Jに波乱が少ない原因は?/六川亨の日本サッカーの歩み

2018.10.22 18:30 Mon
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©︎CWS Brains, LTD.
▽先週末の日本サッカーは話題の多い一週間だった。まずインドネシアで開催されているU-19アジア選手権で、U-19日本代表はU-19北朝鮮に5-2と圧勝した。前半2点のリードも追いつかれる嫌な展開だったが、後半に入り久保建英が鮮やかな直接FKを決めて勝ち越すと、相手が疲れた終盤にも2点を加えて突き放した。

▽先制点も久保の中央からのドリブル突破で生まれている。よくメッシと例えられるが、右サイドだけでなく、どこからでも攻撃を仕掛けられる久保のプレーはマラドーナに近いかもしれない。今日はタイと対戦するが、この試合に勝てば準々決勝進出が決まる。関塚技術委員長が「最強世代」と断言するチームだけに、来夏にポーランドで開催されるU-20W杯の出場権を是非とも獲得して欲しいところだ。

▽オーストラリアでは、メルボルン・VでオーストラリアAリーグのデビューを飾った本田圭佑がヘッドで先制点を奪った。試合はメルボルン・Cに1-2と逆転負けを喫したが、現地での注目度は今後も高まることだろう。練習場は公園のようなところのためオープンなので、日本人ファンも大勢詰めかけてサインをもらっている映像を見た。

▽さて国内に目を移すと、首位の川崎F(勝点60)が神戸に前半3点を奪われながら、後半の猛攻で5-3と逆転勝利を収めた。同日行われた広島対清水戦は広島が0-2で敗れたため、2位広島(勝点56)との勝点差は4。広島は1引き分けをはさんで4敗と失速気味のため、川崎Fがこのまま突っ走り、連覇を達成する可能性が高いのではないだろうか。

▽混沌としているのが残留争いとACLの出場権を獲得できる3位争いだ。前節まで3位だった鹿島(勝点46)が浦和(勝点45)に1-3で敗れたため4位に転落。代わって3位に浮上したFC東京(勝点46)もC大阪(勝点44)に0-1で敗れ、3位に浮上も足踏み状態が続いている。

▽第30節終了現在で、3位のFC東京から8位の清水(勝点43。4位鹿島46、5位浦和45、6位札幌45、7位C大阪44)まで6チームの勝点差は3しかないため、こちらは最終節まで激しいバトルが繰り広げられることだろう(札幌とC大阪、磐田は1試合、名古屋は2試合未消化)。

▽かつてコラムで、スペインやドイツ、イタリア、イングランドら欧州のトップリーグは、毎年同じようなチームが優勝争いをして、ビッグクラブが下位チームに負けるジャイアントキリングは起こりにくいと書いた記憶がある。対するJリーグは、今シーズンも第12節で川崎Fは11位の浦和に負けたり、第25節では17位のG大阪に敗れたりした。

▽こうした波乱の理由をFC東京の長谷川健太監督に聞いたことがある。すると長谷川監督は「まずJリーグは外国籍選手を3~4人しか使えませんが、ヨーロッパのトップリーグの外国人枠は実質無制限のようなものです。このため資金力のあるチームは優秀な外国籍選手をかき集めることができます」とビッグクラブが財政的なアドバンテージを生かしていることが圧倒的な戦力差につながっていると指摘。

▽そして続けて「Jリーグは外国籍選手に加え、アジア枠で韓国やオーストラリア、タイなどの選手を獲得できますが、あとは日本人選手のクオリティーが勝負のカギを握ります。いまの順位がそれを反映しているのではないでしょうか。ただし、日本人選手のレベルにそう差はありません。日本代表や元代表といったいい選手は首都圏のビッグクラブにいる。そうなると外国籍選手の当たり外れ、チームにハマるかどうかで違ってくる。J1リーグも上位の顔ぶれ、下位の顔ぶれは毎年ほとんど変りません」とJ1の現状を分析した。

▽確かに川崎Fは、今シーズン目玉となる補強は齋藤学だけ。それも故障で出遅れたが、それでも小林悠、大島僚太、車屋紳太郎、中村憲剛、大久保嘉人、家長昭博ら代表クラスの選手を揃え、円熟したパス主体のサッカーで勝点を積み重ねてきた。

▽2位の広島は得点ランク首位タイのパトリックが牽引し、3位のFC東京は序盤戦でディエゴオリヴェイラが爆発するなど、外国籍選手がフィットした結果、優勝争いを演じることができた。終盤戦は対戦相手も外国人対策を講じた結果、両チームとも勝点を伸ばせないでいる。

▽今週はルヴァン杯決勝のためJ1リーグは休みとなるが、ラスト4試合、どんなドラマが待っているのか楽しみだ。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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