【東本貢司のFCUK!】胸騒ぎのミステリー/3題

2017.04.12 13:35 Wed
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▽ミステリー・アライジング。いよいよレスターが大敵アトレティコとの決戦に臨もうとするこのタイミングで飛び出した、クラウディオ・ラニエリの“問題発言”、「クラブのある人物がわたしを追い出す後押しをした」。実名をあぶり出すのは本意ではない。ラニエリ本人も明かすことを拒否し「言いたいことがあれば直接本人と差しで話をする」。つまり、彼には“当たり”がついている。気になるのは、その人物がレスターFC内のどんな地位、役職にいるかだ。推理小説でいう「最も得をする誰か」・・・・という線はもう一つぴんとこない。実際“後釜”に座ったクレイグ・シェイクスピア? あくまでもつなぎであって昇格に至る保証はどこにもない。解任直後に可能性を取り沙汰された後継候補(たとえば、元イングランド代表監督、ロイ・ホジソン)の誰かと“利益を共有する”人物がクラブ内にいるという説も論外だろう。となると、それは「ラニエリの成功を快く思わない誰か」に容疑の目が・・・・だとすれば由々しき問題ではないか。その人物は今もクラブにいるはずなのだから。プレーヤーたちの胸にどす黒い疑心暗鬼が淀むことがないと切に願う。

▽ユヴェントスが“鬼門”のはずのバルセロナをホームで大破したのをあえてミステリーとは呼ばない。しかし、ドルトムント-モナコの開催を延期させたバス爆破事件の方は実に怪しい、いや大問題と言うべきだろう。仮に、ごくありきたりに一部の過激なモナコファンの仕業だと疑ってみるのは多分筋違いだろう。速報のニュースからその節が浮かんでこない。地元警察の初動捜査によると「サポーターによる攻撃の証拠はどこにも見られなかった」という。ふと頭をよぎるのは「テロ」だ。2年前の11月に発生したあのパリ同時多発テロ事件(パリ市街および郊外サン・ドニのスタッド・ドゥ・フランス)、および、昨年クリスマスのベルリンで起こったトラック暴走テロ事件。サン・ドニ事件の標的になったのは「フランス-ドイツ」の親善試合だった。フランスとドイツ、モナコとドルトムント。“符号”はぴったり当てはまる。元バルサのマルク・バルトラが手を負傷しただけで済んだとはいえ「3発の爆破物」(警察調べ)は大惨事もあり得た。シリア空爆問題で騒然となっている国際情勢の中、搦め手からの“(テロの)ジャブ”という線は十分にある。

▽ミステリー、というよりも“行く末”が気が気でない案件といえば、われらがアーセン・ヴェンゲルの“近未来”。まさかの対クリスタル・パレス惨敗は、せっかく5日前にウェスト・ハムを沈めて少しは鎮火したはずのヴェンゲル批判論を、また一気にぶり返させる憂鬱の“蕾”となってしまった。なぜなら・・・・問題の根っこにあるのは、クラブ側がすでに提示している「2年契約更新」に対して、ヴェンゲルが返事を保留している事実だからだ。つまり「言い訳の利かない状況」になってしまった場合、ヴェンゲルは自ら身を引く覚悟を温めている可能性がある(と察せられる)のだ。「言い訳の利かない状況」とは、唯一残ったタイトルのFAカップ、そして、チャンピオンズリーグ出場権がかかるトップ4フィニッシュを取り逃がしてしまう事態。それでも「アーセナルの監督を続ける」と言い張ることは、さすがにファンを納得させられるものではない、いや、そもそも彼自身のプライドが許さないに違いない。パレス戦敗退はその後者に著しく現実味を帯びさせることになった。文字通りの崖っぷち。だが、その“背水の陣”は吉を呼び寄せられるのか。

▽最大の不安がそこにある。パレス戦は言うに及ばずだが、実はスコアこそ3-0の快勝に見えるウェスト・ハム戦すら、ガナーズイレヴンのパフォーマンスは決して褒められた内容ではなかった。実際、メディアの評価も負けチーム並みに低く、相前後して伝えられた元プレーヤーたちも重い疑問が引きも切らない。一言でいえば「覇気が感じられない」とばっさりなのである。ウェスト・ハム戦をご覧になった方ならきっと思い起こすはずだ。苦戦の中でようやくもぎ取った先制ゴール、そして“ダメ押し”の3点目・・・・いずれもファインゴールに数えていいはずのそれぞれのスコアラー、エジルとジルーの、見るからに喜びも半ば以下と言わんばかりの、浮かない表情を。まるで、だめだこんなことじゃ、きっといずれ“しっぺ返し”を食らうんじゃないかとの不安をぬぐえない・・・・。そして、それは“すぐ”に(パレス戦で)現実化した。ムードは最悪、しかも、不倶戴天の仇敵スパーズが、トップ4争いではるか彼方の優位にあり、FAカップでも勝ち残っている。その若きエース、デル・アリはデータ上からも史上最高クラスのMFとしてもてはやされ・・・・。

▽いや、逆風ばかり憂いていても何もならない。まだ“可能性”が残っている限り、首を垂れていても仕方がない。“修正点”、巻き返しへの課題克服は、パレスにしてやられたゲームから学べるはずだ。パレスのサム・アラダイスが「してやったり」と自慢した対アーセナル対策を教訓として逆手に取るのである。ボールを速く、何よりも「前」に動かす。「横」にではなく、そして、あえてポゼッションに安住しないこと。ある元プレーヤーはいみじくもこう述べた。「アーセナルのプレーヤーたちはヴェンゲルのポリシー、指示を実践していない」。もし、この指摘にエジル以下が今後もどうやっても「応えられない」のだとすれば話は“早い”。ヴェンゲルが去るか、エジルたちが去るか、二つに一つ。いや、最悪「両方」ということも? いずれにせよ、そのときはアーセナルが良くも悪くも根底から生まれ変わる運命に直面しなければなるまい。そんな「一寸先の闇」に、クラブは、サポーターたちははたして耐えられるのか。少なくとも運命の残り8試合、エジルたちが死力を尽くす「覇気」を示さなければ、「闇」が晴れる日などいつまでたっても・・・・。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
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