【原ゆみこのマドリッド】信念だけでは足りない…
2017.05.13 11:50 Sat
▽「器物破損罪って、スペインにはないのかな」法律に疎い私がそんな風に首を捻っていたのは金曜。ビセンテ・カルデロンで最後のヨーロッパの大会の試合となったCL準決勝2ndレグでスタンドのシートを引き剥がし、持って帰ったアトレティコファンが部屋に飾った戦利品をTVで自慢しているのを見た時のことでした。いやあ、AS(スポーツ紙)などには、試合終了間際に突如として降り始めた大雨に、とりわけ500席程が被害にあったfondo sur(フォンド・スール/南側ゴール裏席)では備えのなかったファンが傘替わりに利用。その場を動かず、応援を続けていたなんて美談的に書いてあったものの、まあ、その日はパソコンを持っていたため、とてもじゃないけどタイムアップの笛が鳴るまで待っていられず、プレスルームに逃げ込んでしまった自分ですから、気持ちはわからなくもないんですけどね。
▽それまでに座席を元通りにしないといけない整備の人たちにしてみたら、いくら最後のご奉公とはいえ、あまりに心ない仕打ち。運良く私はかち合わなかったものの、キックオフ1時間程前にスタジアム周辺でアトレティコのウルトラたちと警官隊が衝突。ビール瓶や石が飛び交い、25人の負傷者が出た騒動もありましたし、選手たちが「la mejor aficion del mundo/ラ・メホール・アフィシオン・デル・ムンド(世界一のサポーター)」(ガビ)と絶賛するファンの中にも素行の悪い者たちが混じっているのは、こちらのサッカーの本当に嘆かわしい側面かと。
▽まあ、そんなことはともかく、肝心の試合の話をしないといけません。火曜の夕方はその最高のサポーターたち700人余りがホテル・モンレアルの前に集合。1stレグの前は午後11時に応援を始め、選手たちにわざわざ部屋から出て来させたのを反省したか、この日はビセンテ・カルデロンでの最終練習を終えたチームがバスで到着する時間だったんですが、「Hasta la ultima gota de sangre/アスタ・ラ・ウルティマ・ゴタ・デ・サングレ(最後の血の1滴まで)」という横断幕とカンティコ(節のついたシュプレヒコール)で元気づけられた彼らもその夜、先週のホームゲームを0-2で落としていたモナコがかつてのアトレティコのエース、ファルカオの奮闘も空しく、ユベントスに2-1と再び敗北。総合スコア4-1で姿を消したのにはさぞかし、remonatada(レモンターダ/逆転劇)の難しさを噛み締めることになったのでは?
▽アトレティコにとっては大鬼門、そのPKもこの日はグリーズマンがナバスの手を弾いてゴールにしてくれたため、これで総合スコアは2-3に。いよいよ、これはもしかするとファンも湧きたったんですが、後でジダン監督も「ウチは序盤の20~25分、問題があったが、no habia que preocuparse porque ibamos a tener ocasiones/ノー・アビア・ケ・プレオクパールセ・ポルケ・イバモス・ア・テネール・オカシオネス(チャンスは来るはずだったから、心配する必要はなかった)」と言っていた通りになったのは、シメオネ監督がここでチームを後退させてしまったせいもあったかも。いえ、もちろん「Es dificil sostener los primeros 25 minutos que se hicieron/エス・デフィシル・ソステネール・ロス・プリメーロス・ベイテンティシンコ・ミヌートス・ケ・セ・イシエロン(最初の25分にやっていたことを維持するのは難しい)」(シメオネ監督)という意見も、ローテーションすら満足にできず、選手たちにシーズン終盤の疲れが溜まっているチームならでの事情もわかりますけどね。
▽その時点でのレアル・マドリーはいくら、マルセロが「No hemos tenido miedo en ningun momento/ノー・エモス・テニードー・ミエードー・エン・ニングン・モメントー(ウチは一瞬だって怯えを感じたりはしなかった)」と言い張ろうと、勢いに任せて攻めていくアトレティコに押されていたのは事実。それを利用して、早々に総合スコアをイーブンにする3点目、更に4点目、5点目、6点目…と取っていれば、あとはヘロヘロでも守り倒すぐらいはできただろうにと、自分の素人考えでは思ってしまうんですが…現実は常に非情。それみたことかというプレーが、もうすぐハーフタイムという43分に生まれます。
▽ええ、クリスチアーノ・ロナウドが急いでスローインしたボールを受けたベンゼマがサビッチ、ゴディン、その日左SBとして入ったヒメネスに囲まれながらも左奥のライン際を突破。エリア内に折り返したパスをシュートしたクロースの一撃はGKオブラクが弾いてくれたものの、ひょっこりゴール前にいたイスコに押し込まれ、致命的な失点をしてしまうんですから、もうどうしたらいいものやら。
▽うーん、ジダン監督も「le pregunte como ha salido de ahi y el no lo sabia tampoco/レ・プレグンテ・コモ・ア・サリードー・デ・アイー・イ・エル・ノー・ロ・サビア・タンポコ(どうやってあそこから抜けたのか訊いたが、彼も知らなかった)」と説明できなかった程だったベンゼマのjugadon(フガドン/スーパープレー)には、両CBがすでにイエローカードをもらっていて、足をかけたりできなかったのも幸いしたんですけどね。イスコなども「Despues del 2-0 hemos entrado en el partido por fin/デスプエス・デル・ドス・セロ・エモス・エントラードー・エン・エル・パルティードー・ポル・フィン(2-0とされた後、とうとうボクらも試合に没頭した)」と言っていたように、寝た子を起こすようなアトレティコの戦略も失敗だったのは確か。
▽これで再び3点が必要になったアトレティコだったんですが、後半も決して「Creíamos que la remontada era possible/クレイアモス・ケ・ラ・レモンターダ・エラ・ポシーブレ(逆転は可能だと信じていた)」(フィリペ・ルイス)という態度は変わりませんでした。でも哀しいかな、選手たちのタレントの差は如何ともしがたし。ええ、そのことはこの試合のチーム走行距離計が片や113.1キロ、相手は103.4キロと10キロも違いながら、パスの成功率では70%対86%と、クロースやモドリッチのような選手がいないアトレティコが大きく劣っていたことでもわかるんですが、せっかく65分につかんだカラスコとガメイロの連続シュートもナバスに弾かれてしまう有様ではねえ。
▽結局、どちらも後半は点を取れず、試合は2-1で終了。久々にマドリーに勝てたものの、総合スコア2-4で敗退となれば、「Nosotros dependemos del equipo y ellos de las individualidades/ノソトロス・デペンデモス・デル・エキポ・イ・エジョス・デ・ラス・インディビドゥアリダーデス(ウチはチーム頼りだが、彼らは個人技次第)。ベンゼマのようなプレーをされたら厳しい」というシメオネ監督のコメントに同意するしかありません。ただ昨季のミラノでのCL決勝後と打って変わって、彼はチームのその日の戦いぶりに「Soy feliz/ソイ・フェリス(自分は幸せだ)」と満足していることを開口一番で強調。
▽お隣さんの選手との質的量的な差でさえ、「Un paso chico, pero que es muy grande. Ojala lo demos/ウン・パソ・チコ、ペロ・ケ・エス・ムイ・グランデ。オハラ・ロ・デモス(ほんの小さな一歩だが、それがとても大きい。ウチが前進できることを願っている)」と、この敗退を来季に向けての重点補強をフロントにアピールする機会にすることにしたよう。いえ、それも6月に出るCAS(国際スポーツ仲裁裁判所)の判定でFIFA処分が解けるか解けないか次第ですけどね。あの豪雨の中、シートを引っぺがすかどうかは別として、敗退が決まってもスタンドに留まり、再びピッチに現れた選手たちをずっと励ましていた忠実なファンたちには、クラブだって応えない訳にはいかないはずですよ。
▽一方、2年連続での決勝行きとなったマドリーの選手たちもその後、カルデロンに駆けつけた4000人余りのファンに感謝するため、ピッチに出て来たんですが、ちょっとミソをつけてしまったのは、カルバハル負傷中で空きのあった右SBをダニーロに取られ、出番のなかったナチョ。芝の上にマドリーの旗を広げたため、挑発行為と取られてしまったんですが、おかげで翌日の商業イベントで当人が、「Si hubiera querido provocar, la hubiera puesto en otra parte del campo/シー・ウビエラ・ケリードー・プロボカール、ラ・ウビエラ・プエストー・エン・オトラ・パルテ・デル・カンポ(もし挑発したかったのなら、ピッチの別のところに置いただろう)」と釈明する破目に。
▽大体がして、2013年に当時、若干21歳だったコケがサンティアゴ・ベルナベウで宿敵マドリーを倒してのコパ・デル・レイ優勝に舞い上がり、アトレティコの旗をセンターサークルに置いたのと比べるのも27歳のナチョに失礼かと思いますが、その日ではゴールではなく、殊勲のスローインで貢献したロナウドも「Somos el Real Madrid y demostramos tener mas experiencia/ソモス・エル・レアル・マドリッド・イ・デモストラモス・テネール・マス・エクスペリエンシア(ボクらはレアル・マドリー、ウチにはより経験があることを示した)」と試合後、いかにも余裕たっぷりだったのも何ともねえ。
▽勝てば官軍なのは当然ですが、それでも6月3日の決勝で当たるユーベには要注意。セルヒオ・ラモスなどは「al Pipa no le voy a regalar cacahuetes/アル・ピパ・ノー・レ・ボイ・ア・レガラル・カカウエテス(ピパにピーナッツを贈るつもりはないよ)」と言っていたものの、相手には2年前、そちら側でマドリーの準決勝敗退に繋がるゴールを挙げたモラタに続いて、古巣への恩返しを虎視眈々と狙っているイグアインや、モナコとの2試合で1ゴール3アシストを決め、バルサに放出したことを後悔させようと決意しているダニエル・アウベス、1年だけでもアトレティコにお世話になった恩を返そうとしている(いや、していないって?)マンジュキッチといった旧知のライバルがゴロゴロしている上、GKブッフォン、新鋭FWディバラ、ユーベ版BBC(ボヌッチ、バルザーリ、キエッリーニの頭文字)までいて、まったく一筋縄ではいきそうにありませんからね。
▽これまでCLを連覇したチームがないのも気掛かりですが、当面の彼らの課題はリーガ優勝を決めること。いえ、現在2位のバルサとは勝ち点差がないため、マドリーがミッドウィークのセルタ戦で木曜にはオールド・トラフォードでやはり、ヨーロッパリーグ準決勝逆転突破の夢をマンチェスター・ユナイテッドに阻まれ、失意のドン底にいる相手を倒すのも含め、どちらも連勝を続ければ、21日の最終節に決着なんですけどね。まずはこの日曜にホームでセビージャを破り、敗退のショックと疲労がピークに達しているお隣さんに来季CLグループリーグ出場権の手に入る3位確定をプレゼントするなんていうのはどうでしょう。順番から言って、今度はBチームの出動になるかと思いますが、その強さはもうお墨付きですし、バルサがラル・パルマスに負ける確率も低いので、どちらにしても勝利は必須かと。
▽ちなみにアトレティコは前節、新弟分のレガネスに4-0と惨敗して、すでに残留確定しているにも関わらず、ビクトル・サンチェス監督を解任したベティスとのアウェイ戦。右SB全滅という事態を受け、マドリーとの2ndレグに出場しようとリハビリを急いだファンフランが再び負傷、もう今季は絶望とか、先週のエイバル戦で退場したゴディンが3試合の出場停止処分を受け、こちらもシーズン終了といった悪いニュースもありますが、自力でもあと勝ち点1で3位は決まりますからね。最終節のアスレティック戦ではビセンテ・カルデロンとのお別れを満喫できるよう、ひと踏ん張りしてくれるといいんですが。
▽そして土曜の2試合以外、順位が懸かっている試合だけ日曜午後8時(日本時間翌午前3時)に設定された今週末のリーガ、やはりあと勝ち点1ないと残留が確定しないレガネスも兄貴分と同様、この時間帯にサン・マメスでのアスレティック戦を迎えるんですが、こちらもエイバルに挑むスポルティング、ビジャレアルを訪問するデポルティボを睨みながらの展開になるかと。できれば自力で1部の椅子は勝ち取ってもらいたいものですが、相手もEL出場権が懸かっていますからね。アシエル・ガリターノ監督のチームも余力はあまりないため、何とかいい目が出てくれませんかね。
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▽今季でお役御免となるスタジアムの思い出にそのままシートをお持ち帰りしようとしたファンの大多数は出口で係員に没収され、ほとんどは内部に留まったとも聞いていますが…。いや、ちょっと待って! 私が非力なせいもあるものの、まずはどうして、あのしっかり固定されている席を外してやろうなんて発想が出てくる? その昔、今季は2部で昇格プレーオフを目指して戦っているマドリッドの弟分、ヘタフェがUEFAカップで、GKオリバー・カーンも現役だったバイエルンをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えた際、ビジターチームのウルトラ(過激なサポーター)たちがシートを引き剥がして暴れたと聞いた時には、体格のいいドイツ人ならではの蛮行かと思ったこともあったもの。▽試合後、その件について訊かれたウルグアイ人のヒメネスが、「Yo tambien me hubiera llevado un asiento/ジョ・タンビエン・メ・ウビエラ・ジェバードー・ウン・アシエントー(ボクだって、シートを持っていったよ)」と言っていたのはあくまで冗談で、決してお国柄ではないことを祈りたいんですが、ビセンテ・カルデロンでもポルトガルのクラブか何かが来た時、相手方のファンが座るfondo norte(フォンド・ノルテ/北側ゴール裏席)2階のシートが被害にあったこともありましたしねえ。でもいくら、移転が決まっているとはいえ、まだこの先、リーガ最終戦のアスレティック戦、アトレティコは出ないけど、コパ・デル・レイ決勝、お別れOB戦だってあるんですよ。▽まあ、そんなことはともかく、肝心の試合の話をしないといけません。火曜の夕方はその最高のサポーターたち700人余りがホテル・モンレアルの前に集合。1stレグの前は午後11時に応援を始め、選手たちにわざわざ部屋から出て来させたのを反省したか、この日はビセンテ・カルデロンでの最終練習を終えたチームがバスで到着する時間だったんですが、「Hasta la ultima gota de sangre/アスタ・ラ・ウルティマ・ゴタ・デ・サングレ(最後の血の1滴まで)」という横断幕とカンティコ(節のついたシュプレヒコール)で元気づけられた彼らもその夜、先週のホームゲームを0-2で落としていたモナコがかつてのアトレティコのエース、ファルカオの奮闘も空しく、ユベントスに2-1と再び敗北。総合スコア4-1で姿を消したのにはさぞかし、remonatada(レモンターダ/逆転劇)の難しさを噛み締めることになったのでは?
▽え、それでもアトレティコは奇跡を起こしかけたじゃないかって? その通りで、最初は満員のスタンドも試合がどうあれ、とにかく応援することが目的になっていた感もあったんですけどね。立ち上がりから、お隣さんに怒涛の攻勢を仕掛けた彼らは開始4分、コケがゴール左脇から撃ったシュートこそGKケイロル・ナバスに弾かれてしまったものの、12分にはそのコケの蹴ったCKを頼りになるカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)の後輩、サウールがヘッドで決めて早々に先制。さらに16分には先輩のフェルナンド・トーレスがエリア内でヴァランに倒され、PKをゲットしてくれた時には、どんなに我が目を疑ったことか。
▽アトレティコにとっては大鬼門、そのPKもこの日はグリーズマンがナバスの手を弾いてゴールにしてくれたため、これで総合スコアは2-3に。いよいよ、これはもしかするとファンも湧きたったんですが、後でジダン監督も「ウチは序盤の20~25分、問題があったが、no habia que preocuparse porque ibamos a tener ocasiones/ノー・アビア・ケ・プレオクパールセ・ポルケ・イバモス・ア・テネール・オカシオネス(チャンスは来るはずだったから、心配する必要はなかった)」と言っていた通りになったのは、シメオネ監督がここでチームを後退させてしまったせいもあったかも。いえ、もちろん「Es dificil sostener los primeros 25 minutos que se hicieron/エス・デフィシル・ソステネール・ロス・プリメーロス・ベイテンティシンコ・ミヌートス・ケ・セ・イシエロン(最初の25分にやっていたことを維持するのは難しい)」(シメオネ監督)という意見も、ローテーションすら満足にできず、選手たちにシーズン終盤の疲れが溜まっているチームならでの事情もわかりますけどね。
▽その時点でのレアル・マドリーはいくら、マルセロが「No hemos tenido miedo en ningun momento/ノー・エモス・テニードー・ミエードー・エン・ニングン・モメントー(ウチは一瞬だって怯えを感じたりはしなかった)」と言い張ろうと、勢いに任せて攻めていくアトレティコに押されていたのは事実。それを利用して、早々に総合スコアをイーブンにする3点目、更に4点目、5点目、6点目…と取っていれば、あとはヘロヘロでも守り倒すぐらいはできただろうにと、自分の素人考えでは思ってしまうんですが…現実は常に非情。それみたことかというプレーが、もうすぐハーフタイムという43分に生まれます。
▽ええ、クリスチアーノ・ロナウドが急いでスローインしたボールを受けたベンゼマがサビッチ、ゴディン、その日左SBとして入ったヒメネスに囲まれながらも左奥のライン際を突破。エリア内に折り返したパスをシュートしたクロースの一撃はGKオブラクが弾いてくれたものの、ひょっこりゴール前にいたイスコに押し込まれ、致命的な失点をしてしまうんですから、もうどうしたらいいものやら。
▽うーん、ジダン監督も「le pregunte como ha salido de ahi y el no lo sabia tampoco/レ・プレグンテ・コモ・ア・サリードー・デ・アイー・イ・エル・ノー・ロ・サビア・タンポコ(どうやってあそこから抜けたのか訊いたが、彼も知らなかった)」と説明できなかった程だったベンゼマのjugadon(フガドン/スーパープレー)には、両CBがすでにイエローカードをもらっていて、足をかけたりできなかったのも幸いしたんですけどね。イスコなども「Despues del 2-0 hemos entrado en el partido por fin/デスプエス・デル・ドス・セロ・エモス・エントラードー・エン・エル・パルティードー・ポル・フィン(2-0とされた後、とうとうボクらも試合に没頭した)」と言っていたように、寝た子を起こすようなアトレティコの戦略も失敗だったのは確か。
▽これで再び3点が必要になったアトレティコだったんですが、後半も決して「Creíamos que la remontada era possible/クレイアモス・ケ・ラ・レモンターダ・エラ・ポシーブレ(逆転は可能だと信じていた)」(フィリペ・ルイス)という態度は変わりませんでした。でも哀しいかな、選手たちのタレントの差は如何ともしがたし。ええ、そのことはこの試合のチーム走行距離計が片や113.1キロ、相手は103.4キロと10キロも違いながら、パスの成功率では70%対86%と、クロースやモドリッチのような選手がいないアトレティコが大きく劣っていたことでもわかるんですが、せっかく65分につかんだカラスコとガメイロの連続シュートもナバスに弾かれてしまう有様ではねえ。
▽結局、どちらも後半は点を取れず、試合は2-1で終了。久々にマドリーに勝てたものの、総合スコア2-4で敗退となれば、「Nosotros dependemos del equipo y ellos de las individualidades/ノソトロス・デペンデモス・デル・エキポ・イ・エジョス・デ・ラス・インディビドゥアリダーデス(ウチはチーム頼りだが、彼らは個人技次第)。ベンゼマのようなプレーをされたら厳しい」というシメオネ監督のコメントに同意するしかありません。ただ昨季のミラノでのCL決勝後と打って変わって、彼はチームのその日の戦いぶりに「Soy feliz/ソイ・フェリス(自分は幸せだ)」と満足していることを開口一番で強調。
▽お隣さんの選手との質的量的な差でさえ、「Un paso chico, pero que es muy grande. Ojala lo demos/ウン・パソ・チコ、ペロ・ケ・エス・ムイ・グランデ。オハラ・ロ・デモス(ほんの小さな一歩だが、それがとても大きい。ウチが前進できることを願っている)」と、この敗退を来季に向けての重点補強をフロントにアピールする機会にすることにしたよう。いえ、それも6月に出るCAS(国際スポーツ仲裁裁判所)の判定でFIFA処分が解けるか解けないか次第ですけどね。あの豪雨の中、シートを引っぺがすかどうかは別として、敗退が決まってもスタンドに留まり、再びピッチに現れた選手たちをずっと励ましていた忠実なファンたちには、クラブだって応えない訳にはいかないはずですよ。
▽一方、2年連続での決勝行きとなったマドリーの選手たちもその後、カルデロンに駆けつけた4000人余りのファンに感謝するため、ピッチに出て来たんですが、ちょっとミソをつけてしまったのは、カルバハル負傷中で空きのあった右SBをダニーロに取られ、出番のなかったナチョ。芝の上にマドリーの旗を広げたため、挑発行為と取られてしまったんですが、おかげで翌日の商業イベントで当人が、「Si hubiera querido provocar, la hubiera puesto en otra parte del campo/シー・ウビエラ・ケリードー・プロボカール、ラ・ウビエラ・プエストー・エン・オトラ・パルテ・デル・カンポ(もし挑発したかったのなら、ピッチの別のところに置いただろう)」と釈明する破目に。
▽大体がして、2013年に当時、若干21歳だったコケがサンティアゴ・ベルナベウで宿敵マドリーを倒してのコパ・デル・レイ優勝に舞い上がり、アトレティコの旗をセンターサークルに置いたのと比べるのも27歳のナチョに失礼かと思いますが、その日ではゴールではなく、殊勲のスローインで貢献したロナウドも「Somos el Real Madrid y demostramos tener mas experiencia/ソモス・エル・レアル・マドリッド・イ・デモストラモス・テネール・マス・エクスペリエンシア(ボクらはレアル・マドリー、ウチにはより経験があることを示した)」と試合後、いかにも余裕たっぷりだったのも何ともねえ。
▽勝てば官軍なのは当然ですが、それでも6月3日の決勝で当たるユーベには要注意。セルヒオ・ラモスなどは「al Pipa no le voy a regalar cacahuetes/アル・ピパ・ノー・レ・ボイ・ア・レガラル・カカウエテス(ピパにピーナッツを贈るつもりはないよ)」と言っていたものの、相手には2年前、そちら側でマドリーの準決勝敗退に繋がるゴールを挙げたモラタに続いて、古巣への恩返しを虎視眈々と狙っているイグアインや、モナコとの2試合で1ゴール3アシストを決め、バルサに放出したことを後悔させようと決意しているダニエル・アウベス、1年だけでもアトレティコにお世話になった恩を返そうとしている(いや、していないって?)マンジュキッチといった旧知のライバルがゴロゴロしている上、GKブッフォン、新鋭FWディバラ、ユーベ版BBC(ボヌッチ、バルザーリ、キエッリーニの頭文字)までいて、まったく一筋縄ではいきそうにありませんからね。
▽これまでCLを連覇したチームがないのも気掛かりですが、当面の彼らの課題はリーガ優勝を決めること。いえ、現在2位のバルサとは勝ち点差がないため、マドリーがミッドウィークのセルタ戦で木曜にはオールド・トラフォードでやはり、ヨーロッパリーグ準決勝逆転突破の夢をマンチェスター・ユナイテッドに阻まれ、失意のドン底にいる相手を倒すのも含め、どちらも連勝を続ければ、21日の最終節に決着なんですけどね。まずはこの日曜にホームでセビージャを破り、敗退のショックと疲労がピークに達しているお隣さんに来季CLグループリーグ出場権の手に入る3位確定をプレゼントするなんていうのはどうでしょう。順番から言って、今度はBチームの出動になるかと思いますが、その強さはもうお墨付きですし、バルサがラル・パルマスに負ける確率も低いので、どちらにしても勝利は必須かと。
▽ちなみにアトレティコは前節、新弟分のレガネスに4-0と惨敗して、すでに残留確定しているにも関わらず、ビクトル・サンチェス監督を解任したベティスとのアウェイ戦。右SB全滅という事態を受け、マドリーとの2ndレグに出場しようとリハビリを急いだファンフランが再び負傷、もう今季は絶望とか、先週のエイバル戦で退場したゴディンが3試合の出場停止処分を受け、こちらもシーズン終了といった悪いニュースもありますが、自力でもあと勝ち点1で3位は決まりますからね。最終節のアスレティック戦ではビセンテ・カルデロンとのお別れを満喫できるよう、ひと踏ん張りしてくれるといいんですが。
▽そして土曜の2試合以外、順位が懸かっている試合だけ日曜午後8時(日本時間翌午前3時)に設定された今週末のリーガ、やはりあと勝ち点1ないと残留が確定しないレガネスも兄貴分と同様、この時間帯にサン・マメスでのアスレティック戦を迎えるんですが、こちらもエイバルに挑むスポルティング、ビジャレアルを訪問するデポルティボを睨みながらの展開になるかと。できれば自力で1部の椅子は勝ち取ってもらいたいものですが、相手もEL出場権が懸かっていますからね。アシエル・ガリターノ監督のチームも余力はあまりないため、何とかいい目が出てくれませんかね。
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