もう漁夫の利を祈るしかない…/原ゆみこのマドリッド

2018.11.17 11:30 Sat
▽「これじゃ、日曜は落ち着かないでしょうね」そんな風に私が同情していたのは金曜日、クロアチア戦を前夜に終えたスペイン代表がボスニア・ヘルツェゴビナとの親善試合を行うラス・パルマス(カナリア諸島)に到着したというニュースを見た時のことでした。いやあ、予定通り勝っていれば、この夏のW杯で代表を引退した地元出身のシルバ(マンチェスター・シティ)を始球式に迎え、来年6月のネイションズリーグ・ファイナルフォーの対戦相手が決まるのを待ちつつ、ファンも今年最後の彼らのプレーをゆるりと楽しめるはずだったんですけどね。
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▽それが自業自得とはいえ、ザグレブで負けてしまったため、スペインがグループ1位になれるよう、同日午後3時(日本時間午後11時)から、ウェンブリーでキックオフするイングランドvsクロアチア戦を「Sólo podemos ver el partido y esperar que empaten/ソロ・ポデモス・ベル・エル・パルティードー・イ・エスペラル・ケ・エンパタモス(試合を見て引き分けることを期待するしかできない)」(モラタ/チェルシー)とは情けない。リーグBのグループで首位を確定させ、次回はリーガAに昇格することを決めたボスニア・ヘルツェゴビナとの対戦は午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)となれば、おそらくチーム全員、ホテルでお昼ご飯を食べながら、TV観戦するんでしょうが、結果如何でエスタディオ・グラン・カナリアに向かう気分が大きく違うのは確かかと。▽まあ、イグランドが勝ってもクロアチアが勝ってもスペインは2位、リーグB降格にはなりませんし、ファイナルフォーに行ったとしても来年3月から、2020年ユーロの予選があるのは同じですからね。初招集でまだデビューしていない選手もいるため、ルイス・エンリケ監督が大幅なスタメン変更をするかもしれませんし、代表で定位置を確保したい選手たちなどは頑張ってくれるはずですが、さて。せっかく最近、マドリッドの両雄が元気になってきたというのに相変わらず、スペイン代表がパッとしないのはどうにも残念ですよね。
▽え、それでスペインが9月に6-0で大勝していたクロアチアの逆襲に遭ったマキシミール・スタジアムでの一戦はどんな様子だったのかって?いやあ、ようやくルイス・エンリケ監督が心を入れ替え、ジョルディ・アルバ(バルサ)を招集したため、左SB問題は解決したんですが、カルバハル(レアル・マドリー)がまだ呼べなかったため、右SBまで、当人がかつてバルサでダニエル・アウベスの移籍で人材不足になった折、重宝したマルチプレーヤーのセルジ・ロベルトを先発させるのは、私もどうかと思ったんですけどね。

▽序盤からそのサイドを攻められて、ペリシッチ(インテル)に3度も好機を与えていたものの、幸い得点には至らず。おそらく、試合前にサッカー協会から表彰を受けていたマンジュキッチ(ユベントス)などは自分がピッチにいたらという悔しい思いもしたかもしれませんが、クロアチアの激しいプレスになかなか、攻撃のチャンスが掴めなかったスペインもハーフタイムが近づくにつれ、サウール(アトレティコ)やイスコ(マドリー)がシュートをするように。いえ、クロアチアのキャプテン、モドリッチとセバージョスがマドリーの同僚でありながら、体を張ったプレーで揉めていたのは、バルサのラキティッチとジョルディ・アルバもやっていたから、別にいいんですけどね。
▽モドリッチに言わせると、「Es parte del fútbol. Defiende su país y yo el mío/エル・パルテ・デル・フトボル。デフィエンデ・ス・パイス・イ・ジョ・エル・ミオ(サッカーの一部だよ。彼は自分の国を守って、ボクはボクの国を守る)。そういうのはピッチ内だけのことで、後は挨拶して終わりさ」だそうですから、まあ気にすることはないんですが、まさか両者無得点のまま始まった後半があんなゴールの奪い合いになるとは、一体、誰に予想できた?

▽まずキッカケを与えたのはセルジ・ロベルトで、自陣からボールを出そうとして送ったパスがペリシッチに当たってクラマリッチ(ホッフェンハイム)へ。そのままエリア内に持ち込まれ、GKデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)が1対1で破られてしまったから、さあ大変!ただこの時は2分もしないうちにイアゴ・アスパス(セルタ)、イスコ(マドリー)とのコンビプレーでセバージョスが同点ゴールを入れてくれたため、大事にはならなかったんですが、24分のセットプレーからの失点は赤っ恥ものでしたねえ。そう、短いCKから始まり、モドリッチが左サイドからクロスを上げたところ、ゴール前右で待ち構えていたイェドバイ(レバークーゼン)がヘッドで決めたんですが、彼がまったくのノーマークだったなんてこと、あっていいんでしょうか。

▽うーん、確かにルイス・エンリケ監督になってから、ピケ(バルサ)の代表引退した穴を埋めるため、セルヒオ・ラモス(マドリー)とコンビを組むCBはキャスティング状態になっていたんですけどね。今回はラス・ロサス(マドリッド近郊)にあるサッカー協会施設での非公開練習もたった2回だけと、先発したイニゴ・マルティネス(アスレティック)はそれなりによくやっていましたが、もしやセットプレー時の守備など、細かいところの打ち合わせをする時間がなかった?

▽でも大丈夫、今季バレンシアでまだ1ゴールと不調のロドリゴがアセンシオ(マドリー)に代わり、次にアスパスと交代でピッチに入ったモラタ(チェルシー)のゴール前からのヘッドは「no he podido marcar porque no he visto muy bien el balón por los focos/ノー・エ・ポディードー・マルカル・ポルケ・ノー・エ・ビストー・ムイ・ビエン・エル・バロン・ポル・ロス・フォコス(照明のせいでよくボールが見えなくてゴールにできなかった)」という理由で決まらなかったものの、32分には元アトレティコのベルサイコ(インテル)がゴール前でハンドをしてくれたんですよ。モドリッチがGKカリニッチ(ヘント)にアドバイスしていたのを逆手に取ったか、ラモスがパネンカ風(緩いボールを正面に蹴る)でないPKを決め、スペインは再び追いつくことに。

▽その後も勝利を求めて攻めていった彼らだったんですが、夏のW杯でまたしても16強で敗退したスペインと違い、クロアチアが準優勝したのは決してダテではなかったんですねえ。いよいよ時間はロスタイム、またしてもイェドバイのマークができず、ブレカロ(ボルフスブルク)のシュートこそ、デ・ヘアが弾いたものの、ゴール前からそのボールを撃ち込まれているって、もしやその瞬間、イニゴ・マルティネスなど、前節、土壇場にゴディンの決勝点でアトレティコに勝ち点3を奪われたワンダ・メトロポリターノでのリーガ戦を思い出していたかも。ええ、アスレティック同様、残り少ない時間でスペインもこの3点目を返すことはできず、3-2で負けてしまいましたっけ。

▽実際、試合後はモドリッチなども「Me siento mejor día a día/メ・シエントー・メホール・ディア・ア・ディア(自分は日々、いい感じがしてきている)。W杯の後、早めに戻って、プレシーズンのトレーニングなしでは調子を上げるのが大変なのは普通だよ」と言っていましたしね。シーズン開幕直後、エルチェ(スペイン南部)であった対戦でgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らったのは、同様に他の選手もまだメンタルやフィジカル的に回復していなかったせいで、決して強いスペインが復活したのではなかったことがこうまで露わになってしまうんですから、ガッカリじゃないですか。

▽おまけにこの試合を見れば、月曜にマドリーと2021年までの正式契約を結んだソラリ監督が暫定期間中の4試合であまりイスコとアセンシオを使わなかったのも納得ですし、世間では正GKがデ・ヘアでいいのかという問題も再燃。2016年のユーロ以来、ご無沙汰しているカシージャス(ポルト)代表復帰の議論まで起きているって、何だか凄いんですが、うーん、だからって、ルイス・エンリケ監督が「Me encantaría estar en la fase final, pero el objetivo es la Eurocopa/メ・エンカンタリア・エスタル・エン・ラ・ファセ・フィナル、ペロ・エル・オブヘティボ・エス・ラ・エウロコパ(ファイナルフェーズに行けたら嬉しいが、目標はユーロだからね)」といきなり、話をすり替えていたのもどうかと。

▽もちろん今はスペインも世代交代中の過渡期でイロイロ、大変なことがあるのもわかりますけどね。せっかく9月の2連勝で盛り上がりながら、10月、11月の連敗で水を差されたように、これこそランキング上位チーム同士がグループで対戦するネイションズリーグの難しさ。大概が格下相手の予選をほぼ全勝状態で本大会に進出、そこでいきなり現実を見せられていた国際メジャートーナメント、ここ3回のことを思うと、今のうちにボロが出る方が修正する時間がとれるといった意味ではいいんでしょうが、はあ。太ももの筋肉痛があったラモスがラス・パルマスには行かず、早帰りしてしまったボスニア・ヘルツェゴビナ戦では一体、誰がCBをやるんでしょうかね。

▽そしてマドリッドのクラブの話も伝えておくと、この水曜には降格圏組のラージョとレガネスが親善試合を開催。結果は吉凶混合で前者はスイスのグラスホッパーにベベのゴールとアレックス・アレグリアの2得点で3-1と勝利し、バジェカ杯を掲げたものの、私が見に行ったブタルケは外れでした。ええ、夏のプレシーズンマッチでは1-1と引き分けていた2部の弟分、アルコルコンにこの日は3点を奪われ、得点は終盤、グンバウが決めたPKだけで1-3の負けって、いやあ、相手は現在、昇格圏の2位にいて勢いに乗っていますからね。とはいえ、このままいくと、来季のマドリッド勢1部弟分はレガネスとアルコルコンが入れ替わっているなんてこともある?

▽そんな中、身内だけで済ませてしまったのはマドリーで、木曜にはバルデベバス(バラハス空港の近く)の施設でRMカスティージャと練習試合。ソラリ監督にしてみれば、どちらのチームも自分の教え子たちですが、これにはケガの治ったマリアーノ、マルセロ、カルバハルが出場していたそう。前節のセルタ戦はまだ出られなかったバランも金曜にロッテルダムで2-0と負け、来週月曜の試合ですでに降格の決まったドイツがオランダに勝ってくれないと、1位の座を奪われてしまうという、スペイン以上に厄介なことになったフランスのCBとしてフル出場していましたし、バライドス(セルタのホーム)では足首を腫らしていたベイルも勝利には繋がらなかったものの、デンマーク戦でウェールズの1点を挙げていますからね。

▽ラモスもマドリッド到着早々、リハビリに励んでいますし(https://www.instagram.com/p/BqPeov-lE9p/)、まだインターナショナルマッチウィークは終わっていないため、残り10人の各国代表選手たちが全員、元気に戻って来るという保証はできないものの、今のところ、来週末のエイバル戦での欠場確定はナチョ、カセミロ、バジェホぐらいになるでしょうか。

▽え、ケガ人といえば、4人のCBが全滅していたアトレティコはどんな按配なのかって?それが今週は朗報もあって、金曜にはヒメネスとリュカがマハダオンダ(マドリッド近郊)のグラウンドに姿を現し、後者は別メニューながら、もうボールを蹴っていたとか。代表に呼ばれず、居残り組のジエゴ・コスタはアスレティック戦で足を痛めたとはいえ、軽傷のようですし、コケとレマルも全体練習に加われるようになりましたしね。

▽来週土曜にはわざわざ、このparon(リーガの停止期間)中にピッチの張替えをして、いやあ、ファンフランなど、「Hasta Xavi querría jugar en este césped/アスタ・チャビ・ケリア・フガール・エン・エステ・セスペッド(あのチャビだって、この芝ならプレーしたがるはず)」とよく文句を言っていた現在アル・サッドでプレーする元バルサの司令塔を冗談の引き合いに出していましたけどね。そんなワンダ・メトロポリターノに首位チームを迎えるとあって、心配も大きかったんですが、サウール、ロドリ(スペイン)、グリーズマン(フランス)、フィリペ・ルイス(ブラジル)、コレア(アルゼンチン)、トマス(ガーナ)ら、各国代表組が何事もなく帰還してくれれば意外と期待が持てるかと。

▽そして特に親善試合もなかったヘタフェも含め、この週末はマドリッドの5チームも皆、練習はお休み。来週末にリーガが再開すると、12月23日にクリスマス休暇に入るまで7節もありますからね。まだ上位も下位も団子になっている順位表もここを過ぎると結構、差がつく可能性があるため、どのチームも来週は気合を入れて、試合の準備をしてもらいところです。

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