【六川亨の日本サッカー見聞録】サッカーファミリーミーティングで感じた東京都会長の決意

2018.01.13 14:30 Sat
Getty Images
▽JFA(日本サッカー協会)は1月12日、JFAハウスにて東京都を対象にした「サッカーファミリー タウンミーティング」を実施した。今回で41回目となる同会は、47都道府県を対象に行われていて、田嶋JFA会長によるVTRを使った基調講演や東京都リーグ関係者からの質疑に応答するというもの。
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▽冒頭では上野・東京都サッカー協会会長が挨拶に立ち、「東京都の選手・審判を含めた登録数12万人は全国1位だが、施設は十分と言えず、サッカー専用スタジアムが不足している。それが都でプロを目指すチームの壁になっている。また3年前より4種(U-12)の登録数が減ってきているのも深刻な問題」と現状を説明した。▽これについては新宿区リーグの関係者が「新宿は少子高齢化による人口減少で年々登録している」と窮状を訴えた。
▽これに対し田嶋会長は、小学生のサッカー人口の減少について「かつて文科省は体育の授業にサッカーが必須科目に入っていた。しかし近年、指導要領の変更があり、サッカーではなく球技となったため、先生の自主判断に任されているのも減少の一員」と指摘。このためJFAとしては、幼稚園や小学生の低学年を対象にコーチを派遣して巡回指導することで、サッカーに触れる機会を増やすプランを披露した。

▽さらに付け加えて、過去の例からサッカーの登録選手を増やすのに一番効果があるのは、「W杯で日本が勝つこと」と日本代表の活躍にも期待した。ちなみに日本がW杯出場を逃せば20億円の収入減で、これはJFAの年間予算の10パーセントに当たるそうだ。いかにW杯が、予選も含めてJFAの財政を支えているかが分かる。
▽FIFA(国際サッカー連盟)がW杯での収入でアンダーカテゴリーのW杯や女子のW杯を支えているように、JFAもW杯での収入がアンダーカテゴリーのW杯と女子のW杯を支えていると言える。

▽田嶋会長は、昨年はU-17日本代表とU-20日本代表がW杯に出場したことで、デュエルやパススピードが遅れていることを再確認したとVTRを使って報告した。世界基準での基礎技術の重要性を説きつつ、一番強化が遅れているのはなでしこジャパンとの認識を示した。確かに、かつては世界1になったものの、近年のFIFAランクは下降する一方だ。

▽その一因として、第3種(中学生年代)の立ち後れを指摘した。サッカーをやりたくても女子サッカーのできる中学校が少ない。正月に行われた女子の高校選手権は民放がTV中継するなど、年々活況を呈している一方、中学でサッカーのできる環境は限られている。

▽そこで田嶋会長は文科省に、国体での少年女子の創設を働きかけるプランを明らかにした。現在、男子は成年と少年の2部あるものの、女子は成年しかない。バスケットボールやハンドボールは成年と少年があるため、女子サッカーも少年(U-16)の部を創設することで、国体の開催県を中心に中学生年代の女子サッカーの活性化を図ろうという狙いだ。

▽これは上手いやり方かもしれない。国体は、サッカー界においては注目度の低い大会ではあるが、開催県にとっては日本1を目指す一大イベントであり、選手の育成や獲得に数年前から準備する。女子サッカーで優勝できるならと強化に力を入れる県も出て来るだろう。JFAが強化の先頭に立つのはもちろんだが、日本は高校選手権を例に出すまでもなく、学校スポーツが強化・育成の一翼を担ってきたのは紛れもない事実だ。その相乗効果を期待してのプランでもあるだろう。

▽最後に、閉会の挨拶に立った上野会長は、次の様に明言した。「2020年に東京五輪が開催されます。でも、五輪が東京に来ても新しいサッカー専用スタジアムはできない。これまでも公共団体に依頼してもダメだった。そこで全額を公共団体に頼るのではなく、都協会も応分の負担をし、皆さんの寄付を募り、借金をしてでも東京都にサッカー専用スタジアムを造りたい」と。

▽その意気や、よしではないだろうか。と同時に、上野会長の冒頭の挨拶と閉会のスタジアムへの思いを聞き思い浮かべたのが、去年から噂になっている東京に新スタジアム建設の動きである。

▽代々木公園の外れ、NHKの裏手にあるアンツーカーの陸上トラックと隣接する土のサッカー場を、3万人規模のサッカー専用スタジアムに転用する話だ。すでに小池都知事はゴーサインを出していて、関係者が「都知事在任中に決めたい」という話も聞いた。

▽その話の実現性を、閉会後に旧知の知人に聞いたところ、「それはありえない。陸上トラックは“織田フィールド"と言って陸連(日本陸上競技連盟)の聖地。彼らがそこを手放すことはないし、東京五輪では陸上の競技の練習場になっている。スタジアム建設の話はJ1クラブの親会社が言っているだけではないでしょうか」との返事だった。

▽正直、期待していただけに、ガッカリした。しかしながら、それが本当なら、上野会長はそれを承知で東京都に新スタジアム建設プランを宣言したのではないだろうか。その心意気は、やっぱり都民としては支持したい。

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