【六川亨の日本サッカー見聞録】クラブW杯初戦のMVP永木は当然の選出だった

2016.12.09 15:56 Fri
Getty Images
▽昨日8日に開幕したFIFAクラブW杯の準々決勝プレーオフで、開催国枠出場の鹿島は金崎の逆転ゴールでオークランド・シティを2-1で下し、初戦を突破した。試合のMVPに選ばれたのは金崎ではなく、同点弾をアシストした永木だったが、納得できる選出だった。
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▽というのも、試合は立ち上がりから鹿島ペースで、ボールポゼッション率でもオークランドを圧倒したものの、言葉は悪いが「ボールを回しているだけ」の攻撃だった。石井監督が「なかなかギアが上がらない展開。CSの疲れからか、前半は全体的に身体が重かった」と言えば、永木も「立ち上がり、フワッと入ってしまった。過密日程と優勝した余韻に浸った気分があったのかな」と振り返っていたが、苦戦した原因は引いた相手に対し、足元から足元へとつなぐパスが多かったことだ。▽トラップしてからのパスは相手も予測しやすい。逆説的に言うと、ワンタッチ(ダイレクト)のパスでの突破がなかったのは、スペースへ走り込む選手がいなかったということにつながる。ここらあたりの動き出しの少なさを、石井監督は「身体重かった」と指摘したのかもしれない。
▽引いて守りを固めるオークランドを攻めあぐねた小笠原は、何度もサイドチェンジを繰り返しては“幅”のある攻撃で揺さぶろうとした。しかし、最後の突破となるタテへの仕掛けではスペースがないため、遠藤や西、山本へのパスはゴールラインを割ることが多かった。

▽流れが変わったのは、63分に小笠原に代わって金崎が投入されてからだった。この交代で、それまで左サイドハーフだった柴崎がボランチに入り、2トップだった土居を左サイドハーフにコンバートして、金崎と赤崎の2トップにした。すると柴崎は、サイドチェンジという“幅”を使った攻撃に加え、バイタルエリアの2トップへタテパスを入れる“深さ”を使った攻撃でオークランドDF陣をおびき出した。
▽そしてもう一つの変化は、小笠原が司令塔の役を務める時はアンカーとして守備に回る永木が、柴崎がボランチに入ると果敢に前線へと飛び出したことだ。67分の赤崎の同点ゴールは、右サイドで永木が遠藤とのパス交換からスペースへ抜け出し、絶妙のクロスを送ったことで生まれた。突進すると見せて後方に戻りながら、自身の前にシュートスペースを作った赤崎のプレーも秀逸だったことも付け加えておこう。

▽そして思ったのは、やはり柴崎はサイドに置くよりもボランチの方が生きるということ。小笠原とのコンビで攻撃力は確実に増す。しかし永木の攻守における貢献度も捨てがたい。ここらあたりが石井監督も頭を悩ますところだろう。

▽最後に、CS第2戦の2ゴールに続き、この日も決勝点を決めて“神ってる”金崎を、ハリルホジッチ監督はどう評価するのだろうか。次の代表招集はまだ先のことなので、それまで金崎が好調を持続しているかどうか分からないが、ちょっと気になるところでもある。

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