トントン拍子に進んでいる…/原ゆみこのマドリッド

2018.09.28 11:00 Fri
▽「だからって浮かれていちゃいけないわよね」そんな風に私が気を引き締めていたのは木曜日、あれだけスタートダッシュの失敗を言われていたアトレティコがいつの間にやら、週末のマドリーダービーで勝てば、お隣さんの上に立てることに気づいた時のことでした。いやあ、このミッドウィークのリーガであそこまで彼らに嬉しい目が出るとは神様だって、予想していなかったと思いますけどね。おまけにこの夏、UEFAスーパーカップでもレアル・マドリーを倒したシメオネ監督はここ5年間、サンティアゴ・ベルナベウでのリーガ戦で3勝2分けの無敗としているなんて聞くと、期待でワクワクしてしまうファンも少なくないはずですが、実際、ツキなんていつ離れていくかわかったもんじゃなし。
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▽その辺りを踏まえて、6節のマドリッド勢の試合を伝えていくことにすると、アトレティコより一足早く、火曜午後9時からアノエタでレアル・ソシエダと戦った弟分のラージョは、私がワンダ・メトロポリターノに着いた時間にはバウティスタにより序盤に先制された1点をGKルジのミスから、アドビンクラが返して同点に。更に前半36分にはPKをトレホが沈めて、1-2とリードしていたんですけどね。後半32分にウィリアン・ジョゼにヘッドを決められ、最後は2-2で引き分けることに。▽まあ、アウェイだったため、勝ち点1でも頑張ったと褒めてあげないといけないところですが、彼らにとって正念場となるのは金曜午後9時、次節のエスパニョール戦。ええ、スタンド閉鎖の影響でまだ今季2試合しかしていないエスタディオ・バジェカスではセビージャに1-4、アラベスに1-5と大量失点負けをしていますからね。ルビ監督率いるエスパニョールは先週末、サンティアゴ・ベルナベウでも1失点だけの拮抗したゲームをしていますし、火曜のエイバル戦でも1-0と勝っているため、手強い相手になりそうですが、早くファンに3年ぶりの1部での勝利を見せてあげられるといいのですが。
▽一方、煌々と輝く中秋の名月の下で午後10時からという遅いキックオフを迎えたアトレティコはというと、これが信じがたいことに捕らぬ狸の皮算用が上手く行ったんですよ!そう、土曜のダービーを見越してここまで全試合に出場していたサウールはベンチ、30代のファンフランも招集外で温存し、20歳のカンテラーノ(アトレティコBの選手)、イサークが右SBを務めたんですが、相手のウエスカがあまり攻撃してくるチームでなかったため、その点は問題なし。それどころか、後で「次に大事な試合が控えている時、彼らは早めに勝負を決めにくることは話してあった」と、2004~09年にアトレティコの正GKを務めた、勝手知ったるレオ・フランコ監督にも手が打てない程の効率の良さを発揮したから、私も驚いたの何のって。

▽まずは前半17分、コレアのスルーパスをもらって敵エリア内に入ったジエゴ・コスタが折り返すと、ゴール前に詰めていたグリーズマンが先制点をゲット。続いて29分には、その日は急造右SBをやらされず、本職のボランチで先発させてもらえて発奮したんでしょうかね。トマスがエリア外から狙って追加点を奪うと、早くも3分後、コケが山なりのクロスを送ったところ、GKウェルネルがコレアに目を眩まされて触れず、そのままボールはネットに収まることに。いやあ、このプレーにはコレアのオフサイド疑惑があったため、VAR(ビデオ審判)で確認されるまで、選手たちも喜ぶのを待たなければいけなかったなんてこともあったんですけどね。前半で3-0となれば、もう大手を振るって、選手温存していいってことじゃないですか。
▽実際のところ、それからすぐ後、ヒメネスがふくらはぎの痛みを訴え、大事を取って、リュカと交代したため、お休みできたのは後半8分にカリニッチと代わったグリーズマン、19分にジェルソンと代わったコスタの2人だけに留まったんですが、「El rival fue superior/エルリバル・フエ・スペリオール(相手が上だった)」(レオ・フランコ監督)とあっさり、実力差を認めていたウエスカから、それ以上、ゴールが奪えなかったのはアトレティコがエネルギーの浪費を避けたせいだった?最近は目を覆うようなボールロストが少し、減ってきたコレアも「Me voy feliz porque el equipo volvió a ser el Atlético que todos queremos/メ・ボイ・フェリス・ポルケ・エル・エキポ・ボルビオ・ア・セル・エル・アトレティコ・ケ・トードス・ケレモス(皆が望むアトレティコが戻って来たから、ボクは幸せな気分で帰れるよ)」と言っていましたしね。

▽おかげで平日なのに試合終了が午前零時近くとあって、早く帰宅したかったファンも心おきなく、途中で席を立つことができましたし、見た目、かなり楽な展開だったにも関わらず、何故か、記者会見では声がかすれていたシメオネ監督も「エイバル戦で改善の兆しがあって、CLモナコ戦は良かった。ヘタフェ戦ではもっと良くなって、hoy fue un partido contundente/オイ・フエ・ウン・パルティードー・コントゥンデンテ(今日はガツンといけた試合だった)」を満足していましたしね。ヒメネスもすぐ治りそうだったため、これならダービーに胸を張って臨めそうだと私もホッとしていたところ…。

▽波乱が起きたのは翌水曜のことでした。まずは午後8時からのブタルケでのバルサ戦で、いやあ、何せ今季、まだ1勝もしていない最下位の弟分、レガネスですからね。スタンドを満員にしたファンがどんなに熱く応援しようと、バルベルデ監督がルイス・スアレス、ジョルディ・アルバを温存し、CFはムニル、左SBベルマーレンとメンバーを落としてこようと、5人DF体制で守りを固めたペレグリーニ監督のチームが序盤から、自陣エリア付近に押し込まれてしまったのは仕方なかったかと。その状態で前半11分にはコウチーニョのエリア前からのシュートが決まったとなれば、もう一体どうしたらいい?

▽いやあ、レガネスを見くびっていたのは私もバルサも同じですね。実は彼らが前半途中まで籠城状態になっていたのは、ペレグリーニ監督の説明によると、「ジョルディ・アルバを予想して、サイドに選手が必要だったから5-4-1にしたが、そのせいで中盤に人が足りなくなり、下がりすぎてしまった」からで決して、相手に臆していた訳じゃないんですよ。その証拠に組織的に守って1失点だけで前半を終えたレガネスは後半すぐ、合わせて68秒という速攻で逆転することに。ええ、7分にベスガが自陣からロングボールを出したところ、ジョナタン・シウバがエリア内にクロスを上げることに成功。ベルマーレンのチェックが遅れたため、身長差のかなりあるエル・ザールが頭で決めて同点になったかと思いきや、いや本当にまだ、私もメモを取っている最中だったんですよ。リスタート直後、またしても自陣から放たれたロングボールをエン・ネシリからピケが奪いながら、まさかオスカル・ロドリゲスにドンピシャの横パスを出してくれるとは!

▽そのシュートが逆転のゴールとなり、その後はルイス・スアレスやジョルディ・アルバ、マルコムを投入したバルサですが、メッシが精彩を欠いていたのも災い。そのまま2-1でレガネスが勝ったのがよっぽど心外だったんでしょうね。コウチーニョとラキティッチのダブルチャンスを連続paradon(パラドン/スーパーセーブ)で防ぎ、1点差を守るのに貢献したGKクエジェルなど、「Nadie ha venido a felicitarnos/ナディエ・ア・ベニードー・ア・フェリシタールノス(誰1人、お祝いを言いには来てくれなかった)」と、バルサの選手たちの対応が失礼だったことを怒っていましたが、まあ、彼らにしてみれば2-2で引き分けた前節ジローナ戦に続く、躓きですからね。

▽試合後、唯一、バルサでインタビューを受けていたブスケツなども「退場者のいた前の試合とは違う。今日は11対11で戦ったのに、no hemos sido sólidos y hemos dado facilidades/ノー・エモス・シードー・ソリドス・イ・エモス・ダードー・ファシリダーデス(ウチは堅固でなく、敵を手助けしてしまった)」と反省していましたけど、何せ、昨季はかなりシーズンの遅い時期まで黒星のなかったバルサ。RMカステージャ(マドリーのBチーム)から修行に来ている、殊勲のオスカルも「Seguro que muchos compañeros del Real Madrid se han alegrado por mí/セグロ・ケ・ムーチョス・コンパニェロス・デル・レアル・マドリッド・セ・アン・アレグラードー・ポル・ミー(レアル・マドリーの多くの同僚がボクのおかげで喜んでいるだろう)」と言っていたんですが…実はその頃、肝心の兄貴分は大変な目に遭っていたんです!

▽いえ、直後に始まったセビージャ戦をオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の中継でずっと聞いていたため、ブタルケを出て、セルカニアス(国鉄近郊路線)のサラケマダ駅に向かう頃にはマドリーが前半だけでもう、3点を取られていることは私も知っていたんですけどね。家に着いて映像を見たところ、マルセロのサイドを狙うというマチン監督の作戦がはまりまくり。ええ、17分には彼のパスミスを利用してヘスス・ナバスが突進すると、エリア内でアンドレ・シウバにアシストして先制点が入ったかと思えば、21分にもヘスス・ナバスのシュートをGKクルトワが弾きながら、マルセロのフォローが間に合わずにまたしてもアンドレ・シウバに決められてしまう羽目に。

▽29分など、まあこれは”ムード”・バスケスの方が背が高いため、CKから回ってきたボールのクリアで空中戦に勝てなくても仕方なかったんですが、それがベン・イェデルの3点目に繋がったとなれば、世間からマルセロが戦犯扱いされても仕方なかったかと。「La primera parte la hemos regalado/ラ・プリメーラ・パルテ・ラ・エモス・レガラードー(前半をウチは相手に贈ってしまった)」(カセミロ)マドリーは後半、反撃に転じたものの、8分にモドリッチが決めた見事なvaselina(バセリーナ/ループシュート)もほんの僅かなオフサイドをVARに指摘され、スコアには上がらず。ベイルの1対1のシュートも前夜、幼いお子さんがテラスから転落し、一晩中、病院で付き添っていたというGKバシリクに弾かれ、挙句の果てにマルセロが負傷で最後は10人でプレーって、これじゃ3-0の完敗でも仕方ありませんって。

▽え、ここ6シーズンで5敗しているサンチェス・ピスファンでのセビージャ戦とあって、ロペテギ監督はベストメンバーを並べたんじゃないのかって?そうなんですが、問題はその”ベスト”で実はこの日先発したモドリッチ、セルヒオ・ラモス、バラン、マルセロ、GKクルトワの5人は月曜にロンドンでのFIFA表彰式に出席。最優秀GK賞をもらったクルトワなど、「Yo a las 4.00 ya estaba durmiendo, descansé bien, entrené muy bien/ジョ・ア・ラス・クアトロ・ジャー・エスタバドゥルミエンド、デスカンセ・ビエン、エントレネ・ムイ・ビエン(ボクは午前4時には眠っていたし、よく休んだよ。とてもいい練習もした)」と言っていたものの、マドリッドに戻ったのは火曜の午前5時半だったというTVレポーターもいましたしね。

▽それで練習が午前11時からというのはやっぱりハードスケジュールだったかと思いますが、実はマドリーが同じ轍を踏むのはもう3年目。ええ、初代FIFAベストにクリスチアーノ・ロナウドが選出された2016-17シーズンも直後のコパ・デル・レイでセビージャと3-3と引き分けた後、リーガでも同じ相手に2-1で負けていますし、翌シーズンもロナウドを始め、5人の選手が表彰式に出向いた後、まさにマチン監督率いるジローナに2-1で負けているとなれば、毎年、ベストイレブンなどで大量に選手が表彰されるのも考えものかと。

▽まあ、そのおかげでこの土曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からのマドリーダービーではアトレティコが上位2チームと勝ち点差2まで詰め、意外な程、早く首位到達への可能性が開かれたんですけどね。残念ながら、マチン監督を見習おうと、ファンフランをウエスカ戦で温存したシメオネ監督の作戦はマルセロが肉離れと見られるケガをしたことでムダになってしまいましたが、ヒメネスは木曜のセッションで普通に練習。対して相手は火曜に急性盲腸炎の手術をしたイスコが1カ月の離脱となっているのもあまりにタイミングが合いすぎて、逆に怖すぎるぐらいなんですが…いやいや、捕らぬ狸の皮算用が2度も続けて上手くいく保証など、どこにもないのがサッカー。バルサも土曜のアスレティック戦では黙っていないでしょうし、とりあえず、先は長いため、今はマドリーと引き分けても大丈夫そうなのを心の拠り所にして応援したいと思います。

▽そして最後に木曜、アラベスと戦ったヘタフェは1-1の引き分けで終了。せっかくアマトのゴールで後半35分に先制できた彼らだったものの、ロスタイムにカレリに同点弾を浴びてしまったんですが、実はこの試合、柴崎岳選手が今季初めて招集リスト落ち。まあ、順位的には11位と安定したところにいるヘタフェのため、これはアウェイ連戦となる月曜のセルタ戦も考えてのローテーションかもしれませんが、いよいよベルガラもケガ治って復帰してきただけにチーム内の競争が高まっているのは確かかと。ベティスに行った乾貴士選手が日曜のレガネス戦にも出そうなのと違い、なかなかピッチで見られないのは残念ですが、柴崎選手も早く、ボルダラス監督の信頼が得られるようになってもらいたいところです。

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