【六川亨の日本サッカー見聞録】東アジア選手権にまつわるエピソード
2017.12.07 18:30 Thu
▽いよいよ明日からEAFF E-1選手権が始まる。といってもE-1選手権と聞いてピンとこない読者も多いのではないだろうか。取材する方にしても馴染みがない。これは2002年の日韓W杯後、2003年に東アジアの競技力向上のため東アジアサッカー連盟を設立し、日本、韓国、中国に加えて予選を突破した4チームによる新設された大会だ。
▽中東では湾岸諸国によるガルフカップが1970年にスタートし、クウェートが最多10回の優勝を誇っているものの、近年はカタールやUAEの台頭が目立つ。東南アジアでも1996年から予選を勝ち抜いた8チームによる大会が開催されている。最多優勝はタイの5回で、シンガポールがタイに次いで4回の優勝を果たしている。
▽日本は韓国との定期戦を1972年から実施しているものの、それが東アジアの大会に広がなかったのは、中国や北朝鮮が閉鎖的な外交政策を取っていたことも否めない。日韓W杯では中国が初出場を果たしたこともあり、3ヶ国が持ち回りで開催することに合意した。
▽スタート時点の大会名称は「東アジア選手権」だったが、2013年に韓国で行われた大会から「東アジアカップ」に名称が変更され、さらに今大会から「E-1選手権」と2度目の名称変更になった。
▽前回の2015年に中国で行われた大会は、ハリルホジッチ監督にとって初めての大会だったものの、Jリーグが中断してすぐの大会だったため、準備不足により初の最下位に沈む。ハリルホジッチ監督自身、記憶から消したい大会だった。その前の2013年大会は、ザッケローニ監督が若手選手主体で臨み、初めて優勝を果たす。この大会で活躍した柿谷や山口、清武らがブラジルW杯のメンバー入りしたことは記憶に新しい。
▽その他にも2013年大会の日韓戦の試合前には、韓国サポーターが「歴史を忘れた民族に未来はない」とハングル語の横断幕を掲げたり、試合開始直前には1909年に初代韓国統監だった伊藤博文元首相を暗殺してヒーローとされる安重根と、16世紀の文禄・慶長の役で豊臣軍を破った朝鮮水軍の将軍である李舜臣の巨大な肖像画を描いた幕をゴール裏に広げたりするなど、この大会は何かと因縁が多い。核とミサイル開発などの挑発を続ける北朝鮮との試合は、警備もかなり厳重になることが予想される。
▽それはさておき、果たして海外組を押しのけてロシアW杯のメンバー入りする選手が出て来るのか。柏のスピードスター伊東や初の得点王を獲得した小林(川崎F)、ファイターの金崎(鹿島)ら前線には楽しみな選手が多い。公開された練習では昌子と植田の鹿島勢が1対1での強さを証明していただけに、韓国や中国相手にどこまでフィジカルの強さを発揮できるのか。こちらも見物と言える。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽中東では湾岸諸国によるガルフカップが1970年にスタートし、クウェートが最多10回の優勝を誇っているものの、近年はカタールやUAEの台頭が目立つ。東南アジアでも1996年から予選を勝ち抜いた8チームによる大会が開催されている。最多優勝はタイの5回で、シンガポールがタイに次いで4回の優勝を果たしている。
▽スタート時点の大会名称は「東アジア選手権」だったが、2013年に韓国で行われた大会から「東アジアカップ」に名称が変更され、さらに今大会から「E-1選手権」と2度目の名称変更になった。
▽前回の2015年に中国で行われた大会は、ハリルホジッチ監督にとって初めての大会だったものの、Jリーグが中断してすぐの大会だったため、準備不足により初の最下位に沈む。ハリルホジッチ監督自身、記憶から消したい大会だった。その前の2013年大会は、ザッケローニ監督が若手選手主体で臨み、初めて優勝を果たす。この大会で活躍した柿谷や山口、清武らがブラジルW杯のメンバー入りしたことは記憶に新しい。
▽過去には2005年に韓国・太田で開催された大会で、初戦で北朝鮮に敗れたため、怒ったジーコ監督が第2戦の中国戦ではスタメン全員を入れ替えたこともあった。2010年に日本で開催された大会では、日本は初めて3位に沈み、当時の岡田監督は試合後の会見で犬飼会長に進退伺いを出すような発言で物議を醸したこともある。後に岡田監督自身、「あれは冗談だった」と否定したものの、取材した記者の誰もが「冗談ではなく本気だった」と感じたものだ。
▽その他にも2013年大会の日韓戦の試合前には、韓国サポーターが「歴史を忘れた民族に未来はない」とハングル語の横断幕を掲げたり、試合開始直前には1909年に初代韓国統監だった伊藤博文元首相を暗殺してヒーローとされる安重根と、16世紀の文禄・慶長の役で豊臣軍を破った朝鮮水軍の将軍である李舜臣の巨大な肖像画を描いた幕をゴール裏に広げたりするなど、この大会は何かと因縁が多い。核とミサイル開発などの挑発を続ける北朝鮮との試合は、警備もかなり厳重になることが予想される。
▽それはさておき、果たして海外組を押しのけてロシアW杯のメンバー入りする選手が出て来るのか。柏のスピードスター伊東や初の得点王を獲得した小林(川崎F)、ファイターの金崎(鹿島)ら前線には楽しみな選手が多い。公開された練習では昌子と植田の鹿島勢が1対1での強さを証明していただけに、韓国や中国相手にどこまでフィジカルの強さを発揮できるのか。こちらも見物と言える。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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