【原ゆみこのマドリッド】オフシーズンが早いと…

2017.05.27 13:14 Sat
Getty Images
▽「せめてこれでも獲れていたら良かったのかも」そんな風に私が、アトーチャ(マドリッドの主要ターミナル駅)に展示されているコパ・デル・レイ優勝杯の写真を眺めていたのは、いよいよバルサvsアラベスの決勝が翌日に迫った金曜のことでした。いやあ、2011年にはレアル・マドリーのセルヒオ・ラモスが祝賀イベントにシベレス広場に向かう途中、オープンデッキバスから落として潰されましたっけ。さらにバルサが3年連続の決勝とあって、チケットの売れ行きが芳しくなく、バルサファンはあまり盛り上がってないなど、他の大会に比べると、どこかマイナーな扱いをされがちなコパなんですけどね。
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▽オレホナ(大耳という意味のCLトロフィーの愛称)や15キロもあるヨーロッパリーグ優勝杯の重みはないですが…。また、来季にならないと授与されないリーガ優勝杯とも違い、勝ったその場でもらえるため達成感がありますしね。そのせいもあってか、アトレティコもビセンテ・カルデロン最後の試合でシメオネ監督のチームが有終の美を飾れるよう、サッカー協会に決勝会場にしてもらうという用意周到ぶりだったんですけどね。▽準決勝でバルサに負けず、せめてその夢ぐらい叶っていれば…。日曜のリーガ最終戦後に行われたお別れセレモニーで登場した51年間のスタジアム史でトロフィー19個というのは少ないかも。しかも2014年が最後というのは私もちょっとショックでしたけどね。そんな非情な現実を悟ってしまったグリーズマンだって、コパ決勝でもあれば、まだ忙しかったでしょうに、「いいプレーをしてゴールを入れるだけでは十分じゃない。自分はタイトルを獲りたい。この夏、将来を決める時にはそれを探すよ」なんて、バケーション入り早々、フランスのメディアに向かって宣言するなんてことはなかったのではないかと思えてしまったから。
▽え、でも「CL決勝と準決勝と近くまで行ったけど、アトレティコには何かが欠けていた」という彼の台詞を聞くと、去年のサン・シーロでお隣さん相手に同点となるPKを失敗したり、この5月の対戦で逆に2試合でPKからの1ゴールしか挙げられなかったりしたのは一体、誰だったのかという疑問が湧いてこないかって? まあ、そうなんですが…。そこは「自分に代われるPKキッカーがいてくれたら」とか、「自分が繋ぎ役に徹している時にも点を取ってくれるFWがいたら」とか、深読みしてあげるとしても、「クラブは何をすべきか考えるだろう。補強次第だね。でも現時点でボクは移籍する準備ができている」って、何でそこまであからさまに言う必要があるんでしょう。

▽おかげで今年はアヤックスvsマンチェスター・ユナイテッドという、スペイン勢のいないカードだったため、あまり興味のなかった水曜のEL決勝を見る破目に。ええ、グリーズマンが「ユナイテッドに行く可能性は10のうち6」と、やはりフランスのTV番組で言っていたからですが、アヤックスが勝てば何の問題も起きなかったにも関わらず、ストックホルムでは、ポグバとムヒタリャンのゴールで2-0としたモウリーニョ監督のチームがあっさりと優勝。ちなみにこのタイトル、その日、ベンチからセルヒオ・ロメロを見守っていたGKデ・ヘアはアトレティコ時代の2010年に続いて2回目の経験で、マタもフェルナンド・トーレスと一緒にチェルシーでプレーしていた2013年に獲得済み。逆に2012年決勝でアトレティコに負けたアスレティックにいたアンデル・エレーラは嬉しい初優勝となり、実際、ユナイテッドにとってもUEFAカップ/ELを制したのはクラブ史初めてというので、メデタイことには違いませんけどね。ここで一番大事なのは今季、プレミアリーグを6位で終わった彼らがとうとう来季のCLグループリーグ出場権を手に入れてしまったということ。
▽要はグリーズマンもCLに出られないというフラストレーションを味わうことなく、弟さんの応援しているチームに大手を振って移れるようになってしまった訳ですよ。ところが、その翌日にはアトレティコの今季最優秀選手に選ばれた際に受けたインタビューで、「Ojala pueda mejorar cada ano y lograr trofeos con este equipo, hare todo lo posible/オハラ・プエダ・メホラル・カーダ・アーニョ・イ・ログラル・トロフェオス・コン・エステ・エキポ、アレ・トードー・ロ・ポシーブレ(毎年、もっと良くなって、このチームでトロフィーを獲得したい。そのために自分はできる限りのことをする)」と言っている映像が公表されたから、もう世間は困惑したの何のって。うーん、そのビデオはリーガ最終戦の前に収録されたようですが、ほんの週末を股いだだけでのこの豹変ぶり。

▽まったくもって理解不能で、アトレティコのフロントなどは「creo que nadie vaya a pagar la cláusula de Griezmann/クレオ・ケ・ナディエ・バジャ・ア・パガール・ラ・クラウスラ・デ・グリーズマン(グリーズマンの契約破棄金額を払うところがあるとは思わない)」(セレソ会長)と、おそらくこの夏に予定されている契約延長交渉で年棒額の釣り上げが狙いではないかという解釈のようですが、え、でもその1億ユーロ(約125億円)が手に入ったら、アトレティコはジエゴ・コスタ(チェルシー)でもカバーニ(PSG)でも獲れてしまうのでは? いやあ、この契約破棄金額については丁度、水曜に2024年まで契約を延長。ビセンテ・カルデロンのVIPルームで行われたプレゼンでは、家族からのお祝いのビデオ上映中に涙が止まらず。司会者から、マスコミへの質疑応答は止めようかとまで言われていたコケなど、何と1億5000万ユーロ(約188億円)になったそうですからね。

▽それでも本人は身内やクラブ関係者へのお礼と、「mi sueno es acabar en el Atletico, ojala el dia de manana pueda ser el primer capitan/ミ・スエニョ・エス・アカバル・エン・エル・アトレティコ、オハラ・エル・ディア・デ・マニャーナ・プエダ・セル・エル・プリメール・カピタン(ボクの夢はアトレティコで引退すること。明日にでも第1キャプテンになれますように)」という野望だけは言いたかったんでしょうね。何とか、持ち直して、マイクを握っていましたが、確かに「このクラブはここ数年で凄く成長したし、全てのタイトルを争っている。Hay muy pocos equipos mejores que el Atletico de Madrid/アイ・ムイ・ポコス・エキポス・メホーレス・ケ・エル・アトレティコ・デ・マドリッド(アトレティコよりいいチームはほとんどない)」(コケ)というのはあながち、間違いではないかと。

▽それこそ昨今の状況を見る限り、アトレティコ以上にタイトル獲得の可能性を求めるなら、国外ならリーグ優勝はお約束事のバイエルンかユベントス、CLを視野に入れるなら、マドリーかバルサに移籍する以外ないと思うんですけどね。まあ、火曜に新スタジアム、ワンダ・メトロポリターノに導入されるスコアボードやビデオスクリーンの企業プレゼンに出席したトーレスも「Tenemos que intentar que los jugadores quieran seguir aqui/テネモス・ケ・インテンタール・ケ・ロス・フガドーレス・キエラン・セギール・アキー(ボクらは選手たちがここに居続けたがるようにしないといけない)」と言っていましたし、グリーズマンにもタイトル云々以外の理由があるのかも。

▽ちなみに現在、当人はアメリカに渡って、大好きなNBAのチーム巡り三昧。残留のカギを握るであろうシメオネ監督もさっさとアルゼンチンに帰ってしまいましたし、この夏、新規選手登録ができるかどうかが判明するCAS(国際スポーツ仲裁裁判所)の裁定もまだ出ていないため、しばらくこの問題はペンディングのままになりますね。

▽そしてここ数日、実はシーズンは終わっても負傷が治っていないファンフラン、ブルサリコ、アウグスト、6月にスペイン代表戦があるコケ、日曜の本当にこれがカルデロンで最後、クラブOBを招いてのチャリティマッチに出場するガビなどはまだ、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でトレーニングを続けているというのが、アトレティコの近況なんですが、その間、お隣さんはどうしていたかというと。今週は6月3日にCL決勝が控えているマドリーも月曜にリーガ優勝祝いでマドリッド州庁舎、市庁舎巡りを済ませた後、木曜からセッションを再開。まだユベントスとの決戦には日数がありますから、話題もリーガ終盤にケガで離脱していたカルバハルやベイルがようやく全体練習に戻ったことぐらいで、かなり静かだったかと。

▽そうそう、そのカルバハルがシベレス広場での祝賀イベントで「Pique carbon! Saluda al campeon!/ピケ・カブロン。サルダ・アル・カンペオン(ピケ、バカ野郎。チャンピオンに挨拶しろ)」という悪口のカンティコ(節のついたシュプレヒコール)を叫んでいたことについては、標的にされた当人から返答が。曰く「No lo considero insulto, es en un momento de euforia, de celebracion/ノー・ロ・コンシデロ・インスルトー、エス・エン・ウン・モメントー・デ・エウフォリア、デ・セレブラシオン(侮辱だとは思わない。お祝いの席で舞い上がっている時だからね)」(ピケ)と、自分も前科があるだけに理解があるようなのは良かったかと。

▽「カルバハルは自分にメッセージを送ってきたけど、謝る必要はないと言っておいた」そうですが、でもねえ。ついでにカーディフでのCL決勝を見るかどうか訊かれ、「No se si podre verla. Estare en un curso en Harvard/ノー・セ・シーポドレ・ベルラ。エスタレ・エンウン・クルソ・エン・ハーバード(見られるかどうかわからないな。自分はハーバード大学のコースを取っているから)」という答えに何となく、イラッとしたのは私の心が狭いせい?

▽いえ、自身でもゲーム企業を経営しているピケですから、バケーション期間を利用して、メディア・エンターテイメントビジネスの勉強をするのは全然、構わないんですけどね。そこでわざわざ大学名まで出す辺り、やっぱり注目を集めるのが好きな性質なんでしょうか。まあ、そんなことはともかく、今はCL決勝についてはせいぜい、マドリーが紫のユニでプレーするとか、先日のマンチェスターでのテロ事件のせいで会場のミレニアム・スタジアムでは屋根を閉じての開催を検討中とか、そんな情報しかありませんからね。今はマドリッド勢には関係なくても、コパ決勝に注目せざるを得ない状況かと。

▽そのバルサとクラブ史上決勝進出が初めてのアラベスが激突する試合は土曜の午後9時30分(日本時間翌午前4時30分)キックオフ。先日、マドリー移籍が決まったと報道された19歳のテオなど、年子の兄のリュカも使っていたアトレティコのロッカールームをアラベスが使えることになって嬉しいかと思いますが、彼らはリーガ戦でカンプ・ノウでは1-2と殊勲の白星を挙げたものの、後半戦では0-6と大敗していましたからね。今回、どっちに転ぶのか、まったく予想もつきませんが、金曜からはもう続々とビトリア(スペイン北部、アラベスのホームタウン)からファンが上京。ただここ2年、アスレティック、セビージャとファンの熱狂度では大きく上回りながら、どちらもバルサの前に屈してしますからね。

▽また同じ結末になる可能性も高いですが、一方、ルイス・エンリケ監督が指揮を執る最後の試合となるバルサではルイス・スアレスとセルジ・ロベルトが出場停止。前線はネイマールとメッシがいるため、それ程、気にならなくても、アレイシ・ビダルは足首骨折から治ってきたばかりで、マスチェラーノもケガ上がりのため、左SBを誰にするかが大問題になっているようです。うーん2シーズン前、就任1年目で栄えあるトリプレテ(CL、リーガ、コパの3冠)を達成したルイス・エンリケ監督も昨季はドブレテ(リーガ、コパの2冠)となり、いよいよ今季は獲れるタイトルがこれだけになってしまいましたからね。それだけに選手たちも序盤から飛ばしてきそうですが、あくまで勝負は水もの。何はともあれ、最後の最後までファンが楽しめる試合になってくれるといいのですが…。

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