【編集部コラム】モウリーニョの慧眼、マティッチがレッド・デビルズの帝王に
2017.09.20 22:00 Wed
▽“2年目のモウリーニョは強い”。この言葉通り、マンチェスター・ユナイテッドが好調だ。今季はここまでリーグ戦5試合で4勝1分け。16得点2失点の内容はほぼ完璧で、同じく優勝候補筆頭のマンチェスター・シティと共に首位に位置している。
◆的確な補強

▽今夏、モウリーニョが選択したのは、MFネマニャ・マティッチとFWロメル・ルカク、DFビクトル・リンデロフの3選手。23歳のリンデロフは投資の意味も大きいため、実際にレギュラー級の即戦力として計算できると期待されたのはマティッチとルカクだ。
▽その2人は、見事にモウリーニョの期待に応えており、チームの好調を支える不動の主力となっている。ルカクはここまで、公式戦7試合で7得点。それも固め取りではなく、公式戦7試合のうちゴールがなかったのは1試合という点は、安定して力を出せていることの証左でもある。
▽FWズラタン・イブラヒモビッチと遜色ないポストプレーヤーであるルカクだが、スピードや前線での動きの量は元スウェーデン代表FWを遥かに凌ぐ。ポストワークでボールを捌いた後、自らフリーランでボックスに侵入していける点は、ベテランとなったイブラヒモビッチには繰り返すことができない動きのため大きな強みだ。今季、ルカクの効果によりユナイテッドのロングカウンターのクオリティは昨季に比べて遥かに向上している。
▽そして、ルカク以上にインパクトを残しているのがマティッチだ。シーズン前、アンカーの補強を目指すユナイテッドのターゲットには、モナコのブラジル代表MFファビーニョ、スパーズのイングランド代表MFエリック・ダイアー、そしてマティッチがリンクされていた。
▽イングランドの選手であるE・ダイアーの獲得が困難なミッションであったことはさておき、報道によればこの3人のうちでモウリーニョが望む第1候補はマティッチだった。23歳のE・ダイアーとファビーニョに対し、マティッチは今年で30歳。すぐさまフィットしなかった場合のリスクは大きい。
▽それもあり、私を含めてこれまでユナイテッドを見続けてきた人も “ファビーニョ派”だった人は少なくなかった。しかし、モウリーニョとマティッチは懐疑論を見事に一蹴している。
▽ユナイテッドでのマティッチは、チェルシー時代の2セントラルの一角というよりも、より守備的でアンカー的な役割を担っている。経験に裏打ちされた絶妙なポジショニングと展開力はMFマイケル・キャリックの後釜として打ってつけ。それに加えてマティッチには、キャリックにはないプレス強度とそれを何度も継続できるスタミナがある。マティッチが高い位置でボールを“強奪”することにより、ショートカウンターでも相手への脅威は増している。
◆マティッチは既に帝王

▽まるでマティッチは、ユナイテッドに5年も10年も在籍してきたかのようなプレーを見せている。元来、攻撃参加を好むタイプではあるが、モウリーニョはユナイテッドで彼がオーバーラップすることをかなり制限しているように見える。
▽そして、この判断は非常に的確と言える。マティッチのリーグ戦でのスタッツを見ると、タックル数(12回)、タックル成功数(9回)、インターセプト数(10回)、パス成功数(332本)、タッチ数(457回)はいずれもチーム最多。マティッチは既に、レッド・デビルズの中盤における“帝王”として君臨している。“守備に特化させたマティッチ”はここまで、チェルシー時代以上に輝いている。
▽正直に言えば、マティッチがこれほどまでフィットするとは思っていなかった。だが、モウリーニョは以下のように語っていた。
「昨年、ユナイテッドに加入した時点で、マティッチのような選手が必要だと感じていた」
▽改めて、ジョゼ・モウリーニョという監督の慧眼には舌を巻く。3度にわたってプレミアリーグを制覇しているモウリーニョは、このリーグがいかにタフであるかということを完全に理解している。だからこそルカクだけでなく、プレミアリーグで実績のあるマティッチをチョイスした。「4000万ポンドは安い」。「チェルシーが放出したのは驚き」「今夏のベスト補強」。オフシーズンにはまったく聞こえなかったような声は、日に日に増している。
◆マティッチはユナイテッドの最重要選手の1人
▽とはいえ、これまでのマティッチはシーズン終盤にかけて疲労が蓄積するとともにパフォーマンスを低下させる印象がある。モウリーニョは、うまくマティッチを休ませながらシーズンを進める必要があり、さらに言えばMFマイケル・キャリックやMFマルアン・フェライニ、MFアンデル・エレーラらポグバ不在時に相棒となる選手たちが、いかにこのセルビア代表MFの負担を軽減させるパフォーマンスを披露できるのかも、ユナイテッドが2012-13シーズン以来のリーグタイトルを奪還するためには重要となってくる。
「彼はフットボーラーに求められる忠誠心、安定感、野心、チームプレーヤーという全ての要素を体現している」
▽マティッチ加入後、懐疑的な声に反発するようにそう語ったモウリーニョ。“スペシャル・ワン”の全幅の信頼を得るマティッチが、今季のユナイテッド成功の鍵となる最重要人物の1人であることを疑うものは、もはやいない。
《超ワールドサッカー編集部・音堂泰博》
◆的確な補強

Getty Images
▽モウリーニョは過去、ポルト、チェルシー(第1期、第2期)、インテル、レアル・マドリー時代のいずれも2年目にリーグ制覇を達成している。「クラブの性質を理解すること」や「選手たちの個性の把握」、「モチベーターとしての効果のピーク」と、その要因は様々なことが考えられるが、最も大きな要因の1つに1年目のシーズンを受けての“的確な補強”が挙げられるだろう。▽今夏、モウリーニョが選択したのは、MFネマニャ・マティッチとFWロメル・ルカク、DFビクトル・リンデロフの3選手。23歳のリンデロフは投資の意味も大きいため、実際にレギュラー級の即戦力として計算できると期待されたのはマティッチとルカクだ。
▽FWズラタン・イブラヒモビッチと遜色ないポストプレーヤーであるルカクだが、スピードや前線での動きの量は元スウェーデン代表FWを遥かに凌ぐ。ポストワークでボールを捌いた後、自らフリーランでボックスに侵入していける点は、ベテランとなったイブラヒモビッチには繰り返すことができない動きのため大きな強みだ。今季、ルカクの効果によりユナイテッドのロングカウンターのクオリティは昨季に比べて遥かに向上している。
◆懐疑論も…
▽そして、ルカク以上にインパクトを残しているのがマティッチだ。シーズン前、アンカーの補強を目指すユナイテッドのターゲットには、モナコのブラジル代表MFファビーニョ、スパーズのイングランド代表MFエリック・ダイアー、そしてマティッチがリンクされていた。
▽イングランドの選手であるE・ダイアーの獲得が困難なミッションであったことはさておき、報道によればこの3人のうちでモウリーニョが望む第1候補はマティッチだった。23歳のE・ダイアーとファビーニョに対し、マティッチは今年で30歳。すぐさまフィットしなかった場合のリスクは大きい。
▽それもあり、私を含めてこれまでユナイテッドを見続けてきた人も “ファビーニョ派”だった人は少なくなかった。しかし、モウリーニョとマティッチは懐疑論を見事に一蹴している。
▽ユナイテッドでのマティッチは、チェルシー時代の2セントラルの一角というよりも、より守備的でアンカー的な役割を担っている。経験に裏打ちされた絶妙なポジショニングと展開力はMFマイケル・キャリックの後釜として打ってつけ。それに加えてマティッチには、キャリックにはないプレス強度とそれを何度も継続できるスタミナがある。マティッチが高い位置でボールを“強奪”することにより、ショートカウンターでも相手への脅威は増している。
◆マティッチは既に帝王

Getty Images
▽残念ながら現在は負傷離脱中だが、マティッチの相棒であるMFポール・ポグバは今季のリーグ戦4試合で2ゴール2アシストを記録。ポグバが今季、攻撃面で結果を残しているのは、マティッチの存在により守備の負担が減ったことが要因であることは明らかだ。▽まるでマティッチは、ユナイテッドに5年も10年も在籍してきたかのようなプレーを見せている。元来、攻撃参加を好むタイプではあるが、モウリーニョはユナイテッドで彼がオーバーラップすることをかなり制限しているように見える。
▽そして、この判断は非常に的確と言える。マティッチのリーグ戦でのスタッツを見ると、タックル数(12回)、タックル成功数(9回)、インターセプト数(10回)、パス成功数(332本)、タッチ数(457回)はいずれもチーム最多。マティッチは既に、レッド・デビルズの中盤における“帝王”として君臨している。“守備に特化させたマティッチ”はここまで、チェルシー時代以上に輝いている。
▽正直に言えば、マティッチがこれほどまでフィットするとは思っていなかった。だが、モウリーニョは以下のように語っていた。
「昨年、ユナイテッドに加入した時点で、マティッチのような選手が必要だと感じていた」
▽改めて、ジョゼ・モウリーニョという監督の慧眼には舌を巻く。3度にわたってプレミアリーグを制覇しているモウリーニョは、このリーグがいかにタフであるかということを完全に理解している。だからこそルカクだけでなく、プレミアリーグで実績のあるマティッチをチョイスした。「4000万ポンドは安い」。「チェルシーが放出したのは驚き」「今夏のベスト補強」。オフシーズンにはまったく聞こえなかったような声は、日に日に増している。
◆マティッチはユナイテッドの最重要選手の1人
▽とはいえ、これまでのマティッチはシーズン終盤にかけて疲労が蓄積するとともにパフォーマンスを低下させる印象がある。モウリーニョは、うまくマティッチを休ませながらシーズンを進める必要があり、さらに言えばMFマイケル・キャリックやMFマルアン・フェライニ、MFアンデル・エレーラらポグバ不在時に相棒となる選手たちが、いかにこのセルビア代表MFの負担を軽減させるパフォーマンスを披露できるのかも、ユナイテッドが2012-13シーズン以来のリーグタイトルを奪還するためには重要となってくる。
「彼はフットボーラーに求められる忠誠心、安定感、野心、チームプレーヤーという全ての要素を体現している」
▽マティッチ加入後、懐疑的な声に反発するようにそう語ったモウリーニョ。“スペシャル・ワン”の全幅の信頼を得るマティッチが、今季のユナイテッド成功の鍵となる最重要人物の1人であることを疑うものは、もはやいない。
《超ワールドサッカー編集部・音堂泰博》
マンチェスター・ユナイテッドの関連記事
|
マンチェスター・ユナイテッドの人気記事ランキング
1
ベンフィカGKスヴィラール、CL最年少出場記録更新もほろ苦デビュー
▽ベンフィカに所属するベルギー人GKミル・スヴィラール(18)が、チャンピオンズリーグ(CL)のGK最年少出場記録を更新した。 ▽スヴィラ―ルは19日、CLグループA第3節のマンチェスター・ユナイテッド戦に先発出場。ポルト所属の元スペイン代表GKイケル・カシージャスが打ち立てた18歳118日から18歳52日に塗り替えた。 ▽CLデビューを飾った試合は64分、ユナイテッドに自陣中央左でFKを与えてしまい、FWマーカス・ラッシュフォードに直接ゴールを狙われる。これをバックステップを踏みながら頭上でキャッチすると、勢い余ってゴールラインを割ってしまった。痛恨の判断ミスから先制点を献上してしまい、ベンフィカは0-1で敗れたものの、その他の場面ではいくつか好守を見せるなど健闘した。 ▽アンデルレヒトの下部組織出身のスヴィラールは、8月にベンフィカに加入。今夏マンチェスター・シティへ移籍した昨シーズンの正GKであるブラジル代表GKエデルソンの背番号1を背負う期待の若手だ。今シーズン、14日に行われたタッサ・デ・ポルトガル3回戦のオリャネンセ戦でトップチームデビューを果たしていた。 2017.10.19 13:15 Thu2
中盤補強も目指すユナイテッド、コパ・アメリカで活躍のコロンビア代表MFリオスに注目…約35億円オファー準備か
マンチェスター・ユナイテッドがパウメイラスのコロンビア代表MFリチャード・リオス(24)の獲得に動き出しているようだ。 オランダ代表FWジョシュア・ザークツィー(23)やU-23フランス代表DFレニー・ヨロ(18)を確保するなど、着々と補強を進めているユナイテッド。中盤の選手との契約も目指し、パリ・サンジェルマン(PSG)のウルグアイ代表MFマヌエル・ウガルテ(23)が新戦力候補筆頭となっている。 一方、退団へ向かう可能性がある選手も複数。ブラジル代表MFカゼミロ(32)の移籍が取り沙汰されているほか、スコットランド代表MFスコット・マクトミネイ(27)にはフルアムやトッテナム、ガラタサライなどからの関心が浮上。また、フィオレンティーナからレンタルしていたモロッコ代表MFソフィアン・アムラバト(27)に関しては、2000万ユーロ(約34億2000万円)の買取オプションの行使を見送ることとなった。 ウガルテの獲得だけでは選手層に不安が生じることも考えられるなか、移籍市場に精通するジャーナリストのルディ・ガレッティ氏によると、ユナイテッドはリオスにアプローチ。パウメイラスへの1700万ポンド(約34億5000万円)のオファーも準備しているという。 リオスは2023月10月にコロンビア代表デビューを飾ったばかりのセントラルミッドフィルダー。準優勝に終わったコパ・アメリカ2024では、グループステージから決勝までの6試合全てで先発し、攻守にわたって存在感を発揮した。 一躍その名を世界に広めたMFは、ミランのリストにも加わっているとのこと。しかし、リオスと2026年12月までの契約を交わすパウメイラスは、今夏の売却の意思がないようだ。 2024.07.22 18:42 Mon3
“ジャンピングチョップ事件”いまだ和解なし、ファン・ニステルローイが宿敵との騒動を振り返る
▽現役時代にマンチェスター・ユナイテッドで活躍した元オランダ代表FWルート・ファン・ニステルローイ氏が、宿敵との騒動を振り返った。イギリス『インデペンデント』が伝えた。 ▽事件は約13年前のオールド・トラフォード、マンチェスター・ユナイテッドvsアーセナルで起こった。当時のプレミアリーグは、ユナイテッドとアーセナルの2強時代。MFロイ・キーン、MFパトリック・ヴィエラという闘将に率いられていた両者の直接対決は、常に意地と意地がぶつかり合う激闘だった。 ▽そして試合では、0-0で迎えたアディショナルタイムにFWディエゴ・フォルランがボックス内でDFマーティン・キーオンに倒されてPKを獲得。しかし、このPKキッカーを務めた名手ファン・ニステルローイは、シュートをバーに当ててしまった。 ▽そして、試合は0-0のまま終了。宿敵の絶対的エースがPKを失敗したことにより勝ち点を獲得してテンションが上がったアーセナルの選手たちは、試合終了の笛とともにファン・ニステルローイを囲んで挑発。試合中も激しくやりあっていたキーオンは、ファン・ニステルローイに“ジャンピングチョップ”を敢行した。 ▽オックスフォード大学での講義にゲストとして参加したファン・ニステルローイ氏は、「キーオンに街でたまたま会ったら、どのように振舞うのか?」と尋ねられると、冗談交じりに「彼は再び私の上に飛んでくるだろう(笑)。時代を生きていくには、クレバーじゃないといけないと思ったよ」と語り、会場の笑いを誘った。 ▽一方、この事件があった2003-04シーズンにプレミアリーグ無敗優勝を経験したキーオン氏は先月、当時について以下のように振り返っていた。 「おそらく、私は過剰な反応を見せてしまった。ルート・ファン・ニステルローイは、ブラックリスト入りする信用できない敵だった。彼はトッププレーヤーであり、ファイターだったが、どんな手を使ってでも相手を打ちのめそうとするような選手だった」 2016.02.08 20:42 Mon4
グリーンウッドがもうすぐパパに! 昨年の逮捕で選手生活ストップ中…今夏が人生の分岐点
選手キャリアがストップしている元イングランド代表FWメイソン・グリーンウッド(21)。もうすぐパパになるようだ。 昨年1月、当時の恋人への暴行容疑などで逮捕され、現在に至るまで所属するマンチェスター・ユナイテッドに復帰できていないグリーンウッド。すでに起訴は取り下げられているが、復帰を巡っては現在もクラブ内に意見の相違があるとされている。 イギリス『サン』によると、ユナイテッドが今夏中にグリーンウッドを売却する可能性は低く、エリク・テン・ハグ監督も「再起のためにレンタル移籍させるべき」と主張。また、ローマのジョゼ・モウリーニョ監督が救いの手を差し伸べているともいわれている。 そんななか、グリーンウッドには妊娠中のガールフレンドがおり、この夏に第一子が誕生する予定とのこと。お相手は大学生で、以前には2人揃ってロンドンの5つ星ホテルに宿泊している様子が目撃されている。 このガールフレンドはつい先日、出産を控える妊婦を祝う安産祈願行事“ベビーシャワー”での写真をSNSに投稿。出産が近づいていることがよくわかる。 また、どうやら2人は結婚を考えているとのこと。グリーンウッドは愛する伴侶、生まれてくる我が子のためにも選手キャリアを立て直していかなくてはならない。今夏が人生の分岐点となるだろう。 2023.07.03 14:31 Mon5