【六川亨の日本サッカー見聞録】レフェリーブリーフィングで教えられたこと

2017.06.01 20:00 Thu
©︎J.LEAGUE
▽毎月恒例のレフェリーブリーフィングが6月1日に開催された。なぜ今月はこんなに早いかというと、5月末から審判交流プログラムとしてポーランドから3人のレフェリーを招いていて、6月4日のキリンチャレンジカップのシリア戦で笛を吹いた後に帰国するため、彼らにレフェリーブリーフィングの様子を見てもらおうという意図からだった。
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▽冒頭に挨拶をした国際主審のダニエル・ステファスキ氏は、5月27日の広島対磐田戦で主審を務めたが、まずEスタのきれいな芝生の状態にビックリ。「ピッチがとても素晴らしい。最初に5メートルくらいのところでピッチを見て、人工芝かと思った。実際にピッチに入って見ても人工芝と思い、人工芝用のシューズに変えようと思ったほどだ」と驚いていた。▽日本のサッカーについては、「日本の選手は速くてテクニックが優れている。選手も真面目なため苦労はしなかった」と感想を語り、「松井(磐田)のような動きの速い選手がいると素早く動かないといけないし、予測も大事になる。ポーランドはロングボールが多いのでそこまで動く必要はない。このため集中力が必要になると感じた」と日本とポーランドとの違いを述べていた。
▽さて、レフェリーブリーフィング恒例のジャッジのテストである。今回は5月末までの1ヶ月J1~J3とルヴァンカップの計81試合から102の事象が取り上げられた。そのうち審判アセッサーが主審のミスジャッジと判断したのが31件、判断確認が困難としたのが10件、審判委員会の見解でミスジャッジと判断したのが35件、判断確認が困難としたのが6件あった。

▽ミスジャッジでは、横浜FM対甲府戦で、横浜FMのDFミロシュ・デゲネクが甲府のドゥドゥのユニフォームを引っ張って倒し、本来ならPKが与えられるのに、主審の位置からだと2人が重なっているため反則を確認できず、ノーファウルと判定。アシスタントレフェリーなら横から反則が見えていたはずなので、レフェリーにアピールするべきだったとの見解を上川審判アセッサーは述べていた。
▽興味深いのは、例えば今シーズンの千葉は、自陣でのFKの際はクリアと同時に素早くラインを上げる傾向にある。そのため攻撃側がこぼれ球を再びシュートしたりクロスを入れたりした時はオフサイドになる傾向が高い。しかし、ある試合の映像では3人がオフサイドのように見えたが、スローで再生すると3人ともオンサイドだったことが判明した。ミスジャッジの原因は、千葉の押し上げが速いため、アシスタントレフェリーがそのスピードについて行けなかったからだ。ここらあたりも、予測が必要と上川氏は話していた。

▽似たようなケースは個人にも当てはまり、5月20日の磐田対柏戦では磐田のGKカミンスキーが1対1の場面で飛び出して相手選手を倒したため、主審は笛を吹いてPKを宣告した。しかし実際はボールにアタックに行き、ドリブラーのボールを手ではじき返している。その後に接触して相手選手が倒れたため、正当なチャージだった。

▽このシーンではアシスタントレフェリーがレフェリーにアピールしたため、2人で問題のプレーを確認し、主審はミスジャッジを認めてドロップボールで再開した。上川氏いわく、「彼は日本のGKと違って簡単に飛び出さず、ためてから動くことが多い。このため日本のGKなら反則になるプレーも、しっかりとボールにアタックできる」と、先見を持ったジャッジがカミンスキーには当てはまらないことを指摘していた。

▽最後に、ボールを奪われそうになった選手が足裏で相手の足首を蹴ったシーンがあった。右足のアウトサイドのトラップで目の前の選手をかわしたものの、そのタッチが大きくなって他の選手に詰め寄られ、レッドカードの反則を犯した。そのプレーについて上川氏は「トラップが大きくなったら要注意。レフェリーは緊張して見る必要がある」と解説。なぜならトラップが大きくなれば、相手もボール奪取にアタックしてくる。そしてボール保持者は動きながらのプレーが多いため、必然的に勢いが出るからだ。今まで気づかなかった発想でもあった。

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