まだ秋は来ない…/原ゆみこのマドリッド

2018.09.25 13:00 Tue
▽「どうせ涼しくなれば、忘れちゃうんだろうな」そんな風に私が呆れていたのは月曜日、スペインが厳しい残暑に見舞われた先週末のリーガ開催時間を巡り、サッカー協会のルビアレス会長とラ・リーガのテバス会長がツイッターを通じて丁々発止の口喧嘩を始めたと聞いた時のことでした。いやあ、スタンドはどちらも日影でしたが、観戦梯子をした土曜は確かに私も午後6時過ぎにコリセウム・アルフォンソ・ペレスにセルカニアス(国鉄近郊路線)のラス・マルガリータス・ウニベルシダッド駅から15分歩いて着いた後など、汗が止まらず。水を飲みすぎたせいもあってか、試合中、とても気持ちが悪かったんですけどね。
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▽実際、午後1時からのエスタディオ・バジェカスではカンカン照りのピッチでプレーしていたラージョのアマト、アラベスのパチェコが試合後、目眩や吐き気に襲われたそうで、ミニダービーの方では何と、フィリペ・ルイスがプレーを続けられず、後半途中に交代を申し出る始末。おまけに翌日曜、もっと暑くて湿気の多い地中海沿岸では観客にも被害が出て、正午からのシュタット・デ・バレンシアのレバンテvsセビージャ戦では14人、午後4時15分からのラ・セラミカでのビジャレアルvsバレンシア戦では4人が熱中症の手当を受けたとなれば、いくらテバス会長が「アラゴングランプリ(バイク)では気温32度の中、11万4000人の観客が日向でレースを楽しんでいた。36度のラス・ロサス(マドリッド近郊)の協会施設グラウンドでも少年サッカーの試合が開かれた」と反論しても、暑さをまったく考慮せずにキックオフ時間を設定した責任は免れないかと。▽うーん、それでもアラベスなどはようやくエスタディオ・バジェカスのスタンド閉鎖命令が解け、今季2度目のホームゲームに張り切って駆けつけたラージョファンの熱い応援もなんのその。前半8分にはチモ・ナバロが器用に後ろに流したFKで先制すると、一旦はラウール・デ・トマスのゴールで同点とされたものの、34分にはイバイ・ゴメスがエリア前からのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)で再びリードしているんですよ。おまけにその時、CBアブドゥライエがカレリにcodazo(コダソ/肘打ち)を見舞っていたことがVAR(ビデオ審判)により発覚し、彼が一発レッドで退場させられたラージョは残り時間を10人で戦うことに。
▽そのせいもあってか、後半11分にそのカレリに追加点を奪われた後、「Con un jugador menos nos meten el 1-3 y dejamos de competir/コン・ウン・フガドール・メノス・ノス・メテン・エル・ウノ・トレス・イ・デハモス・デ・コンペティール(1人少なくなって1-3にされて、ウチは競うのを止めた」とミチェル監督は選手たちを批判していたましたが、いや、あの暑さでは気力が湧かないのもわかりますって。対照的にその後もイバイ・ゴメス、ブルギが追加点を挙げ、1-5と最後まで手綱を緩めなかったアラベスは見上げた心意気でしたが、何せ彼らはこれでもう勝ち点10と、「Tenemos una cuarta parte del objetivo conseguido/テネモス・ウナ・クアルタ・パルテ・デル・オブヘティボ・コンセギードー(ウチは目標の4分の1を達成した)」(アベラルド監督)訳ですからね。

▽このペースで行けば、20節には1部残留確定の勝ち点40が溜まるとなれば、この敗戦で19位に落ちてしまったラージョや、それこそ次の時間帯で、いえ、北部のエイバルでプレーしながら、あちらの暑さもかなりのものだったようですけどね。後半6分に決勝ゴールを挙げたキケ・ガルシアが27分には全力疾走した後、息が切れて倒れてしまい、担架退場になったなんて話もあったんですが、そのまま1-0で負け、未だに勝ち点1しかない最下位に留まったレガネスなどにしてみれば、どんなに羨ましい状況かと。
▽え、そんなシーズン序盤から、降格圏にはまってしまった弟分2チームには今週、平日開催でキックオフが遅くなるため、暑さの影響もあまりなさそうな次節、そしてラッキーにも夜の時間帯に当たった週末の試合での奮起を期待するしかないだろうって?まあ、その通りなんですが、火曜にサン・セバスティアン(スペイン北部のビーチリゾート都市)でのレアル・ソシエダ戦を控えているラージョと比べ、あまりに気の毒なのはレガネス。ええ、水曜午後8時(日本時間翌午前3時)から、ブタルケにバルサを迎えるからで、いえ、相手も日曜にジローナとカンプ・ノウで2-2と引き分け、今季初めて勝ち点を取りこぼしていますけどね。

▽どうやら、「Estamos en el inicio, todavia queda mucho/エスタモス・エン・エル・イニシオ、トダビア・ケダ・ムーチョ(始まったばかりで、まだリーガは沢山残っている)」というペレグリーニ新監督が初白星を挙げるのは日曜、アウェイで乾貴士選手のいるベティスと顔を合わすまで待たないといけない可能性が高そうですが、さて。何はともあれ、カリージョやロラン、エル・ナスリといった今季、加わったFWたちにゴール運が早く巡ってきてくれるといいのですが。

▽そしてメトロからアトーチャ駅でセルカニアス乗り換えると、1時間以内で結構、楽に移動ができることがわかったヘタフェの試合がどうだったかというと。いやあ、アトレティコも序盤は兄貴分の貫録を示そうと積極的に攻めていたんですけどね。前半14分、グリーズマンのミドルシュートが外れてしまった直後、レマルが同じような距離からトライしたところ、ボールがゴール枠に弾かれ、GKダビド・ソリアの背中に当たってオウンゴールになるという超ラッキーが起こります。

▽でもねえ、だからって、「Luego hemos dado un pasito atras porque hemos empezado a perder balones en la salida/ルエゴ・エモス・ダードー・ウン・パシート・アトラス・ポルケエモス・エンペサードー・ア・ペルデル・バロネス・エン・ラ・サリーダ(それからウチはボールを出すところで敵に取られ始めたから、一歩あとに下がった)」(コケ)というのは、因果関係はどちらが先か、私にもわからないんですけどね。リードすると引いてしまう、彼らのいつもの悪癖が出てしまったせいで、ゲームはとてつもなく退屈なものに。

▽そんな状態で前半が終わったため、「Hablamos al descanso y repetimos los 20 del primer tiempo/アブラモス・アル・デスカンソ・イ・レペティモス・ロス・ベインテ・デル・プリメール・ティエンポ(ハーフタイムに話して、前半20分までのプレーを繰り返した)」と後でシメオネ監督も言っていたんですが、おかげで後半15分、ようやくアトレティコのプレーが繋がったんですよ。それはその日、久々にCBとして先発したリュカが自陣エリア近くで取り戻したボールからで、パスを右サイドに繋いだ彼らはレマルから、グリーズマンのtaconazo(タコナス/ヒールキック)を経て、最後は左サイドのコケが敵の股間を抜くスルーパスをエリア内のレマルへ。するとブルーノがカットしかけたボールを追って、ソリアもかわしたレマスが角度のないところからシュート、これが決まってしまったから、ビックリしたの何のって。

▽すぐ後には、GKオブラクがアンヘルの一撃をparadon(パラドン/スーパーセーブ)で救ってくれたなんてこともあったんですけどね。ヘタフェは途中出場したアレホがサウールの脚を踏み、レッドカードを受けたため、人数的有利になったアトレティコはようやく、ジエゴ・コスタやグリーズマンにチャンスが回ってくることに。それでもソリアに弾かれて、追加点を挙げられなかったため、0-2という地味なスコアでの勝利になりましたが、ちょっと悲しかったのは試合後の記者会見で、「Fue el mejor Atletico de esta temporada?/フエ・エル・メホール・アトレティコ・デ・エスタ・テンポラーダ(今季、これが一番良かったアトレティコの試合だったか?)」とシメオネ監督が訊かれていたこと。

▽その答えは「リーガではそうかもしれない。一番だったのはUEFAスーパーカップのレアル・マドリー戦だけどね」というものでしたが、まあ、「A todo el mundo le gusta jugar bonito, pero nuestra filosofia es la de ganar/ア・トードー・エル・ムンド・レ・グスタ・フガール・ボニート、ペロ・ヌエストロ・フィロソフィア・エス・ラ・デ・ガナール(皆、美しいプレーが好きだけど、ボクらのフィロソフィーは勝つことだからね)」(コケ)というチームですからね。1試合に1つでも2つでも感心できるプレーがあれば、それで良しとしないといけないのかもしれませんが、ただこの日の白星はひとえに両チームの相性のおかげだったかも。

▽ええ、シメオネ監督下のアトレティコはここ14試合、ヘタフェに負けておらず、引き分けもスコアレスで2度だけと、通算28-0で圧勝しているんですよ。ボルダラス監督も「他のチームの前ならできるミスも彼らにはできない。Solo tuvieron dos ocasiones hasta el segundo gol/ソロ・トゥビエロン・ドス・オカソネス・アスタ・エル・セグンド・ゴル(2点目を入れるまで、チャンスも2回しかなかった)」と言っていましたが、何をしても上手くいかない相手はいるものですって。それでも勝ち点10あるヘタフェは10位と安全圏にいますからね。木曜午後8時(日本時間翌午前3時)からのアラベス戦、来週月曜のセルタ戦と続くアウェイ2連戦では、この土曜はベンチに留まった柴崎岳選手の出場も含めて、きっといいところを見せてくれますって。

▽え、相性の良さに助けられたのはお隣さんも同じじゃなかったかって?そうですね、続く時間帯だったため、サンティアゴ・ベルナベウには行けなかった私でしたが、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の中継を聞きながら、駅に向かっていた途中、前半41分にモドリッチのパスから、アセンシオのシュートがGKディエゴ・ロペスを破ったとの報が。でもねえ、最初は主審がオフサイドを取って、得点を認めなかったものの、VAR判定が入り、2分後に実況アナが「Goool! Gol del Madrid/ゴル・デル・マドリッド(マドリーのゴール)」と叫び直さないといけないって、もしやVAR導入で苦労しているのは選手たちだけじゃない?

▽自宅近くのバル(スペインの喫茶店兼バー)に私が入った時もスコアは1-0のままで、しかも後半にはレオ・バプチスタンやセルヒオ・ガルシアを入れ、反撃をかけてきたエスパニョールにマドリーは手を焼いていたようですが、何せベルナベウではここ23年間、白星のない相手ですからね。GKクルオワの頭を越えたボルハ・イグレシアスのvaselina(バセリーナ/ループシュート)がバーに当たって入らなかったのも得点すら、彼らは2013-14シーズン以来していないことを考えると、むしろ次回は試合前にお払いにでも行った方がいい?

▽ベイル、クロース、マルセロ、カルバハル(ケガ)がローテーションで出なかったマドリーもセルヒオ・ラモスがその日は積極的に参加して、強烈ヘッドを弾かれたりしていたんですが、結局、最後は1-0で逃げ切ることに。うーん、「lo mas importante son los tres puntos y el 1-0 vale igual que un 3-0/ロ・マス・インポルタンテ・ソン・ロス・トレス・プントス・イ・エル・ウノ・セロ・バレ・イグアル・ケ・ウン・トレス・セロ(大事なのは勝ち点3、1-0で勝っても3-0と同じ価値がある)」(アセンシオ)というのはもっともですが、先日のCLローマ戦であれだけ完璧な強さを見せられてしまうとねえ。マドリーファンとしては少々、物足りない試合だったのは否定できなかったかと。

▽そんなマドリーは次節、水曜午後10時(日本時間翌午前5時)から、サンチェス・ピスファンでのセビージャ戦に挑むんですが、ここはちょっと用心が必要。というのも相手は日曜、猛暑の中でレバンテに2-6、先週木曜にもヨーロッパリーグのスタンール・リエージュ戦で5-1の勝利とgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)づいているから。中でも2試合で5得点を挙げているベン・イェデルからは目が離せませんが、何せ月曜のFIFA表彰式でマドリーのDFはマルセロ、バラン、セルヒオ・ラモスの3人がベストイレブンに選ばれていましたからね。クルトワもベストGKに輝いたとなれば、もちろん守備は鉄壁かと思いますが、まあそれは見てのお楽しみ。そうそう、ベストイレブンにも入ったモドリッチは先日のUEFA年間最優秀選手賞同様、クリスチアーノ・ロナウド(ユベントス)、サラ(リバプール)を抑えてFIFAベストアワードを獲得しています。

▽一方、火曜午後10時からワンダ・メトロポリターノに昔からのファンには懐かしい元GKのレオ・フランコ監督が率いるウエスカを迎えるアトレティコは月曜夜から、前日合宿に入っているんですが、いいニュースは開幕節でヒザを痛めたビトロがようやく招集リストに戻って来たこと。ただ、ファンフランが疲労なのか、ローテーションなのか、外れたため、右SBがまたトマス、もしくはカンテラーノ(アトレティコBの選手)のカルロス・イサークになるのかは不明です。

▽そう、これが終わると次は土曜のマドリーダービーですからね。今季は2分け1敗と早くも躓いて、上位2チームと勝ち点差5をつけられている彼らにしてみれば、距離を縮めるまたとないチャンスとなるため、ここまで出づっぱりのサウールが温存される可能性もあるとか。どちらにしろ、ウエスカ戦に勝たないことには所詮、捕らぬ狸の皮算用ですが、月曜にロンドンでのFIFA表彰式に誰も行っていない彼らとしては、ここは改めて気合を入れるいい機会。来年は1人でも参列できるよう、今からプレーを磨いていってほしいものです。

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