【六川亨の日本サッカーの歩み】ロシアW杯総括
2018.07.24 18:00 Tue
▽ロシアW杯の決勝から10日あまり。次期日本代表の監督は森保氏の就任が濃厚だが、ロシアW杯における日本代表を総括した話は一切聞こえてこない。西野前監督が短期間にもかかわらずベスト16に進出したことで、これまであった「主力選手がヨーロッパで活躍しているのだから、監督もヨーロッパで実績のある外国人を起用すべき」といった意見はなし崩しに霧消したようだ。
▽そしてフランスの勝ち越しゴールは今大会から採用されたVARによるPKからのもの。賛否両論のあるVARだが、PKの判定が下されるまで3分ほどの中断期間があったのは正直興ざめした。決勝戦に限らず、オフサイドの判定もラインズマンが旗をあげるタイミングが遅いのもVAR導入の影響だったが、今後も改善の余地は多々あるように感じた。
▽そのフランスの追加点は攻勢に出たクロアチアの隙をついたカウンターからだった。近年のW杯はボールを奪ってから15秒以内のカウンターとセットプレーからゴールが生まれる傾向があると指摘されてきたが、ロシアW杯はさらにセットプレーからのゴール、とりわけヘディングによるゴールが増えた印象が強い(特にイングランド)。
▽そうした中で大会MVPを獲得したクロアチアのモドリッチは、「クラシカルなセントラルMF」だけに、貴重な存在でもある。彼をMVPに選出したFIFA(国際サッカー連盟)のテクニカルスタッフも、モドリッチのファンタジーあふれるプレーに、ヨハン・クライフらかつての名選手に通じるノスタルジーを感じたのかもしれない。
▽翻って日本である。失点は大会前のテストマッチからカウンターとセットプレーが多いと指摘されてきた。それが本大会でも続いたわけだが、それは日本に限ったことではないことがW杯でも証明された。こちらに関しては、技術委員会がどのようなレポートを作成するのか注目したい。
▽最後に、ロシアW杯の期間中は多くのロシア人から「日本のファンになった」と声を掛けられた。夜行の寝台車で同席したポーランドのサポーターからも「日本はいいチームだ」と言われた。知人の記者はカザフスタンのファンから「ずっと日本を応援していた。なぜならアジアの代表だから」と言われたそうだ(カザフスタンはヨーロッパに所属しているにもかかわらず)。
▽こんなことは、ベスト16に進出した02年日韓W杯や10年南アW杯でも言われた記憶がない。それだけコロンビア戦の勝利、ポーランド戦の時間稼ぎ、そしてベルギー戦の奮闘が多くの人々の印象に残ったからだろう。
▽ただ、冷静に振り返ってみれば、西野監督はグループステージを1勝1分け1敗で通過した。トルシエ・ジャパンは2勝1分け、岡田ジャパンは2勝1敗でベスト16に進んでいる。数字的にはギリギリのグループステージ突破だったが。ポーランド戦以外はゴールを目指した攻撃的なサッカーが他国のファンを魅了したのだろう。
▽記録としてはたいしたことはないものの、記憶に残る闘いを演じたのがロシアW杯の日本代表と言える。
▽6月上旬に日本のベースキャンプ地であるカザン入りしてから6週間を現地で過ごした。カザンでは「ワールドカップ」と言っても話は通じず、現地の人々からは「チャンピオンシップね」と訂正された。それだけ認識のズレがあったのだろう。
▽しかし大会が進むにつれて「ワールドカップ」は浸透し、ヴォルゴグラードで知り合った女性記者は「ワールドカップって、スタジアムに人々が集うだけじゃないのね。街の中心街にある広場やレストラン、夜にはバーにも世界各地から来た人々でいっぱい。こんなことは今までのロシアにはなかったことだわ」と興奮気味に話していた。
▽南ア、ブラジル、ロシアと3大会連続して広大な大陸を取材したが、いつも勝者は開催国かもしれない。新たなマーケットの開発と獲得というFIFAの深謀遠慮を改めて感じたW杯。そして次は初めて中東・カタールでの開催だ。大会期間中の7月11日からカタールは、大会PRのためのブースをモスクワ川に面したゴーリキーパークに設置した。さらに市内中心部の、赤の広場に面した高級デパート「グム」や繁華街でもPRイベントを実施した。
▽こちらも関係者を取材したので、別の機会に紹介したい。
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▽そんなロシアW杯で、フランス対クロアチアの決勝戦は今大会を象徴するようなゴールが生まれた。まず前半18分、それまで守勢一方だったフランスは右FKからマンジュキッチのOGで先制する。それまで1本もシュートを放っていないフランスが先制したのはちょっとした驚きだった。▽決勝戦が見応えのある好ゲームになったのは、3試合連続して延長戦を闘ったクロアチアが、守備を固めてカウンターを狙うのではなく攻撃的なサッカーを展開したからだ。前半28分の同点ゴールもFKからの流れで生まれた。▽そのフランスの追加点は攻勢に出たクロアチアの隙をついたカウンターからだった。近年のW杯はボールを奪ってから15秒以内のカウンターとセットプレーからゴールが生まれる傾向があると指摘されてきたが、ロシアW杯はさらにセットプレーからのゴール、とりわけヘディングによるゴールが増えた印象が強い(特にイングランド)。
▽各国とも代表はームは強化する時間は限られている。そこで短期決戦を乗り切るには「個の力」によるカウンターとセットプレーがカギになることを示したのがロシアW杯だった。フランスのムバッペ、イングランドのスターリング、そしてベルギーのE・アザールやデ・ブライネらベスト4に進出したチームにはいずれも俊足のアタッカーを擁していた。
▽そうした中で大会MVPを獲得したクロアチアのモドリッチは、「クラシカルなセントラルMF」だけに、貴重な存在でもある。彼をMVPに選出したFIFA(国際サッカー連盟)のテクニカルスタッフも、モドリッチのファンタジーあふれるプレーに、ヨハン・クライフらかつての名選手に通じるノスタルジーを感じたのかもしれない。
▽翻って日本である。失点は大会前のテストマッチからカウンターとセットプレーが多いと指摘されてきた。それが本大会でも続いたわけだが、それは日本に限ったことではないことがW杯でも証明された。こちらに関しては、技術委員会がどのようなレポートを作成するのか注目したい。
▽最後に、ロシアW杯の期間中は多くのロシア人から「日本のファンになった」と声を掛けられた。夜行の寝台車で同席したポーランドのサポーターからも「日本はいいチームだ」と言われた。知人の記者はカザフスタンのファンから「ずっと日本を応援していた。なぜならアジアの代表だから」と言われたそうだ(カザフスタンはヨーロッパに所属しているにもかかわらず)。
▽こんなことは、ベスト16に進出した02年日韓W杯や10年南アW杯でも言われた記憶がない。それだけコロンビア戦の勝利、ポーランド戦の時間稼ぎ、そしてベルギー戦の奮闘が多くの人々の印象に残ったからだろう。
▽ただ、冷静に振り返ってみれば、西野監督はグループステージを1勝1分け1敗で通過した。トルシエ・ジャパンは2勝1分け、岡田ジャパンは2勝1敗でベスト16に進んでいる。数字的にはギリギリのグループステージ突破だったが。ポーランド戦以外はゴールを目指した攻撃的なサッカーが他国のファンを魅了したのだろう。
▽記録としてはたいしたことはないものの、記憶に残る闘いを演じたのがロシアW杯の日本代表と言える。
▽6月上旬に日本のベースキャンプ地であるカザン入りしてから6週間を現地で過ごした。カザンでは「ワールドカップ」と言っても話は通じず、現地の人々からは「チャンピオンシップね」と訂正された。それだけ認識のズレがあったのだろう。
▽しかし大会が進むにつれて「ワールドカップ」は浸透し、ヴォルゴグラードで知り合った女性記者は「ワールドカップって、スタジアムに人々が集うだけじゃないのね。街の中心街にある広場やレストラン、夜にはバーにも世界各地から来た人々でいっぱい。こんなことは今までのロシアにはなかったことだわ」と興奮気味に話していた。
▽南ア、ブラジル、ロシアと3大会連続して広大な大陸を取材したが、いつも勝者は開催国かもしれない。新たなマーケットの開発と獲得というFIFAの深謀遠慮を改めて感じたW杯。そして次は初めて中東・カタールでの開催だ。大会期間中の7月11日からカタールは、大会PRのためのブースをモスクワ川に面したゴーリキーパークに設置した。さらに市内中心部の、赤の広場に面した高級デパート「グム」や繁華街でもPRイベントを実施した。
▽こちらも関係者を取材したので、別の機会に紹介したい。
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