【原ゆみこのマドリッド】上手い話には裏がある?

2017.04.04 10:37 Tue
▽「こうまでトントン拍子だと却って不安かも」そんな風に私がソワソワしていたのは月曜日、AS(スポーツ紙)の記事に1カ月前、4位のアトレティコと3位のセビージャの勝ち点差は9あったと思い出させられた時のことでした。いやあ、これにはシメオネ監督も「ウチがいい結果を出しているだけでなくて、予想外にセビージャと3位を分け合うことになった」と正直、驚いていたようですけどね。実際、彼らがここ4連勝しているのは感服ものですが、その間、来季のCLグループリーグ直接出場権を争うライバルは3分け1敗という不甲斐ない有様。おまけに唯一の黒星がそれこそ、アトレティコ相手の3-1負けと、ゴールアベレージで遅れを取ったため、同じ勝ち点で並んだ現在、セビージャの方が4位になっているなんてもう、ほとんど冗談としか思えないじゃないですか。
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▽更に加えて、3月中は4位のCLプレーオフ出場権獲得を僅かな勝ち点差で争っていた後続のレアル・ソシエダとビジャレアルも停滞期に突入。ここ4試合、前者は1勝1分け2敗、後者は2勝2敗と取りこぼしがあったため、今では5位とは9ポイント、6位とは10ポイントも差がついているとなれば、来季新装オープンするホームスタジアム、ワンダ・メトロポリターノでヨーロッパリーグの淋しい木曜の夜を過ごす心配はもうしなくていい?うーん、リーガの残りはあと9試合、この1カ月とは真逆の不幸がアトレティコを襲うことも考えられますからね。やっぱりここは滅多にないツキが巡ってきたなどと油断せず、「Ahora hay que sostenerlo/アオラ・アイ・ケ・ソステネールロ(今はこれを維持しないといけない)」(シメオネ監督)という姿勢で挑まないといけませんよね。▽ちなみにそんなアトレティコの先週末のマラガ戦は、これもやっぱり運が良かったとしか言いようのないもので、いえ、序盤に空中戦でミゲール・トーレスと争ったサビッチが相手の上に落下して、気の毒にも早々に交代枠を使わせてしまったのは別に意図してのものではないんですけどね。この日のアトレティコはガメイロ、ガイタンが負傷欠場、カラスコは出場停止とあって、先発にカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)6人が並ぶという、珍しい事態に。そのせいとは言いたくはないんですが、ほとんどパスが繋がらず、下位に低迷しているマラガにボールを支配されるという不本意な展開になっていたため、私も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で頭を抱えて眺めていたところ…。
▽いきなり度胆を抜かれたのは前半25分、コケからパスを受けたフェルナンド・トーレスはエリア直前で敵DF2人に潰されしまったですが、計算付くだったのか、偶然だったのか、ボールがゴールの方向に転がります。そこへ駈け込んで来たコケがシュートして、先制点を奪ってしまったから、呆気に取られたの何のって。だってえ、それまでアトレティコはほとんど攻撃らしい攻撃ができていなかったんですよ。まるで狐に化かされたような気分でしたが、後半早めには、ボールを失いまくって手の付けられなかったトマスをコレアに代えても何も起きずに20分程が経過。ようやく29分になって、グリースマンがエリア内でトーレスに繋ぐと、そこからオーバーラップしたフィリペ・ルイスにパスが通り、彼のvaselina(バセリーナ/ループシュート)で2点目が決まった時もそれは同じだったかと。

▽結局、「Veniamos con dos juveniles, dos centrales en el banco/ベニアモス・コン・ドス・フベニレス、ドス・セントラレス・エン・エル・バンコ(ウチは2人のユース選手を連れて来て、ベンチには2人のCBがいた)」(シメオネ監督)ということで、その後はゴディンとヒメネスを投入。実質、ピッチにCBが4人という状態でリードを守り切り、0-2で勝利したアトレティコだったんですが、「Tienen dos ocasiones y son dos goles/ティエネン・ドス・オカシオネス・イ・ソン・ドス・ゴーレス(2回のチャンスがあって、2ゴールを入れた)」(ファンカル)というマラガの言い分も本当ですからね。それでもあれだけひどいプレーをしながら、決して恥じることも憶することもなく、苦手なラ・ロサレダ(マラガのホーム)であっさり勝ち点3を手にしてしまった彼らを褒めてあげるべき?
▽ええ、シメオネ監督も「Lo que mas me refuerza es la valentia y la rebeldia ante las dificultades/ロ・ケ・マス・メ・レフエルサ・エス・ラ・バレンティア・イ・ラ・レベルディア・アンテ・ラス・ディフィクルターデス(困難を前にした選手たちの勇気と反抗心が一番、私を力づけてくれる)」と言っていましたしね。もうシーズンもこんな時期になってしまったからには、いいサッカーをするなんて難しいことは求めず、とにかく勝つのに専念してもらうしかないかも。おまけにその日、2アシストで貢献したトーレスが「Metimos presion al Sevilla/エル・オブヘティボ・エス・セル・テルセーロス・イ・メティモス・プレシオン・アル・セビージャ(ボクらはセビージャにプレッシャーをかけた)」と言っていた通り、翌日曜正午からの試合でサンパオリ監督率いるチームは意外にも、降格圏にいるスポルティングとスコアレスドロー。

▽そのおかげでアトレティコは3位に居座ることができたんですが、もちろん今週はミッドウィークにもリーガがあるため、1日天下で終わってしまう可能性もありますからね。何せ、日月の練習ではガメイロもガイタンも回復せず、戦力的にはカラスコが戻ってくるだけで、火曜午後9時30分(日本時間翌午前4時30分)からのソシエダ戦は到来。加えて、今週末の土曜にはマドリーダービーが控えているとなれば、あとイエローカード1枚で累積警告になってしまうコケとサビッチを使うのかどうかも考えどころですが、丁度そんな節に限って、セビージャがカンプ・ノウでのバルサ戦なんて偶然も怖いくらい、ツイているような気がしないでもなくて…。

▽え、そうは言っても先週末、いい試合をしていないのに勝ったのはアトレティコだけではなかったんだろうって?その通りで日曜にサンティアゴ・ベルナベウにアラベスを迎えたお隣さんもなかなかゲームの方は盛り上がりませんでしたね。ちなみにその一戦、キックオフ前にはfondo sur/フォンド・スール(南側ゴール裏席)に若くして事故死を遂げたレアル・マドリーのレジェンド、ファニートの25年周忌を偲んで、「No te olividamos/ノー・テ・オルビダモス(決して君を忘れない)」という文字と共に背番号7の大きな幕が広げられ、雰囲気たっぷりにスタート。運悪く、開始9分で久々の負傷明け出場だったバランが再び、同じ部位を痛め、カルバハルと交代しなければならなかったのも士気に影響したのかもしれませんが、これが30分には災い転じて福となってくれたから、助かったの何のって。

▽そう、先発したダニーロを左SBに回し、右SBに入ったカルバハルがエリア内奥から出したクロスをベンゼマが撃ち込んでマドリーが先制点を挙げたんです!いえ、実はこれ、後でペレグリーニ監督も「La jugada la he visto en el vestuario. Es fuera de juego/ラ・フガダ・ラ・エ・ビストー・エン・エル・ベストゥアリオ。エス・フエラ・デ・フエゴ(そのプレーはロッカールームで見た。オフサイドだった)」と言っていたように、ベンゼマの位置がアラベスのDFより前だったんですけどね。現時点のリーガには予算の関係もあって、VAR(ビデオ審判)の制度は導入されていないため、主審がその場でゴールと言えばゴール。ただそれ以外はほとんどパッとしたアクションがなかったのは、いえバスの正確さは別ですが、マドリーもアトレティコと同じです。

▽そして1-0でリードして迎えた後半、アラベスも今季の伏兵、コパ・デル・レイ決勝進出チームの面目を懸けて反撃をしてきたんですが、先週は各国代表でプレーしてきた選手も多く、疲れが出始めた相手が「Perdimos muchos balones, cosa que no suele pasar/ペルディモス・ムーチョス・バロネス、コーサス・ケ・ノー・スエレ・パサール(沢山のボールを失った。ウチではあまりないことなんだが)」(ジダン監督)という状態になってくれたにも関わらず、このチーム、本当に決定力が低いんですよね。おかげで1月にメンディソローサ(アラベスのホーム)で戦ったアトレティコなども近年稀に見る最低の出来と言われながら、どうにかこうにか0-0で凌ぐことができたんですが、そこはたとえ調子が悪い時でもいきなり点を取れるマドリー。

▽ええ、後半40分、クリスチアーノ・ロナウドのパスをその日、カセミロが出場停止だったため先発のチャンスをもらったイスコが、「Tenia poco angulo y ahi o le pegas fuerte arriba o nada/テニア・ポコ・アングロ・イ・アイー・オ・レ・ペガス・フエルテ・アリーバ・オ・ナーダ(角度がほとんどなくて、あれは強くゴールの上部に向けて撃つか、何にもなしかだった)」と、勝敗を決定づける2点目にしてしまったから、まったく意表を突いてくれるじゃないですか。うーん、彼は先週、スペイン代表のW杯予選イスラエル戦でも大人数の敵DFの間を通り抜けていく不思議な4点目を決めていましたけどね。こういう他とは違ったゴールを挙げられるのも、当人の特異な才能のおかげでしょうかね。

▽その2分後にもベイルのFKがゴールバーに弾かれて戻ったところを、バラン交代で左SBからCBに移っていたマルチDF、ナチョがヘッドで追加点を入れたマドリーは、終わってみれば3-0の完勝。まったくもって「Sabemos que en cualquier momento le podemos hacer dano al rival/サベモス・ケ・エン・クアルキエル・モメントー・レ・ポデモス・アセール・ダーニョ・アル・リバル(ウチはどんな時でも敵に打撃を与えられることを知っている)」(ジダン監督)というチームならではの勝ち方だったかと。ただその日、唯一残念なことがあるとすれば、これで一時、首位との勝ち点差を5にされ、プレッシャーをかけられたはずの2位バルサも後半に3点を入れて、グラナダに1-4と勝利。結局、差を広げられなかったことでしょうか。

▽とはいえ、マドリーにはまだ延期したセルタ戦も残っていますし、何より次はレガネスとのプチダービーですからね。代表戦週間前にはセビージャと、この土曜はソシエダと1-1で引き分けて、アトレティコの手助けをしてくれたマドリッドの新弟分ですが、現在、3位と首位の差は勝ち点10もあるため、今更、焼石に水ということもありますし、さすがに今季初めて1部で戦っている後輩にそこまで期待するのはいささか荷が重いかと。それだけでなく、ジダン監督は先週末、セルヒオ・ラモス、マルセロ、ケイロル・ナバス、ハメス・ロドリゲスらも温存している上、負傷欠場はバラン以外いないとなれば、水曜午後9時30分からの一戦は、徹夜してチケットをゲットしたブタルケ(レガネスのホーム)のファンには申し訳ないものの、下剋上を起こすのはちょっと無理っぽい?残留確定のため、勝ち点3ずつ積み上げるアシエル・ガリターノ監督の計画は週末のオサスナ戦から再開するしかないかもしれません。

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