多くの名選手が引退した18シーズン/六川亨の日本サッカー見聞録

2018.12.06 18:30 Thu
©︎J.LEAGUE
▽昨日5日は天皇杯の準決勝2試合が行われ、事実上の決勝戦と目された浦和対鹿島戦は右CKからあげた1点を守り切り、浦和が3大会ぶりの決勝戦へコマを進めた。決勝戦は9日に埼玉スタジアムで開催されるが、鹿島戦で興梠、武藤、青木の主力3選手が負傷交代したのは気にかかるところ。果たして決勝戦に間に合うのかどうかも勝敗を左右しそうだ。
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▽そして今シーズンのJリーグも、天皇杯決勝とJ1参入プレーオフの2試合を残すのみ。改めて2018シーズンのJリーグを振り返ると、まず監督交代が多いシーズンだった。まず4月に浦和が2度の監督交代からオリヴェイラ監督が就任。5月は甲府、京都、富山、柏、愛媛の5チームが、6月は鳥取、長野、北九州の3チームが監督交代に踏み切った。▽さらにその流れは止まらず、ワールドカップ(W杯)後の7月下旬には秋田、G大坂、藤枝の3チームが、8月は新潟、9月は神戸、10月は鳥栖、11月は柏と開幕直後の2月と3月をのぞいて毎月のように監督が交代した。
▽交代を断行するにはそれなりの理由があったからだが、功を奏したと言えるのはJ1残留を決めた鳥栖、神戸、G大阪の3チームくらいだろう。特にG大阪の宮本監督は、初のJ1リーグで9連勝を飾り、16位から9位までチームを浮上させた手腕が光る。

▽そして浦和のオリヴェイラ監督も、それまでのパスをつなぐペトロヴィッチ・スタイルから、堅守を武器にセットプレーからゴールを奪うチームへとモデルチェンジさせながらリーグ戦では5位、天皇杯では決勝に導いた。システムは前任者の3バックスタイルを引き継ぎつつ、今オフに川崎Fの車屋にオファーを出したのは、来シーズンの4バック併用を想定してのことではないかと浦和ウォッチャーは話していた。
▽ストーブリーグはこれから激化すると思うので別の機会に譲るとして、今シーズンは多くの選手が引退した年でもあった。元日本代表の川口(相模原)を始め、GK山岸(北九州)、MF平川(浦和)、GK高原(町田)、MF森﨑和(広島)、MF兵働(清水)、MF栗澤(柏)、FW難波(岐阜)、MF梶山(FC東京)、DF島村(湘南)、FW田代(元C大阪)、DF久保(岡山)、DF岩政(東京ユナイテッドFC)の13人が現役生活に別れを告げた。

▽彼ら以外にも、FW前田(FC東京)、MF稲本(札幌)、FW佐藤寿(名古屋)、GK楢崎(同)、FW玉田(同)、MF八反田(同)、MF髙柳(山口)らは、所属チームとの契約は満了したものの、移籍か引退かで揺れている。

▽GK川口の引退により、96年アトランタ五輪のメンバーで現役は伊東(沼津)1人になったし、MF稲本とGK楢崎が引退となると、98年フランスW杯のメンバーで現役は伊東とMF小野(札幌)の2人だけだ。18年は時代を築いた名手がユニホームに別れを告げた年としても記憶に刻まれることだろう。

▽12月2日はJ3リーグ最終戦の相模原対鹿児島戦を取材した。GK川口の引退セレモニーでは、岡田元監督、長友、ジーコ、カズ(三浦知良)がビデオで労いのメッセージを贈った。両親と兄、家族からの花束贈呈では、感謝の言葉を述べていると、こらえきれず涙を流した。

▽しかしサプライズとして楢崎が登場すると川口に笑顔が戻る。楢崎が「最後の最後まで、本当に、代表ではチームメイトとして、リーグではライバルとして、僕の方が年下なので、いつも目標にしていました」と話すと、川口も「僕にとって特別な存在です。ナラがいたからこの歳まで続けることができました。まだ続けてください。僕の分まで頑張ってください」とお互いにエールを贈った。

▽長年、日本代表として切磋琢磨してきた2人には、2人にしかわからない絆があるのだろう。試合は3度の1対1を川口がブロックして1-0の勝利に貢献した。囲み取材で楢崎は「持っているという、そんな簡単なもんじゃないです。憧れですよね」と正直に心境を吐露した。2人のライバル関係の今後が気になる、濃密な取材のできたJ3最終戦だった。

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