【六川亨の日本サッカーの歩み】ブラジルが日本戦で見せた古き良き時代の攻撃パターン

2017.11.13 19:09 Mon
Getty Images
▽11月5日から欧州遠征中の日本代表は、10日にフランスのリールでブラジルと対戦し、PKなどの失点から1-3で敗れた。この結果、過去の対戦成績は2分け10敗と、依然として“サッカー王国”は日本にとって高い壁として立ちはだかっている。
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▽試合は開始早々にPKから天敵のネイマールに先制点を許すと、さらにPKからの失点こそ防いだものの、左CKのこぼれ球をマルセロに強烈に叩き込まれ、前半で0-3の大差をつけられた。試合前、どの選手も守備の重要性を口にしていたが、その守備が崩壊しての大量失点だった。▽先制点につながる反則を犯した吉田は「僕に非があります」と反省しながら、「嵌め方が明確ではなかった」とゲームプランが明確ではなかったことを明かした。それでも相手が選手を入れ替えてきた後半は日本も反撃に転じ、槙野が1点を返す。その他にも吉田のFKがバーを叩き、杉本のゴールはオフサイドと惜しいシーンも作った。
▽交代出場の乾も「後半はだいぶ嵌まったし、(ブラジルは)上手いけれど、ミスするところはミスしていた」と自信を深めていた。

▽そのブラジルだが、日本は狙いとするカウンターを1回も仕掛けられなかったのに比べて、ブラジルは自陣でのCKやFKでは、チャンスがあれば虎視眈々とカウンターを狙っていた。36分の3点目はその典型だ。右からカットインした久保にシュートコースを与えず、2人がかりでボールを奪うと素早いカウンターを仕掛けた。
▽そして右サイドでウィリアンがタメを作ると、すかさずダニーロが外側をオーバーラップしてパスを受け、ジェズスにラストパスを送って3点目を演出した。2点目も、PKを獲得したプレーは右サイド崩してのカウンターだった。

▽ブラジルというと、ネイマールに代表されるように華麗な個人技をイメージしがちだが、けしてカウンターが下手なわけではない。1970年のメキシコW杯で3度目の優勝を果たしたものの、その後は5大会連続して決勝にすら進めなかった。そこで1994年の米国W杯でマリオ・ザガロ総監督は、カウンターのチームを送り込んできた。ロマ-リオとベベートの強力2トップにより、ブラジルは24年ぶりに世界チャンピオンに輝く。しかしブラジル人は、優勝してもそうしたサッカーを認めなかった。

▽1982年スペインW杯で、ジーコやファルカンら“黄金の4人”による華麗なサッカースタイルが忘れられなかったのだろう。ブラジルは2002年もフェリペ監督によるカウンタースタイルで5度目の優勝を果たす。このときは、いわゆる“3R”、リバウド、ロナウド、ロナウジーニョと、94年を上回る「フェーノーメノ(怪物)」が前線に揃っていた。

▽現ブラジル代表は、直近3試合の日本戦から、02年のチームと同等か、それ以上の破壊力を秘めている可能性が高い。カウンターはより洗練され、攻撃に無駄がない。ワンツーによる中央突破もスピードアップしていたため、日本のDF陣は対応が後手に回った。もはやブラジルに“遅攻”という形容はあてはまらないのかもしれない。

▽そんなブラジルが意図的にスピードダウンしたのが3点目につながったウィリアンのプレーで、ダニーロが攻撃参加する時間を作った。このプレーはブラジル伝統の攻撃パターンで、初めて目にしたのは82年のスペインW杯だった。2次リーグのイタリア戦では、ファルカンの外側をオーバーラップしたソクラテスがドリブルで突進し、GKゾフのニアを抜いて1-1の同点ゴールを決めた記憶がある(試合はロッシのハットトリックでイタリアが3-2の勝利)。

▽このプレーをブラジル人は、攻撃の方法が2パターンあることから「2列の廊下」と呼んでいるそうだ。現代サッカーを採り入れつつ、古き良き伝統は継承する。これもブラジルがサッカー王国でいられる理由の一つだろう。

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