【東本貢司のFCUK!】ナショナルアイデンティティー
2016.11.10 10:15 Thu
▽アメリカ合衆国「次期大統領ドナルド・トランプ」の“衝撃”が、早くもスポーツ界に波紋を投げかけている。例えば、2024年オリンピック/パラリンピックのホストに立候補しているのはパリ、ブダペスト、そしてロサンジェルズだが、トランプ氏が標榜する外交アジェンダに則った場合、LAの辞退は濃厚になったという。また、アメリカが誇る“三大”プロスポーツリーグ、NFL、NBA、MLBが計画中の定期的海外進出(会場使用)にも“物言い”がかかりそうだとか、果ては「外国人プレーヤー制限の可能性」まで。そして何よりも、アメリカが最有力候補(一説には「事実上、ほとんど決まり」)と目されている2026年W杯開催への影響。まず、昨今のFIFA新アジェンダに照らし合わせて検討課題とされている「カナダ、メキシコとの共催案」は「消えた」も同然だと、一部メディアが先走りして喧しく「注意を呼び掛ける」始末。だが、果たしてそうなのか?
▽そういうご時世なのだから仕方がないのかもしれないが、トランプ氏当選が濃厚になり始めた頃から株価の一斉落下現象が起きたのには、正直、呆れてため息がもれたほどだ。要するに「踊らされすぎ」、別の言い方をするなら状況判断が「軽すぎ」やしないか。証券取引の類には一切縁のない“素人”の筆者だが、こんなせわしない、せせこましいトレーディング(が許されていること)が、実はグローバル経済の立ち直りを阻害しているのでは、と勘繰りたくなってしまう。そもそも、何も明日明後日から即、トランプ氏が遊説中にぶち上げたアジェンダが実施されるわけでもない。はっきり言って、慌てすぎ、先読みをしすぎだと思うのだが・・・・。などと愚痴りたい気になってきて、ふとひらめいた(気がした)。これこそが、トランプが仕掛けた大ばくちなのではあるまいか。無論、選挙に敗れてしまえばそれまでだったが、“めでたく逆転勝利”を収めた今、そう、勝利宣言演説で彼は何と言ったか。「党派も何もかも乗り越えてみんな一つになって」やっていこう!
▽勝手な希望的観測である。しかし、世紀の“バクチ打ち(でウソ三百代言の)”ドナルド・トランプならやりかねない。すなわち、これまで傍若無人流にまき散らしてきた刺激的で過激で相応に反社会的かつ時代に逆行するような政治方針らしきものを、それなりに(良い意味でも悪い意味でも)実践しつつも、幸便にすり替えの言い訳やお題目をくっつけながら、まるで当初のイメージとは異なる世界図を作り上げようとする・・・・目論みをもっているのではないか、と。それが具体的にどんな(良くも悪くも)混乱と果実をもたらすのかはわからない。が、類似したナショナル・アイデンティティー優先、原点回帰志向」の(EUを脱退した)UKに対して、例えば、NBAとプレミアリーグの「会場交換開催」を申し出る、あるいは、もっと踏み込んでUEFAチャンピオンズリーグの、手始めに、準決勝と決勝のアメリカ開催を提案する・・・・なんてことを誰かがトランプの耳元で囁くかもしれない。なんとなれば、彼の盟友で元ニューヨーク市長ルディー・ジュリアーニ氏が、現在訴追中のFIFA汚職事件に、メインで携わる役職に就任するという噂もあるのだ。
▽とまあ、少々大げさで、大枠閑話休題的な話をしてきてしまったが、少なくともトランプ御大は「ナショナル・アイデンティティー」に基づくテーマなら、二言返事で協力・推進する可能性は大。ならば、今週金曜日の「イングランド-スコットランド戦」で両軍プレーヤーが「腕に巻く(予定の)ポピーの紋章」にも、彼なら諸手を挙げて賛同してくれるはずだ。杓子定規なFIFAの規則など、鼻で笑って(暴言交じりに)体を張ってくれることだろう。もちろん、そんな提言をする権利は現段階も今後もあり得ないだろうが、彼なら許される(かもしれない)。シンプルに言い換えよう。トランプの“真意(と世界に訴えかける提案)”とは、身勝手な「アメリカ・ファースト」ではなく、ひとえに「ナショナルアンデンティティー・ファースト」なのではないか。無論、それはあくまでも「旗印」もしくは「表向き」。そこから始まる「何か」だという気がする。ヒラリー・クリントンなら絶対に思いつかない発想。なにゆえ、ロシアや中国がトランプ・シンパなのか。それを考えれば、きっと「何か」は見えてくる。無論、諸刃の剣の恐れは十分にあるが。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
▽そういうご時世なのだから仕方がないのかもしれないが、トランプ氏当選が濃厚になり始めた頃から株価の一斉落下現象が起きたのには、正直、呆れてため息がもれたほどだ。要するに「踊らされすぎ」、別の言い方をするなら状況判断が「軽すぎ」やしないか。証券取引の類には一切縁のない“素人”の筆者だが、こんなせわしない、せせこましいトレーディング(が許されていること)が、実はグローバル経済の立ち直りを阻害しているのでは、と勘繰りたくなってしまう。そもそも、何も明日明後日から即、トランプ氏が遊説中にぶち上げたアジェンダが実施されるわけでもない。はっきり言って、慌てすぎ、先読みをしすぎだと思うのだが・・・・。などと愚痴りたい気になってきて、ふとひらめいた(気がした)。これこそが、トランプが仕掛けた大ばくちなのではあるまいか。無論、選挙に敗れてしまえばそれまでだったが、“めでたく逆転勝利”を収めた今、そう、勝利宣言演説で彼は何と言ったか。「党派も何もかも乗り越えてみんな一つになって」やっていこう!
▽勝手な希望的観測である。しかし、世紀の“バクチ打ち(でウソ三百代言の)”ドナルド・トランプならやりかねない。すなわち、これまで傍若無人流にまき散らしてきた刺激的で過激で相応に反社会的かつ時代に逆行するような政治方針らしきものを、それなりに(良い意味でも悪い意味でも)実践しつつも、幸便にすり替えの言い訳やお題目をくっつけながら、まるで当初のイメージとは異なる世界図を作り上げようとする・・・・目論みをもっているのではないか、と。それが具体的にどんな(良くも悪くも)混乱と果実をもたらすのかはわからない。が、類似したナショナル・アイデンティティー優先、原点回帰志向」の(EUを脱退した)UKに対して、例えば、NBAとプレミアリーグの「会場交換開催」を申し出る、あるいは、もっと踏み込んでUEFAチャンピオンズリーグの、手始めに、準決勝と決勝のアメリカ開催を提案する・・・・なんてことを誰かがトランプの耳元で囁くかもしれない。なんとなれば、彼の盟友で元ニューヨーク市長ルディー・ジュリアーニ氏が、現在訴追中のFIFA汚職事件に、メインで携わる役職に就任するという噂もあるのだ。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
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