気楽に考えていたんですけどね。ゲーム再開から、たった5分で事態が急変したから、さあ大変!ええ、それまで目立っていなかったデンベレがマドリー守備陣の虚を突いて、左サイドからエリア内に入るとルイス・スアレスに折り返しのパスを供給。ラモスに先んじて撃った彼がGKケイロル・ナバスを破り、バルサに先制点が入ったとなれば、いくら「ウチが点を取れば、相手は攻め上がらないといけなくなって、スペースが増えるのはわかっていた」(ルイス・スアレス)と敵が読んでいたって、他に方法はないですよね。

実際、すぐに反撃に転じたマドリーはビニシウスのクロスをレギロンがエリア内から強烈ヘッド、更に今度は決まりそうだったビニシウスが近距離シュートとチャンスを作ったんですが、ここで立ちふさがったのがコパ担当GKのシレッシンが負傷から回復したばかりだったため、1stレグに続いて、バルサのゴールを守ったテア・シュテーゲン。どちらもparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまった日にはもうお手上げです。そこでとうとう、ソラリ監督もルーカス・バスケスを諦め、リーガ前節レバンテ戦ではPKゴールを決めた後、チームメートとお祝いをせず、物議を醸したとはいえ、得点力には定評のあるベイルを投入したんですが…。

それから1分もありませんでした。再びデンベレが今度は右サイドからエリア内に駆け込んで、ゴール前にキラーパスを出したのは。そこへ猛然とフィニッシュに行ったルイス・スアレスをカルバハルとバランが邪魔しようとしたところ、あにはからんや、先に届いたバランの足でボールがネットに入ってしまうとはまったくツイていない。まだ残り時間は20分以上ありながら、平日午後9時キックオフの遅い試合でしたしね。ここで席を立ってしまったマドリーファンがかなりいたのは仕方なかったかと。

え、力が抜けてしまったのはマドリーの選手たちも同じだったんじゃないかって?そうですね、もう28分などにはカセミロがエリア内であからさまにルイス・スアレスの足を踏んでしまい、ペナルティを献上する始末。どうやらこの日は最後まで黒子役に徹することにしたか、メッシがキッカーを同僚に譲ったため、パネンカ(ゴール正面に緩いキックで決めるPK)風でナバスを破ったルイス・スアレスが3点目も挙げて、スコアは0-3に。いやあ、この直後にはラモスがチームメートを「Vamos que nos meten seis/バモス・ケ・ノス・メテン・セイス(行くぞ、このままじゃ6点取られちまう)」と鼓舞していましたが、ですよねえ。

Fondo norte/フォンド・ノルテ(ゴール裏北側席)3、4階に陣取ったバルサファンたちも「Donde esta CR7?/ドンデ・エスタ・セーエル・シエテ(クリスチアーノ・ロナウドはどこにいる)」と歌っていた通り、年間50ゴールを失ったマドリーに今や、トレードマークだった奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)などは望む術はなくとも、またピケにmanita(マニータ/5本の指をヒラヒラさせる5得点のポーズのこと)なんてされたら、たまったもんじゃないかと。おかげで幸い(?)、ベイルや同じ交代出場のアセンシオのシュートも遠く的を外れるばかりと、一矢も報えないマドリーでしたが、それ以上の失点はなく、試合は0-3で終了。

ミックスゾーンでは「Tenemos la suerte de ganar muchos partidos aquí y con resultados abultados/テネモス・ラ・スエルテ・デ・ガナール・ムーチョス・パルティードス・アキー・イ・コン・レスルタードス・アブルタードス(ボクらはここで多くの試合に勝って、しかも大量得点差でというツキがある)」ぐらいしか、ピケも言えなかったのは助かりましたが、はあ。もちろん、バルベルデ監督も「25回も撃って1点も入らなかった試合(0-0だったCL16強対決オリンピック・リヨン戦1stレグ)もあるが、今日のウチは少ないシュートで点を沢山取った」という、シュート14回(うち6回がビニシウス)で無得点のマドリーと比べ、たったの4回で3点という相手の効率の良さが決め手だったのは火を見るよりも明らか。

逆に「No fuimos contundentes /ノー・フイモス・コントゥンデンテス(ウチには決定力がなかった)」とソラリ監督が嘆いているのには、アトレティコのシメオネ監督もゴールが入らず、負けた試合の後によく言っていたなと思ったものの、辛いのはグリーズマンやジエゴ・コスタが絶好機に何度も失敗した場合、彼らはちゃんと決めてくれる時もあるのがわかっている選手たちですからね。責められても仕方ないんですが、今のマドリーでその役目をやっているのはどういう訳か、ベイルでもベンゼマでもなくビニシウウス。

いくら母国ブラジルのメディアでは、「メッシよりずっと良かった」と褒め称えられ、木曜には初のブラジルA代表招集が決まったとて、「Al final lo comparamos con el mejor del mundo... y ¡hostia!/アル・フィナル・ロ・コンパラモス・コン・エル・メホール・デル・ムンド…イ・オスティア(要は世界一の選手と比べているんだから…とんでもないよ)」(ジョルディ・アルバ)というのは、バルサの選手でなくても正直な感想だったかと。

こうなると本当に連続クラシコ、リーガの部、この土曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのバルサ戦で、アトレティコのためにもなるリベンジを期待してもいいのかどうかわかりませんが、ラジオなどでは「首位と勝ち点差9では逆転優勝はほぼムリ。いっそローテーションして来週火曜のCLアヤックス戦2ndレグに懸けるべき」なんて意見もなきにしろあらず。要は先発にマルセロ、マリアーノ、アセンシオ、セバージョス、バルベルデといった辺りを使うということですが、困ったのはCB陣で、ええ、ナチョがレバンテ戦の退場で出場停止なのに加え、オウンゴールを入れた際にバランが負傷(https://bit.ly/2TmGG3z)してしまったんですよ。

丁度、木曜にはUEFAからラモスの2試合出場停止処分が下ったため、バランがアヤックス戦までに治るよう、ここは大事を取って、ラモスとバジェホのペアで何とかするんでしょうが、さて。何はともあれ、カセミロも「Cristiano no está. Tenemos que pelear los que estamos/クリスティアーノ・ノー・エスタ。テネモス・ケ・ペレアル・ロス・ケ・エスタモス(クリスチアーノはいないんだから、いる選手でボクらは戦わないといけない)」と言っていたように、今度こそ、責任を負うべきベテランのアタッカーたちがゴールを入れてくれることを祈っています。

そして同じ水曜日のお昼、またミッドウィークに試合のない2週間に突入したアトレティコはワンダ・メトロポリターノでビニシウスと同じ18才でこの冬、アルヘンティーノ・ジュニアーズから移籍したCBネウエン・ペレスの入団プレゼンをやっていたりしたんですが、先日終わった南米ユース選手権のアルゼンチン代表ではレギュラーで活躍したとはいえ、もちろんこちらは見習い扱い。一応、背番号18をもらい、トップチームで練習しているものの、ゴディン、ヒメネス、サビッチ、リュカ、そしてカンテラーノ(アトレティコBの選手)のモントヤらが一斉にダウンしない限り、まず今季中にデビューすることはなさそう。

実際、初めてヨーロッパに来るティーンエイジャーの選手はそういう、ゆっくりした速度で育ててあげた方がいいと思うんですが、まあそれぞれ、クラブによって事情が違いますしね。ちなみにこの週末、アトレティコが挑むのは日曜午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)からのレアル・ソシエダ戦。早くもシメオネ監督は3月12日のCLユベントス戦2ndレグを見据えて、出場停止となるトマスの代わりにヒメメスをボランチで試したりしているようですが、とりあえず今はリーガ・クラシコの様子を伺いつつ、バルサとの差が勝ち点7から、少しでも縮まるように努力するべき時かと。負傷から復帰して2試合をプレーしたジエゴ・コスタもトリノでの試合は累積警告で出られないため、リーガの方でゴールを挙げて、調子を取り戻してほしいですね。

そして最後に弟分たちの週末の予定も伝えておくと、金曜夜にはラージョがエスタディオ・バジェカスにジローナを迎えることに。ええ、このところ4連敗と一向に降格圏からの脱出ができていない彼らですからね。アトレティコとのコパや2節前のベルナベウでのマドリー戦勝利のように時々、強さを見せるものの、15位と基本的にそれ程、差がある訳ではない相手と戦うこの試合では白星をゲットして、残留ライン17位のセルタとの勝ち点差2を1日でも引っくり返せると、選手たちも自信がつくのでは?

一方、ラージョとは真逆、今や栄えあるCL出場圏4位の高みに到達したヘタフェは日曜にアウェイでベティス戦。折しもあちらは木曜にもう1つのコパ準々決勝2ndでバレンシアに1-0と負け(総合スコア2-3)、ホームで決勝を戦う夢が破れたばかりとあって、付け入る隙は大いにありそうですしね。攻撃陣ではホルヘ・モリーナ、マタのFWコンビが絶好調な上、今回はコパ準々決勝2ndレグでの退場で4試合の出場停止処分を受けたCBブルーノが戻って来てくれるのはボルダラス監督も心強い限りかと。他は左SBのアントゥネスが累積警告、ボランチのアランバリが負傷から復帰するかどうか微妙といったところですが、果たして柴崎岳選手は招集リストに入れるんでしょうか。

え、今節の平日試合はラージョだけじゃなくて、レガネスも月曜に回されてしまったんだろうって?その通りなんですが、ブタルケは土日でなくても忠実なファンが多いため、結構埋まるんですよ。相手のレバンテとは丁度、同じ勝ち点30で順位も12位と13位という、似たような境遇とあって、いい勝負になりそうですが、好調のFWエン・ネシリが出場停止なのはちょっと痛いところ。何はともあれ、ダービーのない今週末はマドリッド勢を躊躇いなく応援できるのがいいですね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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