【原ゆみこのマドリッド】盛り上がるどころじゃなかった…

2018.07.04 15:00 Wed
▽「本当にスペインのW杯、終わっちゃったんだなあ」そんな風に私が実感していたのは火曜日、ワンダ・メトロポリターノのプレスコンファレンスルームでアトレティコのコケとサウールの姿を見た時のことでした。いやあ、今季は第3キャプテンに任命される予定のフアンフランと共に、折しもスペイン代表チームのチャーター便がバラハス空港に着いた翌日だったため、アル・サッドへの移籍が決まったカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)の大先輩、ガビのお別れ会見に花を添えるべく、これからバケーションでどこかに行くはずだった2人もこれ幸いと駆けつけたんでしょうけどね。

▽ええ、主役が「18年間、このクラブにいて、多くのチームメートは自分よりいい選手だったけど、誰よりアトレティコのカラーを守ってきたと思う。負けると誰より苦しんだし、滅多にない喜びもあった。El Atlético es una manera de vivir/エル・アトレティコ・エス・ウン・マネラ・デ・ビビール(アトレティコは1つの生き方だからね)」と感動的なスピーチを行った後、3人のチームメートも壇上へ。スペインの敗退が決定した日曜のルジニキ・スタジアムでは1時間以上泣いていたというコケが再び声をつまらせて、「Eres como un hermano mayor/エレス・コモ・ウン・エルマーノ・マジョール(お兄さんみたいな存在だ)。次のアトレティコの監督は君だろうから、準備しておいて」と、一足飛びにまだカタールで一花咲かせるつもりの34歳を引退扱いしていたのには苦笑いしたものの、まあ、当人もあのロシア戦のせいでまだ頭の中がグルグルしていたのかも。

▽おまけに続いて始まったプレスへの質疑応答では、こちらも一緒の飛行機で帰って来たんでしょうか。週末まで毎日、クアトロ(スペインの民放)のW杯番組で現地からスペインのレポートをしていた記者が挙手。「あのPK失敗の後、コケにどんな言葉をかけましたか?」なんてガビに訊いて、生々しい傷をえぐっていましたが、そりゃあ予定より、2週間も早くロシア滞在が終わってしまったんですものね。実際、私もいきなりポッカリ空いてしまったスケジュール帳に来週の半ば、アトレティコとヘタフェがプレシーズンを開始するまで一体、何を楽しみすればいいんだと困っているのは同様だったんですが…。
▽いえ、話は順番に進めていかないといけません。いよいよW杯16強対決が始まった先週末は初日から、メッシ(バルサ)のアルゼンチンがグリーズマン(アトレティコ)のPKによる先制点に加え、パバール(シュツットガルト)やエムバペ(PSG)ら、若手が躍動したフランスに4-3で敗退。クリスチアーノ・ロナウド(レアル・マドリー)のポルトガルもカバーニ(PSG)の2発に沈んでしまったため、金曜午後4時(日本時間午後11時)からの準々決勝でいよいよ、グリーズマン、リュカとゴディン、ヒメネスの身内対決が実現することになったのにはちょっと、複雑な心境になったものでしたけどね。

▽それでも土曜の2試合はどちらもテンポのいいゲームでしたし、さすが決勝トーナメントにもなるとW杯も面白い試合が多いと喜んでいたんですが、いやあ、参りましたよ。確かにグループリーグでも高いポゼッションをなかなか得点に繋げられず、とりわけイラン戦やモロッコ戦ではイライラさせられたスペインだったんですけどね。そのせいもあってか、イエロ監督は3試合で5失点という、守備面の不安を重要視したよう。CL決勝でのケガが治ったばかりのカルバハル(マドリー)をナチョ(同)に、チアゴ・アルカンタラ(バイエルン)をコケにしてみたんですが、それでも良かったんですよ。前半11分、FKにセルヒオ・ラモス(マドリー)と一緒に倒れ込んだイグナシェビッチ(CSKAモククワ)のふくらはぎがボールに当たり、スペインがオウンゴールで先制点をゲットするまでは。
▽もちろん、早々にリードできたのは私も嬉しかったんですが、そこから始まったのが永遠のロンド(輪の中に入った選手がボールを奪うゲーム)地獄。というのも、「3CBでプレーするのは好きじゃないが、出場停止者があってそうするしかなかった。選手たちに理解させるために沢山、話したよ」という、チェルチェソフ監督が敷いたロシアの自陣を固める絶対守備態勢はその後も変わらず、スペインはまったく敵ゴールに近づけなかったから。おかげでブスケツ(バルサ)、ラモス、ピケ(バルサ)、コケ、そしてバックパスという外縁ループばかりが繰り返されるって、だってえ、その間、ピッチで走っている選手が皆無なんですよ。

▽そうこうするうち、いくら「ハイボールをエリア内に落としたり、クリアミスを狙ったりする方が楽なチームもあるが、eso no lo hace Espana/エソー・ノー・ロ・アセ・エスパーニャ(スペインはそんなことはしない)」(イエロ監督)というティカタカ(ショートパスを繋ぐスペインのプレースタイルの愛称)信奉者の彼らでも、ここまで退屈な試合は未だかつてなかったと、いい加減、自分も鳥肌が立ってきた頃に災厄が起きたんです。ええ、たまにボールが回って散発的な攻撃を試みていたロシアがCKのチャンスを獲得したんですが、長身ジュバ(アルセナル・トゥラ)のヘッドをピケが伸ばした腕に当て、ハンドでPKを献上してしまったから、さあ大変! グループ3試合で1セーブしかしていないGKデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)がジュバに破られて、ハーフタイムまで5分を残してスペインの貯金はなくなってしまうことに。

▽同点で始まった後半もあまり状況に変化はなく、いえ、前半の接触プレーでケガをしたナチョがカルバハルに代わったのは別ですが、22分にはイエロ監督が「長丁場になると思い、espere al minuto 70 porque veia que ahi empezaba otro partido/エスペレ・アル・ミヌート・セテンタ・ポルケ・ベニア・ケ・アイー・エンペサバ・オトロ・パルティードー(別の試合が始まる70分を待った)」という理由で今大会、初めてベンチスタートとなったイニエスタ(ヴィッセル神戸)がシルバ(マンチェスター・シティ)に代わって入ったんですけどね。30分過ぎにジエゴ・コスタ(アトレティコ)から、イアゴ・アスパス(セルタ)にチェンジした後は少し、動きが出てきたものの、イニエスタとアスパスのダブルチャンスも実らず。1-1のままで90分が終わり、延長戦に突入です。

▽え、結局、エクストラの30分を戦っても決着がつかず、PK戦に望みを懸けることになったスペインだったけど、イエロ監督がキッカーを選ぶ際には妙な出来事があったんじゃないかって? そうですね、後でクアトロの映像(http://www.marca.com/futbol/seleccion/2018/07/02/5b3a2c17468aeb03088b4607.html)でわかったんですが、イニエスタが最初に蹴り、ラモス、ピケと代表ベテラン勢も大役を快諾。続いてコケにお鉢が回ったところ、ベンチからずっとイエロ監督について来ていたコスタが反対したんですよ。その理由は不明ですが、それでもラモスに「Quieres tirar?/キエレス・ティラール(蹴りたいか?)」と訊かれたコケは「Si, si/シー(イエス)」と志願。その結果、ご存知のように3番目にGKアキンシェーフ(CSKAモスクワ)に挑んで見事、弾かれてしまうことに。

▽うーん、これまでミラノでのCL決勝を始め、私が見ているアトレティコのPK戦で彼が失敗したことはなかったんですけどね。その直後、ベンチ前で応援していたコスタが「Te lo dije/テ・ロ・ディヘ(言ったじゃないか)」とイエロ監督に蒸し返していたのには、火曜のワンダで会ったアトレティコ番のラジオ記者など、「監督の決定に口を挟むなんてやっちゃいけないこと」と批判していたものの、もしやクラブのチームメートだけに第六感が働いたのかもしれない? どちらにしろ、スペインはデ・ヘアが1本も止められず、最終キッカーのアスパスもアキンフェーフの足に阻まれてしまったため、PK戦3-4負けで帰国が決定です。

▽この結果、4年前のブラジル大会、2年前のユーロに続いて早期敗退をしてしまった彼らなんですが、何せ今回は大会開幕2日前にマドリーとの契約を発表したロペテギ監督が電撃解任、「Se fue el líder/セ・フエ・エル・リデル(リーダーが行ってしまった)」(コケ)という大逆境がありましたからね。ただ、それがなくとも2008年から2012年までの国際メジャートーナメント3連覇の黄金期を築いた主力メンバーの生き残りが今では皆、30歳過ぎ。「juego rápido/フエゴ・ラピド(速いプレー)」が必要だと主張していたシルバやイニエスタら、ティキタカの基本となるべきMF陣が以前のスピードで動けなくなっていたのは事実ですからね。

▽随所で妙技を見せて1人、株を上げていたイスコ(マドリー)にしてもチームの動きを加速することはありませんでしたし、大体このロシア戦、ポゼッション79%で計1137回ものパスを出しながら、前方に出したのはたったの278回。挙句にオウンゴールからの1点しか取れないのでは、そろそろサッカースタイル自体を見直す時期に来ているのかも。ちなみにこの試合の後、イニエスタは代表引退を宣言、その夜はベースキャンプ地のクラスノダール(ロシア南西部)に戻り、1泊してから、月曜にマドリッドに着いた時にはシルバもお揃いのチームメートのサイン入りボールを抱えていたため、同じなんじゃないかと思いますが、早々とこれが最後の大会と言っていたピケからはまだコメントが出ていません。

▽え、32歳のラモスなどは逆に「Me voy a ver obligado a llegar a Catar con la barba blanca/メ・ボイ・ア・ベル・オブリガードー・ア・ジェガール・ア・カタール・コン・ラ・バルバ・ブランカ(ヒゲが白くなってもカタール大会までやることが義務に思えているよ)」とまだまだ、代表キャプテンを続ける気満々だったんじゃないかって?まあ、その辺はイエロ監督が続投しない見込みで現在、ルイス・エンリケ、キケ・サンチェス・フローレス、ミチェル、そしてガビをアル・サッドに誘ったチャビら、複数挙がっている候補の中から決まった次期代表監督が考えてくれればいいことですからね。この4試合では怪しい守備のポカも度々あったため、私には何とも言えませんが、この先、公式戦が巡ってくるのは9月のネーションズリーグからなので、サッカー協会も後任の人選には慎重になってもらいたいものです。

▽そしてスペインと同日の16強対決ではクロアチアもPK戦でデンマークを破り、準々決勝に進出。スバシッチ(モナコ)とシュマイケル(レスター)の両GKが何本も止めまくっているのはまるで異次元の出来事のようで、見応えがありましたが、おかげで延長戦では止められたPKをリベンジできたモドリッチやコバチッチ(マドリー)、そしてベルサイコ(アトレティコ)ら、マドリッド勢のプレーが土曜午後8時(日本時間翌午前3時)からのロシア戦でも楽しめるのはまだ、何かの慰めになるかと。

▽月曜にはブラジルがメキシコを2-0で下し、その夜には後半ロスタイム、最後のプレーでGKクルトワ(チェルシー)から始まったカウンターが実を結び、ベルギーが日本に3-2で逆転勝ち。この試合でもゴールを挙げた乾貴士選手(ベティス)や4試合先発出場をした柴崎岳選手(ヘタフェ)がもう見られないのは残念ですが、金曜のブラジルvsベルギー戦ではマドリーが獲得を狙っているという噂の絶えないネイマール(PSG)とクルトワの対決に注目するのもいいかも。ただしこの試合、カセミロ(マドリー)は累積警告で出場停止、マルセロ(マドリー)かフィリペ・ルイス(アトレティコ)はどちらか、一択になりますが。

▽更に火曜にワンダから戻ってみると、4組目の土曜の準々決勝はスウェーデンvsイングランドに決まったんですが、何せマドリッド勢プレシーズン開始のトップバッター、アトレティコも11日まで動きませんしね。丁度、ヘタフェも12日から始動という情報が入ったんですが、どちらもW杯参加選手たちの合流はずっと先。一応、17日にバルデベバス(バラハス空港の近く)でロペテギ新監督の下、練習を始めるマドリーだけはベイルとベンゼマ、2人の大物が顔を見せることになっていますが…どちらにしろ、8月までは私もその両名の先行きも含め、移籍関連ぐらいしか、お伝えできることがないかもしれません。

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