【原ゆみこのマドリッド】先の話ではあるけれど…

2016.09.10 09:30 Sat
Getty Images
▽「来年の夏もメガプレゼンは期待できないんだ」そんな風に私が残念に思っていたのは木曜日、夜のニュースでFIFAの上訴委員会がレアル・マドリーとアトレティコへの処分を認めたのを知った時のことでした。いやあ、元々これって今年の1月、両クラブが18歳未満の選手を非合法に所属させていたとして、次の2回の移籍市場で新規選手の登録を禁じる処分を受けたのがキッカケだったんですが、その違法に入団させたとされる選手のリストにはジダン監督の息子さんたちの名前まで登場。
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▽よって、「Han nacido aquí, han vivido aquí toda su vida y es absurdo que no puedan jugar al fútbol/アン・ナシードー・アキー、アン・ビビードー・アキー・トーダ・ス・ビダ・イ・エス・アブスルドー・ケ・ノー・プエダン・フガール・アル・フトボル(彼らはここで生まれて、ずっとここに住んでいた。それでサッカーができないなんて馬鹿げている)」(ジダン監督)といった感が強い話だったんですけどね。▽それでもクラブの上訴が認められず、2年前に同じ理由で処分を受けたバルサがCAS(スポーツ仲介裁判所)にも救ってもらえず、2015年中には選手登録ができなかったことから、今回のマドリーとアトレティコも2017年には補強ができないことになると見られているんですが、何せ前者は世界最高の選手を獲得するのがモットーというクラブ。実際、試合のない夏の間、サンティアゴ・ベルナベウでの派手なプレゼンを楽しみにしているファンも多いですからね。おまけに来年のオフシーズンはスペインの参加しないコンフェデレーションズ・カップぐらいしか、ヒマを潰せるイベントもありませんし、これって、その時期あることないこと含めて、移籍の噂で紙面を埋めてきたスポーツ紙にとっても死活問題かも。
▽え、どちらも新規獲得はできなくても、今季レンタルに出している選手は取り戻すことができるんだろうって?まあ、そうなんですけどね。ただその場合、1年半前にビセンテ・カルデロンを満員にしたフェルナンド・トーレスはアトレティコの永遠のアイドルということで例外だったんですが、マドリーでもこの夏のたった2人の新顔、モラタ(ユベントスから移籍)、アセンシオ(エスパニョールへのレンタル終了)のプレゼンは極めて地味に開催。その席で両者揃って涙していたことこそ目を引きましたが、リーガ開幕が迫っていたため、パルコ(貴賓席)前に特設ステージすら作ってもらえず。それを思うと、RMカスティージャから修行に出ることになったマジョラル(ボルフスブルク)、マルコス・ジョレンテ(アラベス)、ディエゴ・ジョレンテ(マラガ)etcらが来年の夏、万が一、帰還することになったとしても、あまり大掛かりなプレゼンは期待できないかと。

▽その一方でアトレティコはビエット、クラネビテル(セビージャ)ら昨季はトップチームのメンバーだった選手や、サントス・ボレ(ビジャレアル)、ディオゴ・ジョタ(ポルト)らこの夏の新加入選手、マンキージョ(サンダーランド)、ベラスケス(ブラガ)、メンサー(ビトリア)らレンタルの常連らに復帰のチャンスがありますが、誰より有望そうだった昨季のエイバルで18ゴールを挙げたボルハ・バストンはスウォンジーへ、オリベル・トーレスはポルトに売却。こうなると何が何でもガメイロ(セビージャから移籍)とガイタン(ベンフィカから移籍)には、ジャクソン・マルティネス(ポルトから期待されて入団も1月には中国の広州恒大へ移籍)の二の舞だけは避けてもらわないといけない?
▽まあ、どう転ぶかはもっとシーズンが進んでみないと何とも言えないんですが、とりあえず今はリーガ戦再開を控えているマドリッドの両雄の近況をお伝えしないと。今節、先に試合をするのはアトレティコで、いえ、土曜の午後1時(日本時間午後8時)という、今季から初導入の時間帯はスペイン・プロリーガ協会のテバス会長によると、たとえその30分後にはモウリーニョ監督とグアルディオラ監督が激突するマンチェスター・ダービーが始まるとしても、中国ではそれより大勢のファンが見てくれるはずだそうなんですけどね。

▽私でさえ、アグエロは出場停止でプレーできなくても、先日のスペイン代表戦で輝いていたシルバやノリート、ヘスス・ナバスらのいるマンチェスター・シティと、カシージャスの後任を立派に果たしているGKデ・ヘアやマタ、更にはイブラヒモビッチやポグバの加わったマンチェスター・ユナイテッドとのオールド・トラフォードでの一戦には魅力を感じているため、もしかしてスペイン人でもそちらにチャンネルを合わせてしまうかも。

▽とはいえ、開幕からアラベス、レガネス戦と昇格組相手に引き分けを演じ、お隣さんやバルサに遅れを取ってしまったアトレティコにとって、このセルタ戦は非常に重要で、幸いだったのは今回、リーガのチーム中最多の17名を各国代表に派遣しながら、負傷して帰ってきた選手が皆無だったこと。ええ、中南米組もゴディン、ヒメネスのウルグアイ勢が最後に到着し、金曜にはようやく全員揃ってマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でセッションを行うことができました。

▽ただ、難点はそれぞれの代表戦で見出しを飾る程の活躍をしてきた選手はいなくて、いえ、親善試合のベルギー戦とW杯予選のリヒテンシュタイン戦でフル出場したコケは中盤で躍動、そこそこ好評でしたけどね。サウルなどはA代表デビューしたものの、ユーロ予選2試合目のスウェーデン戦の応援に行ったU21代表で痛恨の自殺点を献上して、落ち込んでいるかもしれませんし、夏のユーロ大会でフランスのエースとなったグリースマンも親善試合のイタリア戦、予選のベラルーシ戦のどちらも無得点。プレー時間の短かったガメイロも同様だったため、どうやらシメオネ監督はバライドス(セルタのホーム)での先発をこの2週間、みっちり練習していたトーレスをグリースマンとの前線コンビに選んだよう。

▽他ではキプロスとの予選でベルギーの3点目を挙げたカラスコがサイドで起用されるようですが、古巣への帰還になるはずだったアウグストはアルゼンチン代表で出番がなかったものの、地元サポーターの反発を懸念してか、今回はマドリッドでお留守番。まあ、中盤ではガビもチアゴも代表戦期間中、ずっと猛暑のマドリッドで頑張っていましたからね。ようやく異常な9月の熱波が去って、真っ昼間の試合にも関わらず、気温23度前後と快適になりそうなビゴ(スペイン北西部の海辺の町)ではきっといいプレーをしてくれると思います。

▽それとは逆にFIFAウィルスの被害を受けたのがセルタで、こちらでは前節のマドリー戦でエリア外から見事なシュートを決め、一矢を報いたオレジャナがチリ代表戦で負傷。彼以外におマルセロ・ディアス、ボービュー、プラナス、ルーベン・ブランコに加え、出産予定の彼女のため、グイデッティもお休みをもらったとかで、何せ、ただでさえ、ノリートがこの夏、シティに移籍してしまったため、攻撃陣の再編に苦労しているベリッソ監督ですからね。開幕戦ではマドリッドの新弟分、レガネスに0-1と負け、続いてサンティアゴ・ベルナベウでも2-1で惜敗と、ここまで勝ち点を1つも溜められていない焦りもあるでしょうし、ようやくこの夏加入したFWジュゼッペ・ロッシの準備が整ったとはいえ、来週木曜にはヨーロッパリーグのスタンダール・リエージュ戦も控えているとあれば、その辺にアトレティコも付け込めるかもしれません。

▽そしてその次の時間帯で試合するのがマドリーで、午後4時(日本時間11時)からとなれば、もうマンチェスター・ダービーも終わっていますし、たとえ相手が昇格組のオサスナだったとしても、視聴率が落ちる心配はない?実はこの一戦のお楽しみは他にもあって、いえ、今週はシメオネ監督が水曜に自著、「Creer/クレエル(信じる)」のプレゼンをしただけに留まったアトレティコとは対照的に、あちらでは看板選手たちが商業イベントに出席。木曜にはベイルがプエルタ・デ・ソル(マドリッドの中心にある広場)の近くにあるFoot Locker(フットロッカー/スポーツシューズ専門店)を訪れ、40度近い気温の中、大勢のファンが通りを埋めたなんてこともあったんですけどね(https://www.instagram.com/p/BKDshK5jm2U/?taken-by=garethbale11)。

▽翌日、ラ・モラレハ(マドリッド近郊)のショッピングモールで自身ブランドの香水、Legacyの販促イベントに出席(https://www.instagram.com/p/BKGHHtmAAMM/?taken-by=cristiano&hl=ja)したクリスチアーノ・ロナウドが、記者たちに「オサスナ戦に出るのか?」と訊かれ、「Si, si/シー(イエス)」と答えていたのは決して面倒臭いからの適当な返事ではなかったんですよ。というのも金曜にジダン監督が発表した招集リストにはベンゼマと一緒に彼の名があったからで、いやあ、ユーロ決勝のフランス戦前半にヒザを痛めて交代した後、ポルトガルは悲願の初優勝。マドリーもUEFAスーパーカップでセビージャを破り、リーガ開幕後も2連勝と、誰に迷惑をかけていた訳ではないんですが、やっぱりBBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウドの頭文字)を揃って見られるのは華があって嬉しいかと。

▽もちろん、ウェールズのW杯予選、モルドバ戦で2ゴールの活躍をしてきたベイル以外、先発は確約されてはいないんですが、モラタもスペイン代表のリヒテンシュタイン戦で2点を挙げてきたばかりとあって、その辺はジダン監督も迷うところでしょうか。一方、その傍らでお休みをもらっている選手もいて、それはブラジルでエクアドル、コロンビアとの予選2試合にフル出場したマルセロとカセミロ、そして同じくコロンビア代表で180分間プレーして、初戦のベネズエラ戦では1ゴール1アシストの大活躍だったものの、2戦目はチームメートの前に涙を飲んだハメス・ロドリゲス。とりわけハメスはサンパウロから直接帰ることをペケルマン監督に許されず、母国のボゴタ経由で戻って来たため、到着がマルセロたちの翌日、金曜早朝となってしまったとなれば、妥当な判断というところでしょう。

▽え、ジダン監督がローテーションをするのはマドリーが、アトレティコがオランダでPSVに挑んだ翌日、来週水曜にCLグループリーグ初戦、スポルティング戦を控えているからだろうって?そうですね、最近はやたら「昨季はあと勝ち点1で届かなかったから、este año es lo que queremos conseguir/エステ・アーニョ・エス・ロ・ケ・ケレモス・コンセギール(今季はウチが獲りたい)」(ジダン監督)と、2012年以来遠ざかっているリーガ優勝を第1目標に挙げているマドリーですが、同時に前人未到のCL連覇の夢もありますからね。

▽実際、1節目ではマラガと引き分け、2節目はレアル・ソシエダに敗れ、まだ1部復帰後未勝利の相手であれば、マルセロの代わりにダニーロやナチョを左SBに使っても、カセミロの役目はクロースに頼み、スペイン代表であまり長い時間プレーしていないアセンシオやルーカス・バスケスを入れても問題はない?どちらにしろ、選手層の厚いマドリーであれば、あまり苦労もせずに勝てるような気がしますが、さて。この試合が今季、サンティアゴ・ベルナベウでのgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)第1号になったりするかもしれません。

▽そしてマドリッドの新顔、レガネスは日曜正午からスポルティング戦と、昨季までのヘタフェ、ラージョ同様、またスペイン国内のゴールデンタイムを外れた時間に設定されてしまいましたが、実は彼らはこの先、17日のバルサ戦、28日のバレンシア戦、10月1日のグラナダ戦と5試合中4試合がデーゲーム。丁度、日本では見やすい時刻にキックオフするため、この間に少しでも知名度が上がってほしいと思いますが、今はまだ、一生懸命守りはするものの、攻撃的には決め手がほとんどないチームですからね。早いところ1部の水に慣れて、ゴールもそこそこ入れられるようになってくれるといいのですが。


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