【原ゆみこのマドリッド】パリも試合も良かったけど…
2017.03.31 12:31 Fri
▽「これも一種のFIFAウィルスなんだろうか」そんな風に私が首を捻っていたのは木曜。アトレティコのツィートでparte medico(パルテ・メディコ/負傷者レポート)が届いたので読んでみたところ、いえ、ガメイロは火曜の親善試合でフランス代表のメンバーとしてフル出場していましたから、左太ももを痛めたと言われれば、そうなんだと思うしかないんですけどね。居残り組だったGKモジャも太ももをケガ、せっかく先週契約を1年延長したばかりというのに日曜のマラガ戦のベンチに入れなくなってしまったのはともかく、今回はアルゼンチン代表に呼ばれず、ずっとマダオンダ(マドリッド近郊)の練習場で体力向上のスペシャルメニューに励んでいたガイタンまでが左足の指を痛めて練習に出られなかったって一体、どんな特訓をしていたの?
▽シメオネ監督の2年越しの願いが叶い、去年の夏にベンフィカから移籍してきたガイタンはアトレティコへの適応に時間がかかっていて、これまでのところ頻繁にプレーしている訳ではないため、別にいいって言えばいいんでしょうけどね。ちょっとタイミングが悪かったのは、次節はカラスコが累積警告で出場停止になるため、サイドに1つ空席ができること。となると、メッシが先週木曜のW杯南米予選チリ戦で試合後、審判に悪態をついたことを咎められ、月曜のボリビア戦から4試合の出場停止処分に入ってしまったため、急遽先発となったコレアをまた右サイドにして凌ぐしかないんじゃないかと思いますが、標高3600メートルのラパスでプレーした当人はアルゼンチン代表に大した貢献はできず。チームも2-0で負け、疲れ果てて帰って来そうなのは懸念材料かも。
▽逆に今回、スペインのU-21代表に下りて、6月のユーロに向けた調整試合のデンマーク戦、イタリア戦の両方で得点。丁度、入れ替わりでデウロフェウ(ミラン)が大人の代表へ呼ばれていたため、キャプテンの大役まで仰せつかったサウールには期待できるかと思いますが、さて。何せ、リーガも残り10試合とあって、いよいよシーズンの良し悪しが決まる一番大事なフェーズに入りますからね。ゴディンやヒメネス、フィリペ・ルイスら、他の中南米代表組は元気に木曜の夕方練習に参加したようですが、皆、早めに時差呆けが解消してくれることを願っています。
▽え、再開されるリーガが気になるのもわかるけど、スペインとフランスの親善試合はどうだったのかって? いやあ、実は今回、会場がスタッド・ド・フランスというところに惹かれ、私も便乗させてもらうことに。マドリッドからは空路2時間と近い割に卒業旅行以来、ご無沙汰していたパリだったため、昼間、エッフェル塔に登るのに1時間半並ぶなど、ついつい観光に精を出してしまったのがいけなかったんでしょうかね。
▽午後9時という遅めのキックオフだった前半は序盤こそ、いきなりフランス勢で最近、知名度と人気が赤丸急上昇していたエムバッペ(モナコ)のシュートをGKデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)がparadon(パラドン/スパーセーブ)したり、ピケ(バルサ)によるライン上でのボールクリアがあったりして、ドッキリとさせられたものの、後はお約束通り、チャンスはあまりないまま、スペインのボール独占状態に突入。30分過ぎにはスタンドのフランスサポーターも退屈が高じて、ウェーブを場内何周も繰り返していましたし、私も眠気が襲ってきたらどうしようと心配になっていたところ…。
▽うーん、グリーズマンによると、「自分はオフサイドじゃなかったと思うけど、後でガメイロがそうだったって言われた」とかで、クラブの同僚が先制点ゲットの障害になったとは何とも皮肉。ただこれでその日、ピッチにいた3人目のアトレティコ、コケがグリーズマンにからかわれることはなくなったかと、私もホッとしたんですが、スペインの攻撃が活発化したのはイニエスタ(バルサ)、イスコ(レアル・マドリー)がチアゴ・アルカンタラ(バイエルン)、シルバ(マンチェスター・シティ)に、とりわけペドロ(チェルシー)がデウロフェウに代わった後のことでした。ええ、67分にU-21の真正キャプテンがエリア内でコシエルニ(アーセナル)に倒され、PKをゲット。これをシルバがしっかり決めて、とうとうスペインはリードを奪うことに成功です!
▽そこからおよそ10分後、今度はジョルディ・アルバ(バルサ)のラストパスをゴール前に抜け出したデウロフェウがネットに蹴り込んだんですが、この時は線審がフラッグを挙げていたため、当人も「Lo meti por si acaso. Al principio pensaba que lo habian anulado/ロ・メティ・ポル・シー・アカソ。アル・プリンシピオ・ペンサバ・ケ・ロ・アビアン・アヌラードー(念のためにシュートを決めたけど、最初は認められないだろうと思った)」と言っていたように、またVARの判定を待つ破目になったんですよ。何ともじれったい間でしたが、結果は吉と出て、デウロフェウはオフサイドにあらず。ようやくスペインの2点目がスコアボードに現れます。
▽その後はフランスの反撃も実らず、スペインは0-2で勝利と、これで昨年の夏、2016年ユーロでイタリアに負け、ベスト16敗退が決まった悔しいサンドニの地でリベンジを果たせたんですから、何とも嬉しい限りじゃありませんか。え、VARがなかったら、この試合、1-1で終わったんじゃないのかって? そうですね、ただロペテギ監督も「España no ha ganado el partido por el VAR/エスパーニャ・ノー・ア・ガナードー・エル・パルティードー・ポル・エル・バル(スペインはVARのおかげで勝った訳じゃない)。選手たちの努力と野心、サッカーで勝ったんだ」と言っていたように、フランスを圧倒していたのは事実。もちろん「VARは公正さに寄与した。使われた2度の機会で正しい判定をしたのだから」(ロペテギ監督)ということもありますが、要はこれが「Es una pena porque se pierde un poco lo que es el fútbol/エス・ウナ・ペナ・ポルケ・セ・ピエルデ・ウン・ポコ・ロ・ケ・エス・エル・フトボル(サッカーというものが少し、失われるのは残念だね)」(グリーズマン)ということになるのでしょうか。
▽試合の方はそんな感じで、世代交代が進んだスペインも先週のW杯予選イスラエル戦に続き、少しずつ強さの片鱗を見せてくれるようになったため、今回の代表戦はいい手応えだったで終われるはずだったんですけどねえ。それが世の中には常にスポットライトを浴びないと気が済まない選手がいて、ゲーム中は「お騒がせツイートや爆弾発言がないと、代表じゃ結構、地味よね」と何気に思っていたピケ(バルサ)がミックスゾーンでオンステージを始めたから、驚いたの何のって! いえ、大活躍だったデウロフェウや滅多に見られないエムバッペやラビオ(PSG)も丁度、インタビューを受けていたため、私も延々、15分間ずっとピケの側にいた訳じゃないんですけどね。
▽後で内容をまとめて聞いたところ、先日、マドリーのレジェンド、ラウールが将来、バルサで働くことを否定しなかったことについて尋ねられたのが発端となり、「Del Madrid no me gusta los valores que transmite/デル・マドリッド・ノー・メ・グスタ・ロス・バローレス・ケ・トランスミテ(マドリーの伝える価値観が好きじゃない)」と言い出すって、いや、当人が代表のチームメートはともかく、永遠のライバルをとことん嫌っているのは知っていますけどね。始めは私も大枚をはたいて才能に余りある選手を集めながら、根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)に代表される、絶対に諦めない精神を強調するところかなと思ったものでしたが、いえいえ、とんでもない。
▽「気に入らないのはcómo mueven los hilos de este país/コモ・ムエベン・ロス・イーロス・デ・エステ・パイス(この国の中枢を動かしていること)。パルコ(貴賓席)でペレス会長の隣にメッシやネイマールを訴えた人物がいて、クリスチアーノ・ロナウドは別の扱いをされている」って、まあ確かにピケの言う、マルタ・シルバ女史はスペインの法務機関で働く司法サービス担当ディレクターで、以前はマドリーの法務部に勤務していたようですけどね。脱税の証拠十分と踏んで検察が起訴に持ち込み、すでに裁判になっているバルサの2人と違って、ロナウドは事前に証明書類を提出しており、まだ捜査段階。全然、事情が違いますし、いくら何でもマドリーのお偉いさんのおかげでそんなことになっていると決めつけるって、あまりに短絡的ではない?
▽これではまるでスペイン国家はワイロや権力者の思惑で動く、発展途上国並だと言っていることにもなりますが、まあその内実は私も知りませんから、否定もできませんけどね。加えてピケは誤審問題についても一言。曰く、「マドリーとバルサが優遇されているのは自分も確信している。ボクが比べているのは優勝を争っている両チームの間での不公平さで、レガネスとじゃないんだ」そうですが、いやあ、それもマズいでしょ。マドリッドの新弟分は不利な判定をされても声高に抗議をすることはありませんが、大体、だったらCL16強対決PSG戦2ndレグであった解せないジャッジについて、「あれは歴史的な逆転劇。だったら、どうして昨季のCL決勝であったラモスのオフサイドのゴールについて批判がない?」ってもう、こう言えばああ言うの典型では?
▽きっと後でそのコメントを聞いたコケやグリーズマンは、「あの時、VARがあれば」なんて悲しい思いもしていたんじゃないかと私など、想像してしまったんですが、もうこうなると、最後は代表でもマドリーでもキャプテンのセルヒオ・ラモスが締めるしかありません。いえ、最初、「どこのスタジアムのパルコでも政治はある。でも収支決算すると、バルサはウチより黙っていた方がいいね」と始めた時には舌戦になるのかと眉をひそめたものですけどね。木曜に31歳のバースデーを迎えただけあって、こちらの対応はずっと大人。「ピケにマドリーの歴史は変えられないし、ボクらのタイトルも消せない」と余裕の笑みで、「ああいう性格だから。No lo vamos a cambiar con 30 palos que tiene/ノー・バモス・ア・カンビアール・コン・トレインタ・パロス・ケ・ティエネ(30歳にもなって変えてもらおうとは思わないよ)」って、たった1歳差で随分、違うじゃないですか。
▽ついでに「イニエスタに言われたらクラブも不快に感じるかもしれないけど、ピケなら大丈夫」と太鼓判まで押していましたが、何ともねえ。実際、翌日もマドリーは公式コメントを出さず、クラブ関係者もピケ発言を黙殺していたんですが、これが3週間後に迫ったクラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)を盛り上げるための計算づくだったとしたら、本当にいい迷惑。それどころか、引退後にバルサ会長になるため、早くもアピールをしているなんて見解もスポーツ紙などでは見られましたが、私の意見ではやっぱり、ピケはその場の雰囲気を読めない、ただの目立ちたがり屋ということにしておきたいと思います。
▽まあ、こんな騒動も6月に次の代表戦が戻って来る時にはほとぼりも覚めていていることでしょうが、今は週末に迫ったリーガ戦のことを考えないと。マドリッド勢でまずプレーするのは早く降格圏から遠くに離れたいレガネスで、土曜にレアル・ソシエダとのアウェイ戦。ただファンの気持ちは来週水曜のミッドウィーク開催節、マドリーとのプチダービーに行ってしまっているようで、この木曜に発売のチケットを買うため、ブタルケ(レガネスのホーム)には徹夜組も現れたとか。同日、やはりアウェイでアトレティコがマラガとの試合に挑むのは午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)。3位セビージャとの差が勝ち点2に縮まっているだけに、ミチェル新監督には悪いですが、どうしても勝たない訳にはいかないですよね。
▽そして日曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)、ヨーロッパが夏時間になって、ますます日本でも見やすくなった時間にアラベスをサンティアゴ・ベルナベウに迎えるのがマドリーで、いえ、今のところ、代表戦でケガをした選手の報はないんですけどね。ベイルやモドリッチは先週末のW杯予選だけお勤めして、早々に帰京していますし、2試合で3得点してきたロナウドも故郷、マデイラ島でのスウェーデンとの親善試合には勝てなかったものの、空港に自身の名前を付けてもらい、満足して帰還。ええ、家族や彼女のジョルジーナ・ロドリゲスさんを伴って出席した命名式で披露された自分の銅像も、イロイロSNSでは面白おかしく取り沙汰されたものの、本人は気に入っていたという作者のコメントもありましたしね。きっと、アラベス戦でも頑張ってくれると思いますよ。
▽シメオネ監督の2年越しの願いが叶い、去年の夏にベンフィカから移籍してきたガイタンはアトレティコへの適応に時間がかかっていて、これまでのところ頻繁にプレーしている訳ではないため、別にいいって言えばいいんでしょうけどね。ちょっとタイミングが悪かったのは、次節はカラスコが累積警告で出場停止になるため、サイドに1つ空席ができること。となると、メッシが先週木曜のW杯南米予選チリ戦で試合後、審判に悪態をついたことを咎められ、月曜のボリビア戦から4試合の出場停止処分に入ってしまったため、急遽先発となったコレアをまた右サイドにして凌ぐしかないんじゃないかと思いますが、標高3600メートルのラパスでプレーした当人はアルゼンチン代表に大した貢献はできず。チームも2-0で負け、疲れ果てて帰って来そうなのは懸念材料かも。
▽逆に今回、スペインのU-21代表に下りて、6月のユーロに向けた調整試合のデンマーク戦、イタリア戦の両方で得点。丁度、入れ替わりでデウロフェウ(ミラン)が大人の代表へ呼ばれていたため、キャプテンの大役まで仰せつかったサウールには期待できるかと思いますが、さて。何せ、リーガも残り10試合とあって、いよいよシーズンの良し悪しが決まる一番大事なフェーズに入りますからね。ゴディンやヒメネス、フィリペ・ルイスら、他の中南米代表組は元気に木曜の夕方練習に参加したようですが、皆、早めに時差呆けが解消してくれることを願っています。
▽午後9時という遅めのキックオフだった前半は序盤こそ、いきなりフランス勢で最近、知名度と人気が赤丸急上昇していたエムバッペ(モナコ)のシュートをGKデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)がparadon(パラドン/スパーセーブ)したり、ピケ(バルサ)によるライン上でのボールクリアがあったりして、ドッキリとさせられたものの、後はお約束通り、チャンスはあまりないまま、スペインのボール独占状態に突入。30分過ぎにはスタンドのフランスサポーターも退屈が高じて、ウェーブを場内何周も繰り返していましたし、私も眠気が襲ってきたらどうしようと心配になっていたところ…。
▽大丈夫、後半に入ってすぐに動きが生じます。それはグリーズマン(アトレティコ)で、当人も試合前の記者会見で、「Es un orgullo jugarlo y asi podre vacilar a Koke/エス・ウン・オルグージョ・フガールオ・イ・アシー・ポドレ・バシラル・ア・コケ(スペインと試合ができるのは名誉なこと。これでコケをからかうことができる)」と宣言していたのを撤回するのはイヤだったんですかね。ジャレ(リヨン)、クルザワ(PSG)と繋がったボールをゴール前からヘッド。見事にデ・ヘアを破り、当人も大喜びでコーナーフラッグまで走ってチームメートと祝ったにも関わらず、この日、試験的に採用されていたVAR(ビデオ審判)がここで登場。スペインがキックオフする直前でゴール無効を主審に連絡してきたから、驚いたの何って。
▽うーん、グリーズマンによると、「自分はオフサイドじゃなかったと思うけど、後でガメイロがそうだったって言われた」とかで、クラブの同僚が先制点ゲットの障害になったとは何とも皮肉。ただこれでその日、ピッチにいた3人目のアトレティコ、コケがグリーズマンにからかわれることはなくなったかと、私もホッとしたんですが、スペインの攻撃が活発化したのはイニエスタ(バルサ)、イスコ(レアル・マドリー)がチアゴ・アルカンタラ(バイエルン)、シルバ(マンチェスター・シティ)に、とりわけペドロ(チェルシー)がデウロフェウに代わった後のことでした。ええ、67分にU-21の真正キャプテンがエリア内でコシエルニ(アーセナル)に倒され、PKをゲット。これをシルバがしっかり決めて、とうとうスペインはリードを奪うことに成功です!
▽そこからおよそ10分後、今度はジョルディ・アルバ(バルサ)のラストパスをゴール前に抜け出したデウロフェウがネットに蹴り込んだんですが、この時は線審がフラッグを挙げていたため、当人も「Lo meti por si acaso. Al principio pensaba que lo habian anulado/ロ・メティ・ポル・シー・アカソ。アル・プリンシピオ・ペンサバ・ケ・ロ・アビアン・アヌラードー(念のためにシュートを決めたけど、最初は認められないだろうと思った)」と言っていたように、またVARの判定を待つ破目になったんですよ。何ともじれったい間でしたが、結果は吉と出て、デウロフェウはオフサイドにあらず。ようやくスペインの2点目がスコアボードに現れます。
▽その後はフランスの反撃も実らず、スペインは0-2で勝利と、これで昨年の夏、2016年ユーロでイタリアに負け、ベスト16敗退が決まった悔しいサンドニの地でリベンジを果たせたんですから、何とも嬉しい限りじゃありませんか。え、VARがなかったら、この試合、1-1で終わったんじゃないのかって? そうですね、ただロペテギ監督も「España no ha ganado el partido por el VAR/エスパーニャ・ノー・ア・ガナードー・エル・パルティードー・ポル・エル・バル(スペインはVARのおかげで勝った訳じゃない)。選手たちの努力と野心、サッカーで勝ったんだ」と言っていたように、フランスを圧倒していたのは事実。もちろん「VARは公正さに寄与した。使われた2度の機会で正しい判定をしたのだから」(ロペテギ監督)ということもありますが、要はこれが「Es una pena porque se pierde un poco lo que es el fútbol/エス・ウナ・ペナ・ポルケ・セ・ピエルデ・ウン・ポコ・ロ・ケ・エス・エル・フトボル(サッカーというものが少し、失われるのは残念だね)」(グリーズマン)ということになるのでしょうか。
▽試合の方はそんな感じで、世代交代が進んだスペインも先週のW杯予選イスラエル戦に続き、少しずつ強さの片鱗を見せてくれるようになったため、今回の代表戦はいい手応えだったで終われるはずだったんですけどねえ。それが世の中には常にスポットライトを浴びないと気が済まない選手がいて、ゲーム中は「お騒がせツイートや爆弾発言がないと、代表じゃ結構、地味よね」と何気に思っていたピケ(バルサ)がミックスゾーンでオンステージを始めたから、驚いたの何のって! いえ、大活躍だったデウロフェウや滅多に見られないエムバッペやラビオ(PSG)も丁度、インタビューを受けていたため、私も延々、15分間ずっとピケの側にいた訳じゃないんですけどね。
▽後で内容をまとめて聞いたところ、先日、マドリーのレジェンド、ラウールが将来、バルサで働くことを否定しなかったことについて尋ねられたのが発端となり、「Del Madrid no me gusta los valores que transmite/デル・マドリッド・ノー・メ・グスタ・ロス・バローレス・ケ・トランスミテ(マドリーの伝える価値観が好きじゃない)」と言い出すって、いや、当人が代表のチームメートはともかく、永遠のライバルをとことん嫌っているのは知っていますけどね。始めは私も大枚をはたいて才能に余りある選手を集めながら、根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)に代表される、絶対に諦めない精神を強調するところかなと思ったものでしたが、いえいえ、とんでもない。
▽「気に入らないのはcómo mueven los hilos de este país/コモ・ムエベン・ロス・イーロス・デ・エステ・パイス(この国の中枢を動かしていること)。パルコ(貴賓席)でペレス会長の隣にメッシやネイマールを訴えた人物がいて、クリスチアーノ・ロナウドは別の扱いをされている」って、まあ確かにピケの言う、マルタ・シルバ女史はスペインの法務機関で働く司法サービス担当ディレクターで、以前はマドリーの法務部に勤務していたようですけどね。脱税の証拠十分と踏んで検察が起訴に持ち込み、すでに裁判になっているバルサの2人と違って、ロナウドは事前に証明書類を提出しており、まだ捜査段階。全然、事情が違いますし、いくら何でもマドリーのお偉いさんのおかげでそんなことになっていると決めつけるって、あまりに短絡的ではない?
▽これではまるでスペイン国家はワイロや権力者の思惑で動く、発展途上国並だと言っていることにもなりますが、まあその内実は私も知りませんから、否定もできませんけどね。加えてピケは誤審問題についても一言。曰く、「マドリーとバルサが優遇されているのは自分も確信している。ボクが比べているのは優勝を争っている両チームの間での不公平さで、レガネスとじゃないんだ」そうですが、いやあ、それもマズいでしょ。マドリッドの新弟分は不利な判定をされても声高に抗議をすることはありませんが、大体、だったらCL16強対決PSG戦2ndレグであった解せないジャッジについて、「あれは歴史的な逆転劇。だったら、どうして昨季のCL決勝であったラモスのオフサイドのゴールについて批判がない?」ってもう、こう言えばああ言うの典型では?
▽きっと後でそのコメントを聞いたコケやグリーズマンは、「あの時、VARがあれば」なんて悲しい思いもしていたんじゃないかと私など、想像してしまったんですが、もうこうなると、最後は代表でもマドリーでもキャプテンのセルヒオ・ラモスが締めるしかありません。いえ、最初、「どこのスタジアムのパルコでも政治はある。でも収支決算すると、バルサはウチより黙っていた方がいいね」と始めた時には舌戦になるのかと眉をひそめたものですけどね。木曜に31歳のバースデーを迎えただけあって、こちらの対応はずっと大人。「ピケにマドリーの歴史は変えられないし、ボクらのタイトルも消せない」と余裕の笑みで、「ああいう性格だから。No lo vamos a cambiar con 30 palos que tiene/ノー・バモス・ア・カンビアール・コン・トレインタ・パロス・ケ・ティエネ(30歳にもなって変えてもらおうとは思わないよ)」って、たった1歳差で随分、違うじゃないですか。
▽ついでに「イニエスタに言われたらクラブも不快に感じるかもしれないけど、ピケなら大丈夫」と太鼓判まで押していましたが、何ともねえ。実際、翌日もマドリーは公式コメントを出さず、クラブ関係者もピケ発言を黙殺していたんですが、これが3週間後に迫ったクラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)を盛り上げるための計算づくだったとしたら、本当にいい迷惑。それどころか、引退後にバルサ会長になるため、早くもアピールをしているなんて見解もスポーツ紙などでは見られましたが、私の意見ではやっぱり、ピケはその場の雰囲気を読めない、ただの目立ちたがり屋ということにしておきたいと思います。
▽まあ、こんな騒動も6月に次の代表戦が戻って来る時にはほとぼりも覚めていていることでしょうが、今は週末に迫ったリーガ戦のことを考えないと。マドリッド勢でまずプレーするのは早く降格圏から遠くに離れたいレガネスで、土曜にレアル・ソシエダとのアウェイ戦。ただファンの気持ちは来週水曜のミッドウィーク開催節、マドリーとのプチダービーに行ってしまっているようで、この木曜に発売のチケットを買うため、ブタルケ(レガネスのホーム)には徹夜組も現れたとか。同日、やはりアウェイでアトレティコがマラガとの試合に挑むのは午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)。3位セビージャとの差が勝ち点2に縮まっているだけに、ミチェル新監督には悪いですが、どうしても勝たない訳にはいかないですよね。
▽そして日曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)、ヨーロッパが夏時間になって、ますます日本でも見やすくなった時間にアラベスをサンティアゴ・ベルナベウに迎えるのがマドリーで、いえ、今のところ、代表戦でケガをした選手の報はないんですけどね。ベイルやモドリッチは先週末のW杯予選だけお勤めして、早々に帰京していますし、2試合で3得点してきたロナウドも故郷、マデイラ島でのスウェーデンとの親善試合には勝てなかったものの、空港に自身の名前を付けてもらい、満足して帰還。ええ、家族や彼女のジョルジーナ・ロドリゲスさんを伴って出席した命名式で披露された自分の銅像も、イロイロSNSでは面白おかしく取り沙汰されたものの、本人は気に入っていたという作者のコメントもありましたしね。きっと、アラベス戦でも頑張ってくれると思いますよ。
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