【原ゆみこのマドリッド】それなりに勝っている…

2016.09.17 11:00 Sat
Getty Images
▽「差をつけてくれるなあ」そんな風に私がもやっとしていたのは金曜日、翌日にバルサを迎えるブタルケで、いそいそとベンチのリニューアルが行われている様子をTVのニュースで見た時のことでした。いやあ、クラブ創設88年目にして、ようやくリーガ1部で戦えるようになったマドリッドの新弟分、レガネスがこれまでとはまったく格や規模の違うビジターチームを迎えるため、夏からスタンドやロッカールームの整備を突貫工事でやっていたのは知っていたんですけどね。今になってベンチを新しいものにするってことは、4週間前のホーム開幕戦、マドリーミニダービーの時は古いままでアトレティコを迎えていたってことじゃないですか。
PR
▽え、シメオネ監督など、いつもテクニカルエリアに立ったままで、ほとんどベンチに座ることはないんだから、別に2部や2部Bあつらえのシートでも構わなかったんじゃないかって?それはそうなんですが、来週はミッドウィークにも試合があるリーガ3連戦の最初。しかもバルサは水曜にアトレティコ戦を控えているため、いえ、レガネス(マドリッド近郊)へ連れて来ないのはブスケツだけのようですけどね。ルイス・エンリケ監督がローテーションを視野に入れているのは明らかとなれば、MSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの頭文字)の1人、もしくは複数が控えとしてキックオフを迎える可能性が高いため、TVカメラがベンチに向かう頻度が上がっても恥ずかしくないようにという気遣いだった?▽実際、そんなことはどうでもいいんですが、今週は滅多に見られないビッグチームの来訪を前にレガネス関係者は非日常を満喫。ええ、月曜に売り出されたチケットは数時間で完売、今では元値40~60ユーロ(約4600~8900円)のものが80~460ユーロ(約9200~5万5000円)という高値でreventa(レベンタ/ダフ屋)から出回っているのはともかく、ファンたちはスタンドに大きなモザイクも準備中だとかで、クラブもこの試合用にオンラインポスターを用意(https://twitter.com/CDLeganes/status/775689956299792384)。「Que sea lo que DIOS quiera…o no/ケ・セア・ロ・ケ・ディオス・キエラ…オ・ノー(神様の望むままに…それとも違うか)」というメッセージの神様は、どうやらメッシのことのよう。
▽ただ試合をするのは選手たちなので、とりわけ木金にはマスコミへの露出度が大幅に増えた彼らにしてみれば、密かに5人DF体制を用意していると言われているアシエル・ガリターノ監督も含め、できればメッシには出てもらわない方が嬉しいかもしれませんけどね。何せ、リーガ前節アラベス戦でこそ、ベンチスタートにしたメッシ、スアレスの投入が遅れて、1-2で負けと不覚を取ったバルサでしたが、火曜のCLセルティック戦ではその憂さを晴らすように前者がハットトリックと大爆発。加えてネイマールは1ゴール4アシスト、スアレスも2得点と、イニエスタのスーパーボレーもあって、7-0のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)になってしまいましたからね。

▽兄貴分のアトレティコは優しいのか、鈍いのか、レガネスにもスコアレスドローで花を持たせてあげていましたが、先に対戦したアラベスと同じ昇格組ということで、再び過ちは犯さないという決意をバルサが強くしているはずなのも気になるところ。いえ、できればここは彼らに頑張ってもらって、2連続引き分けスタートでまだ勝ち点1あるアトレティコとバルサの差を縮めるのに協力してもらいたいんですけどね。前節はスポルティングに2-1で負けと、やはり攻撃力があまりないチームなので、土曜午後1時(日本時間午後8時)からの試合への期待のマックスは点を取られず、ドローに持ち込んでくれればといったところでしょか。
▽え、リーガより前にCLグループリーグ1節のマドリッド勢がどうだったかを知りたいって?そうですね、火曜には先にアトレティコがアウェイでPSVと対戦したんですが、幸い近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)が試合を流していてくれたため、私も見ることが可能に。ただやはり予想は当たって、昨季のCLベスト16での2試合同様、渋い展開になったんですが、開始5分でデ・ヨングに決められたヘッドがフェリペ・ルイスへの怪しげなファールで認められなかったのが、その日のアトレティコにはツキがあるのを示す前兆だったのかもしれません。

▽そう、前半は「Hoy jugo porque intuiamos que tendriamos que manejarnos en espacios cortos/オイ・フゴ・ポルケ・イントゥイアモス・ケ・テンドリアモス・ケ・マネハールノス・エン・エスパシオス・コルトス(今日は狭いスペースを操らないといけないと直感したため、彼がプレーした)」(シメオネ監督)という、ベンフィカからの移籍後初先発を果たしたガイタンもカラスコとの差を見せつけることができず、なかなか敵ゴールに近づけなかったんですけどね。いよいよハーフタイムも近づいた42分、飛び出したんですよ、たまに驚かせてくれるサウルのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)が!

▽それはガビのCKからで、落ちて来たボールは、こちらも今季初先発、「por el juego aereo de De Jong, Jose podia echar una mano en esa actuacion/ポル・エル・フエゴ・アエレオ・デ・デ・ヨング、ホセ・ポディア・エチャール・ウナ・マノ・エン・エサ・アクトゥシオン(デ・ヨングとの空中戦でホセは手を貸すことができた)」(シメオネ監督)という理由でピッチに立ったヒメネスが何故か、プロパーと頭をぶつけながらボールをクリア。おかげで相手の方はホラー映画のような顔面流血状態になっていましたが、きっとサウルにはそこまで見えてませんよね。そのままシュートしたこぼれ球は敵DFに当たって戻って来るわ、ゴディンのchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)も届かないわと、もうロストチャンスかと私が諦めかけている中、今度は彼がジャンプして蹴り入れたボールがGKズートを破ってくれたから、ビックリしたの何のって。

▽うーん、2年前のマドリダービーでは意表を突くオーバーヘッドでゴールを決めたり、昨季のCL準決勝バイエルン戦1stレグでもメッシのように敵DFを何人もすり抜けて決勝点を挙げたりと、時折才能の片鱗を見せてくれるサウルですけどね。自身の今季初ゴールを挙げる前、先週はスペインU21代表の大事なユーロ予選、スウェーデン戦で痛恨のオウンゴールを入れてしまったこともあり、当人は試合後に「tenia un poquito de ansiedad por marcar/テニア・ウン・ポキート・デ・アンシエダッド・ポル・マルカル(ゴールを入れたくてちょっと焦っていた)」と告白。

▽となれば、この得点で大いに自信をつけてくれたかと思いますが、そのすぐ後でした。アトレティコに災いが振りかかったのは。そう、エリア内に走り込んだナルシンフをヒメネスが追ったところ、体が触れてもしていないのに相手が転倒。それをペナルティとされてしまうのですから、たまったもんじゃありませんが、おかげでまたしても驚かされることに。ええ、5月のお隣さんとのCL決勝PK戦で1本も止められず、実はPKに弱いんじゃないかと世間で噂されていたGKオブラクが何と、グアルダードのキックを弾いてしまったんですよ。

▽ただこれには、当人が反省して猛特訓したとか、そういうオチはなくて、単に「En Milan tuve mala suerte/エン・ミラン・トゥベ・マラ・スエルテ(ミラノでは運が悪かった)」(オブラク)だけだったとか。いかにもお気楽なアトレティコ的解釈ではありますが、おかげでチームが同点にされる危機を乗り切ったのは事実。後半はチアゴやカラスコ、フェルナンド・トーレスが入り、リードを更に広げようとした彼らでしたが、コクー監督率いるPSVも激しく抵抗。最後は全員で守って終わっていましたが、0-1でも勝ちは勝ちですからね。同日、ロシアのロストフに5-0と大勝したバイエルンをビセンテ・カルデロンに迎える次節を前に、勝ち点3を持って帰れたのは大きな心の支えとなるはずです。

▽そして翌水曜はレアル・マドリーの番で、私もサンティアゴ・ベルナベウに向かったんですが、どうしたんでしょうね。セルティック戦で久々に勢揃いしたMSNは爆発したのに、同じく今季初めて一緒にスタメンに入ったBBC(ベイル、ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)は前半、ポルトガルから来たスポルティング相手にまったくパッとせず。ええ、それどころか、0-0のまま迎えた後半2分、ブライアン・ルイスのラストパスクリアにセルヒオ・ラモスがもたつき、ブルーノ・セサルに先制点を決められてしまったから、さあ大変!プレシーズンのケガからようやく復帰したベンゼマはリズムに乗れず、おまけにベイルも前半、敵に腰を膝撃ちされ、打撲を抱えてプレーしていたため、ジダン監督も20分過ぎには2人をモラタとルーカス・バスケスに交代、その10分後にはクロースをハメス・ロドリゲスに代えてゴールを目指すことに。

▽ちなみに先週末にはうだるような暑さの中、オサスナ戦で5点を挙げた彼らでしたが、この日は打って変わって気温が15度近く低下。かといって、9月からフリースを着てくる勇気もなかったため、見ているこちらは寒くてかなわなかったんですが、選手たちもそれで調子が狂ってしまったんですかね。後半序盤に抗議で退場処分になりながら、ベンチのすぐ後ろのスタンドでジョルジ・ジェスス監督が指揮を執っているスポルティングにはなかなかつけ入る隙がないだけでなく、ロナウドのシュートもゴールポストに当たってしまうし、もう残り5分とかには席を立つファンも多かったんですが…。

▽それってサンティアゴ・ベルナベウでは許されないことなんです!というのもまた起きたんですよ、あのマドリー伝統、奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)が。いえ、この日は2年前のCLリスボン決勝やこの夏のUEFAスーパーカップでロスタイムに延長に持ち込むゴールを挙げたラモスではなかったんですけどね。43分には、生粋の勝ち組、キャリアをスタートしたチームへの温情も忘れたロナウドがこの夏、ポルトガル代表で一緒にユーロのトロフィーを掲げたGKルイ・パトリシオの手を弾いて、FKをネットへ。

▽それには起死回生の同点をゲットしただけでも偉いと感心した私だったんですが、そこで満足しているのは普通のクラブで、彼らは違うんです。ええ、もうロスタイムも終わりに近かった49分、「Sabia que James la iba a poner ahi/サビア・ケ・ハメス・ラ・イバ・ア・ポネール・アイー(ハメスがあそこに上げるとわかっていた)」というモラタがゴール前からヘッドを叩き込み、土壇場で勝利をもぎ取ってしまったとなれば、ただただ、その根性にシャッポを脱ぐしかないじゃないですか。

▽それだけに、試合後は「Esto es el Madrid, podemos cambiar las cosas en un minuto/エストー・エス・エル・マドリッド、ポデモス・カンビアール・ラス・コーサス・エン・ウン・ミヌート(これがマドリー。ウチは1分間で物事を変えられる)」というジダン監督を始め、選手たちも自分たちの特異なレモンターダ体質に胸を張っていたんですが、でもねえ。正直な話、「Esto es un aviso para el future/エストー・エス・ウン・アビソ・パラ・エル・フトゥロ(これは先々への警告)。やられてしまうこともあるんだから、あんなフニャフニャと試合を始めていけない」と反省をしていたロナウドの言う通りかと。

▽というのも次の相手、ドルトムントは同日、レギア・ワルシャワを0-6で粉砕していて、彼らには2013-14シーズンには準々決勝で0-3と先勝しながら、2ndレグで0-2と追い詰められたり、その前のシーズンの準決勝ではアウェイで4-1の完敗もしていますからね。27日の2節も先が読めないため、ここはやはり、早めに気を引き締めておくことが大切でしょう。

▽まあ、それはちょっと先のことなので、まだいいんですが、今週末のマドリーは日曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からバルセロナでエスパニョール戦。昨季は2試合合計で12-0と大勝ちしている相手なのもあるのか、ただの打撲だけのようですが、金曜もグラウンドに出てこなかったベイルはミッドウィークのビジャレアル戦を見据えて温存、ベンゼマやモドリッチらのローテーションもあるかと。

▽とはいえ、何せ前節は開幕から3連勝したのが彼らだけだったため、早くも単独首位に立てましたからね。この夏はキケ・サンチェス・フローレス監督を迎え、レオ・バチストン、レジェス、フラードー、GKロベルトら元アトレティコ組に加え、ピアッティ、アルバロ・バスケス、更に元マドリーのGKディエゴ・ロペスと補強に熱心だったエスパニョールながら、今季はまだ白星がありませんし、今のマドリーを止めるのはかなり難しいと思いますよ。

▽そしてアトレティコの方は土曜、こちらはスポルティングでも、ヒホン(スペイン北部のビーチリゾート都市)から来る現在、リーガ3位のチームをビセンテ・カルデロンに迎えるんですが、実はアイントホーフェンでの試合でチアゴが右太ももを負傷。全治1、2週間という悪いニュースもあったんですが、それより何より、騒がれていたのはシメオネ監督が2020年までだったクラブとの契約を2018年までに短縮していたことだったかと。いやあ、確かに2011年末からアトレティコの指揮を執り始めていますから、8年もいたら自身もファンも飽きてしまうだろうと思うのもわかりますし、彼にだって他にやりたいこともあるでしょうしね。

▽ただ、現時点では当人もまだやる気は十分あると言っていますし、新スタジアムのペイネタでの1年目はいてくれるとなれば、当面はあまり心配することもない?そんなアトレティコのスポルティング戦は土曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)にキックオフ。トーレスも「Este equipo tiene mucho gol, lo de Leganés y Alavés son accidentes/エステ・エキポ・ティエネ・ムーチョ・ゴル、デ・ロ・デ・レガネス・イアラベス・ソン・アクシデンテス(このチームには大きな得点力がある。レガネス戦やアラベス戦はアクシデントのようなものさ)」と言っていましたし、まだホームで今季、勝利を祝っていないファンの胃がキリキリしないよう、点を沢山、取ってくれる試合になってほしいものです。


PR

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly