波乱はなかった…/原ゆみこのマドリッド

2018.12.07 12:00 Fri
▽「勝ち抜けたのは嬉しいけど、4カードもあったらまた大変!」そんな風に私が早くも来年正月明けの予定を憂いていたのは木曜日、ここ3日間続いたコパ・デル・レイ32強対決2ndレグでマドリッド勢5チーム中、ラージョ以外の16強対決進出が決まった時のことでした。いやあ、1部チームが参加する初戦から、レガネスとラージョがマドリー・ミニダービーのカードとなってしまったため、どちらかが敗退するのは避けられなかったんですけどね。残り3チームは皆、下位カテゴリーのチームが相手だったため、しっかり次ラウンドに駒を進めることに。来週木曜の抽選会でまたダービーカードが生まれない限り、1月8~10日と15~17日は再び、連日スタジアム通いという羽目に陥りかねないと思ったから。
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▽そう、私のコパ行脚が始まったのは今週の火曜からで、まずはヘタフェがコルドバを迎える2ndレグをコリセウム・アルフォンソ・ペレスへ見に行ったんですが、平日ですし、やはりスタンドはあまり埋まりませんでしたね。加えて1stレグで1-2と勝っていたこともあり、ヘタフェはリーガで先発した選手たちを休ませていたんですが、2部の降格圏にいるコルドバまでそれに倣っていてはねえ。両チームの選手たちの実力差は明らかで前半18分、GKマルコスが弾いて落としたボールをポルティージョが押し込んで先制したヘタフェは、41分にもアンヘルがペナルティをゲット。PKも自身で決め、追い風に乗ると、ここしばらくゴールから遠ざかっていた鬱憤を晴らすかのように後半にもう2発追加、ハットトリックを達成してくれたとなれば、ボルダラス監督も心強かったかと。▽え、その試合、柴崎岳選手も久々に先発に抜擢されたんだろうって?その通りでクリストフォロとのダブルボランチでスタートした彼だったんですが、余裕の2点リードで迎えた後半から、「Habiamos cambiado el dibujo en el ecuador/アビアモス・カンビアドー・エル・ディブージョ・エン・エル・エクアドル(ハーフタイムにシステムを変えた)。そんなに急いでパスを出さず、ドリブルしてみたらいいと言った」(ボルダラス監督)という指示により、3分には早速、中盤からスタート。アンヘルに繋いだ後、エリア内にリターンしてくれたボールは行き過ぎて取れなかったんですが、左側にいたロベル・イバニェスがシュートして、ヘタフェの3点目を入れてくれます。
▽後半にはコルドバもCKからアイタミがヘッドを決めて1点を返したため、最後は5-1で試合は終わったんですけどね(総合スコア7-2)。おかげで1月前半もコパの2試合が保証され、柴崎選手がアピールする機会が増えたとなれば喜ばしい限りかと。実際、まだこの段階ではリーガよりコパの方がチケットも安くて手に入れやすいため、その頃、マドリッド訪問を計画しているファンは来週、対戦相手と時間割が出るのをしっかりチェックして、コリセウムでの試合観戦をスケジュールに入れてみるのも一興かと思いますよ。

▽そして同じ火曜、ヘタフェより1時間遅れで始まったエスタディオ・バジェカスでのコパ・ダービーではレガネスが前半17分、エル・ザールのシュートをエミリアーノ・バスケスがクリアミスして入ったオウンゴールで先制。その後のラージョは70%以上という凄いポゼッションで反撃したようですが、兄貴分のレアル・マドリーからレンタルで修行に来ている19才のGKルニンがベベのPKまで弾く大活躍をしたんですよ。そのせいもあって、結局、0-1で負けたため、2-2の引き分けた1stレグのアウェイゴールによるアドバンテージを生かせず、早くもラージョはコパから姿を消すことに。
▽とはいえ、「ゴールチャンスが15回、ボールロスト後のプレスも見事でカウンターも受けなかった。Para mi el resultado es muy injusto/パラ・ミー・レスルタードー・エス・ムイ・インフストー(自分にとって、この結果は全然、正当なものではない)」とミチェル監督が悔しがろうと、彼らの最優先課題は一刻も早くリーガ降格圏を抜け出すことですからね。この金曜午後9時(日本時間翌午前3時)にレガネスがブタルケにヘタフェを迎え、お隣さん同士で星を潰しあっている間、日曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)のベティス戦でこそ、前節エイバル戦に続く2連勝を狙ってほしいところかと。ちなみに2節前に降格圏を抜け出したレガネスは3連勝中で残留ラインと勝ち点差5の現在16位、2連勝中のヘタフェは9位ですがヨーロッパリーグ出場圏の6位まで勝ち点1と、こちらのリーガ・ミニダービーも見応えありそうですよ。

▽そして翌水曜にはワンダ・メトロポリターノにアトレティコのサン・アンドレウ戦を見に行った私でしたが、さすがトップチーム20人という少数精鋭の上、月曜には左足中足骨に入れたボルトの手術をするため、母国ブラジルに帰ってしまったジエゴ・コスタを始め、ゴディン、ヒメネス、ファンフラン、フィリペ・ルイスの5人を負傷で欠いて、とうとう15人になってしまったチーム。そこへ1stレグでは0-1でしか勝てなかったとあって、ベンチを外れてお休みをもらったのはグリーズマンだけというのは大体、アトレティコの選手数がここまで少ないのはその彼を引き留めるため、リーガでメッシに次ぐ高額年棒を払うことになったからだなんて聞くと、ちょっと不公平な気もしますけどね。まあ当人も今週は失意の中、パリでのバロンドール授賞式出席、モドリッチに拍手を贈らないといけなかったため、その辺の心労をシメオネ監督も慮ってあげた?

▽実際、来年2月半ばまで復帰できないコスタの代わりとなる前線候補を試す必要性もあり、CBにカンテラーノ(アトレティコBの選手)のカルロス・モヤを入れただけで、後はトップチームの選手で挑んだアトレティコなんですが、いやあ、前半の恐ろしかったことといったらもう!だってえ、相手は3部というのに何回も危ないシーンがあったんですよ。幸いGKアダンが防いで事なきを得たものの、この日もベンチ入り禁止処分が続き、パルコ(貴賓席)で観戦していたシメオネ監督だって、あの惨状にはきっと呆れていたに違いありませんって。

▽それでもハーフタイムに「問題はもっと組織だって、コンパクトなチームでいることだったから、hemos hablado entre todos/エモス・ハブラードー・エントレ・トードス(皆で話し合った)」(アダン)のが功を奏したか、いえ、一番はジェルソンをレマルに代えたことだったんですけどね。後半開始早々、そのレマルがエリア前からのシュートを枠に当てて決め、とりあえず2試合でのリードを2点にしてくれたから、不安を覚え始めていたスタンドのファンたちもどんなに安心できたことか。どうやら選手たちも同じ気分だったようで、9分にはアリアスのクロスをカリニッチがヘッドで叩き込み、移籍後初ゴールを挙げると、その1分後にはレマルがエリア内に入れたクロスをコレアが右足外側でネットに収め、あっという間に3点目が決まったとなれば、もう心配することは何もありませんって。

▽そして最後にはリュカがCBに移動して、再び左SB修行をしていたサウールが36分、ゴール前に送ったラストパスをビトロが押し込んで4点目を奪い、彼らは4-0で勝利(総合スコア5-0)。サン・アンドレウ戦の選手たちがワンダのジャグジーを堪能している間、記者会見に現れたアスパレン監督も「今日の失点をウチが集中力を欠いたせいと言うのは傲慢だと思う」と言っていましたが、そうですよね。いくら「Jugamos muchos futbolistas que teniamos pocos minutos/フガモス・ムーチョス・フトボーリスタス・ケ・テニアモス・ポコス・ミヌートス(あまりプレー時間がなかった選手が大勢いたし)、相手には失うものは何もなかった」(ビトロ)とはいえ、アトレティコは全ての大会で優勝を目指すチームなんですから、これぐらいの力の差は見せてくれないと。

▽そんな彼らはあまり休む間もなく、次は土曜午後1時(日本時間午後9時)から、再びワンダでアラベス戦となるんですが、相手はすぐ下の4位ながら、ジローナを前にコパ敗退をしてしまいましたし、リーガもここ2試合連続白星なしと少々調子が下降気味。とにかく今季はアウェイで1勝だけと、内弁慶が続いているアトレティコだけにホームゲームでは確実に勝ち点3をゲットしてもらいたいものですが、さて。何せ、負傷者はまだ誰も戻って来ませんからね。とりあえず今はカリニッチやビトロがゴールで自信をつけて、チームに貢献してくれることを祈るばかりです。

▽え、それで1stレグで0-4と大勝し、モドリッチ、セルヒオ・ラモス、ベイル、ベンゼマ、クルトワを招集外にしてメリージャを木曜にサンティアゴ・ベルナベウに迎えたマドリーはどうだったのかって?いやあ、やはりアフリカ大陸にあるスペインの飛び地領から、フェリーでマラガまで6時間、そこからは飛行機でしたが、計12時間も移動にかかっていてはねえ。そんなお疲れ気味だった2部Bチームの選手たちが意地を見せられたのは前半32分までのことでした。ええ、それまではGKケイロル・ナバスのゴールキックミスなどを利用して、シュートを撃ったりもしていたんですが、ドリブルでエリア内に入り込んだアセンシオに先制点を決められたかと思えば、その2分後にはビニシウスのアシスストで再びアセンシオがゴール。

▽38分にはその彼の出した弓なりのパスをRMカスティージャ(マドリーのBチーム)のCB、ハビ・サンチェスがvolea(ボレア/ボレーシュート)で決めて、あっという間に3点差になったとなれば、一矢報いてやろうと張り切っていたメリージャ勢だって、もうお楽しみはベルナベウのジャクジーしか残っていない?実際、後半もソラリ監督にこの日、初めて先発を任されたイスコが3分にエリア外からのシュートを突き刺すと、30分にはとうとう、フィニッシュに失敗してばかりだったビニシウスまで、一旦はGKに弾かれたシュートを2度目のトライでゴールにすることに成功。ええ、ほとんどバジャドリーのオウンゴールまがいだったマドリー初得点と違い、こちらは正真正銘、自分が決めたものとなれば、まだ18才ですしね。陽気なブラジル人選手の常として、ついピッチで踊ってしまったとしても仕方なかったかも。

▽いい加減、この辺りになると総合スコア9-0の大敗に審判も相手が気の毒になったか、36分にはエリア内でハビ・サンチェスがジャシネを倒したプレーをペナルティと判定。おかげでメリージャも記念の1点を挙げ、気分を直したはずだったんですが、まさかその1分後、イスコがまたしてもゴールを決めるってやっぱり、彼って空気が読めない選手?結局、試合は6-1で終わり、マドリーはあっさり16強進出を決定。ビジャレアルに2ndレグだけで8-0の大敗を喫したアルメリア(2部B)よりはマシですが、メリージャの選手たちにとって翌日、直行便で帰還できるのは不幸中の幸いだったんじゃないでしょうか。

▽そして今週末は日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)から、アウェイで最下位のウエスカと対戦するソラリ監督のチームなんですが、実はその日のマドリッドは厳戒態勢に。というのもブエノスアイレスで開催できなかったコパ・リベルタドーレス決勝2ndレグが午後8時30分(日本時間翌午前4時30分)からサンティアゴ・ベルナベウで行われるためですが、すでにボカ・ジュニアーズ、リーベル・プレートの両チームは到着しており、木曜にはそれぞれラス・ロサス(マドリッド近郊)のスペイン・サッカー協会の施設、バルデベバス(バラハス空港の近く)のマドリー練習場で大勢のマスコミの見守る中、セッションに励んでいます。

▽うーん、1stレグが2-2で終わり、アウェイゴール・ルールがないため、ほぼ一発勝負状態になっているこのアルゼンチンの両雄の対決、いえ、ヘタフェのコパ担当GKチチソラなど、「もちろん見に行くよ。友達もいっぱいいるしね」とリーベル育ちの縁でチケットを融通してもらえるのか、楽しみにしていましたけどね。スペインに25万人いると言われるアルゼンチン人移民を除いて、一般的なマドリッド市民の感覚はとにかく、両チームのファンと警官隊が対決するような騒ぎが起きないでほしいといった風で、試合の結果については、勝者がクラブW杯でマドリーの一番のライバルになるぐらいの認識でしょうか。

▽どうやらバラス・ブラバス(アルゼンチンのウルトラグループ)の幹部は入国拒否されたようですし、航空券が1500ユーロ(約20万円)程と高額なため、海を渡って来るアルゼンチン人のファンの数は限られており、多分、騒ぎは起きないはずですけどね。一応、この日曜、マドリッド観光をしている日本人ファンに注意点をお伝えしておくと、キックオフ数時間前から、サンティアゴ・ベルナベウ周辺は3重のチェックポイントが設けられ、チケットがないと通れなくなることと、スタジアム北側、メトロのクスコ駅近くのプラサ・デ・クスコはリーベルのファンゾーンに、南側のヌエボ・ミニステリオス駅方面にあるラミムンド・フェルナンデス・ビジャベルデ通りはボカのファンゾーンとなるため、人込みが苦手な方は避けた方が無難といったところですかね。

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