【原ゆみこのマドリッド】勝てば何でも微笑ましく見える…

2018.02.17 14:30 Sat
「可愛いと言えばそうかもしれないけど」そんな風に私が首を傾げていたのは金曜日、チャイニーズ・ニューイヤーを祝うアトレティコのビデオを見た時のことでした。いやあ、昨今はどこのクラブも中国人ファンを増やそうと熱心で、この時期は選手たちが中国語で新年おめでとうと言っている映像が沢山出るんですけどね。今回のアトレティコ版は、いえ、先日、大連万達(ワンダ)グループがスタジアムのスポンサー契約は続けるものの、持ち株をイスラエルの企業に売却。そのせいで制作費が減ったなんてことはないと思いますが、戌年にちなんだ企画として、サウール、カラスコ、ヒメネスがペットのワンちゃんたちを紹介って、あまりに安易すぎる企画な気がしたから。

▽え、今週はヨーロッパの大会が再開したせいで、選手たちに中国語を覚えてもらう時間がなかったんじゃないかって?そうですね、お隣さんなども現在、解説者をしているロベルト・カルロスが主役。さり気にCLトロフィーが神々しく12個並んだクラブ博物館内の風景も入れ、こういうのを見て駆けつけたファンがまた、サンティアゴ・ベルナベウ前のツアーチケット売り場の行列を長くするんだなと思いましたが、まあそれはそれ。まずはレアル・マドリーの今季全てが懸かった水曜のCL16強対決PSG戦1stレグがどうだったか、お伝えすると。
▽セルヒオ・ラモスの呼びかけにファンが応え、その日はチームバスがスタジアム入りする午後7時15分頃には周辺の道路が人で溢れんばかりに。予想通り、bengala(ベンガラ/発煙筒)が何本も赤々と燃え上がっている光景を近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で眺めてから、観戦に向かった私でしたが、何せフランスからPSGの応援に来るサポーター4000人中、1割ぐらいウルトラ(過激なファン)が混じっていると聞いていましたからね。ビジターファン区画に繋がるTorre D(タワーD)の入り口もボディチェックが厳しいせいか、物凄い渋滞ぶりでしたが、幸い大きな騒ぎはなかったよう。私も無事にスタンドの席に着くことができたんですが…。

▽fondo sur/フォンド・スール(ゴール裏南側席)に巨大垂れ幕がかかり、ビッグマッチ特有の華々しさで幕を開けた試合の方は、いえ、ジダン監督の「Jugamos cuatro en el medio contra tres de ellos/フガモス・クアトロ・エン・エル・メディオ・コントラ・トレス・デ・エジョス(相手の3人に対し、ウチは4人を中盤に入れてプレーした)」という作戦でイスコがトップ下を務めたため、BBC(ベイル、ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)対MCN(ムバッペ、カバーニ、ネイマール)のガチンコ対決にならなかったせいではないんでしょうけどね。最初のゴールが決まったのは前半33分と遅めで、しかも今季のベルナベウでは珍しいことではないんですが、ムバッペのクロスをネイマールが戻し、フリーだったラビオが撃ち込んで先制されてしまったから、さあ大変!
▽でも大丈夫。ハーフタイムに入る前にクロースがロ・セルソにエリア内で倒されてPKをゲットすると、ロナウドがしっかり決めて、1-1の同点で折り返したんですが、後半、両チームの明暗を分けたのはそれぞれの交代策でした。そう、アウェイゴール付きの引き分けを良しとしたか、PSGのエメリ監督が20分にはカバーニをムニエに代え、ダニエウ・アウベルとの右サイドダブルSB制を敷いたのとは違い、ジダン監督はまずはベンゼマをベイルに。とはいえ、最後の最後にモノを言ったのは30分過ぎ、カセミロとイスコを引き上げ、ルーカス・バスケスとアセンシオをサイドに投入したことで38分、後者のラストパスをGKアレオラが弾いたところ、詰めていたロナウドのヒザに当たり、勝ち越しゴールが入るとは何てラッキーなんでしょう。

▽つまりこういうことがあるから、「Esto es la Champions y el Madrid tiene experiencia/エストー・エス・ラ・チャンポンズ・イ・エル・マドリッド・ティエネ・エクスペリエンシア(これはCLでマドリーには経験がある)」(ロナウド)と威張れるんだと思いますが、これで当人はマドリーに来てからのCL得点記録を101ゴールに更新。その3分後にも再びアセンシオが違いを見せつけ、今度はマルセロにアシストすると、とうとう3-1という、かなり安全なスコアで勝利したとなれば、私も含め、もしやこの日で今季のCLナイトは終わりかもしれないと恐れていたマドリーファンたちがどんなに喜んだことか。
▽いえ、後で帽子をかぶった粋な姿でミックスゾーンに現れたラモスは、「Al Real Madrid no se le puede dar por muerto/アル・レアル・マドリッド・ノー・セ・レ・プエデ・ダール・ポル・ムエルトー(レアル・マドリーは死んだものと見なすことはできない)」と言ってはいたものの、この手の終盤のremontada(レモンターダ/逆手劇)は今季、珍しいんですけどね。やはり「Este club tiene 12 Champions por algo/エステクルブ・ティエネ・ドセ・チャンピオンズ・ポル・アルゴ(このクラブがCLに12回優勝しているには理由がある)」(ジダン監督)ということなのか、前評判は高かったPSGですが、ここぞという時のマドリーの強さには私も感心するばかりだったかと。
▽ただ、エメリ監督を始め、相手側からはクロースへのペナルティや、逆にエリア内でラモスの腕にボールが当たったプレーでPKをもらえなかったことなど、ジャッジに対する文句が山積みで、いえ、結局、せっかくこの冬獲ったラス・ディアラではなく、若いロ・セルソを先発させたり、今年になって絶好調のディ・マリアを最後まで投入せず、交代枠を余らせたりした采配が災いした面もあると思うんですけどね。時折、個人技で光っただけのネイマールなど、3月6日の2ndレグで逆転突破を期して、「El ano pasado tuvimos una situacion mas dificil para poder pasar/エル・アーニョ・パサードー・トゥビモス・ウナ・シトゥアシオン・マス・デフィシル・パラ・ポデール・パサール(昨季は突破にもっと難しい状況だった)」と強気でしたが、いや、それ、バルサがパリで4-0と大敗して、カンプ・ノウで6-1と逆転した16強対決のことですか?

▽うーん、その時は2得点した当人が大逆転の立役者になっていましたが、今回は横にメッシもルイス・スアレスもイニエスタもいないとなると、さてどうなることやら。一方、マドリーも嬉しいことばかりではなく、金曜にはクロースが試合中にムバッペとぶつかった際、左ヒザを痛め、その日は走行距離13キロとチーム一の健脚ぶり、ミックスゾーンでもドイツ人記者にたちと楽しそうに話していたものの、2ndレグまでに回復できるか、ギリギリのところだとか。いえ、それまでのリーガ戦5試合はこの日曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのベティス戦を含め、首位のバルサとの差も縮まったとはいえ、勝ち点17と凄まじいものがあるため、生ぬるく来季CL出場圏内の4位維持に努めてくれればいいんですけどね。セバージョスのケガも治り、コバチッチやマルコス・ジョレンテら、出場したい中盤の選手には事欠かないとはいえ、クロースのプレーが見られないのは残念なファンも多いかと。

▽そして翌木曜には、キラキラしたCLの舞台と昨季中に縁を切ったアトレティコがヨーロッパリーグ32強対決1stレグでコペンハーゲンと顔合わせ。それでもパルケン・スタディオンのサポーターがキックオフ前、大弾幕やスモークで場を盛り上げてくれたおかげもあったんですかね。あれだけ前夜、マドリーが注目された後、ワンランク下の大会で戦う肩身の狭い思いを忘れられたか、序盤からグリーズマンやサウールがチャンスを迎えていた彼らだったんですが、前半14分、エリア内でアンケルセンのシュートをフィッシャーがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で軌道を変え、当日、オブラクの風邪で先発を任されたGKモヤを破ってしまったから、驚いたの何のって。

▽いやあ、この遠征にはふくらはぎの筋肉痛でジエゴ・コスタも参加しておらず、CLグループリーグではアゼルバイジャンのカラバフに1度も勝てなかったアトレティコですからね。もうこの時点で、1-1で帰って来てくれたら御の字と気弱になった私だったんですが、どうやら彼らを見損なっていたよう。ええ、早くも21分にはグリーズマンのクロスをサウールがヘッドで叩き込み、スコアが同点に。37分にはグリーズマン、リュカが連携し、最後はゴール前からガメイロが決めて見事に逆転って、もしやコペンハーゲンは本当に格下だった?

▽おまけにピッチに激しい雪が降り注ぐ中、後でトマスも「Hacia frio, pero corriendo no hace tanto/アシア・フリオ、ペロ・コリンドー・ノー・アセ・タントー(寒かったけど、走っているとそうでもなかった)」と言っていたように前線から、勤勉に全員がプレスをかける作戦が成功したんでしょうかね。後半にもアトレティコは得点してくれたんです。ええ、26分にはコレアから代わったカラスコからスルーパスを受けたグリーズマンが3点目を挙げ、32分にはガメイロ同様、セビージャで前人未踏の3連覇を達成と、この大会のスペシャリストと言っていいビトロが相手にとって、ほぼ死刑宣告に等しい4点目をゲット。最後は1-4の勝利で終わり、いえ、相手のソルバッケン監督が「アトレティコはウチが当たった最高のチームの1つ。誰も休まず、ずっと働き続けているし、マドリッドの隣人に勝ち点差10つけているのもわかる」と褒めていたのは、多分にお世辞も混じっていたんでしょうけどね。

「マドリッドでは違うメンバーが出るかもしれない」ともう逆転を諦め、ローテーションに出ることも仄めかしていたため、来週木曜午後7時からのワンダ・メトロポリターノでの2ndレグは大船に乗ったつもりでいいかも。ただちょっと気になるのはアトレティコファンの反応で、AS(スポーツ紙)ではすでに1万2000枚売れて、残りのチケットは4000枚程と、満員近くなるような記事が出ていましたけどね。私の経験から言うと、最後に戦った2013年EL決勝トーナメントなどもそうでしたが、32強対決辺りではスタンドはガラガラ。1月のコパ・デル・レイでのエルチェ(2部B)戦やジェイダ(同)戦のように当日券も出るんじゃないかと思いますが、さて。来週は水曜にブタルケで延期されていたリーガのレガネスvsマドリー戦もあるものの、そちらはチケット完売が見込まれているため、ミッドウィークにマドリッドを訪れるファンにはいいサッカー観戦の機会になるんじゃないですかね。

▽ちなみに今週末のアトレティコは日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)から、アスレティックをホームに迎えるんですが、実は相手も同じ木曜、雪の降るロシアでスパルタク・モスクワとのEL32強1stレグを戦ったばかり。リヨンに3-1で負けたビジャレアル、アノエタで後半ロスタイムに南野拓実選手にゴールを決められ、ザルツブルクと土壇場で2-2と引き分けたレアル・ソシエダなどとは違い、この11日に37歳となったアドゥリスの2得点などで1-3と快勝してきたものの、この試合では彼と共にラウール・ガルシアも出場停止になるのはラッキーだったかと。金曜にはジエゴ・コスタも練習に合流し、土曜のエイバル戦の結果次第ではバルサとの差を勝ち点7から更に縮めるチャンスと、アトレティコファンも意気込んでいるんですが…うーん、そう上手く事が運ぶのかどうか。

▽そしてマドリッドの弟分チームは金曜と月曜の平日開催という気の毒な扱いを受けている今節のリーガなんですが、まだコパ酔いが抜けていなかったか、レガネスはジローナに3-0で先程完敗したばかり。何せ、年明けから準決勝まで、ずっと週2試合のハードスケジュールをこなしたせいで負傷者が続発していますし、まだ降格圏までは勝ち点差10以上とちょっと余裕があるのも油断に繋がった可能性はありますけどね。来週はミッドウィークのマドリー戦、そして土曜にはラス・パルマス戦と続くため、後悔する前に早く調子を取り戻せるといいのですが。

▽一方、月曜午後9時(日本時間翌午前5時)からセルタをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えるヘタフェも前節、カンプ・ノウでバルサからスコアレスドローをもぎ取った直後なだけに別な意味での二日酔いが心配なんですが、そこはよく考えて。何せ、首位相手から勝ち点1ゲットはお手柄ですが、その前から彼らは引き分けが続き、ここまで4連続ドローですからね。そろそろ毎試合きっちり勝ち点3を溜めて、速やかに1部残留ライン突破に漕ぎつけてもらいたいかと。前節では先発に返り咲いた柴崎岳選手が再び、スタメンに入れるのかもファンには気になるところでしょうか。

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