【東本貢司のFCUK!】夢のハイパーヤングライオンズ

2017.11.19 13:00 Sun
Getty Images
▽私事ながらゆえあってしばらく“休養”をいただくことになり、気が付けばかなり時間が経ってしまった。その間、プレミア新シーズンが始まった。ひとしきりここまでの成績や戦いぶりを振り返ってそれなりに評価の要素を引き出すのは吝かではないが、やはりまだたかだか11試合の消化、ひと波乱もふた波乱もあってしかるべきだ。例えば、とりあえず一騎抜け出した感のあるマンチェスター・シティーについて、「今後の展開有利」「独走気配」と、誰でもできそうな解説をするだけでは能がない。スポーツを「結果」のみで語るべきではない。ダイジェストのニューズ映像やポストマッチ・インタビュー、勿体付けた解説などは、あくまでも“サシミのツマ”いやそれ以下にどどめておきたい。肝心かなめは目の前のゲームそのもの。無論、ビッグチームがそこに絡む必要性などさらさらない。

▽それに、今気になるのはどうしても「代表チーム」だ。本大会出場32チームが出そろい、来月のグループリーグ組合せ抽選の結果から吹き出す「あーだこーだ」の“井戸端会議”にこそむしろそそられる。意地悪な言い方をすれば、そこでいわゆる「事情通」の濃淡がわかってくる。有体に言うなら、参加32チームすべての「今」を熟知している御仁がこの世界にいるとはとても思えない。ならば、よく知らないなりにあえて思い切り“絵空事”を交えてストーリー(の断片でも可)を構築できる“話し上手”を見つけ出したい。知ったかぶりのオーソリティー気取りの話が一番つまらないし“残らない”。ちなみに、筆者はよく言ってヨーロッパの「半数」も語れそうにないが、それでも請われたら、前回、前々回の「印象、思い出、雑多なエピソード、体験話」をふんだんに盛り込んで、虚々実々に聞き手をけむに巻いて“楽しみたい”。ワールドカップというお祭りにはそれが一番お似合いではないか。目当ては実際の「鬼が出るか蛇が出るか」のゲームなのだから。

▽そのうえで、少しばかり“自慢げに”ご存知スリーライオンズことイングランド代表チームについての“事前情報”を、思いつくままに並べ立ててみよう。実はこれが、かつてないほどに一味も二味を違うのである(少なくとも今回は)。世界の最新フットボール事情に知悉している方なら当然「釈迦に説法」だろうが、イングランド代表はこの夏に順次行われた「ワールドカップ・U20」および「同U17」を制した。どこかピンとこないかもしれないからもう一度言う。「20歳以下」と「17歳以下」のワールドカップで、ヤングスリーライオンズは現在世界の頂点に立って「最強を証明」したばかりなのだ。それがどうしたって? そう、確かに彼らがどんなに強かろうが、そっくりそのまま来年夏のロシアをプレーするわけでもないし、仮にそうしたところで他国代表のシニア世代に敵うわけでもあるまいに? 確かに。通常、アンダーエイジ代表はシニア代表とほとんどリンクしない。
▽つまり、ひょっとしたら一人や二人、10代の“精鋭”がシニア代表に招集されることもある。ただし、彼らが実戦に起用されることはほとんどないし、よもや主力と見なされることもめったにない。ところが今回のイングランド代表に限ってはその「まさか」が現実になるかもしれないのだ。夏以降、監督ギャレス・サウスゲイトはワールドカップ本大会出場が確定したあとの代表戦で、U20代表のエースたちをまるで当然のように使ってそれなりの手ごたえを得たという。折しも“シンボル”のルーニーが代表引退を表明、しかもそれ以前からケイン、アリ、ダイアー、ラシュフォード、ストーンズらは事実上“レギュラーに定着”していた。そこへ、ウィンクス、ピックフォード、ロフタス=チークらをはじめ、国際的にどころかプレミア通の間でさえ無名同然のソランキー、カルヴァート=ルーウィン、クック、エイブラハム、ガンらを続々とシニアに組み入れ、実際に彼らの大半を対ブラジル、ドイツのフレンドリーに投入し、しかも本番での起用も示唆している・・・・。

▽是非、以上の面々の年齢を資料などで確かめていただきたい。そして想定フォーメーションに当てはめたうえで「平均年齢」を出してみる。たぶん「22歳」前後に収まるはずだ。可能性は五分五分としても、ケインら現役組をベースとすると“夢”が叶う余地は十分にある。もちろん、彼らに経験を積ませるためではない、勝つためにだ。そしてそれすら、すなわち、20歳そこそこで固めた前代未聞の若い代表チームが栄冠に手が届くことも決して夢ではない、という手ごたえと自信を秘めて。先日、マンチェスター・ユナイテッドの監督ジョゼ・モウリーニョがあるインタビューでドキッとするような、こんなコメントをさりげなく述べていた。「(ロシアでの)イングランドの優勝、うん、あるかもしれない」それはほんのジョゼ流リップサービスに過ぎなかったのかもしれない。しかし、もしも彼がサウスゲイトの“野望”にそそられ、なにげなく“後押し”したくなる気になり始めているとしたら・・・・。この件はいずれ改めて突っ込んで触れよう。無性にわくわくしてきた。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly