【六川亨の日本サッカーの歩み】平昌五輪開幕、南北合同チーム結成で思い出す北朝鮮の3人枠

2018.02.05 18:00 Mon
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▽いよいよ今週金曜の9日から、平昌冬季五輪が開幕する。東アジアでの国際大会は時差を気にせず観戦できるのが一番の利点と言えるだろう。それは2年後の東京五輪にも当てはまるので、多くのファンが様々はオリンピック・パラリンピックを楽しむことになるだろう。
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▽そんな平昌五輪で、いまだ不透明なのが北朝鮮の参加だ。女子アイスホッケーの登録枠はどのように対処するのか。すでに決まっている韓国代表に北朝鮮の選手を加えたら、1ヶ国だけ大所帯になり不公平感は否めない。だからといって韓国の選手を削って北朝鮮の選手と入れ替えるのも、韓国のファンからすれば納得できない措置だろう。▽過去88年のソウル五輪、02年の日韓W杯の際も韓国は北朝鮮に合同チームの結成を呼びかけてきた。それは韓国で開催される国際大会を無事に開催するための、方便であったような気がする。融和ムードを提案しつつ、北朝鮮は参加を拒むだろうという推測での合同チーム結成だった。
▽核開発を巡り対決姿勢を強めている北朝鮮だけに、これまで以上に頑なな態度で参加を拒否する――と思っていたところ、思惑が外れたような気がしてならない。雪不足に加えて強風も吹く、過去、最極寒の地で大なわれる平昌五輪。果たして大会は成功裏に終わるのだろうか。

▽といったところで前置きが長くなってしまったが、今回はサッカー北朝鮮代表についてのトリビアを紹介しよう。昨年12月のEAFF E-1選手権での北朝鮮は、最下位に終わったものの讃岐所属のボランチ李榮直(リ・ヨンジン)の活躍が評価され、東京Vへの移籍を果たした。彼以外にも、町田DF金聖基(キム・ソンギ)、熊本FW安柄俊(アン・ビョンジュン)という3人の在日Jリーガー選手がいた。
▽北朝鮮のサッカー事情詳しい知人が教えてくれたのだが、いつしか北朝鮮には「3人のJリーガー枠」というものができていたという。E-1選手権の日本戦でも、アウェーのゴール裏ではたぶん東京や大阪の朝鮮高級学級の生徒とおぼしい女性たちが、きれいなコーラスで声援を送っていた。日本で試合をする際に、母校のOBが代表チームにいれば応援にも熱が入るのだろう。

▽そんな「Jリーガー枠」のピークが10年南アW杯の北朝鮮代表だった。MF安英学(アン・ヨンハ/当時は大宮)、MF梁勇基(リャン・ヨンギ/仙台)、FW鄭大世(チョン・テセ/川崎F)と3人の主力が母国を44年ぶりのW杯に導いた。

▽では、いつから代表チームに「在日北朝鮮人枠」ができたのかというと、明確な記録はない。初めて在日朝鮮人でありながら代表チームに抜擢されて日本戦に出場したのは、85年メキシコW杯1次予選に出場した、当時は在日朝鮮蹴球団に所属していた金光浩(キム・ガンホ)さんだった。大型FWで、日本代表DF加藤久さんとは名勝負を繰り広げたものだ。

▽ただ、当時は日本がW杯1次予選で北朝鮮を1勝1敗で下したものの、実力的には北朝鮮の方が上だったので、あえて日本在住の選手を起用する必要はなかっただろう。逆に言うと、それだけ金光浩さんは抜きん出た存在だったとも言える。

▽その後もイタリアW杯予選ではキム・ジュソンさんやキム・シノンさんらが北朝鮮の代表チームで活躍するなど、その存在感を発揮し始める。そしてJリーグ誕生後は、年を重ねるごとに韓国代表もJリーグに参戦し、切磋琢磨して今日につながっている。

▽スポーツが外交に寄与する時代は過ぎ、新たにドーピングという国際的な問題も持ち上がっている。平昌五輪は競技はもちろんのこと、運営やインフラ、ボランティア活動といったあらゆる面で無事に閉幕を迎えることができるのか。それはそのまま、20年の東京五輪の課題にもつながるだけに、競技を楽しみつつ注目したい。

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