もう来年までサッカーはない…/原ゆみこのマドリッド

2018.12.24 13:15 Mon
▽「こんなんじゃ、守っている選手だってボールが見えなかったのかも」そんな風に私が嘆いていたのは日曜日、霧煙るブタルケでセビージャが同点ゴールを入れた時のことでした。いやあ、この試合が終わったら、選手たちはバケーション入りとあって急いていたのか、開始5分にはニヨムのクロスをベスガがヘッドで決め、そこからずっとリードを保っていた弟分のレガネスだったんですけどね。ハーフタイムでロッカールームに向かう途中、フランコ・バスケスが審判に失礼な言葉を投げつけ、一発退場となり、後半45分間、相手は10人だったというのに突如、押し寄せてきた濃霧に視界が悪くなったか、ペレグリーノ監督のチームはシュートが外れて一向に追加点を取れず。
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▽そうこうするうちにロスタイムが来て、うーん、ダイジェスト映像で確認したところ、ロケ・メサのクロスをベン・イェデルが見事に頭で叩き込んでいたんですけどね。正直、私の座っている位置からは何も見えず、スタンドの一角を陣取った賑やかなセビージャファンたちが喜んでいたため、ゴールが入ったのはわかったものの、狐につままれたまま、1-1で引き分けとは何ともツイていない。だってえ、レガネスが勝っている途中にスマホで順位表を開けてみたところ、勝ち点3が加算されて彼らは一気に12位に上昇。クリスマス休暇だって、気分良く過ごせるはずだったのに、結局、試合終了後は勝ち点1増えただけなんですよ。降格圏との差は4ポイントに広がったとはいえ、前節と同じ16位となればあまり喜べなかったから。▽え、そこはやっぱり弟分、前日、ワンダ・メトロポリターノでデフォルトの1-0でエスパニョールに勝った兄貴分とは格が違うんだから、仕方ないんじゃないかって?いやあ、実はあまり威張れない内容だったのは、折しもその日は昨季終了後にアル・サッドへ移籍したガビが帰還。ようやく開催できたお別れ記念イベントが感動的だったため、つい忘れがちになってしまうんですけどね。Fondo sur/フォンド・スール(ゴール裏南側席)に「Capitan y referencia/カピタン・イ・レフェレンシア(キャプテン、そしてチームの模範)」というガビに捧げる横断幕が広げられ、アカペラのイムノ(クラブ歌)で雰囲気を盛り上げるスタンドに後押しされるように、アトレティコが積極的に攻めていたのは開始から15分ぐらいまでのことでしたっけ。
▽その先は後でルビ監督も「CL出場チーム相手にあれより少ないチャンスを与えるなんてことはできないと思う。Un penalti, un 'chut' desde fuera.../ウン・ペナルティ、ウン・チュート・デスデ・フエラ(ペナルティ、エリア外からのシュート…)」という淋しい展開だったんですよ。ええ、前半はGKオブラクがボルハ・イグレシアスのvaselina(バセリーナ/ループシュート)をかろうじてそらしたり、攻撃参加はスムースになってきたものの、守備的にはまだ不安なサウールが左SBとして入っていたのをいいことに、その隙を突いたレオ・バプチスタンのシュートも弾いたところ、2度目のトライがゴールポストに当たって難を逃れるとか、これじゃパルコ(貴賓席)で観戦していたガビや昨季最後のホームゲーム、エイバル戦に1-1で引き分けた後にお別れセレモニー、その日は来季サガン鳥栖で指導を仰ぐことになったルイス・カレラス監督と一緒に見ていたフェルナンド・トーレスだって、冷や汗をかいていたに違いませんって。

▽それでも後半9分には敵エリア内の混乱に乗じて、コケがグラネロに倒されるというラッキーが生まれるなんて、やっぱりサッカーは不思議。いえ、プレーはその後も続いてコレアのシュートがゴールになっていたんですけどね。その前に主審がペナルティを宣告し、グリーズマンがPKを先制点に変えてくれたから、助かったの何のって。ただその後は最近のお約束通り、一歩下がってしまった上、選手たちも試合後に待っているイベントを意識したんでしょうか。「もっと早く勝負に決着をつけたかったけど、サッカーでは相手もプレーするからね。Nos toco sufrir como otras veces pero lo importante era ganar/ノス・トコ・スフリル・コモ・オトラス・ベセス・ペロ・ロ・インポルタンテ・エラ・ガナール(ウチはまた苦しんだとはいえ、大事なのは勝つことだった)」(コレア)という有様でしたっけ。
▽最後はシメオネ監督やフィジカルコーチのプロフェ・オルテガまでがスタンドを鼓舞して応援のボリュームを高め、かろうじて無失点を保ったため、ようやく1-0で逃げ切ることができたんですが、まったくもう。ホッとする間もあらば、6つのトロフィーがピッチに運ばれてイベントの準備が始まり、選手やスタッフ、アデラルド、アントニオ・ロペス、トーレスら伝説の歴代キャプテン、カンテラ(ユース組織)の代表150人に見守られ、ガビがスピーチすることに。曰く、「いつも勝てた訳じゃないけど、ボクらは常に人生の教訓を示してきた。だからこの偉大なクラブが自分の誇りなんだよ。18年間、いい経験もそれ程、良くない経験もしてきたけど、アトレティコは人を結びつける。Es una manera de vivir/エス・ウナ・マネラ・デ・ビビール(これは1つの生き方だ)」とのこと。

▽加えて、「CLのトロフィーがなくても自分に欠けているものはないよ。それは今の選手たちが勝ち取らないといけない。このチームを作り上げたテクニカルスタッフと共にね」と言っていましたが、果たして近々、できたらワンダで決勝が開かれる来年の6月とかにその夢が叶うことはあるのかどうか。何せ、イベントが終わった後の記者会見で「トーレスやガビのように退団するのは難しい。Ojala que todos los futbolistas puedan retirarse aqui como ellos/オハラ・ケ・トードス・ロス・フトボリスタス・プエデン・レティラールセ・アキー・コモ・エジョス(全ての選手が彼らのようにこのチームを去れますように)」とシメオネ監督も言っていたように、この日は1月にバイエルン移籍の噂が出ているリュカに対する「Quedate/ケダテ(残留して)」という、お決まりのカンティコ(節のついたシュプレヒコール)はまったく聞こえませんでしたからね。

▽元々、その原因も夏にグリーズマンの年棒を2000万ユーロ(約102億円)にアップして引き止め、シメオネ監督やリュカも含めて複数人昇給したため、クラブの人件費枠がいっぱいに。そのせいでバイエルンのオファーする高額年棒に対抗できるだけのお金が今季はもうなく、リュカには来季に埋め合わせするから待ってくれと交渉している状態のよう。おまけに試合後のインタビューでトマスまでが、「A veces me siento infeliz en el Atleti/ア・ベセス・メ・シエントー・インフェリス・エン・エル・アトレティ(時々、アトレティコにいて不幸せに感じる)。幸福になるには大事な試合に出て自信をつけなきゃ」と言い出す始末で、まあこちらにはサッカー面での不満があるようですけどね。

▽実際、クラブが払える給料には限界があるのにグリーズマンの件がキッカケで皆が大幅アップを望み、誰も我慢することができない上、プレー自体があんな状態ですからね。うーん、ガビの背番号14を受け継いだロドリなど、こんなサッカーで優勝を狙えるのかと尋ねられ、「大事なのは順位表で上にいること。El equipo va a mas, no es facil confeccionar al equipo/エル・エキポ・バ・ア・マス、ノー・エス・ファシル・コンフェクシオナール・アル・エキポ(もっと先に行けるはずさ。でもチームを作るのは簡単じゃないんだ)」と答えていましたけどね。ワンダを埋めるファンはアトレティコが好きだから、試合となれば、とにかく応援しますが、結局、選手たち、あまつさえカンテラーノまで、自分がもらうお金のことしか考えていないのかと思うとちょっと、白けてしまいますよね。

▽そしてエスパニョール戦の後半少し経った頃から、栄えあるCL優勝チームだけに与えられえるご褒美大会、クラブW杯決勝が始まったんですが、やはり開催国枠出場のアル・アイン(アラブ首長国連邦)とお隣さんの実力差は相当なものだったよう。ええ、私もスマホでテレ・デポルテ(スペイン国営放送のスポーツ専門チャンネル)のストリーム配信をチラチラ、見ていたんですが、前半14分にはまずモドリッチがUEFA、FIFA、バロンドールと今年の最優秀選手賞を総なめしたのはダテではなかったことを証明。エリア外から華麗に先制点を決めてくれたとなれば、この決勝に辿り着くまで3試合、うち2試合は延長PK戦をこなさなければならなかったアル・アインの選手たちだって、一気に疲れが出てしまうというものです。

▽ほとんどボールを独占していたマドリーは後半、いえ、5分にベイルが昨季決勝リバプール戦に続き、2匹目のドジョウを狙って放ったchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)は外れてしまったんですけどね。15分にはCKからクリアされてきたボールをマルコス・ジョレンテが蹴り込み、レアル・マドリーの2点目をゲット。何せ、彼はジダン監督下の昨季、今季もロペテギ監督時代はほとんど使われず、ようやくソラリ監督になって日が当たった選手ですからね。カセミロの負傷中、完璧に代理を務め、とうとうこのクラブW杯ではそのレギュラーを差し置いて先発するまでに成長しただけでなく、自身マドリー初ゴールを挙げ、決勝MVPに選ばれるとはまったく、人生何が起きるかわからない?

▽え、決勝の男と言えば、アトレティコとの2度のCL決勝でゴールを決めたセルヒオ・ラモスも忘れちゃいけないんじゃないかって?そうですね、今年5月のリバプールとの決勝では同じアラブ圏の選手、エジプト人のサラの肩を脱臼させ、プレー続行不可にしてしまった彼だったため、シュイク・ザイード・スタジアムのアル・アインファンたちからずっとpito(ピト/ブーイング)が飛んでいたんですけどね。33分にはモドリッチのCKを得意のヘッドで決め、スタンドに黙るようにサインを送った後、ゴール裏でアップしていたイスコに駆け寄り、その日も先発できず、更には出場機会もないという不遇な目に遭っている同僚を慰めるためか、一緒にゴールを祝っていましたっけ。

▽そして41分には塩谷司選手がFKを頭でミート、見事な弧を描いてボールがGKクルトワを超え、何とか一矢を報いたアル・アインでしたが、最後の仕上げはビニシウス。ええ、ロスタイム1分に放ったシュートがナデルに当たってオウンゴールとなり、スコアを4-1として、マドリーの世界王者戴冠に花を添えてくれます。いやあ、ここ5年で4度CLに優勝している彼らはその都度、クラブW杯にも優勝。今の大会形式になる前も合わせると通算7回で、どこのクラブより多いというのは凄いかと。ソラリ監督も「Va a ser dificil de igualar en el futuro/バ・ア・セル・デフィシル・デ・イグアラル・エン・エル・フトゥロ(将来、この記録に並ぶのは難しいだろう)」と言っていましたが、そうですよねえ。まずCLに優勝すること自体、どんな名門クラブでも大変なのに、マドリーはそれを13回もやっているんですから、もうここは素直に褒めるしかないのでは?

▽そんなマドリーは翌朝、トロフィーを抱えてスペインの首都に戻ったんですが、選手たちはバケーション入りで次の練習は31日、エスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノで行われるソシオ(協賛会員)向け公開練習となります。今年は年末出稼ぎ親善ツアーをしないアトレティコやレガネス、ヘタフェ、ラージョらも大体、同じ頃にセッション再開となりますが、年明けは今週末、延期したビジャレアル戦が1月3日に組まれているマドリーだけはちょっと、クリスマスのご馳走の食べ過ぎには注意した方がいいかと。

▽そうそう、最後にブタルケから帰って来た私には嬉しいニュースが待っていて、次の時間帯にエスタディオ・バジェカスにレバンテを迎えたラージョが、いえ、レガネスのご近所さんで2部の弟分のアルコルコン同様、こちらも五里霧中の試合だったんですけどね。前半24分にアレックス・モレノが放ったシュートがトーニョに当たってオウンゴールで先制。後半15分にはロチーナに同点にされてしまったものの、その2分後に前節のマドリー戦ではレンタル元との契約条項で出られず、1-0での負けに悔しい思いをしたラウール・デ・トマスが決勝点を挙げ、そのまま2-1で勝ったというんですから、有り難いっちゃありません。

▽そのゴール、どれもがTVでもあまりよくわからなかったというのは日曜の夕方、マドリッドを襲った霧がどれ程、濃かったかを物語っていますが、降格圏の18位というのは変わらずとも、残留ラインまで勝ち点3に近づいたとなれば、ミチェル監督や選手たちも心安らかにクリスマスを祝える?彼らの年明けは1月5日のバジャドリー戦となりますが、ついでに他のチームの予定も伝えておくと、4日にはレガネスがエスパニョールとアウェイで18節をスタート。日曜にはおそらく、この17節で退場したフランコ・バスケスと累積警告になったメルカドが出場停止なるのを弟分に感謝しているはずに違いない、単独2位となったアトレティコが3位のセビージャにサンチェス・ピスファンで挑み、マドリーは中2日でレアル・ソシエダをサンティアゴ・ベルナベウに迎えるんですが、やっぱりその週末、マドリッド訪問をしているファンに一番お勧めなのは首位バルサがコリセウム・アルフォンソ・ペレスを訪れるヘタフェの試合ですかね。

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