【東本貢司のFCUK!】カラフル&フェスティヴ
2016.12.23 13:30 Fri
▽「20年も同じクラブを率いる? あり得んね」(ペップ・グアルディオラ)、「ファンへのクリスマスプレゼント替わりに、シャツをスタンドに投げ入れるよう指示した」(ジョゼ・モウリーニョ)、「あのオフサイドの判定は受け入れがたい」(アーセン・ヴェンゲル)、「ギャルー・ネヴィルなんかが解説者やってるなんて信じられない」(ユルゲン・クロップ)、「わたしならあの一発レッドは誤審だと言い、マーク・ヒューズ(ストーク監督)なら妥当だと言うだろう」(クラウディオ・ラニエリ)―――。各人各様、実にキャラクタリスティック(それぞれのキャラが如実に投射されている)なコメントアラカルト。改めて、今更ながら、プレミアリーグのなんとカラフルでフェスティヴ(=お祭りっぽくにぎやか)なことか。確かに、一年で最もざわざわと忙しく、ただし、国内にじっくり集中できるまたとない時期ではある。ただ、それにつけても“主役”たちが揃いもそろって“ガイジン”ばかりとは(ヒューズはウェールズ人)、ため息を吐くのは筆者のみか。
▽気が付けばチェルシーが走っている。元プレーヤーで評論家のダニー・マーフィーに言わせると「穴がない」。ラミーレスに続いてオスカーまでチャイナマネーになびかざるを得ない状況にあっても、戦力に充実感と余裕がにじみ出るようにあふれている。抜け落ちていたアントニオ・コンテのコメントは「中国が何とやら」だったか…いや、確か「まだうち(チェルシー)はこんなものじゃない」。もし仮にどこかで腰砕けに落っこちるとすれば、キープレーヤーの故障や“おいた”のアクシデント絡み。だが、その気配はありそうにない。しかし、そんなチェルシーにも引けを取らない堅実さとブレのなさを維持しているのがリヴァプールだ。ざっと眺め渡してみても、ロジャーズ時代からさほど“絵面とタイプのヴァラエティー"の点で代わり映えしないようなのだが…。だとすればやはりこれは、熱血クロップのカリスマが違いを源泉なのか。あゝ、またガイジン監督さまさま。
▽などと(しつこく)嘆息しているところへ、間が悪くも(?)絶不調クリスタル・パレスからアラン・パーデュー解任の知らせが。そして、まるで予定事項のごとく、後任候補として躍り出たのが、他でもない“ビッグ”サム・アラダイスとは…。いや、もとい、これ以上のノンイングリッシュ化はごめんだからこそ、あえて歓迎しようではないか。それにお忘れなく。ビッグ・サムは何も法を犯したわけじゃない。法律などよりもはるかに威厳の薄い、あるスポーツ統括組織が独自に制定したルールの「抜け穴を知っている」とか何とかうそぶいただけだ。倫理的によろしくない、イメージが悪い、外からとやかく言われるのがウザイ、と、当の組織が自粛(末のイングランド代表監督解任)したにすぎない。ああ、そういえば、FIFAは「ポピー問題」に当たって、イングランド代表以下に罰金を科すことにしたんだっけか。それで済むなら痛くもかゆくも…。しめしをつけた側と国民的思いに準じた側の、静かなるにらみ合い。どこの世界にもよくあることである。
▽それにしても、ジェイミー・ヴァーディーの一発レッドは「?」の二乗ものだった。つまり、クラブワールドカップ決勝の逆パターン。しかも、状況が滑稽なほどコントラストを成していた。横浜の主審は、一旦は(イエローを)出そうと思いかけたが、何かを思い出したように胸に持って行った手を諦めた。ブリタニア(スタジアム)の方のレフェリーは、一瞬たりとも迷わず、アシスタントを一顧だにせず、断固たる態度・表情でさっと赤い札を取り出した。しかし、セルヒオ・ラモスの足はボールにかすりもせず、ヴァーディーの投げ出した両足(正確には、1.5足?)の片方はぎりぎり「先に」届いていた。そしてそれぞれ、結果は“逆目”に出た。後日談はそれぞれ、「横浜の主審」が次のワールドカップで笛を吹くことはないだろう…レスターの(ヴァーディーのレッド撤回)訴えは却下されて…といった程度。できるだけそっと、速やかに、それなりに、収めるべきところは波風立てずに収めるべし。これってやはり、イエス・キリストの思し召しでしょうか。
▽さて、わが国は天皇陛下誕生日のおかげで三連休だが、EU脱退を決めたかの国ではお馴染みボクシングデイ絡みの三連休。つまり、プロフットボーラーの“繁忙期”。当然心配されるのは故障であり、その点で不安がどこよりも覆いかぶさるのがアーセナルであり、すでに現地メディアでもそれを指摘する声がしきりである。対エヴァートン、マン・シティーの連敗劇は、およそ降って湧いた事件中の事件。今シーズンは行けるとわくわくどきどきしていたガナーズファンも、天を仰いで青ざめているに違いない。エース、サンチェスの契約更新が“カネ”で滞っているらしいのも嫌味だ。だからこそ、幸いというべきか、年内はボクシングデイ(26日)のホーム/ウェスト・ブロム戦のみ、明けて元日は(監督不在のままかもしれない)クリスタル・パレスを迎え、3日にアウェイのボーンマス戦。決して楽に乗り切れる保証などないとはいえ、あくまでも比較上計算がしやすい年末年始ではあろう。ここでマキシマムの9ポイントを稼げば胸も晴れる、先も見えてくる。昨季が“ミラクル”なら、そろそろこの辺りでヴェンゲルの会心の笑みを見たいところである。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
▽気が付けばチェルシーが走っている。元プレーヤーで評論家のダニー・マーフィーに言わせると「穴がない」。ラミーレスに続いてオスカーまでチャイナマネーになびかざるを得ない状況にあっても、戦力に充実感と余裕がにじみ出るようにあふれている。抜け落ちていたアントニオ・コンテのコメントは「中国が何とやら」だったか…いや、確か「まだうち(チェルシー)はこんなものじゃない」。もし仮にどこかで腰砕けに落っこちるとすれば、キープレーヤーの故障や“おいた”のアクシデント絡み。だが、その気配はありそうにない。しかし、そんなチェルシーにも引けを取らない堅実さとブレのなさを維持しているのがリヴァプールだ。ざっと眺め渡してみても、ロジャーズ時代からさほど“絵面とタイプのヴァラエティー"の点で代わり映えしないようなのだが…。だとすればやはりこれは、熱血クロップのカリスマが違いを源泉なのか。あゝ、またガイジン監督さまさま。
▽などと(しつこく)嘆息しているところへ、間が悪くも(?)絶不調クリスタル・パレスからアラン・パーデュー解任の知らせが。そして、まるで予定事項のごとく、後任候補として躍り出たのが、他でもない“ビッグ”サム・アラダイスとは…。いや、もとい、これ以上のノンイングリッシュ化はごめんだからこそ、あえて歓迎しようではないか。それにお忘れなく。ビッグ・サムは何も法を犯したわけじゃない。法律などよりもはるかに威厳の薄い、あるスポーツ統括組織が独自に制定したルールの「抜け穴を知っている」とか何とかうそぶいただけだ。倫理的によろしくない、イメージが悪い、外からとやかく言われるのがウザイ、と、当の組織が自粛(末のイングランド代表監督解任)したにすぎない。ああ、そういえば、FIFAは「ポピー問題」に当たって、イングランド代表以下に罰金を科すことにしたんだっけか。それで済むなら痛くもかゆくも…。しめしをつけた側と国民的思いに準じた側の、静かなるにらみ合い。どこの世界にもよくあることである。
▽さて、わが国は天皇陛下誕生日のおかげで三連休だが、EU脱退を決めたかの国ではお馴染みボクシングデイ絡みの三連休。つまり、プロフットボーラーの“繁忙期”。当然心配されるのは故障であり、その点で不安がどこよりも覆いかぶさるのがアーセナルであり、すでに現地メディアでもそれを指摘する声がしきりである。対エヴァートン、マン・シティーの連敗劇は、およそ降って湧いた事件中の事件。今シーズンは行けるとわくわくどきどきしていたガナーズファンも、天を仰いで青ざめているに違いない。エース、サンチェスの契約更新が“カネ”で滞っているらしいのも嫌味だ。だからこそ、幸いというべきか、年内はボクシングデイ(26日)のホーム/ウェスト・ブロム戦のみ、明けて元日は(監督不在のままかもしれない)クリスタル・パレスを迎え、3日にアウェイのボーンマス戦。決して楽に乗り切れる保証などないとはいえ、あくまでも比較上計算がしやすい年末年始ではあろう。ここでマキシマムの9ポイントを稼げば胸も晴れる、先も見えてくる。昨季が“ミラクル”なら、そろそろこの辺りでヴェンゲルの会心の笑みを見たいところである。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
|