【原ゆみこのマドリッド】大切なのは次の試合…

2016.11.19 09:30 Sat
▽「ここ3シーズン、リーガで負けてないって言われてもねえ」そんな風に私が今イチ、確信が持てずにいたのは金曜日、いよいよマドリーダービー一色になったお昼のニュースを見ている時のことでした。いやあ、それ以前のレアル・マドリー戦、自分がマドリッドにいる間にアトレティコの勝利は見られないんじゃないだろうかと感じた日々もあったものの、それも2013年のコパ・デル・レイ決勝でお隣さんを下してから、まるで14年間の憂さを晴らすように、リーガでは4勝2分けと勝ち越しているのは確かなんですけどね。

▽それとは対照的に克服でききていないのがCLでの対戦で、この同じ3年間で1分け3敗。しかもそのうち2つの負けが選りに選って決勝の大舞台って、あまりにツキがないかと。もちろんリーガの試合には延長戦もPK戦もないのは救いになりますが、普通の展開なら、魔の93分は確実にやってくるはずですしね。そこへ加えて、リスボンでもミラノでもゴールを挙げたセルヒオ・ラモスがケガから回復、1カ月ぶりに戦列に戻って来るとなれば、リーガのparon(パロン/休止期間)直前、アウェイでの2連敗目を喫して、首位マドリーと勝ち点差6という厳しい状況にある今、私が強気になれなくても仕方ない?

▽え、その負けたセビージャ戦、レアル・ソシエダ戦については、スペイン代表出向中に先輩のガビから、「中央にいるとボールを持って、より多くのプレーを組み立ててくれるが、守る時にチームが脆弱になる」と言われていたコケが、「hay veces que desconectas un segundo y el contrario lo aprovecha/アイ・ベセス・ケ・デスコネクタス・ウン・セグンド・イ・エル・コントラリオ・ロ・アプロベチャ(時にほんの一瞬、気がそれてしまうことがあって、敵がそれを利用するんだ)」と説明していなかったかって?うーん、どちらもスローインから失点につながったこともあって、彼なりに一生懸命、考えたことなんでしょうけど、突然集中力が途切れてしまうのはダメダメだった時代のアトレティコの、何度反省しても直らなかった悪癖。
▽それがまた、今になって蘇ってきたなんて、たまったもんじゃありませんが、週明けの練習後には、ガビがシメオネ監督から注意を受けていたなんて話もありましたからね。まあ、これまで好成績を挙げてきたダービーでは守備的ボランチを2枚置いてきたという経緯もありますし、監督自身も「コケがどこでプレーするのかはわからないが、su presencia en el equipo es fundamental siempre para nuestro juego/ス・プレセンシア・エン・エル・エキポ・エス・フンダメンタル・シエンプレ・パラ・ヌエストロ・フエゴ(彼の存在はウチのプレーにとって常に重要)」と前日会見で断言。となれば、スタメンには入るとしても…当人が「no es un paso atrás, son variants/ノー・エス・ウン・パソ・アトラス、ソン・バリエンテス(一歩後退じゃないよ、バリエーションなんだ)」というサイドへ移動した場合、今回、代わりにボランチに入るのが後輩のサウルであることを考えると、ちょっと微妙かもしれませんね。

▽まあ、ダービーに関してはまた後で触れるとして、スペイン代表の2試合目は休養できるはずだった、そのコケまでがロペテギ監督の初期プラン失敗のため、駆り出されることになった火曜のイングランド戦の顛末もお話ししておかないと。いえ、前日からウェンブリーに乗り込んで、近隣のホテルに宿泊。久々のロンドンを満喫と張り切って外へ出た試合日の昼間、レセプションの人に勧められたスタジアムのすぐ横にあるアウトレットモールをまず見てみようと歩いていたところ、偶然にもチームの滞在していたヒルトン・ホテルから選手たちが練習に向かうシーンを見られたり、マドリッドに比べ、複雑怪奇に思えた地下鉄でさえ、どの駅にも改札や券売機付近に係員がいて親切に教えてくれたため、かなりご機嫌で私もキックオフを迎えたんですけどね。
▽そんな浮かれた気分がサッカーの聖地、ウェンブリーでプレーするスペインの選手たちにもあったか、はたまた、アスピリクエタ(チェルシー)、イニゴ・マルティネス(レアル・ソシエダ)、ナチョ(マドリー)でのCF3人体制という新機軸が上滑りしてしまったのか。真相はわかりませんが、いくら往年のジェラールやランパード、そしてその日はルーニーまで負傷だか、合宿先のホテルで開かれていた披露宴に招かれたせいでの二日酔いだったかで欠場と、お馴染みの選手がほとんどいないイングランドだって、満員の観衆に応援されれば張り切りますよ。ええ、開始9分、ララーナのクロスに抜け出したバーディをGKレイナ(ナポリ)が倒してしまい、早速PKを献上してしまうって一体、どうなっている?

▽そのPKはララーナが決め、リードされた状態で前半の残りを戦ったスペインですが、途中からロペテギ監督はビトロ(セビージャ)を上げ、アスピリクエタを左SBに回して、通常の4人DF制にチェンジ。ただそれも大した効果はなく、後半頭からマタ(マンチェスター・ユナイテッド)とビトロをイアゴ・アスパス(セルタ)とコケに代えてからわずか3分、今度はヘンダーソンのクロスをバーディにヘッドされて2点目を奪われているんですから、困ったもんじゃないですか。

▽おかげでスタンドでは盛り上がったイングランドファンの場内何周もするウェーブが始まったため、もうロペテギ監督もチアゴ・アルカンタラ(バイエルン)をアンデル・エレラ(マンチェスター・ユナイテッド)へ、シルバ(マンチェスター・シティ)、アドゥリス(アスレティック)をイスコ、モラタ(マドリー)へとフレッシュな攻撃陣を次から次へとつぎ込むしかなくなってしまったんですが、何と、観客の半分ぐらいが引き上げ、私もせっかく憧れのウェンブリーまで来て負け試合かと不貞腐れていた後半44分、何と奇跡が起こったんです!

▽それは「Sabia que tenia una buena oportunidad y que me tenia que comer el mundo en cada minuto/サビア・ケ・テニア・ウナ・ブエナ・オポルトゥニダッド・イ・ケ・メ・テニア・ケ・コメール・エル・ムンド・エン・カーダ・ミヌート(いいチャンスを手にしていて、1分1分、世界を喰ってやる気でいかないといけないのをわかっていた)」という、ジエゴ・コスタ(チェルシー)の負傷離脱で追加招集を受け、その日が29歳で代表デビューとなったアスパス。モラタからもらったボールでエリア内に切り込むと、ストーンズにヒザをつかせて撃ったシュートがファーサイドのポストに当たってネットに入ったから、ビックリしたの何のって。

▽おまけに1点差になって、イングランドの選手たちが接触プレーの後に蹲りがちになっていたロスタイム、ほとんど最後の攻撃でカルバハル(マドリー)のクロスを胸でトラップしたイスコがGKハートンの股間を抜き、同点ゴールを決めてしまったとなれば、マドリーの伝統芸、根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)精神や恐るべし。いえ、スペイン・サッカー協会に招待されてピケ(バルサ)やカソルラ(アーセナル)らはパルコ(貴賓席)でこの光景を見守っていたものの、ラモスは来ていなかったんですけどね。きっと自宅で後輩たちの頑張りを喜んでいたと思いますよ。

▽となると、ウェンブリーでの前日練習の時にはロンド(輪になって中の選手がボールを奪うゲーム)でパスを失敗。ナチョやイスコに「A ver si das estos pases en el derbi/ア・ベル・シー・ダス・エストス・パセス・エン・エル・デルビー(ダービーでもこういうパスをするのかな)」と冷やかされ、「Yo al menos juego el derbi/ジョ・アル・メノス・フエゴ・エル・デルビー(ボクは少なくともダービーに出るよ)」と言い返し、意外と負けず嫌いな面をクアトロ(スペインの民放)のカメラに撮られていたコケなどもまったく油断ができませんが、結局、試合は2-2の引き分けで終了。これには「スペインはチームの持つ信じる力と意志の強さ、そして質の高さを披露した」とロペテギ監督もホッとしていましたが、試合後、どうにも選手たちがミックスゾーンに出て来るのが遅いと思いきや、まさかロッカールームでマネキンチャレンジを撮影していたとは!

▽ええ、画像は代表のホームページ(http://www.sefutbol.com/en/video-spain-players-take-part-mannequin-challenge)で見られますが、いくらイングランドのバーディが、自分がゴールを挙げた後、ピッチでマネキンポーズを取っていたからって、「Esta de moda y no hemos querido faltar a la cita./エスタ・デ・モーダ・イ・ノー・エモス・ケリードー・ファルタル・ア・ラ・シタ(流行っているし、ボクらも後れをとりたくなかった)」(イスコ)というのはちょっと軽薄かも。それでも幸い、スペインには先日、自身の2ゴールなどでラトビアとのW杯予選に勝ったポルトガル代表のマネキンチャレンジビデオで、中央で筋肉を見せつけていたクリスチアーノ・ロナウドのような選手はいませんでしたけどね。

▽そのロナウドから、今回の代表戦2試合では出番のなかったルーカス・バルケスのツィッターに、「Buena copiada eh/ブエナ・コピアーダ、エー(いいコピーだね)」と茶々が入ったなんてことは、昨今では猫も杓子もやっており、オリジナリティを主張される云われもないため、無視していいんですが、終盤はともかく、試合の内容的にスペインには反省点が多かったのも事実。いえ、3月に次のイスラエルとの予選がやって来る頃には今回、ケガでいなかったラモスやピケ、ジョルディ・アルバ、イニエスタ(バルサ)、ジエゴ・コスタといったところも復活して、応援メンバーだったイニゴ・マルティネスやアンデル・エレラ、アスパスらがまた呼ばれるかはわからないんですけどね。2008年から2012年まで続いた国際メジャータイトル独占の黄金期が再び到来するかどうかは、この先、テクニカルスタッフ、選手共々、何がいけなかったのか発見できるかどうかに懸かっているんじゃないでしょうか。

▽そしてその夜のうちにロンドンを経ったチームに続いて、翌水曜には私もマドリッドに着いたんですが、そこで待っていたのは、モラタが右の太ももの肉離れで全治1カ月の診断を下されたという驚きのニュース。いやあ、先週土曜のW杯予選マケドニア戦で打撲を受けたというのは聞いていたんですけどね。ウェンブリーでは途中出場して全力疾走、屈強なフィジカルを持つイングランドの選手たちにも負けておらず、夜中にバラハス空港に着いた時の映像でも普通に明るかったとなれば、一体、彼はいつケガをした?

▽おかげでジダン監督は土曜のダービーに向けて、ドイツ代表に行くまで足中骨骨折に気づかなかったクロースに加え、貴重な戦力を失うことになったんですが、いえ、その代わりに木曜からベンゼマが全体練習に復帰して、招集リストに入りましたけどね。先発はルーカス・バルケスになるかもしれませんが、このインターナショナルウィーク、1試合しかなかったロナウドとベイルも早めに戻っていますし、クロアチア代表のエストニア戦で前半と後半、半分ずつプレーしたモドリチとコバチッチも順調に回復。中南米組でもマルセロは2試合目が出場停止となり、日曜にはブラジルから到着、ケイロル・ナバスとハメス・ロドリゲスも木曜には元気な姿を見せているとなれば、やっぱりマドリーは侮れない相手かも。

▽ただ、カセミロとペペは間に合わず、中盤はモドリッチ、コバチッチ、イスコと若干、守備が手薄な印象は与えますが、ジダン監督など、「Hay jugadores que van a cambiar, pero nuestra idea de jugar al fútbol no va a cambiar/アイ・フガドーレス・ケ・バン・ア・カンビアール、ペロ・ヌエストラ・イデア・デ・フガール・アル・フトボル・ノー・バ・ア・カンビアール(選手は変わるが、ウチのサッカーをプレーするという考えは変わらない)」と落ち着いていましたしね。昨季後半のリーガダービーではサンティアゴ・ベルナベウで負けたとはいえ、それ以来、28試合無敗を継続。おまけにCL決勝でも勝っている相手となれば、今回は引き分けても勝ち点6差が維持できる訳ですし、自信があって当然だった?

▽一方、アトレティコの嬉しいニュースはスウェーデン戦で足を踏まれ、フランス代表を早期離脱したグリースマンが期待にたがわず、先発の準備が整ったことで、木曜には大西洋を渡って来たゴディン、ヒメネス、コレア、フィリペ・ルイスらと一緒に全体練習に参加。ベルギー代表でも2ゴールを挙げ、絶好調のカラスコも戻ったのは週の始めでしたしね。火曜のプレーオフ2nレグのスコアレスドローでオーストリアにアウェイゴールで勝ち、来夏のU21ユーロ大会出場を決めてきたサウルも、2年前のダービーでchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)のゴールを挙げたという実績がありますし、ジダン監督曰く、彼らには「Siempre se dice que defiende bien, pero no es sólo eso, es mucho más/シエンプレ・セ・ディセ・ケ・デフィエンデ・ビエン、ペロ・ノー・エス・ソロ・エソ、エス・ムーチョ・マス(いつも守備がいいと言われるが、それだけじゃない。もっともっとある)」というところを証明できるといいのですが、さて。

▽そんなアトレティコvsマドリー戦は土曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)キックオフ。何せ、ビセンテ・カルデロンで最後となるリーガのマドリーダービーですからね。その直前には勝ち点4差で2位にいるバルサがマラガをカンプ・ノウに迎えるのも気になりますが、とにかくファンにいい思い出を作るためにも、「Antes sabíamos que éramos inferiores al Madrid, ahora competimos a la par/アテンス・サビアモス・ケ・エラモス・インフェリオーレス・アル・マドリッド、アオラ・コンペティモス・ア・ラ・パル(以前のウチはマドリーより劣っていることをわかっていたが、今はガチンコで戦える)」(シメオネ監督)というのが本当だということを見せてくださいね。

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