【原ゆみこのマドリッド】軌道修正できたんだろうか…

2016.11.26 11:10 Sat
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▽「どうして上まで見えないの?」そんな風に私がイラッとしていたのは金曜日、CLも一区切りついたことだし、週末のリーガでアトレティコはどこまで順位改善ができるかと、マルカ(スポーツ紙)のクラブページ(http://www.marca.com/futbol/atletico.html)を眺めていた時のことでした。いやあ、前節のマドリーダービーに完敗して、首位との差が勝ち点9に拡大。順位も6位まで落ち込んでしまったのは重々、承知だったんですけどね。そのページの右端には直近試合の結果の下にclasifiacion(クラシフィカシオン/順位表)が出ているんですが、20チーム全ては載ってなくて、アトレティコを真ん中に上は4位、下は8位までしか現れず。

▽これじゃ、最低ラインのCL直接出場権をもらえる3位に戻るまで、あと勝ち点がいくつ必要なのかもわからない上、いえ、このところ、乾貴士選手の出場も多く、頑張っているエイバルにケチをつけたい訳じゃないんですけどね。8位の彼らが金曜のベティス戦で勝ったら、勝ち点21のアトレティコに並んでしまうというショッキングな事実に気づいてしまったから、当惑したの何のって。もちろん、この週末はレアル・マドリーやバルサ、セビージャらが土曜に試合をするため、日曜のオサスナ戦がやって来るまで、上位陣との距離が更に開いてしまうという、惨めな思いに耐える覚悟はできていますけど、ああ、なる程。その場合、上は見えない方が、アトレティコファンはキリキリしないで済むという、ページデザイナーの配慮だったのかもしれませんね。

▽まあ、そんなどうでもいいことは置いておいて、今週のCL5節がどんな様子だったかをお話していくことにすると。先にプレーしたのはお隣さんの方で、何せ、昨季のミラノでの決勝に続いてアトレティコを倒し、リーガ首位の座を固めた後、2年前にデシマ(CL10回目の優勝のこと)を達成したリスボンに乗り込んだんですから、貫録の戦いぶりが期待されていたんですけどね。どうやらダ・ルス(ベンフィカのホーム)とジョゼ・アルバラージ(スポルティングのホーム)は勝手が違うようで、スタメンも3日前からナチョに代わって、CBに負傷が完治したセルヒオ・ラモスがキャプテンマークを巻いて戻るぐらいの変更しかなかったんですが、序盤はなかなかチャンスが作れず。
▽ようやく均衡が破れたのは29分だったんですが、残念ながら、殊勲の得点者は試合前、スポルティングのカンテラ(ユース組織)出身で、フィーゴを超える出世頭の古巣帰還として、スポットライトを一身に集めていたクリスチアーノ・ロナウドではなかったんです。いえ、モドリッチのFKを最初にシュートしようとしたのは彼だったんですけどね。敵選手の間をすり抜けたボールを手際良く押し込んだのはバラン。とりあえず、このゴールでマドリーは0-1とリードしてハーフタイムを迎えることになったんですが…後半にはちょっとした逆境が降りかかることに。

▽いえ、足首を痛めたマルセロは大丈夫、すぐにピッチに戻ったんですけどね。12分にはベイルが敵との接触プレーで負傷、実際、こちらは深刻だったようで、帰国してから、足の腱の手術が必要とわかり、12月3日のクラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)や中旬のクラブ・ワールドカップどころでなく、全治2、3カ月の戦線離脱になってしまったんですが、その時はまだ誰も知らず。アセンシオが代わりに入り、そのままゲームは追加点が取れないまま続いたものの、まあ、コバチッチのお腹を思わず突いてしまったジョアン・ペレイラがレッドカードで退場になって、スポルティングは1人少なくなっていましたからね。
▽1節にサンティアゴ・ベルナベルで見た時のような攻撃の鋭さもなかったため、最少得点で勝利できるかと私も思い始めた頃、後半35分、ジダン監督の配慮でマルセロから代わったコエントランがペナルティを取られてしまうとはこれ如何に。うーん、当人は直前のキャンベルのプレーに「Yo pido mano, porque ha sido mano/ジョ・ピド・マノ、ポルケ・ア・シードー・マノ(自分はハンドをアピールした。ハンドだったんだから)」と後で言っていましたけどね。それで挙げた手にボールが当たり、自分の方が笛を吹かれるって、同じポルトガル人でもロナウドと違い、ベンフィカ出身だったため、いくらスタンドからpito(ピト/ブーイング)を浴びっぱなしだったとはいえ、「ha sido mala suerte/ア・シードー・マラ・スエルテ(運が悪かった)」(コエントラン)では済まされないかと。

▽うーん、実際、そのPKはアドリエン・シウバに決められて、マドリーは同点に追いつかれてしまいましたしね。その頃には同グループのドルトムントがレギア・ワルシャワ相手に大量点を挙げ、リードしていたため、引き分けで終わったら、2位確定ということになっていたんですが、いえいえ、舐めてはいけません。そこはDNAにチャンピオンズリーグと奇跡のremonntada(レモンターダ/逆転劇)体質が刷り込まれているマドリー、42分にはラモスが送ったクロスに、イスコに代わって入っていたベンゼマの頭がミート。これが決勝点となって、マドリーは1-2での勝利を手に入れることができました。

▽え、アトレティコをあんな余裕で下した彼らなのに、スポルティングに苦戦するのはどうにも納得がいかないって?いやあ、ジダン監督によると、「Es evidente que jugar cada tres dias no es facil y nos ha podido faltar algo de energia/エス・エビデンテ・ケ・フガール・カーダ・トレス・ディアス・ノー・エス・ファシル・イ・ノス・ア・ポディードー・ファルタル・アルゴ・デ・エネルヒア(3日おきにプレーするのが容易くないのは明らかだし、ウチに何がしかのエネルギーが足りなかったことはありうる)」そうなんですけどね。普段から、選手たちの気がつい緩んでしまう格下相手の試合の場合、こういう展開はありがちなので、とりあえず、グループ突破が決まり、最終節、ホームでドルトムントに勝てば首位で終われる可能性を残しただけも、この日は良かったかと。

▽それこそ、同日、サンチェス・ピスファンでユーベに1-3の逆転負けを喰らい、アウェイのオリンピック・リヨン戦で勝ち点1ですが、獲得しないと先に行けず、ヨーロッパリーグ4連覇を目指すことになってしまったセビージャよりはずっとマシかと思いますが、そういう意味では水曜日、4節ですでに突破の決まっていたアトレティコのPSV戦に向かうのは気が楽な面もなくはなし。おまけにビセンテ・カルデロンに着くなり、時差のあるロシアでこちらより早い時間に終わったロストフ戦で何と、バイエルンが2-3で負けていたという報が待っていたため、アトレティコは引き分けでも最終節を待たずに首位通過が決まるとなれば、とにかく相手は今年3回対戦して、勝ったのは9月の1試合のみ。しかもゴールはその時のサウルの1点しかないPSVとなれば、スコアレスドローで全然、OKってことじゃないですか。

▽もしかしてシメオネ監督もそれを考慮したんでしょうかね。その日のスタメンはダービーの時は違い、コケをサイドに回して、チアゴをガビのボランチコンビとして採用。今季はリーガ最初の1試合以外、先発のなかった35歳のベテランですが、この一見、守備を重視したような策が後で大当たりだったことが発覚したんですよ。ただやはりというか、前半はガメイロやゴディンが絶好機に決めきれず、逆に17分には敵のカウンターを喰らい、グリースマンが60メートルの距離を全力疾走。ガストン・ペレイロが1対1でシュートを撃つ直前に邪魔して、「Griezmann evita el gol de Pereiro y eso dice todo de este Atletico/グリースマン・エビタ・エル・ゴル・デ・ペレイロ・イ・エソー・ディセ・トードー・デ・エステ・アトレティコ(グリースマンがペレイロのゴールを回避した。それがアトレティコの全てを物語っている)」とコクー監督から、後でお褒めの言葉をもらったぐらいで、0-0のまま折り返します。

▽そんな彼らがとうとう得点し、寒さの身に染みる夜、ダービーで恥をかいたばかりなのにも関わらず、スタジアムに駆けつけてくれた大勢のファンを喜ばせてくれたのは後半10分。グリースマンからパスをもらったガメイロが放った、エリアを斜めに横切るシュートがゴールポストに当たって入ってくれたから、どんなにスタンドが沸いたことか。おまけにその11分後にはグリースマンも本業で力を発揮。ええ、チアゴが敵陣でボールを奪い、彼にパスすると、今度はしっかり決めてくれたため、場内にもようやく明るい雰囲気が広がることに。お馴染みのチョロ(シメオネ監督の愛称)へのコールや個々の選手に対するcantico(カンティコ/応援歌)が復活したのは喜ばしい限りでしたっけ。

▽え、それでも30分には今季、ここまで全試合皆勤のフィリペ・ルイスがダウン。負傷交代となってしまうという、残念なニュースもあるんだろうって?おっしゃる通りで、とりあえずは先発右SBだったブルサリコを左SBに回り、ファンフランを投入して、その日は乗り切ったんですが、いくら丈夫な彼とて、もう30代ですからね。診断は太ももの筋肉痛ということで、それ程、重傷ではなかったものの、この先、1、2試合はシメオネ監督もクロアチア代表で立派にレギュラーを務めているブルサリコや若いルーカスを活用していくことになると思います。

▽結局、そのまま2-0で勝ったアトレティコは、グリースマンも「teniamos que dar otra imagen/テニアモス・ケ・ダール・オトラ・イマヘン(ウチは別の姿を見せなければならなかった)」と言っていた通り、ダービーでの悪い印象を払拭して、グループリーグ参加32チーム中、唯一の全勝をキープ。首位として決勝トーナメントに臨めることになったんですが、ただねえ。シメオネ監督は「Primero es mejor que segundo para todo/プリメーロ・エス・メホール・ケ・セグンド・パラ・トードー(何においても1位は2位よりいい)」と言っていたものの、今季に限ってはその日、バルサがセルティックにメッシの2ゴールで勝ったのと、自身がボルシア・メンヘングラッドバッハと引き分けたせいで2位が確定したマンチェスター・シティを始め、アーセナルやレバークーズン、そして下手したら、最終節でドルトムントがマドリーに負けて、こちらも2位になる可能性が。

▽となると、必ずしも1位の方がベスト16で弱い相手と当たると言えなくなってくるんですが、ここ2年間、そのラウンドを延長、PK戦(昨季はPSV、その前はレバークーゼン)で勝ち上がっている彼らとしては、そういう緊張する展開はサポーターのついているホームで2ndレグができるだけでありがたいのかも。おまけに12月6日にある、昨季の準決勝ではアウェーゴールで勝ち抜けたものの、2-1と負けているアリアンツ・アレナでのバイエルン戦もグループリーグ全勝記録を打ち立てる以外、何のプレッシャーもなく迎えられますからね。その分、リーガや来週から始まるコパ・デル・レイ32強対決に集中できるとなれば、文句なんて言えませんよね。

▽そして翌日のELではバレンシアガの見事としか言いようのないオウンゴールはあったものの、サッスオーロに3-2で勝ったアスレティックがグループ突破を果たし、それぞれチューリヒ、スタンダール・リエージュと引き分けたビジャレアル、セルタが決着を最終節に持ち越した後、またリーガに向き合うことになった私でしたが、今節のマドリッド勢はまず、マドリーが土曜午後4時14分(日本時間翌午前0時15分)からスタート。金曜夜にはチームもバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習施設で合宿に入りましたが、スポルティング・デ・ヒホン戦用の招集リストにはベイルはもとより、火曜の試合でヒザを痛めたバラン、またケガしたようなコエントランが入っていません。

▽そのため、ジダン監督は次にはクラシコが控えているにも関わらず、「Va a tener que jugar Sergio mañana/バ・ア・テネール・ケ・フガール・セルヒオ・マニャーナ(明日はセルヒオがプレーしないといけない)」と、イエローカードが4枚溜まっていて、累積警告になる恐れのあるラモスを先発させるようですが、丁度、この試合からペペが負傷から復帰。90分は無理でもゲームが荒れた場合は折を見て、ラモスと交代なんてことも考えているかもしれません。加えてカセミロも戻っていますが、最近はコバチッチがクロースの代役も兼ねて頑張っていますからね。こちらも先発するのかどうか。ちなみにベイルの穴を埋めるのはルーカス・バルケス、ハメス・ロドリゲス、アセンシオと沢山、候補はいる上、何より相手は降格圏にいるチームですしね。正GKのクェジェルもケガで遠征に帯同できておらずとなれば、マドリーが後れを取ることはまずないんじゃないでしょうか。

▽続く時間帯ではマドリッドの新弟分、レガネスがアウェイでのエスパニョール戦に挑むんですが、彼らは前節、念願の1部ホーム初勝利を果たしながら、2ゴールを挙げてオサスナに引導を渡したロネル・イバネスがその試合中に負傷。しかもヒザの靭帯断裂で今季絶望となってしまうという不運があったばかりですが、できればクリスマスのparon(パロン/休止期間)前までにもう少し、降格圏から遠ざかっていてほしいもの。今のところ、勝ち点差は4ありますが、アトレティコ、バルサ、マドリー、セビージャ戦がもう済んでいるだけに、ここが稼ぎ時と言っても大袈裟ではないかと。

▽そしてアトレティコがオサスナと対戦するのは日曜午後4時15分ですが、そうこうするうちに金曜試合が終わり、恐れていた通り、彼らはベティスに3-1で勝ったエイバルに勝ち点で並ばれてしまうことに。いえ、週末の相手はお隣さん同様、降格圏にいますし、カパロス新監督に代わった直後のレガネス戦でもそれ程、改善しているようには見えなかったんですけどね。このままたらたらリーガを過ごしていると、ノルマ達成すら危うくなったりしますから、ここは気を引き締めてかかってくれるといいんですが…。

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