見事に玉砕してしまった…/原ゆみこのマドリッド

2018.10.30 13:30 Tue
▽「雇われの身は辛いわねえ」そんな風に私が憐れんでいたのは月曜日、クラシコ(伝統の一戦)でバルサに大敗し、解任確実と報じられながら、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場での午前中のセッションをロペテギ監督が指導していたとお昼のニュースで知った時のことでした。いやあ、当人もすでに覚悟を決め、試合後のカンプ・ノウのロッカールームでは選手たちに別れの挨拶をしたなんて話も伝わっていたんですけどね。レアル・マドリーの理事会が午後6時半からだったため、それまで正式な結論が出ず、仕方なく、彼が最後のお勤めを果たしたようですが、まあこれも給料のうちと言っていいかも。
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▽結局、午後9時過ぎにはクラブからコムニカードー・オフィシアル(公告)が出て、ロペテギ監督の解任とRMカスティージャを率いるソラリの暫定監督就任が発表になったんですが、ちょっと片すかしだったのは前夜のスポーツ番組で月曜にはサンティアゴ・ベルナベウでプレゼンがあるかもしれないと散々、言われていたため、私も外出するつもりでいたんですけどね。どうやら、第1候補だったコンテ監督の招聘に支障が生じたようで、それも選手たちがmano dura/マノ・ドゥーラ(厳しい)指導者は嫌だからというのでは少々情けないんですが、契約年数の問題とかもあって、次は水曜午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)からのコパ・デル・レイ32強対決メリージャ(2部B)戦1stレグですし、当面はソラリ監督で繋ぐことになったのだとか。▽まあ、そんなマドリーについてはまた後で話すとして、とりあえず、この週末のマドリッド勢の試合を順々にお伝えしていくことにすると、土曜に先陣を切った弟分チームはどちらもアウェイでいい結果を持ち帰れず。ええ、お昼にジローナと対戦したラージョは前半、ポルトゥに2点を奪われ、後半には敵に先制点を与えるPKを献上したガルベスが罪滅ぼしとばかりにゴールを決めたんですが、あと1点が及ばず、2-1で負けています。そしてシュタット・デ・バレンシアでレバンテに挑んだレガネスも、夕方には雨が降ることがわかっていた地元チームの戦略にはまり、序盤にロジェールに先制ゴールを決められると、足場の悪い中での反撃は思うように行かなかったよう。残り4分にもロチーナに追加点を奪われ、最後は2-0で完敗してしまうことに。
▽おかげで変わり映えなく、レガネスが18位、ラージョが19位と仲良く降格圏を維持した両チームだったんですが、いやあ、ホントにこんな時に迷惑ですよね。週末はどちらもホームにそれぞれ、兄貴分のアトレティコ、首位のバルサという強敵を迎えるというのに、この火曜にはコパ・デル・レイ32強対決でミニダービーって一体、何の罰ゲーム?ブタルケで行われる1stレグは午後8時30分からのキックオフ、2節前のリーガでの対戦ではレガネスがカリージョのゴールで1-0と勝っていますが、ペレグリーニ監督もミチェル監督も本音のところ、コパはパスして、まだ残留ラインとの勝ち点差が少ないうちに順位を上げたいと思っているんじゃないでしょうか。

▽そして夜にはワンダ・メトロポリターノに向かった私でしたが、ここ最近のマドリッドの寒いことといったら!一気に真冬の気温に突入してしまったため、これから観戦を予定している方はまだ10月だからとか思わず、防寒対策をしっかりしてスタジアムに行くことをお勧めしますが、先週はCLドルトムント戦で4-0という、シメオネ監督就任以来、最悪の大差負けをしてしまったチームをアトレティコのファンたちは決して見捨てず。それどころか、このレアル・ソシエダ戦ではいつも以上に応援に熱が入っていた感じがしましたが、となれば、選手たちだって頑張らない訳にはいかない?
▽ただ、そうは言ってもグリーズマン、ジエゴ・コスタが相変わらずパッとしないせいか、なかなか点は取れなかったものの、8回もあったCKのチャンスも利用できず、0-0のままでハーフタイムに入るのかと思われたところ、キャプテンが意地を見せてくれたんですよ。セットプレーから回り回ったボールをエリア内右奥からコレアがゴール前に折り返し、ラウール・ナバスのクリアミスをゴディンがシュート。これがGKモヤを破り、先制点と共に「Nos ha penalizado mucho el gol en el ultimo minuto/ノス・ア・ペナリサードー・ムーチョ・エル・ゴル・エン・エル・ウルティモ・ミヌート(45分のゴールはウチに大きな打撃を与えた)。リードされてしまったし、心理的にもダメージがあった」(モヤ)という状態で後半をスタートできることになったから、寒風に耐えていたファンたちもどんなに力づけられたことか。

▽15分経ってチームが戻って来た時には足に痛みのあったリュカがフィリペ・ルイスに代わっていたんですが、この交代も吉と出ました。そう、ジグナル・インドゥナ・パルクでゲレイロにドルトムントの4点目となるゴールを贈り、GKオブラクにアトレティコでは経験したことのなかったgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)の辱めを味合わせてしまったことを深く反省したらしい左SBは16分、エリア内から右足で対角線上のゴールネットにボールを突き刺し、「Con el 2-0 se ha acabado el partido/コン・エル・ドス・セロ・セ・ア・アカバードー・エル・パルティードー(2-0でゲームは終わった)」(ガリターノ監督)と敵をギブアップさせているのですから、決してベテランを侮ることなかれ。

▽敵が疲れるところまで粘り、そこからフアンミやサンドロら、スピードのあるFWを投入して点を挙げようとしたガリターノ監督の作戦が見込み違いに終わったこともあって、そのまま危なげなく勝利したアトレティコでしたが、こうなると、あのドルトムント戦は「Fue un accidente/フエ・ウン・アクシデンテ(事故だった)」とコケが言っていたのはただの強がりじゃなかった?いえ、「1点目を取った後、ビジャレアル戦でのように1歩下がる代わりに、ボクらは2点目を求めた」(コケ)なんて聞くと、どうして今までその、新たなアトレティコのお家芸となりかけている悪癖に気がつかなかったんだと、突っ込みたくならなくもないんですけどね。

▽実際、こんな彼が「Tacticamente, seguramente, es el major/タクティカメンテ、セグラメンテ、エス・エル・メホール(戦術的にはおそらく一番いい)」(シメオネ監督)というチームですから、あまり高望みをするべきではないんですが、この日のコケとロドリのボランチコンビがいい働きをしていたのは誰もが認めるところ。それもどうやら監督によると、アトレティコがポゼッション的に優位に立てる相手限定のようですけどね。加えて出場停止だったフアンフランの代わりに右SBで先発したアリアスがようやく合格点をもらえたなど、収穫はあった試合でしたが、残念ながら、この勝利で土曜の夜に5位からジャンプアップして手に入れた首位の座は単なる1日天下に。

▽ええ、翌日曜に勝ったアラベスやセビージャに抜かされ、4位と下がってしまったからですが、まあそれでも首位まで勝ち点差2ですからね。火曜午後9時30分(日本時間翌午前5時30分)からのコパ32強対決サン・アンドレウ(2部B)戦1stレグにはオブラク、ゴディン、コケ、サウール、グリーズマン、コスタがお休みをもらい、ヒメネスとリュカはリハビリ中。カリニッチ、ビトロ、ジェルソンら、今季まだあまりプレー時間のない選手たちやカンテラーノ(アトレティコBの選手)6人の力で何とかするようですが、この土曜にはレガネスとのミニダービー、そして来週火曜にはCLでワンダにリベンジを期してドルトムントを迎えるとなれば、ある程度、ローテーションがあるのは仕方ないところでしょう。

▽そして日曜の部ではまず正午にコリセウム・アルフォンソ・ペレスに赴いた私でしたが、これは相手のベティスがサン・シーロでヨーロッパリーグのミラン戦を木曜に戦い、休む時間があまりなかったのが幸いしましたかね。さすがミラノに7000人ものファンが応援に駆けつけただけあって、この日も多くのverdiblancos(ベルディブランコス/ベティスファンのこと)がスタンドで歌っていましたが、セティエン監督がスタメンを8人代えた効果はあまりなかったよう。チャンスもピンチも大してなかった前半が終わり、後半になると、ヘタフェが15分にアンヘルのゴール前へのラストパスをホルヘ・モリーナが古巣恩返し弾、その2分後にはフルキエが敵DFを縫って2試合連続のゴールを挙げ、そのまま2-0で勝利することに。

▽ちなみにこの試合、柴崎岳選手はベンチにいたものの、後半にもアップする姿は見られず、ベティスの乾貴士選手もミラン戦に続いて出番がもらえなかったのは、日本から来た女性ファンの姿も見られただけにちょっと気の毒だったかと。うーん、ミックスゾーンで止まってくれた乾選手は「コパでは主力の疲れも考えないといけないし、チャンスはあると思う。そこでしっかりアピールしていく」と前向きだったんですけどね。もう8試合も出場がない柴崎選手とも互いの苦境を話し合ったりしたと言っていましたが、ベティスは木曜にラシン(2部B)戦、ヘタフェは水曜にコルドバ(2部)戦。こういう試合を足掛かりに両人ともプレー時間を増やすことができるといいですね。

▽え、ここまで来たら、もう悪夢のクラシコの話からは逃げられないだろうって?はあ、その通りでヘタフェ(マドリッド近郊)から急いでセルカニアス(国鉄近郊路線)で戻り、キックオフ30分前には近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に行って席を確保した私だったんですけどね。前腕骨折のメッシも先日のCLインテル戦に続き、息子のティアゴ君を連れて、ベンチ近くのスタンドに座っていましたし、何よりどんなに不調の時でも結果読めないのがクラシコ。ここずっとゴールのないベイルやCLビクトリア・プルゼニ戦で久々に得点したベンゼマだって、きっと宿敵を前に発奮してくれるはずと信じていたんですが…。

▽彼らの病状はそんな軽いもんじゃなかったようです。だってえ、前半11分にはジョルディ・アルバに左サイド突進を許し、折り返しでノーマークのコウチーニョに先制点を決められているんですよ。おまけに34分にはバランがエリア内でルイス・スアレスを倒したプレーがVAR(ビデオ審判)に見咎められ、PKで2-0にされたとなれば、もうどうしたらいいものか。

▽ただそれでも後半のマドリーは心を入れ替え、ケガしたバランに代わりに右SBにルーカス・バスケスを入れて、ナチョ、カセミロ、セルヒオ・ラモスで3CB体制を敷いたのも良かったんでしょうね。6分にはイスコがエリア内奥から出したパスをマルセロが決め、1点差に迫ったんですが、まあこれはドルトムント戦の後半、サウールのシュートがゴール枠に当たったりして、しばしアトレティコが盛り返した時同様、過度の攻撃は相手のカウンターを招くんですよ。実際、モドリッチのエリア外からの一撃がポストに阻まれたマドリーは30分、セルジ・ロベルトのクロスをルイス・スアレスが完璧な軌道を描くヘッドでゴールにして3点目を奪われ、止めを刺されることに。

▽それでも彼らはアトレティコと違い、根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)体質だしと、一縷の希望は捨てていなかったんですが、36分にここ3試合連続でゴールを挙げているマルセロがまた負傷で交代してしまってはねえ。FWマリアーノを入れ、ベイルと代わっていたアセンシオが左SBという時点でもう、守備は捨てている感じがしましたが、でもだからって、その直後、キャプテンのラモスのミスからセルジ・ロベルトがガラ空きの前方にパス。それを追ったルイス・スアレスに見事なvaselina(バセリーナ/ループシュート)でハットトリックをGKクルトワが喰らってしまったとなれば、もう何と言っていいものやら。

▽おまけに最悪はまだ続き、41分には途中出場したデンベレのクロスからアルトゥーロ・ビダルがヘッドで決めて、バルサは5点目をゲット。いよいよ、これだけは避けたかったmanita(マニータ/5得点のこと)となり、5-1で終わった暁には2010年、モウリーニョ監督時代に5-0で勝った時と同じに、片手を広げて振るパフォーマンスをピケにされてしまっても文句を言う気力すら湧きませんって(https://www.elespanol.com/elbernabeu/futbol/20181028/barca-pique-mofan-manita-madrid-dolorosa-foto/348965647_0.html)。

▽こうなると、ピッチサイドのインタビューに答えたカセミロが「もう自分たちの姿勢とか戦術とか、そんな問題じゃない。全部だ。La temporada esta siendo un desastre, todos estamos jugando muy mal/ラ・テンポラーダ・エスタ・シエンドー・ウン・デサストレ、トードス・エスタモス・フガンドー・ムイ・マル(今季は滅茶苦茶で、皆がとってもひどいプレーをしている)」と切れてしまっていたのも仕方なかったかと。うーん、これで僅かにあった続投の可能性も消失したロペテギ監督は「Hacia los jugadores no tengo ningun reproche/アシア・ロス・フガドーレス・ノー・テンゴ・ニングン・レプロチェ(選手たちに批判するところはまったくない)」と記者会見で言っていましたけどね。

▽月曜のクラブ広告でも監督解任理由を「今年のバロンドール賞にノミネートされている選手が8人もいる高い質のチームでありながら、成績が著しく比例していない」ためとしていましたが、とはいえ、調子というのは水もの。こうも多くの選手のパフォーマンスが昨季より落ちている現状では、誰が次の監督になっても苦労するのは日を見るより明らかかと。かといって、この負けで首位のバルサとはすでに勝ち点差7、順位もここ50年間、ついぞなかった9位という、弟分のヘタフェより下ではあまりに体裁が悪いですしね。クラシコでは結局、スタンド観戦になってしまったビニシウスやRMカスティージャの選手も使われるだろうコパの試合ではソラリ監督に力を発揮してもらうとして、せめて土曜に昇格したばかりながら、6位と大健闘をしているバジャドリーをサンティアゴ・ベルナベウに迎える時ぐらいまでには正式な後任監督が決まってくれるといいのですが。

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