【原ゆみこのマドリッド】W杯はまだ遠い…

2018.03.27 16:45 Tue
▽「別に隠す程のこともないのにね」そんな風に私が文句を言っていたのは月曜日、アルゼンチン代表のサンパオリ監督がワンダ・メトロポリターノで会見すると聞いたため、スペイン代表の公開練習より早めに行ってみたところ、いえ、当人は30分以上、母国やカタルーニャ(バルセロナのある州)のメディアから、次から次へと飛び交う質問に淡々と応答。その半分以上が先週金曜、エティハド・スタジアムのパルコ(貴賓席)でアグエロ(マンチェスター・シティ)と一緒にイタリアに2-0と勝った試合を眺めていたメッシが、「火曜の親善試合でプレーできるのかどうか」だったのはともかく、肝心のチームの方はこの日もバルデベバス(バラハス空港の近く)にあるレアル・マドリーの練習場で非公開セッションだった上、記者会見で話す選手を1人も連れて来ていなかったから。

▽おかげでこちらも当てが外れてしまったんですが、とりあえず、スペイン代表の試合は11月の親善以来、久しぶりということで、先週のドイツ戦の様子から話すことにすると。この日のロペテギ監督は大方の先発予想を大きく外してくれて、ええ、アトレティコのFIFA処分が明けて、この1月からプレーを再開。おかげで代表招集は9カ月ぶりながら、今回はモラタ(チェルシー)が呼ばれず、当人は双子を妊娠中のイタリア人モデルの彼女、アリス・カンペッロさんと一緒にバケーションに行ってしまったこともあり(https://www.instagram.com/p/BgvW-lFHTYP/?hl=ja&taken-by=alvaromorata)、ジエゴ・コスタのスタメンCF起用という説が多かったんですけどね。ドュッセルドルフのエスプリット・アレナのピッチでイニエスタ(バルサ)、イスコ(レアル・マドリー)、シルバ(マンチェスター・シティ)らと並び、himno(イムノー/国歌)を聞いたのはロドリゴ(バレンシア)。

▽でもこれがバッチリ当たったんです!そう開始5分、スローインからボールを持ったイニエスタがエリア内のロドリゴにスルーパス。そのまま、フンメルス、ボアテングのバイエルンCBコンビの裏を取った彼がシュートを決め、あっさり先制点をゲットしているんですから、ビックリしたの何のって。ただねえ、その後も軽快にパスを繋いでいたスペインでしたが、チャンスはほとんど生まれず、前半34分にはトマス・ミュラー(バイエルン)にエリア前から、いえ、GKデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)がまだW杯用のマッチボール、テルスター18に慣れていなかったせいもありますよ。あの長い腕でも届かないgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決められて、同点に追いつかれてしまうことに。
▽1-1のまま始まった後半、スペインはバルベルデ監督の下でも今季は時間限定で妙技を見せてくれるイニエスタに代え、サウール(アトレティコ)を投入。チアゴ・アルカンタラ(バイエルン)から、現在、負傷中で参加していないブスケツ(バルサ)の役割を引き継ぐことになったんですが、同じボランチでもシメオネ監督のチームとスペイン代表では勝手が違ったよう。具合の悪くなったピケ(バルサ)がナチョ(マドリー)に代わったことも重なって、幾度かDFラインに混乱を巻き起こした後、ケガをしたケディラ(ユベントス)がギュンドガン(マンチェスター・シティ)と交代する間にロペテギ監督から注意を受けていましたが、とにかく相手は強豪ドイツですからね。

▽この日、代表150試合出場の節目に達した百戦錬磨のキャプテン、セルヒオ・ラモス(マドリー)も「Alemania es la actual campeona del mundo y se palpa en cada acción/アレマニア・エス・ラ・アクトゥアル・カンペオナ・デル・ムンドー・イ・セ・パルパ・エン・カーダ・アクシオン(ドイツは現W杯チャンピオン、1つ1つのプレーにそれを感じる)」と言っていたぐらい高レベルのチームとなれば、サウールでは時に対応できないのも仕方なかったかと。ええ、残り10分にはビジャレアルで同職を務めるロドリが代表デビュー、一番無難にこなしたと言われているものの、本大会のここ一番でブスケツの代わりとなるボランチはいないというのは、この日の試合でもわかりましたっけ。
▽まあ、それはさておき、この後半には両チームのGKが活躍。片や10分にはゴール前からのイスコのシュートをテア・シュテーゲン(バルサ)がparadon(パラドン/スーパーセーブ)したかと思えば、その1分後にはデ・ヘアがギュンドガンの一撃をそらし、更にフンメルスのヘッドもセーブ。それこそ後でロペテギ監督が、「El partido ha sido bonito para el espectador, de juego abierto y con oportunidades/エル・パルティーオー・ア・シードー・ボニートー・パラ・エル・エスペクタドール、デ・フエゴ・アビエルトー・イ・コン・オポルトゥニダーデス(観客にとって楽しい試合だった。オープンなプレーとチャンスがあって)」と言っていた通りだったんですが、残念だったのはせっかく20分にはロドリゴと交代でピッチに入りながら、コスタが降って湧いた絶好機をモノにできず。シュートをフンメルスに当ててしまい、勝ち越し点を取れなかったことかと。

▽うーん、ここ2試合程、彼はアトレティコでも目立つ働きをしていませんしね。丁度、そういう調子の波に当たったのがアンラッキーでしたが、このところ、マドリーのプランBからAに昇格したアセンシオ&ルーカス・バスケスの両翼を終盤には採用しながらも、スペインに成す術はなし。結局、そのまま1-1の引き分けで終了したのには、レーブ監督もロペテギ監督もいいゲームだったと互いに満足感を表明し、ラモスも「Hoy hemos hecho cosas al alcance de muy pocas selecciones/オイ・エッモス・エッチョー・コーサス・アル・アルカンセ・デ・ムイ・ポカス・セレクシオネス(今日のウチは僅かな代表にしかできないことをやった)」と胸を張っていましたが、でもお。ロシアでのW杯を勝ち抜いていくと、ドイツとは準決勝で当たる可能性が大。その折には引き分けだと延長戦、PK戦で勝負になりますからね。

▽できれば、本番ではもうちょっと攻守にレベルアップして、90分で勝てるようになっていることを祈っていますが、さて。前回のブラジル大会はグループリーグ敗退、2016年のユーロもベスト16で敗退したスペインとなれば、今から「Vamos al Mundial para ganarlo/バモス・アル・ムンディアル・パラ・ガナールロ(W杯には優勝するために行くつもり)」なんて、コケ(トレティコ)のようにあまり大風呂敷は広げない方がいいかも。まずはポルトガル、イラン、モロッコと当たるグループリーグを突破することに専念しないといけませんよ。

▽そしてその夜のうちにマドリッドに戻ったチームは翌土曜、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設のグラウンドで今合宿、初めての公開セッションを実施したんですが、晴れてこそいたものの、この日は歩いていて飛ばされそうになる程の強風が吹いていたのが災いしたんでしょうかね。意外とスタンドに詰めかけたファンも少なめだったんですが、前日先発組のイニエスタやピケ、ラモス、ジョルディ・アルバ(バルサ)らはグラウンドに姿も見せず、シルバなんて、最近、低体重で生まれたお子さんの様子を見るため、すでに代表を離脱していたことが発覚。

▽おまけにコケやサウール、イスコ、ロドリゴらもピッチの横幅を一往復しただけですぐにジムに直行してしまい、コスタ、アセンシオ、ルーカス・バスケス、加えて現在、リーガでスペイン人中、最多得点となる16ゴールを挙げているイアゴ・アスパス(セルタ)などが1/4ピッチのpartidillo(パルティディージョ/ミニゲーム)でビシバシ、ネットを揺らしているのは見られたものの、ちょっとメンバー的に寂しかったのは否めないかと。そのセッション終了後には24時間のデイオフをもらい、選手たちは三々五々、休日を楽しんだんですが、日曜の午後1時半には再び協会施設内のホテルに集合。例外はラモスで、芸能人の彼女、ピラル・ルビオさんもセルヒオ・ジュニア君、マテオ君に続いて3人目ともなると、上手くタイミングを合わせることができるんですかね。

▽その日曜の午後に3男のアレハンドロ君を出産するのに立ち会ったため(https://www.instagram.com/p/BgwiCa_nfTX/?hl=es&taken-by=sergioramos)、彼だけは午後7時頃の遅い合宿帰還となったとか。まあ、今回は親善試合オンリーですし、チームメートも翌月曜、午後7時半からのアルゼンチン戦に向けて、スタジアム練習をするまで、W杯期間に流すCM撮りなどで明け暮れていたため、別に不都合はなかったんでしょうが、私が驚かされたのはその公開セッション見学の整理券を協会が当日、朝から配布したところ、スタジアムの窓口に長蛇の列ができていたこと。いやあ、試合のチケットの方も金曜に窓口販売が始まった途端、売り切れてしまったそうですしね。どうやら強敵イタリアを退けて、予選グループ首位でW杯出場を勝ち取ったのが良かったのか、再び国内での代表人気が回復しつつあるのは喜ばしい限りかと。

▽そしてサンパオリ監督が「Hoy entreno normal, con el grupo. Esta bien para jugar/オイ・エントレノ・ノルマル、コン・エル・グルッポ。エスタ・ビエン・パラ・フガール(今日は普通にグループに入って練習した。プレーできる状態にある)」と、筋肉痛が心配されていたメッシが出場できることを明言。続けて、「スペインは2014年のW杯で自分が率いたチリに負けた頃より、均質的なチームになっている。今は他のところよりずっと上だ。Demasiada superioridad al resto de selecciones/デマシアダスペリオリダッド・アル・レスト・デ・セレクシオネス(その他の代表に比べて優位すぎるぐらい)」と火曜の対戦相手に賛辞を贈るのを聞いた後、ワンダのプレスルームではロペテギ監督やデ・ヘア、チアゴ・アルカンタラらが会見することに。

▽元アトレティコのGKなど、一応、古巣の新しいホームで初めてプレーすることになるためか、「Como portero enfrentarme a Messi es un reto/コモ・ポルテーロ・エンフレンタールメ・ア・メッシ・エス・ウン・レトー(GKとして、メッシと対戦するのはチャレンジ)」と勇敢なところを見せていましたが、果たしてどうなることやら。およそ2万人のファンの前で行われた公開セッションでのミニゲームは先発組と控え組を混ぜたチーム編成だったため、あまりスタメン予想には自信がないんですが、顔馴染みの代表番ラジオ記者によると、ロペテギ監督はあまりドイツ戦からメンバーをいじらないだろうとのこと。シルバが抜けた穴はアセンシオで埋め、CFをロドリゴからコスタに代える程度じゃないかと言っていましたが、ピケには練習中からpito(ピト/ブーイング)が飛んでいたため、CBはナチョ先発の方が好ましいかも。

▽一方のアルゼンチンはすでにアグエロとディ・マリア(PSG)が負傷でチームを離れており、いえ、土曜の会見でサウールなどは、「Si no esta Messi estara Correrita/シー・ノー・エスタ・メッシ・エスタラ・コレリータ(メッシがいなくてもコレアがいる)」と、クラブの同僚を立てていたんですけどね。コレアのことはサンパオリ監督も交代要員のオプションと考えているようなので、やはりメッシとイグアイン(ユベントス)頼みになる?何にせよ、まだW杯までは3カ月ありますしね。火曜午後9時30分(日本時間翌午前4時30分、スペインは今週から夏時間)からの試合では勝敗より、来週にはCLやヨーロッパリーグの準々決勝1stレグを控えているチームも多いため、選手たちがケガなくプレーしてくれることが一番ですよね。

▽え、それってやっぱり、月曜のチャイナカップ決勝で、先週は中国戦でハットトリックを挙げたベイル(マドリー)のいるウェールズにカバーニ(PSG)のゴールでウルグアイが勝ったものの、アトレティコのヒメネスが左足を打撲してしまったから言っているんじゃないのかって?まあ、そうなんですが、実は彼、準決勝のチェコ戦でも傷を負ってしまい、根性ですぐ復帰しているため、週末のデポルティボ戦に影響するかはまだわからないんですけどね。代表によっては、スロベニアのように最近、臀部の痛みに悩まされているGKオブラクを2戦目免除で返してくれたところもあるため、アメリカで親善試合中のクロアチアがモドリッチだけを解放。マドリーの後輩、コバチッチはいいとしても、「少人数精鋭チーム」のアトレティコの貴重な右SB、ベルサイコが水曜の2試合目、メキシコ戦にも付き合わないといけないというのはちょっと、不安な気がしないでもないかと。

▽更にマドリーにとって朗報なのは、クリスチアーノ・ロナウドが月曜に一足先に2つ目の親善試合を終え、帰って来られることなんですが、最初のエジプト戦こそ、ロスタイムに2ゴール挙げて、ポルトガルの逆転勝利に花丸貢献したものの、オランダ戦ではノーゴールでチームも3-0と完敗。あまり当人の機嫌は良くないかもしれませんが、バルデベバスでのメッシとのニアミスも避けられましたしね。火曜からは1週間、寂しかったジダン監督のセッションを賑わせてくれることかと。ただし、お隣さんのマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場も同様ですが、各国代表に招集されている選手の大多数が戻って来るのは水曜となるため、現地に行ってサインや写真ゲットを狙うファンは気をつけた方がいいですよ。

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