【原ゆみこのマドリッド】どこまで期待してよいものやら…

2018.06.06 22:50 Wed
▽「偶然とはいえ、間が悪かったわね」そんな風に私が首を振っていたのは火曜日、ラス・ロサス(マドリッドの郊外)のサッカー協会施設をスペインの首相が訪問。W杯前の恒例、チーム激励式典がグラウンドの反対側で行われていた時のことでした。いやあ、実を言うとこの国は先週木曜から政局が激変、お昼のスポーツニュースはジダン監督電撃辞任のことばかりだったため、夜の枠では代表関連の話も取り上げてくれるかと期待してTVをつけたところ、いきなり国会中継になっていたのに驚いたなんてこともあったんですけどね。
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▽結局、PP(国民党)内閣への不信任案が通り、翌日にはラホイ首相が辞任、土曜にはPSOE(スペイン社会労働党)の党首であるペドロ・サンチェス氏が新しい首相となったんですが、そういえば、ラホイ前首相は収賄スキャンダルの対応に追われ、先月キエフであったCL決勝にも行けませんでしたからね。この代表チーム慰問の役目も新首相に譲り、この先、万が一、スペインがW杯決勝に進出したとしてもモスクワには自費で駆けつけないといけないとはまったくもって、お気の毒だったかと。▽折しもその日はこちらも先月、ビジャル元会長が収賄容疑で停職になって以来、暫定会長を務めていたラレラ氏を選挙で破り、会長となったルビアレス氏が前理事会の元、W杯へ協会、スポンサー関係者、選手の家族や友人対象に企画されていた総勢100人以上、計200万ユーロ(約2億6000万円)の費用を協会が負担する応援ツアーをキャンセルしたことを発表。代わって試合ごとに人数を絞った2泊3日のツアーを1回10万ユーロ(約1300万円)で手配し、合計費用も4分の1に下げたと、練習セッション公開15分に満たない前から連れて行かれた協会本部ビルでの会長を囲む朝食会で聞いたんですけどね。
▽どちらにしろ、私はこの日で代表選手たちとはお別れ。水曜はオフで練習を休んだ後、木曜にはチームが大会中のベースキャンプとなるクラスノダールに飛んでしまうからなんですが、南アフリカにしろ、ブラジルにしろ、今回のロシアにしろ、現地まで追っかけていきたいファンにとって、W杯は旅費のハードルが高いのが何より辛いところじゃないでしょうか。

▽そんな貧乏な私ですが、先週末は近場にビーチがあるという誘惑に負けて、しかも国内でお手軽でしたからね。ビジャレアル(スペイン南東部)での代表親善試合を見に行ったんですが、実は初めてラ・セラミカを訪ねたのは彼らがアーセナルとのCL準決勝を戦った10年以上前。その頃は名称もエル・マドリガルだったんですが、まあ行き方は当たり前ですが変わりません。最寄りの都市、マドリッドからAVE(スペインの新幹線)で3時間程のカステジョンに宿を取り、セルカニアス(国鉄近郊路線)に乗って2駅目のVila-real(ビラ・レアル)駅で下車。スタジアムまでほぼ真っすぐな道を20分程、住宅街、商店街などを通り抜けて行くんですが、昔と違って楽になったのはgoogle mapのおかげで迷わないし、1時間に1本しかない電車の時刻表もrenfe(スペイン国鉄)のホームページですぐ見つかることぐらいだったかと。
▽ただ、要注意なのは帰りの時刻で午前零時前に終電となってしまうため、この辺はマドリッドのセルカニアスを使って行った場合のヘタフェやレガネスも同じなんですけどね。幸いスペイン代表の前日スタジアム練習は午後9時には終了。ロペテギ監督、デ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)、ルーカス・バスケス(レアル・マドリー)の記者会見があった後、まだCL決勝で負傷した太もものリハビリ中のカルバハル、先週金曜に合流したばかりのセルヒオ・ラモスとイスコ、3人のレアル・マドリー勢はお留守番となったものの、それ以外のメンバー全員が参加したシュート練習やpartidillo(パルティデージョ/ミニゲーム)などに応援に駆けつけたファン同様、私も心ゆくまで楽しむことができましたっけ。

▽え、その土曜の夜は丁度、リーガ2部最終節があったんじゃないかって?その通りで、前節1部復帰が決まったマドリッドの弟分、ラージョはジムナスティックに2-0で負けてしまったんですが、やはり昇格済みのウエスカもオビエドに負けたため、彼らは栄えある2部優勝でシーズンの幕を閉じることに。降格の危険があったアルコルコンも何とか無事に13位で残留を決めたんですが、まだ1部への最後の一席を争っているチームも4つあって、ヌマンシアvsサラゴサ、バジャドリッドvsスポルティングの組み合わせで今週、2試合制のプレーオフ第1戦が開催。その勝者同士が来週の木日に決勝と、昨季はヘタフェが辿った険しい道ですが、今回、はマドリッドのチームが関わっていないのは助かりますね。

▽そして翌日、昼過ぎまで雨が降るカステジョンのビーチを海水浴どころか、傘をさして散歩という大幅な予定変更を強いられた後、午後9時開始のスペインvsスイス戦に再びラ・セラミカに向かった私でしたが、おかげでマドリーのコラソン・クラシック・マッチを見逃すことに。アーセナルOBと対決した今回はラウールとグティがゴールを決め、2-1で勝利(https://descargapwebrealmadrid.akamaized.net/2018/06/03/e81a268b-9434-4124-9112-e0fc267ed705_1000k.mp4)したなんて聞くと、ちょっと損した気がしないでもないですが、ちなみに先週、スペイン代表の練習がラス・ロサスで行われていた時にはラウール、そしてサンティアゴ・ベルナベウでのチャリティマッチにも一緒に出場したシャビ・アロンソ、バプチスタらも監督ライセンス取得のため、協会本部ビルで授業を受けていたなんて偶然も。その講習はもう終わってしまったんですが、折しも彼らの古巣はジダン監督が電撃辞任してしまい、後任探しの真っただ中ですからね。

▽まだラウールやアロンソはプラクティスの期間が必要で、トップチームを率いることはできないんですが、グティなど2013年から、マドリーのユースを指揮していますからね。ここ2シーズンはフベニルA(ソラーリ監督率いるRMカスティージャの1つ下のチーム)で見事な成績も挙げていますし、繋ぎ人事でもいいから、そろそろ昇格なんていうのがあっていい?ジダン監督だけに終わらず、ゆくゆくは今となっては懐かしい、ギャラクティコ時代の選手たちが今度はベンチで躍動する姿を見たいというファンも結構、世間にはいるようですよ。

▽おっと、W杯に向けたスペインのテストマッチの話もしないといけません。ほぼ満員となったスタンドは序盤こそ、応援歌などで盛り上っていたんですが、時間が経過するうちにポゼッションは高くても、しっかり守る相手になかなかチャンスが作れないというスペインの欠点が露呈することに。それでもだんだん静かになってきたと感じていた前半29分、シルバ(マンチェスター・シティ)が右奥から中央に出したパスをオドリオソラ(レアル・ソシエダ)がエリア前でゲット。「No me lo he pensado, lo mejor era disparar para evitar la contra/ノー・メ・ロ・エ・ペンサードー、ロ・メホール・エラ・ディスパラール・パラ・エビタル・ラ・コントラ(考えなかった。一番いいのはカウンターを避けるためにシュートすることだったから)」と地面に落ちる前にそのボールを蹴ったところ、ゴールに入ってくれたから、黄色のビジャレアルのユニを着たファンも多くいた場内がどんなに盛り上がったことか。

▽ええ、カルバハルが、同僚のクリスチアーノ・ロナウドもこの月曜から合宿入りしたポルトガルとのW杯初戦までに回復しない場合、スタメン右SBをナチョ(マドリー)と争うことになる当人もこの代表初ゴールには「絶対、忘れない。イニエスタに『vaya golazo!/バジャ・ゴラソ(何てスーパーゴールだ)』と言われて感激したよ」と嬉しそうでしたっけ。その後は試合当日、ブスケツ(バルサ)が急性胃腸炎で休場となってしまったせいで、ボランチをチアゴ・アルカンタラ(バイエルン)と務めていたコケ(アトレティコ)もそれに続けとばかり、39分にはクラブの同僚、ジエゴ・コスタにクロスを送ったんですが、こちらはヘッドが枠に収まらず。

▽うーん、この日、もう1人のFWとして先発したのはイアゴ・アスパス(セルタ)だったんですが、ロペテギ監督は「Puede jugar en banda derecho/プエデ・フガール・エン・バンダ・デレッチャ(右サイドでもプレーできる)」と言っていたものの、どうやら得意なのはbanda izquierda/バンダ・イスキエルダ(左サイド)のようで、実際、後半になって、CL決勝ではベンチ待機となった本職のルーカス・バスケスと代わってからの方が、気心知れたアセンシオ(マドリー)も間もなくしてピッチに入ったからでしょうからね。スペインのプレーのレベルが上がったような気がしましたが、通算でシュート16回中、MFのイニエスタ(ヴィッセル神戸)が3回と最多だったのは微妙かもしれません。

▽え、それより問題なのは結局、それだけ撃っても1点しか取れなかったことじゃないかって?そうですね、そのイニエスタがファンの大歓声に送られて交代した後、このW杯では7という、2008年から2012年までの国際メジャートーナメント3連覇というスペイン黄金期のゴールの鬼、アトレティコの先輩でもあるビジャ(ニューヨーク・シティ)の背番号をつけることになったサウールがピッチに入るやいなや、最初にやったのがイエローカードをもらうことだったのはともかく、何せ、当人もクラブとはまったく違う代表サッカーに適応するのは「No es sencillo/ノー・エス・センシージョ(簡単ではない)」と火曜のメディアデーのインタビューでは認めていましたしね。

▽それでも「アトレティコの選手は長い間、このシステムやサッカー哲学、代表監督の時々の指導に従ってプレーしてきたのも本当さ。だから、いろんなことが可能になるんだよ」とフォローはしていましたが、この日はアトレティコ卒業後、マンチェスター・ユナイテッドの守護神となったデ・ヘアが後半17分に大チョンボ。ええ、リヒトシュタイナー(ユベントス)のシュートを不用意に弾き、こぼれ球をリカルド・ロドリゲス(ミラン)に押し込まれてスコアが同点になってしまったんですよ。

▽こういう場合、味方が追加点を取って、試合に勝っていればあまり気にすることはないんでですが、残念ながら、そのまま試合は1-1で終了。いえ、ミックスゾーンでは出身のエルチェから車で3時間と比較的近いせいか、親戚や友人に囲まれていたサウールに合流。コスタまで混じって談笑に花を咲かせていたデ・ヘアですから、当人も周りも「Mejor en un amistoso que en uno oficial. No me costo dormer/メホール・エン・ウン・アミストーソ・ケ・エン・ウノ・オフィシアル。ノー・メ・コストー・ドルミル(公式戦じゃなくて親善でミスする方がいい。眠るのに苦労はしなかったよ)」(デ・ヘア)というのが本音なんでしょうけどね。

▽そうは言っても3月にアルゼンチンに6-1とワンダ・メトロポリターノで勝った時、「このW杯ではゴールに不自由しない」と思った確信がちょっと揺らいでしまったのも確か。もちろん、ロシアではアトレティコのように貴重な1点を爪の垢に火を灯すように守って勝ってもいいんですけどね。ロペテギ監督などは「今日ウチが作ったチャンスの半分はきっと、別の日の試合でゴールになるだろう」と楽観的だったものの、実際、得点力って、スタメンにブスケツやイスコが入ることで劇的に改善してくれるんですかね。

▽そうそう、この金曜には日本代表との親善もあるため、追いついてスペインと引き分けたため、満足していたスイスのペトコビッチ監督の言葉も伝えておくことにすると、「ここ数日はハードトレーニングをしたため、次はもっと選手を代えないといけない。ロシアでは筋肉の状態がよりフレッシュでいられるようにね」とのこと。スペイン戦をケガで休んだジャカ(アーセナル)も火曜からはチーム練習に合流する予定なので、シャチリ(ストークシティ)だけでなく、相乗効果でもっと攻めてくるようになるかも。まあ本大会では別グループなので当面、ぶつかることはないはずですけどね。スペインが勝てなかったスイスに日本が勝てたら、リーガをよく知っている柴崎岳選手(ヘタフェ)や乾貴士選手(ベティス)にとっても大きな自信になるんじゃないでしょうか。

▽そして私も月曜にはマドリッドに戻り、火曜にはラス・ロサスでのメディアデーを取材に行ったんですが、最後にお伝えしたいのはイニエスタのコメント。ええ、来季からはヴィッセル神戸に移籍することになり、一緒に彼を囲んでいたスペイン人記者たちも代表の先行きを懸念したんでしょうかね。W杯後に関しての質問には、「代表に呼ばれるのは過去の実績じゃなくて、その時のコンディションによるからね。このW杯がおそらく自分の最後の代表戦となるだろうけど、大会が終わって、内容を分析して、新天地でのプレーが始まったら、もう1度どういう状況にあるのか、考えられるだろう。バルサを出たら難しいのはわかるけど、代表を続ける可能性は否定しないよ」とのこと。

▽昨年はビジャの顔見せ復帰なんていうのもありましたしね。CL3連覇を花道にしたジダン監督のように、スペインが優勝したら、イニエスタもそれが代表引退のいい機会になってしまうのかもしれませんが、まだそれは先の話。とはいえ、昨年までの予選や日曜のスイス戦を見る限り、イニエスタやシルバといったベテランの力がまだまだ必要なチームに見えますが、果たして今回のW杯はどんな結果になることやら。4年前の苦い思い出もありますし、まずはポルトガル、イラン、モロッコ戦に勝ってグループリーグを通過するところから目指してもらいたいものですね。

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