どちらも首位にはなれなかった…/原ゆみこのマドリッド

2018.11.27 12:00 Tue
▽「CLの方がずっと気楽だわ」そんな風に私が溜息をついていたのは月曜日、ミッドウィークのグループリーグ5節前にマドリッドの両雄の状況を確認していた時のことでした。いやあ、前節に決勝トーナメント進出を決めたバルサ程、余裕な訳ではないですが、どちらも3位とは勝ち点5差がありますからね。レアル・マドリーなど、ローマに勝てば首位突破が決まりますし、アトレティコも1位なれるかどうかはともかく、モナコに勝てば16強入りは確定。引き分けでも最終節で何とかなるとなれば、あまり肩に力を入れることもないんですが、まあそれは置いておいて。とにかく頭が痛かったのは先週末のリーガだったんですよ。
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▽え、先陣を切った弟分のレガネスは金曜の夜、冷たい風が吹きつけるブタルケで見事に白星を掴んだんだろうって? その通りでゴールは前半42分、ニヨムのクロスをジョナタン・シウバが折り返し、エン・ネシリが決めたものだけだったんですが、ペレグリーノ監督は5人DF制を敷いて、2位グループに入っていたアラベスの反撃をシャットアウト。1-0という渋い勝利でしたが、おかげで2カ月間程、浸っていた降格圏をとうとう脱出することに。おまけに日曜にはお隣さんのヘタフェがサン・マメスで引き分けくれたため、アスレティックと勝ち点2差の17位で土曜のバジャドリー戦まで過ごせるとなれば、きっと選手たちもホッとしているに違いません。▽ただ、そのヘタフェの試合の結末は不満の残るもので、いえ、先制したのは後半22分にノラスコアインがヘッドを決めたアスレティックだったんですけどね。32分にアマトの撃ち損じたシュートをマタが同点ゴールに変えた後、彼らにはロスタイム終了直前にCKのチャンスが到来。この時、イニゴ・マルティネスがマタに絡みついて倒したプレーはどう見てもペナルティだったんですが、主審がそこでタイムアップを宣告し、VAR(ビデオ審判)による判定もないってあんまりじゃない? シュートを邪魔されたマタなど、猛抗議してイエローカードをもらっていましたが、これでヘタフェは3試合白星なし。次戦、土曜のエスパニョール戦ではコリセウム・アルフォンソ・ペレスでファンと勝利を喜べるといいのですが。
▽そして最後の弟分、ラージョは土曜のバレンシア戦で3-0と完敗。サンティ・ミナの2発とガメイロのゴールで沈み、この火曜にはCLグループ生き残りを懸け、レアル・マドリー時代の得点ペースが戻って来たクリスチアーノ・ロナウドのいるユベントスにアウェイで挑む相手に今季リーガ戦ホーム初勝利で自信をつけてあげているんですから、太っ腹なのも程々にしないと。おまけにこれで残留圏まで勝ち点6に差が開いてしまった彼らはこの金曜も苦労することが確実。というのも、大金星で意気上がるエイバルをエスタディオ・バジェカスに迎えるからなんですが…はい、その責任は兄貴分にあります。

▽そう、何とイプルアでソラリ新監督効果がいきなり雲散霧消してしまったんですよ。いえ、前半15分、CKからセバージョスのシュートが弾かれて始まったエイバルのカウンターアタックがはまり、ククレラが敵陣前まで走り上がるとキケ・ガルシアにラストパス。このシュートはGKクルトワが弾いたものの、セバージョスがクリアできず、エスカランテに先制点を奪われてしまった時は代表戦週間前、4連勝していたマドリーだけにまだ、私も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)のTVの前でゆっくり構えていたんですけどね。ベイルやベンゼマ、そしてアセンシオもいながら、まったく攻撃が振るわず、後半6分にはオドリオソラが自陣エリア近くでボールをククレラに取られてしまうという最悪のミスが発生。そこからエンリッチの2点目に繋がり、当のオドリオソラもケガをしてカルバハルに交代って、どうにも嫌な流れじゃないですか。
▽実際、更に守備の崩壊は続いてその5分後、またしてもククレラからエンリッチは撃てなかったものの、キケ・ガルシアが押し込んで3-0にされたとなれば、もうどうしていいのやら。うーん、その後はクラシコ(伝統の一戦、バルサ戦のこと)、ベルギー代表のスイス戦に続き、1カ月で3度もmanita(マニータ/5失点のこと)を喰らってなるものかという気迫をクルトワが見せ、オレジャナやチャルレスのシュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)してくれたため、それ以上のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)は避けられましたけどね。戦況を変えるため、途中出場したイスコやビニシウスも焼け石に水、そのままマドリーは1点も返せず、負けてしまうことに。

▽え、その日は全てのゴールに絡む大活躍、エイバルにマドリー戦11試合目で初勝利をもたらした左ウイング、ククレラって、何者なんだって?いやあ、私も知らなかったんですが、彼はバルサのカンテラ(バルサB)出身で今季はバルベルデ監督の構想に入らなかったため、レンタルで修行に出た本職は左SBの選手。大先輩のプジョールやダビド・ルイス(チェルシー)に憧れて、あのようなアフロヘアをしているようですが、そこはまだ20才ですからね。「Es un chaval que ni es rapido, que ni es fuerte/エス・ウン・チャバル・ケ・ニー・エス・ラピドー、ケ・ニー・エス・フエルテ(素早い訳でも強靭な訳でもない子)だが、彼はそれ以上。賢いし、偉大なサッカー選手だ」とメンディリバル監督も褒めていましたが、この先、どこまで成長してくれるのか、ちょっと気になりますね。

▽一方、マドリー側はこの敗戦の原因について割れていて、先日、デア・シュピーゲル誌にドーピング検査で違反物質が発見された件や検査前に禁止されているシャワーを浴びてしまった件が掲載。それに対して、非合法なことは何もしていないとコメントする必要もあって、ミックスゾーンで喋ったセルヒオ・ラモスは「Cuando no tienes actitud todo es mas dificil/クアンドー・ノー・ティエネ・アクティトゥッド・トードー・エス・マス・ディフィシル(真摯な姿勢で挑まない時はずっと難しい)。意志やプレーの激しさ、リズムで相手と拮抗しないとこういったことが起きる」と、ボール争いのバトルでまったくエイバルの選手たちに勝てなかった自らの不甲斐なさを反省。

▽それに対して初黒星を喫したソラリ監督は、「No ha habido falta de actitud, los futbolistas trabajaron todos/ノー・ア・アビードー・ファルタ・デ・アクティトゥッド、ロス・フトボリスタス・トラバハロン・トードス(挑む姿勢が足りなかったということはない。選手たちは皆、働いていた)」と庇っていたんですが、何せバランなど、試合終了直後のピッチインタビューで、「Hay un problema colectivo/アイ・ウン・プロブレマ・コレクティーボ(チームとして問題がある)」と全体的な機能不全を訴えていましたからね。実際、不振が続いて解任されたロペテギ監督とソラリ監督、それ程、戦術的に違いがある訳ではなく、プレーする選手たちは同じですからね。監督交代のリフレッシュ感がなくなった後、元の状態に戻ってしまうのは仕方ない?

▽そうは言ってもまだシーズンは長いんですし、3連覇している得意の大会、CLを迎えるんですから、ここは選手たちも気合を入れ直してほしいところかと。月曜にはナチョ、カセミロ、そしてヒザの治療をしているGKケイロル・ナバスにオドリオソラも加わった負傷者陣をマドリッドに残し、イタリアに発ったマドリーですが、ローマ戦のキックオフは火曜午後9時(日本時間翌午前5時)。この相手にはグループリーグ1節で3-0と快勝している上、向こうはエースのジェコの出場が微妙だそうですから、ここまでリーガ13試合で19失点というザル守備を改善するためにも、まずは無失点勝利を目指すといいかもしれませんね。

▽そして土曜の夜はワンダ・メトロポリターノにバルサ戦を見に行った私だったんですが、何だか全然、パッとしない試合だったんですよ。いえ、ファンはこの新スタジアム初のスタンド全面モザイクを用意し、「Eres de Espana aureola y del futbol el coloso/エレス・デ・エスパーニャ・アウレオラ・イ・デル・フトボル・エル・コロソ(君たちは後光差すスペイン、サッカーの巨人だ)」という大横断幕も首位決戦前の雰囲気をこれ以上はないぐらいに盛り上げてくれたんですけどね。いざ、ボールが走りだしてみると、アトレティコはもちろんのこと、相手までが4-4-2の陣形を使い、セルジ・ロベルト、ブスケツ、アルトゥール、アルトゥーロ・ビダルの4MFで中盤を固めているって、そりゃあ、コケも後で「Era un partido de 0-0, no pasaba nada/エラ・ウン・パルティードー・デ・セロ・セロ、ノー・パサバ・ナーダ(0-0の試合だった。何も起きなかったよ)」と言っていたように、チャンスなんて滅多に生まれませんって。

▽といってもアトレティコファンは前半スコアレスドローには慣れっこなので、ハーフタイム入り前にセルジ・ロベルトが左太ももを負傷。全治3週間となって、後半からラフィーニャが出て来るのを静かに見守っていたんですけどね。ボールポゼッションも少なく、唯一、カウンターからグリーズマンが抜け出るのに成功した15分、ゴール前へのキラーパスをピケに阻まれ、ジエゴ・コスタが撃てなかった時には、それこそ失望感がスタンドに広がったものでしたが、いえいえ、待てば海路の日和ありです。35分に初めてアトレティコがCKをゲットしたところ、そのちょっと前から交代を頼んでいたコスタがラフィーニャより頭一つ高く跳んでヘッド。これが決まったから、どんなにファンたちが歓喜したことか!

▽でもねえ、今季の彼らはあまり1-0で逃げ切ることができないんですよ。リードしてすぐ、今季ようやくリーガ初ゴールを挙げたコスタがコレアに代わる傍ら、バルベルデ監督はデンベレを投入。敵がパススピードをアップして猛攻体勢に入る中、どうやらこの選手、代表戦週間前も徹夜でゲームをしていて練習に来られなかったり、それで招集されなかったベティス戦でもカンプ・ノウにキックオフ後に着いたりとピッチ外のトラブルばかりが注目されるため、ついつい試合では敵方も無警戒になってしまうんでしょうかね。先日のラージョ戦でも終了間際、気がつくとフリーでエリア内左に出現、バルサの逆転勝利に繋がる同点ゴールを決めていましたが、この日も後半45分、メッシのスルーパスを受け、誰にも邪魔されずにGKオブラクとリュカの股間を破るシュートを放たれてしまってはねえ。

▽結局、そのまま1-1で引き分けたアトレティコでしたが、これでシメオネ監督は8年連続、リーガのバルサ戦で勝利できてないことに。当人はまるで引き分け狙いのような戦術を問われ、「Competimos de la misma manera desde hace siete anos y es dificil que nos cambien/コンペティモス・デ・ラ・ミスマ・マネラ・デスデ・アセ・シエテ・アーニョス・イ・エス・デフィシル・ケ・ノー・ノス・カンビエン(7年前から同じ方法で競っていうから、変えるのは難しい)」と言っていましたけどね。その辺は本当に、「アトレティコはもっと攻撃に出られるだけの選手がいるけど、シメオネ監督流で成功してきたんだから、変えないよね」というジョルディ・アルバの言葉通りかと。

▽それでも試合後、ブスケツに「El Atletico plantea los partidos asi/エル・アトレティコ・プランテア・ロス・パルティードス・アシー(アトレティコはああいう風に試合をプランニングする)。あまり楽しめないけど、そういう考えなんだから、リスペクトしないと」と皮肉られたのに、「Siempre que juego al futbol me divierto/シエンプレ・ケ・フガール・アル・フトボル・メ・ディビエルト(サッカーをプレーする時、ボクはいつも楽しいよ)」というコケの屈託のない発言を聞くと、そうか、あんな展開でも楽しいとは幸せで羨ましいなんてつい、私も思ってしまいますけどね。

▽確かに今季は失点が多いバルサもこの日は手堅く守っていたため、試合を通じて両チームのシュートは3回だけ、アトレティコはゴールになった1回だけとなれば、どっちもどっちだったんですが、負傷者に関しては向こうの方がババを引いたかと。ええ、試合前から足が痛かったコスタが交代しただけのアトレティコに比べ、バルサは途中出場で最後までプレーしたラフィーニャが試合後、ヒザの靭帯を断裂していたことが発覚。更に月曜にはルイス・スアレスもヒザの痛みで全治2週間、アルトゥールも左太ももの筋肉痛で水曜のCL5節、PSV戦に出られないんですから、まったくツイていません。

▽いえ、水曜午後6時55分(日本時間翌午前2時55分)から、再びワンダにモナコを迎える彼らもコスタの回復は微妙、ゴディンとヒメネス、そしてファンフランは間に合わないというハンデはあるんですけどね。それでも相手は先週末、カーンにファルカオのFKゴールで0-1と、アンリ監督になって初の勝利を掴んだというのはあるんですが、CLではすでにグループリーグ敗退が決定。それだけに必死感は薄れているため、もしかしたら前節、2-0で勝ったドルトムント戦のような、勇敢なアトレティコが見られる可能性もある?リーガではバルサとの差は勝ち点1で変わらず、漁夫の利で首位をバジャドリーに勝ったセビージャに持っていかれたとしても2差で3位のままの彼らですから、今週はとにかく、CLグループ突破をしっかり決められるといいですよね。

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