【原ゆみこのマドリッド】まだ取り返しのつく大会もある…

2017.12.05 13:00 Tue
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▽「もしやこれって、リーガ優勝を諦めないでいいってことかしら」。そんな風に私がワクワクしていたのは月曜日、いえ、14節が終わっても1位から4位の順番は変わってないんですけどね。動いたのは勝ち点差で、2節前には10ポイントもあった首位バルサと3位アトレティコの差がたったの6に。2位バレンシアとも1差になったんですが、このまま順調に行けば、今回、2差の4位となったお隣さんが年内最終戦のクラシコ(伝統の一戦)でバルサを破ってくれた暁には、たったの3差で新年を迎えることも夢ではなし。それぐらいだったら、アトレティコの場合、直接対決で縮めればいいと言えないのが辛いところとはいえ、シーズン後半、次のクラシコまで待ったっていいですし、土曜にセルタがカンプ・ノウで引き分けたように他のチームが波乱を起こしてくれるかもしれませんし、6月にはワンダ・メトロポリターノ初年度に祝勝イベント開催なんて可能性だって…。

▽いえ、まだ12月になったばかりなんですから、白昼夢に耽っていてはいけません。とりあえず、寒波に襲われた先週末のマドリッド勢の様子を順々にお話していくことにすると、先陣を切ったのはアトレティコ。すでにバルサが躓いたことを知りながら、レアル・ソシエダ戦が始まったんですが、もう日中の気温が10度に達しないこの時期、まだ外が明るくてもヒートテックで防寒していって大正解でした。おまけに彼らがパッとしなかった前半、28分にはフィリペ・ルイスのパスミスがキッカケとなり、エリア内に入り込んだオジャルサバルをGKオブラクが倒してしまい、PKを献上。ウィリアム・ホセがゴールを決め、1点リードされてしまったとなれば、体感温度が一気に低くなったのはきっと、私だけではなかったかと。
▽それに輪をかけたのは2度もGKルリとの1対1となりながら、シュートを相手に当ててしまったコレアのビエット症候群感染で、いえ、今季少し前まではアトレティコのFW陣全員が多かれ少なかれ、このゴール入らない病に罹っていたんですけどね。ハーフタイムに「queremos ganar/ケレモス・ガナール(勝ちたいね)と話し合った」(サウール)というチームがピッチに戻った後半序盤にも、彼は同様のチャンスに天高く撃ち上げてしまい、スタンドを絶望させていたんですが、その日は救いの手が思いもかけないところから現れます! それはアトレティコが諦めずに攻め続けていた18分、エリア内右奥まで侵入したサウールが上げたクロスを反対側で受け取ったフィリペ・ルイス。
▽ええ、「ペナルティはボクのボールロストからだったんだけど、soy asi, si pierdo 40 balones, voy a pedir el 41/ソイ・アシー、シー・ピエルド・クアレテンタ・バロネス、ボイ・ア・ペディール・エル・クアレンタイウノ(自分はそういう奴。40回ボールを失ったら、41回パスを頼むよ)」という、常に前向きな彼が利き足でない右で放ったシュートがファーサイドに決まったから、ビックリしたの何のって。当人も慣れないゴールに30通り程、考えていたポーズの1つでお祝い。まだ同点で逆転ではないことに気づかず、ベンチに駆け寄って、その喜びを分かち合おうとしたそうですが、チームメートに許してもらえませんでしたっけ。

▽だってえ、リーガのホームゲームではここ3試合、バルサ、ビジャレアル、レアル・マドリーと続けて引き分けているアトレティコですよ。バルサが勝ち点を落とすなんて滅多にない状況でしたし、シメオネ監督も畳みかけるなら今と、ガメイロ、コレアに代え、フェルナンド・トーレス、カラスコを投入したんですが…残り3分、終盤の奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)は彼らの得意技ではないし、リーガ18試合連続無敗はクラブ史上2度目の快挙とはいえ、うち8つがドローなんて、あまり威張れない記録なんじゃないかと私もほとんど諦めていた時のことでした。そう、コケのクロスを再びサウールが頭で繋ぎ、ゴール左前に突っ込んだグリーズマンが押し込んでくれたんですよ!

▽いやあ、2-1で勝利した後、当人は「con el empuje de la aficion y el esfuerzo de cada uno hemos conseguido la victoria/コン・エル・エンプーヘ・デ・エラ・アフィシオン・イ・エル・スフエルソ・デ・カーダ・ウノ・エモス・コンセギードー・ラ・ビクトリア(ファンの後押しと各人の努力で勝利を手に入れた)」と言っていましたけどね。サウールも「Cuando nos animan todo es diferente/クアンドー・ノス・アニマン・トードー・エス・ディフェレンテ(応援されている時は全てが違う)。ファンのサポートがわかると、チームはより勇敢になれるんだ」と言っていましたが、それはちょっと微妙。CLカラバフ戦やマドリーダービーの時など、開始から終了まで物凄い応援ぶりだったにも関わらず、結果は引き分けだったことを考えると、効を奏したのはやはり、最近はご一緒するCFを置いて、シメオネ監督がグリーズマンにプレーしやすい環境を提供したこと。
▽おかげで彼もここ3試合で4得点というエースらしい働きを見せていますし、加えてこの日は敵にリードされていたため、チームが決して後退しなかったというのも良かったかと。まあ、そうは言っても、シメオネ監督が「El gol tiene una energia que es inigualable y es dificil de explicar/エル・ゴル・ティエネ・ウナ・エネルヒア・ケ・エス・イニグアラブレ・イ・エス・ディフィシル・デ・エクスプリカル(ゴールは説明するのが難しい、他にはないエネルギーを与えてくれる)」と言っていたように、以前は何をやっても入らなかったシュートがまだ例外はあるものの、入るようになったのが、一番大きいんじゃないでしょうかね。

▽ただ、これでリーガはいいんですが、時宜を逸した大会もあって、この月曜、もう今更、スタンフォード・ブリッジの雰囲気に慣れるも何もないと思ったんですかね。恒例に背いて、マハダオンダ(マドリッド近郊)で朝練した後、ロンドンに向かったアトレティコは火曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのチェルシー戦にたとえ勝てたとしても、ローマのホームで戦うカラバフが引き分け以上の成績を残さない限り、CLグループリーグ3位での敗退が決定。来年は1月からプレーが可能となるジエゴ・コスタやビトロと共に、2012年以来のヨーロッパリーグ優勝を目指すことになりますが、それはまだ先の話ですからね。サウールも「こうなったのは自分たちのせい。Solo podemos ganar y esperar/ソロ・ポデモス・ガナール・イ・エスペラール(できるのは勝って待つことだけ)」と言っていたように、今はフアンフランのケガ治らず、再びトマスが右SB修行を続けるグループ最終節をいい形で終えてくれるのを祈るしかありません。

▽え、そのアトレティコ立ち直りの特効薬がわかれば、同じ病に苦しんでいるお隣さんにも分けてあげたいって? うーん、確かにその土曜、ナイトゲームでアスレティックに挑んだマドリーは雨のサン・マメスでスコアレスドロー。「Estamos ocho puntos por la falta de gol/エスタモス・オチョ・プントス・ポル・ラ・ファルタ・デ・ゴル(ウチはゴール不足で首位と勝ち点8差にある)」(ジダン監督)という結果に。とはいえ、イスコも「昨季は終盤に得点できていたけど、nos esta faltando un poco de suerte, en el futbol tambien influye/ノス・エスタ・ファルタンドー・ウン・ポコ・デ・スエルテ、エン・エル・フトボル・タンビエン・インフルージェ(ウチにはちょっとツキが足りない。そういうのもサッカーには影響するんだ)」と言っていた通り、廻り合わせのいい悪いの問題もありますからね。

▽大体、あれだけ才能余りある選手が揃っていて、先日など、2部Bのフォルメンテーラに0-1で負け、コパ・デル・レイ32強敗退の憂き目に遭っている今季不調のアスレティックから、どうして1点ぐらい取れないんだという感じですが、何より困るのはこの14節まで、ベイルは治ってもまたケガしたりといった具合で仕方なくても、クリスチアーノ・ロナウドとベンゼマが揃って2得点ずつしか挙げていないこと。うーん、前者はシュート68本とかなり狙いにいっているんですけどね。この日もGKケパに防がれたり、ゴールポストに弾かれたりと、ネットを揺らすことはできず。その対極で昨夏、移籍したモラタ(チェルシー)が9ゴール、マリアーノ(リヨン)が12ゴールと当たりまくっているため、逃した魚は大きかったみたいな話なってしまうのは仕方ない?

▽だったら、今季序盤、オブラクがどんなに頑張ってもスコアレスドローにしかならなかったアトレティコの例もありますし、冬の市場でケパ獲得云々ではなく、FWの緊急補強でもした方がいいような気がしますが、ジダン監督はこのゴール日照りについて、「Esto seguro que va a cambiar/エストー・セグロ・ケ・バ・ア・カンビアール(これは絶対、変わっていく)」と断言。「El balon empezara a entrar un dia y no parara/エル・バロン・エンペサラ・ア・エントラール・ウン・ディア・イ・ノー・パララ(いつかボールはゴールに入り始めるし、そしたらもう止まらないよ)」というカセミロの言葉にも嘘はないと思いますが、実は彼らには切迫した問題が。それはリーガ次節のセビージャ戦で同日、デポルティボに2-0で勝って、同じ勝ち点で5位につけている相手をサンティアゴ・ベルナベウに迎える試合では、カルバハルとカセミロが累積警告でプレーできないこと。

▽加えて、鼻骨骨折をカバーするマスクを外して、セットプレーでの攻撃に参加していたセルヒオ・ラモスが張り切りすぎたか、アスレティック戦の後半42分に空中戦でアドゥリスにcodazo(コダソ/肘撃ち)を見舞ったとして、2枚目のイエローカードで退場。これでリーガ19回目と単独最多記録を打ち立てただけでなく、こちらも出場停止となるため、守備的にかなり不安なんですが、いくらシーズンは長いとはいえ、取りこぼしを続けていたら、いつになっても首位との差は縮みませんからねえ。

▽ただお隣さんとは違い、CLグループリーグは前節、2位通過が決定した彼らなので、水曜午後8時45分からのホームゲーム、ドルトムント戦は結果を気にしなくていいのが救いと言えば救いなんですが、さて。アセンシオが負傷から回復、ベイルの様子はいつもながら、よくわからないマドリーに対して、相手はまだアポエルと3位を争っていますし、香川真司選手のプレーも見られるかもしれないだけに、いい試合になるといいですね。

▽え、マドリッドの両雄の結果はともかく、今節、サプライズ感がより強かったのは日曜の弟分たちの方じゃないかって? そうなんですよ、まず正午からのビジャレアル戦のため、ブタルケ(レガネスのホーム)に向かった私でしたが、まさかこちらでも見事な逆転劇を目撃できるとは一体、誰に予想できたでしょう。そう、両チームとも無得点に終わった前半の後、後半15分にはトリゲロスのロングパスにGKクエジェルが飛び出したところ、ボールを受けたラバにかわされてしまう失態。ガラ空きのゴールに流し込まれて先制されたものの、この日のpepineros(ペピネーロス/キュウリ農家、レガネスの愛称)は決して諦めません。

▽アムラバットがシマノフキに代わって入ったのが起爆剤となり、27分にはディエゴ・リコがエリア外からの一撃で同点にすると、36分にはエル・ザールが2点目、ロスタイム2分にもガブリエルが決めて、EL圏内6位のビジャレアルに3-1で勝ってしまうんですから、驚かせてくれるじゃないですか。うーん、セビージャ、バルサ、バレンシアと強豪との対決が続き、前節のセルタ戦にも勝てず、ここ4連敗していた彼らなんですけどね。マドリーがクラブW杯に参加するため、ミニダービーが来年に回されているため、12月の残り試合はあとデポルティボ戦とレバンテ戦だけ。となれば、ガリターノ監督も「Estar rozando Europa nos acerca a nuestro objetivo que es la permanencia/エスタル・ロサンドー・エウロッパ・ノス・アセルカ・ア・ヌエストロ・オブヘティーボ・ケ・エス・ラ・ペルマネンシア(ヨーロッパの大会出場圏近辺にいるのは我々の目標、1部残留に近づくことになる)」と言っていたように、今の7位をキープするだけでなく、EL出場順位に喰い込んで年を終わるのもありかもしれませんね。

▽そしてブタルケを出た後、Julian Besteiro(フリアン・ベステイロ)駅まで20分程歩き、メトロ・スールで3駅、Los Espartalers(ロス・エスパルタス)で下車してすぐのコリセウム・アルフォンス・ペレスに向かった私でしたが、いやあ、まさかヘタフェにここまで根性があるとは意外。というのも、前半23分にアランバリのシュートがアマトに当たって入ったゴールはオフサイドで認められず、そのアランバリが1分後には早くも2枚目のイエローカードをもらって、彼らは10人になっちゃったんですよ。

▽それでも粘って、2位チームに得点を許さなかっただけでなく、後半21分にはベルガラのシュートがパウリスタに当たって先制点をゲット。まあ、マルセリーノ監督がここ2試合ベンチ入り禁止処分で代理を務めたウリア第2監督など、後で「Nos ha sorprendido la dureza del partido/ノス・ア・ソルプレンディードー・ラ・ドゥレサ・デル・パルティードー(試合のハードさに驚いた)」と言っていましたけどね。そこここでtangana(タンガナ/小競り合い)があったのはともかく、アトレティコ、マドリー、バルサと引き分けている今季無敗の相手に初めて土をつけるって、物凄い偉業じゃない(最終結果1-0)?

▽ちなみにバレンシアの文句は昨季の2部時代を彷彿させるヘタフェのラフプレーだけに留まらず、以前、この地での活躍を認められ、引き抜かれたパレホなど、「El balon no corria, el campo estaba seco/エル・バロン・ノー・コリア、エル・カンポ・エスタバ・セコ(ボールが走らなくて、ピッチが乾いていた)。まるで1週間、整備をしていないみたいにね」と嘆くことしきり。確かに相手は何度も変なところで転んでいたりしましたが、これはバルサやマドリー戦の時も同じで、それでも彼らは勝っているため、あまりいい言い訳にはならないかと。

▽おかげでレガネスに続き、勝ち点差1で8位となったヘタフェですが、次はまたホームゲームで土曜の正午からエイバル戦。乾貴士選手が来るのも楽しみですが、バレンシア戦前の記者会見でボルダラス監督が「La vuelta la tenemos muy cerca/ラ・ブエルタ・ラ・テネモス・ムイ・セルカ(復帰はとても近い)。もうチームに合流しているし、実質、戦力と言っていい」と発言。いえ、今週末、出られるかどうかはまだ100%確かではないそうですけどね。となると、その前に私も厚着をして、練習を見学してきた方が良さそうですが…ええ、お昼からの試合でも最近のマドリッドは使い捨てカイロがいるんですよ。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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