【原ゆみこのマドリッド】コパとリーガが交錯して…

2017.01.28 09:45 Sat
Getty Images
▽「またこの時期が来たのね」そんな風に私が頷いていたのは金曜日、翌日に迫ったチャイニーズ・ニューイヤーを祝うマドリッドの両雄のビデオをニュースで見た時のことでした。そう、ここ数年はバルサなども含めて、リーガのチームで流行っているようなんですけどね。片や、中国人家族との食事という設定でクリスチアーノ・ロナウド、セルヒオ・ラモス、マルセロ、ペペの4人がワンフレーズずつ中国語を話していたレアル・マドリーに対して、アトレティコは資本参加しているワンダ・グループからサッカー研修で受け入れている中国人の子供たちを総動員。

▽マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場を舞台に、いえ、まさかこのビデオを撮影するため、コパ・デル・レイ準々決勝2ndレグ参加を免除されたとは思いませんでしたけどね。1人、主役を張ったグリースマンがお馴染みのゴールパフォーマンスを子供たちに指導って、いえ、最後は彼も中国語でちゃんと挨拶していましたが、もしやこれって、複数の選手に台詞を覚えてもらうのは大変だから?ちなみにそのワンダ・プロジェクトで来ている中国人少年たちはアトレティコの試合の日、よくビセンテ・カルデロンのスタンド最前列で揃いのジャージを着て見学しているんですが、そういう提携が日本企業との間にもあれば、もっと日本のアトレティコファンも増えてくれるかもしれませんね。

▽え、その前に彼らはサッカーでファンを魅了しないといけないんじゃないかって?そうですね、今週はコパ準決勝進出が決まったアトレティコですが、エイバル戦2ndレグでもどこかフラストレーションが溜まるプレーぶりは変わらず。近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で見ていた前半が0-0で終わった時には、「1stレグが3-0で大勝だったし」、「フェルナンド・トーレスとガメイロのツートップは初めてだって言うし」と、私も自分で自分を慰めるしかなかったんですが、それでも後半開始すぐの3分にはガイタンのCKからヒメネスのヘッドが決まり、先制点が入ってくれたから、ホッとしたの何のって。
▽でもねえ、この日も最近の悪癖は直らなかったんですよ。後でファンフランも「Nos relajamos un poco despues de marcar el 0-1/ノス・レラハモス・ウン・ポコ・デスプエス・デ・マルカル・エル・セロ・ウノ(ボクらは0-1にした後、少しリラックスしてしまった)」と言っていたんですが、追加点も狙わず、うだうだやっていれば、いくら「ウチのコパでの目的はリーガでプレーしていない選手たちをプレーさせること」というメンディリバル監督だって色気を出しますって。ええ、残り15分程になったところで、主力アタッカーのエンリッチとペドロ・レオンを投入。そこから1分もしないうちに後者のシュートがGKモヤを強襲し、弾かれたボールを前者が器用なvolea(ボレア/ボレーシュート)で撃ち込んで、エイバルに同点にされているのですから、困ったもんじゃないですか。

▽その後も敵の攻勢が続き、35分にはルベン・ペニャのクロスを今度はペドロ・レオンがすくってネットに収め、リードまでされてしまったアトレティコでしたが、まあこの日はツイていましたね。39分には途中、ベルサリコが入ったため、中盤にポジションを上げていたファンフランがガビのロングボールに合わせて見事なvaselina(バセリーナ/ループシュート)!これがゴールとなってくれたため、スコアは2-2となり、そのまま試合は引き分けで終わることに。総合スコアも4-2ですから、2ndレグで終盤に2-3とされ、総合スコア4-3でかろうじて逃げ切った16強対決ラス・パルマス戦よりはマシだったんですが…もうちょっと教訓を生かせないもんでしょうかね。
▽そして続いてのマドリーの2ndレグは急いで家に帰り、オープン放送のGolTVで見た私だったんですが、こちらはまだ獲得したことのないコパのタイトルが近付いているとあって、セルタのサポーターの気合の入れようが違ったの何のって。ええ、半分ぐらい空席だったイプルア(エイバル)と対照的にバライドスのスタンドは満員、聞けばキックオフ1時間半前には“Gran Quedada/グラン・ケダダ(大結集)”と銘打って、ファンがスタジアム入りするチームバスをお出迎えしたのだとか。そのbengala(ベンガラ/発煙筒)が盛大に燃えまくっている様子は、マドリーがremontada(レモンターダ/逆転劇)を必要とする際、サンティアゴ・ベルナベウ近辺で見られる風景とかぶりましたが、いやいや、お間違えなく。1stレグで1-2と勝っていたのはセルタの方です。

▽実際、試合も逆転が必要だったマドリーが勢いよくスタートしたんですが、「El Madrid es favorito en cualquier partido contra cualquier rival del mundo/エル・マドリッド・エス・ファボリートー・エン・クアルキエル・パルティードー・コントラ・クアルキエル・リバル・デル・ムンド(マドリーはどんな試合でも、相手が世界のどこのチームであっても本命)」と、1stレグに続いて、ベリッソ監督の慎重姿勢は変わらぬまま。トレードマークの攻勢には出ず、「La defensa de tres nos obligo a cambiar de tactica/ラ・デフェンサ・デ・トレス・ノス・オブリゴ・ア・カンビアール・デ・タクティカ(DF3人体制には戦術変更を余儀なくされた)」(ベリッソ監督)という割にはよく守っていましたが、だからって前半25分、イスコのクロスをロンカリアと一緒にロナウドがヘッドしたボールがゴールバーを叩いてしまったのはともかく、当人が跳ね返りをただ押し込むだけのシュートをポストに当ててしまったのは、決して相手のせいにはできなかったかと。

▽え、でもマドリーにはそれ以上に間の悪い選手がいなかったかって?その通りで、いえ、試合前日にいきなりバランの負傷欠場が決まったため、急遽、ラモスとナチョと共にCBをやることになったカセミロがクリアボールをエリア内のイアゴ・アスパスに送ってしまったりとか、その前にもピンチはあったんですが、ダニーロはちょっとお祓いにでも行った方がいいかも。だってえ、どちらも無得点のままだった前半43分、あと少しでハーフタイムというところでセルタのカウンターがはまり、グィデッティがフリーで撃ったシュートはGKカシージャがparadon(パラドン/スーパーセーブ)。そこへ彼がタイミングバッチリで突っ込んで、オウンゴールにしてしまったんですよ。

▽それもリーガ前節のセビージャ戦でオウンゴールをしながら、次のマラガ戦では2得点してヒーローになったラモスとは真逆で、ダニーロの場合は16強対決セビージャ戦2ndレグに続いての先制点献上。うーん、サンティアゴ・ベルナベウではpito(ピト/ブーイング)の標的になってしまったため出せず、だからといってアウェイではオウンゴールではジダン監督も彼のこれからの処遇に困ってしまうかと思いますが、もちろんこの程度の逆境でギブアップするマドリーではありません。ええ、後半16分にはロナウドが直接FKを決めて、逆転まであと2点に再び戻したんですが…。

▽まさか39分になって、昨季ラージョ(今季は2部)で活躍し、夏にフラムに移籍。イギリスでは日の目を見ず、この冬からセルタに加わったホサベドが戻したボールをバスにエリア外から決められてしまうとは!この辺も彼を始め、多くの主力選手を先週末のリーガ戦で温存したベリッソ監督の思惑が当たったことになりますが、44分を過ぎてから、ルーカス・バスケスのヘッドで同点にされた時は相当、ヒヤリとしたことかと。何せ、相手には後半ロスタイムに奇跡を起こす選手がいましたからね。とはいえ、いつも起きる訳ではないから奇跡と呼ばれるのは当然のことで…。

▽その日、セットプレーから2度のヘッドを失敗したラモスも「Hoy la he tenido mas facil que nunca y la he echado fuera/オイ・ラ・エ・テニードー・マス・ファシル・ケ・ヌンカ・イ・ラ・エ・エチャードー・フエラ(今日は今までにない程、簡単だったのに外してしまった)」と嘆いていましたが、結局、アウィエゴールでの勝利が叶うあと1点は取れず、マドリーは総合スコア4-3で準々決勝敗退に。うーん、それでもジダン監督は「感触的にはポジティブ。ウチがいい試合をしたという意味ではね。Hay que pelear Liga y Champions/アイ・ケ・ペレアル・リーガ・イ・チャンピオンズ(リーガとCLを争わないといけない)」と、スペイン新記録の公式戦40試合無敗を続けていた頃には公然を言われていた、クラブ史上初の“toriplete(トリプレテ/3冠優勝)”の夢が早くも消えてしまったのにはそれ程、落胆している風には見えませんでしたけどね。

▽ただ、いきなり負傷禍に襲われたという不運はありますが、先日負けたリーガのセビージャ戦に続いて、この試合では影の薄かったベンゼマを最後まで代えなかったり、ルーカス・バスケスやモラタを入れるのが遅かったり、終盤はマリアーノも入れてFW4人状態だったにも関わらず、成果が出なかったりと、イロイロその采配に批判はなきにしろあらず。逆に敗退の利点はこの先、2週間ミッドウイークが空いて、2月中旬のCLベスト16、ナポリ戦1stレグに余裕を持って備えられることですが、でもねえ。リーガの方もこの週末のレアル・ソシエダ戦が分岐点になりかねない危険性が。

▽まあ、今は2位セビージャとの勝ち点差が1しかないマドリーとはいえ、クラブW杯参加で延期したバレンシア戦が残っていますから、そこまで身構えなくてもいいんですけどね。とはいえ、長期離脱中のベイルはもちろん、バランやモドリッチもまだ間に合わず、マルセロ、カルバハルは復帰目標がCL戦、12月初旬以来、欠場が続くペペ、筋肉痛が左ふとももから右に移ったというハメス・ロドリゲス、ビゴ(スペイン北西部の海辺の街、セルタのホームタウン)遠征には同行したものの、出場できる状態なのかどうか定かでないコエントランと内実は複雑なようですが、当面、人手不足が続くのは辛いかと。

▽そこへブーイングを恐れてダニーロやベンゼマの起用も考えなければならないといった条件が加われば、いくら相手が木曜にカンプ・ノウでバルサに5-2と叩きのめされ、総合スコア6-2でコパを敗退したショックと疲労が残るソシエダだとしても、日曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)の一戦はかなりハードになりそうな。ええ、ここ5試合で1勝しかできていないジダン監督も今が踏ん張りどころかもしれません。

▽一方、アトレティコはこの週末、リーガでバスク地方3連戦最後のアラベス戦なんですが、いやあ、できればこれが4連戦になってくれればいいと願っていたファンがどんなに多かったことか。というのも金曜にはコパ準決勝組み合わせ抽選があったんですが、実はアラベスは火曜にマドリッド2部の弟分、アルコルコンとの準々決勝2ndレグを0-0で終え、総合スコア2-0で先陣を切って突破を決定。その瞬間から、敵を討つのはアトレティコと、私なんか勝手に決めていたんですが、そうは問屋が卸しませんでした。そう、当たっちゃったんですよ、バルセロナが。

▽え、でも昨季のアトレティコはCL準々決勝で彼らを破っているじゃないかって?そうなんですが、2年前はコパ準々決勝で負けていますし、シメオネ監督は「優勝するには常にマドリーかバルサを倒さないといけないことにウチは慣れている。Nos lo tomamos como algo normal/ノス・ロ・トマモス・コモ・アルゴ・ノルマル(普通のこととして受け止めているよ)」と言っていたものの、このところのプレーぶりではとても太刀打ちできるようには思えず。MSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの頭文字)が本調子になっているのも憂鬱ですし、それより何よりアトレティコの選手たちの頭がアラベス戦を通り越して、来週水曜にバルサをビセンテ・カルデロンに迎えることでいっぱいになってしまったら、どうしましょう!

▽うーん、それは準決勝をセルタと戦うことになったアラベスも同じ、ひいてはコパのために再び主力温存する予定のセルタと土曜にリーガで当たるレガネスにとってもラッキーなんですが、よくわからないのはアラベスのペジェグリーノ監督がここまでのローテーション策を変えてくるかどうかということ。ええ、彼らはエイバル型で、今季アトレティコからレンタルで修業に出ているルーカスの年子の弟、左SBのテオなど、リーガではレギュラーなんですが、コパにはほとんど出ていなかったりと、かなり両大会でのメンバーが違うよう。ただし、セルタ同様、アラベスも準決勝出場経験はあってもまだ優勝はしたことはありません。

▽しかも両チームとも今季のリーガ前半戦でバルサに勝っているとなれば、ますますコパ決勝進出に全精力を懸けたくなると思いますが、こればっかりはねえ。とりあえず、土曜のアラベスvsアトレティコ戦は午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からキックオフ。アトレティコの方は現在、3位と勝ち点差6の4位とまったく余裕がありませんし、相手は第1節にホームで1-1と不覚を取り、イレギュラーなシーズンを過ごすキッカケになったチームですからね。加えて、今も12位と調子を維持しているため、エイバル戦で休んだグリースマン、ゴディンら、ベストメンバーを揃えて挑むのは当然ですが、先もあることですから、とにかくケガ人だけは出さないでくださいね。

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