CL16強入りが決まった…/原ゆみこのマドリッド

2018.11.30 22:00 Fri
▽「いや、絶対怖いって」そんな風に私が度肝を抜かれていたのは木曜日、一体どういう巡り合わせなのか、延期されていたコパ・リベルタドーレス決勝2ndレグが12月9日午後8時30分から、サンティアゴ・ベルナベウで開催されるというニュースをスポーツ紙のサイトで見つけた時のことでした。いやあ、元々、ラ・ボンボネーラで行われた1stレグを2-2の引き分けで終えた後、モニュメンタルでの2ndレグは先週土曜、私がワンダ・メトロポリターノでアトレティコとバルサの息詰まるリーガ首位決戦を見ている間にやっているはずだったんですけどね。ボカ・ジュニアーズのチームバスがスタジアム入りの道中、リーベル・プレートのファンによる投石に遭って選手が負傷、警官隊が使用した催涙ガスによる被害も加わり、試合は翌日曜に延期されることに。

▽といったって、ボカの選手たちがの傷が一晩で治る訳もなく、心理的なショックだってありますしね。結局、日曜にも2ndレグは行われず、週明けから、COMMEBOL(南米サッカー連盟)でアルゼンチン国外での開催が協議されていたんですが、最初は1400万ユーロ(約18億円)の報奨金に加え、両チームの移動や滞在費も持つという破格の条件で誘致していたカタールのドバイが、12月18日にリベルタドーレス優勝チームが準決勝をプレーするクラブW杯開催の地、アラブ首長国連邦のアブダビにも近いということで有力視されていたんですよ。
▽その間、スペインのマスコミは2014年と2016年にCL決勝がマドリーダービーとなった際、リスボンでもミラノでもレアル・マドリーとアトレティコのファンたちが暴力騒ぎを起こしたことはなかったなんて、ちょっと上から目線で語っていたものですけどね。それがいきなり、スペインには大勢のアルゼンチン人が住んでいるし、マドリッドの治安当局が安全にお墨付きを与えたとかで、レアル・マドリーがアウェイ戦でいない週末、クラブがリベルタドーレス決勝会場を提供することにCOMMEBOLもFIFAもボカもリーベル・プレートも合意って、晴天の霹靂ってまさにこのことかと。

▽だってえ、確かに10年ぐらい前まではダービー前、サンティアゴ・ベルナベウやビセンテ・カルデロン周辺でウルトラ(過激なファン)たちが爆竹やビール瓶を投げ合っている姿があったものの、そんな危険な光景に私が出くわしたのはかなりの昔。今はないということは警察がそういうグループの動向を掌握して、厳しく取り締まっているからだと思うんですが、アルゼンチンから海を渡ってくるファンの中にバラス・ブラバス(アルゼンチンのウルトラグループ)のメンバーがいるのか、判別できる?おまけにブエノスアイレスからの映像を見る限り、とてもそれだけとは言えない規模の人数が騒ぎに加わっていたような印象がありますしね。普通のアルゼンチン人ファンでもスーペルクラシコ(ボカvsリーベル戦のこと)では熱狂の度が超えてしまうのではないかという疑念を私が抱いてしまうのはまあ、偏見と言ってしまえばそれまでなんですが…。

▽そんなことはともかく、今週のマドリッド勢のCLがどうだったか、お伝えしないと。まずはマドリーでこちらは火曜、イタリアでローマと対戦したんですが、「どちらのチームも病気を患っている状態」とデ・フランチェスコ監督が評した一戦で矜持を示したのは、ここ3大会連覇をしているCL王者の方でした。いえ、エースのジェコも回復が間に合わず、他にもペロッティ、デ・ロッシ、ペレグリーニ、パストーレら、主力を欠いていたローマには前半22分にも更なる災いが到来。シャーラウィが負傷し、かつてバルサでプレーしたFWパトリック・クライファールトの19才の息子、ジャスティンが急遽、入らないといけないというアクシデントがあったにも関わらず、ハーフタイム間際にはやはり19才のサニオロのクロスをウンデルがゴール前で受けるというビッグチャンスがあったんですけどね。
▽ところが、このトルコ人FWも21才と若かったためか、ボールを天高く撃ち上げてしまう大失態。おかげで0-0のまま、後半を迎えることができたマドリーは再開早々の2分、ローマのベテランたちのミスを利用します。ええ、GKオルセンの危なかっしいゴールキックを受けたファシオがヘッドで戻したところ、そのボールを奪ったベイルが決めて先制。続いて14分にもベイルのクロスをベンゼマが頭で落とし、ゴール前からルーカス・バスケスが押し込んでくれたとなれば、一安心じゃないですか。ジェコの代理、22才のチェコ人FWシックもほとんどシュートを撃てなかったローマはそのまま1点も返せず、マドリーが0-2で勝利しましたが、実は早い時間の試合ではCSKAモスクワがビクトリア・プルゼニに1-2と逆転負けを喰らって敗退が決定。

▽そのため、キックオフ前からマドリーとローマのグループ突破は決まっており、この結果は前者が首位通過を確定しただけにすぎませんが、実はオリンピコでは今後のソラリ監督のチームを方向づけそうな出来事が2つあって、まずは昨季から、これまでほとんど出番のなかったマルコス・ジョレンテの抜擢。ええ、彼は現在、負傷中のカセミロと唯一、同じポジションの選手なんですが、先週末のエイバル戦でもベンチ外となり、セバージョスを使ったマドリーは3-0の大敗を喫することに。「a veces acertamos y a veces nos equivocamos/ア・ベセスアセルタモス・イ・ア・ベセス・ノス・エキボカモス(時には当たるし、時には間違える)」とソラリ監督も認めていましたが、この日の働きでストッパー役としてはセバージョスやクロースよりずっと、信頼できることを証明してくれましたっけ。

▽ただ今季、ロペテギ監督時代もプレーしたのはたったの11分だけ、ソラリ監督になってもやはりコパ・デル・レイぐらいでしか出番がなかった当人はもう、クラブW杯前にはカセミロが復帰することを計算しているんでしょうね。「Mi sueño es triunfar en el Madrid/ミ・スエニョ・エス・トリウンファル・エン・エル・マドリッド(ボクの夢はマドリーで勝利すること)だけど、冬の移籍市場が開いたら、クラブや家族と話し合って、自分にとって何が最善か決める」そうで、すでに2シーズン前、レンタル移籍でレギュラーを取ったアラベスに戻る交渉が着々と進んでいるのだとか。

▽そしてもう1つは試合当日、イスコがスタンド見学となってしまったことで、うーん、スペイン代表時代から、彼が一番のお気に入りだったロペテギ監督には重用されていたんですが、ソラリ監督になってプレー時間が激減。それまでの5試合で先発が1度もなかったばかりか、トータルでも76分しか出ておらず、何かあるとちょっと前から噂されていたとはいえ、これにはビックリしたファンも多かったかと。

▽もちろんソラリ監督は記者会見で「Son decisiones puntuales para momentos puntuales/ソン・デシシオンネス・プントゥアレス・パラ・モメントス・プントゥアレス(その時々の判断だ)」としか言っていないんですけどね。その理由に関しては諸説あって、「遠征を免除されたコパ32強対決メリージャ戦1stレグの夜、彼女と一緒にハロウィンの仮装をした写真をインスタグラムに上げた」(TV)、「練習中に監督がパスの回数を声に出して数えるように指示したところ、イスコがプレーするだけで忙しいと口答えした」(マルカ紙)、「途中出場だったエイバル戦の後、ソラリ監督に失礼な態度をとった」(カデナ・コペ/ラジオ)といった辺りはまあ、理解できるんですが、「イスコは控えにされると必ず、自分のテクニックを見せつけようとフリースタイルのような技を戦術練習でも披露して、コーチ陣に迷惑がられていた」(エル・パイス紙)とまでなると、それって、もしかして要は空気が読めない選手ってこと?

▽どちらにしろ、同僚のマルセロも「No digo que no trabaje pero el fútbol es así/ノー・ディゴ・ケ・ノー・トラバッヘ・ペロ・エル・フトボル・エス・アシー(彼が練習していないって言う訳じゃないけど、サッカーって、そういうものだから)。何を失敗しているかわかって、改善しないと」と言っていたように、イスコがまた頻繁にプレーするためには当人が努力する以外、方法はなし。今週末は土曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)から、久々のサンティアゴ・ベルナベウでバレンシア戦となるマドリーですが、果たして彼が招集リストに入ることができるのかどうか、興味が持たれます。

▽ちなみにマルセリーノ監督率いる相手は同じ火曜、ユベントスに後半14分、クリスチアーノ・ロナウドのラストパスをマンジュキッチに決められて1-0で敗戦。それでも同グループのマンチェスター・ユナイテッドが後半ロスタイムまでヤング・ボーイズと0-0で引き分けていたため、最終節の直接対決に望みがあったんですが、フェライニが手を使ってボールをコントロールしながら、ハンドを咎められずにそのゴールが決勝点に。おかげで一気にCLグループ敗退が決まってしまい、来年はヨーロッパリーグに回ることになったんですが、大丈夫。昨季のような例もありますから、今は辛くても逆に強敵の少ない大会でタイトル獲得のチャンスに恵まれたと、バレンシアの選手たちも早めに気分を切り替えられるといいですよね。

▽え、私がそんな余裕のある態度でいられるのは水曜にアトレティコのCLグループ突破が決まったからなんだろうって?いやあ、その通りで、アゼルバイジャンのカラバフと2引き分けで惨々な目に遭った去年の記憶がまだ消えていないため、ちょっと気分が上がっているんですが、でもねえ。ワンダ・メトロポリターノを訪れたモナコはローマ以上に負傷禍に見舞われていて、その数、13人とも20人とも。すでにCL敗退は決まっていた上、そのせいでリーグ1降格の危機にもあるとあって、キックオフ前、2011年から2013年、2シーズンの在籍で91試合出場70得点という偉業を表彰されたファルカオまで、「ケガから復帰したばかりで、週末のカーン戦でプレーした。この土曜には非常に重要なモンペリエ戦が控えている」(アンリ監督)という理由でベンチ温存されてしまったとなれば、アトレティコが勝てない要素がどこにある?

▽いえ、開始1分28秒でコケのシュートが17才のCBバティアシルに当たり、GKベナリオの意表を突いて先制点になったのは何せ、試合前のアップ最後の練習で1本もゴールに入らなかった彼ですからね。単なるラッキーとしか思えなかったんですが、23分にもコレアがエリア内奥から折り返したパスをグリーズマンが決め、早々に彼らは2点をリードすることに。こうなると、先発に前節までユースリーグでプレーしていた10代の選手を3人も投入、おかげで午後にマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場にあるミニスタジアムで行われた試合では3-0とアトレティコのカンテラーノ(ユースチームの選手)たちが快勝したのはともかく、人出不足のモナコにはどうすることもできませんって。

▽ただ後半頭からコケをビトロに、順次、レマル、コレアをカリニッチ、サウールと早めにローテーションをかけたアトレティコだったんですが、やっぱり油断してはいけませんよね。「Nos hemos relajado y cuando pasa eso cualquiera nos puede hacer daño/ノス・エモス・レラハードー・イ・クアンドー・パサ・エン・クアルキエラ・ノス・プエデ・アセール・ダーニョ(ボクらはリラックスしてしまって、そういう時はどんな相手でもダメージを与えられる)」とグリーズマンも後で反省していたんですが、ファルカオが大きな拍手に迎えられてピッチに入った頃から、GKオブラクの仕事が増えることに。

▽それに輪をかけてくれたのはサビッチで何と36分、ティールマンのシュートをエリア内で腕に当て、まさかのイエローカード2枚目をもらって退場って、こちらも負傷で控えDFが1人もいない中、予めCBとしてもプレーできるサウールを投入していたシメオネ監督には予知能力がある?いえ、実際そのプレーでモナコに与えられたPKはファルカオが温かく迎えてくれたアトレティコファンへの感謝にtigre(ティグレ/虎、ファルカオの愛称)の野生の勘が狂ったか、ゴール枠を外してしまい、点差は縮まらなかったんですけどね。

▽シメオネ監督も「70分までは良かった。Después nos quedamos sin energía, le pudo el esfuerzo del sábado/デスプエス・ノス・ケダモス・シン・エネルヒア、レ・プド・エル・エスフエルソ・デル・サバドー(その後、ウチは土曜の努力が祟って、エネルギーがなくなってしまった)」と後半になって、敵に反撃を許したのをバルサ戦での疲れのせいにしていましたが、いやいや。中にはモナコの半数が10代になってしまった後もグリーズマンのように最後の最後まで、全力で守りに戻る選手もいるんですから、皆がその精神を見習わないと。

▽ただ、残念なことにそんな彼はどうやら、今年最後の最優秀選手賞であるバロンドールにもモドリッチに負けてしまったようだという報道がここ数日、マドリッドでは流れているんですが、この日のアトレティコにとってのご褒美は午後9時からの試合でドルトムントがホームでクラブ・ブルージュとスコアレスドローに終わったこと。ええ、おかげでグループ通過はモナコ戦勝利で決まっても、直接対決でドルトムントに4-0と大量得点差負けを喰らい、ホームでは2-0でしか勝てなかったため、諦めていた首位突破が最終節、アウェイでクラブ・ブルージュに勝てば叶うことになったんですが、まあそれが幸運を招くかどうかは、他グループの1位2位が決まらないことには何とも。

▽それよりまず彼らには日曜のリーガ、午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からのジローナ戦で頑張ってもらいたいところですが、さて。ちなみに12年前、足の小指の中足骨に入れたボルトのせいで、ずっと痛みに悩まされ、手術も噂されていたジエゴ・コスタは木曜の練習に普通に参加。その傍らでフィリペ・ルイスがふくらはぎのケガで全治2週間となってしまったため、ゴディン、ヒメネス、ファンフランに加え、どうやらアトレティコのDF人員不足はまだ当分、続くようです。

▽そして金曜には少しでも残留ラインに近づきたいラージョがエスタディオ・バジェカスにエイバルを迎え、土曜にはようやく前節、降格圏を脱した17位のレガネスがアウェイでバジャドリー戦。ヘタフェは同日、午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)から、コリセウム・アルフォンソ・ペレスでエスパニョール戦というのが今週末のマドリッド勢の予定ですが、来週はどのチームもコパ32強対決2ndレグがミッドウィークに控えていますからね。そろそろローテーションもありそうですが、ボルダラス監督が果たして柴崎岳選手を招集してくれるか、ちょっと気になりますね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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