【原ゆみこのマドリッド】どっちも1勝1敗だけど…

2016.08.02 12:30 Tue
▽「贅沢なこと、やっているわね」そんな風に私が羨ましがっていたのは月曜日、ニューヨークへ移動しての初日はオフだったレアル・マドリーの選手たちが、優雅にショッピングを楽しんでいたというニュースを聞いた時のことでした。そう、何せ泊まっているところからして、セントラルパークの真ん前にある憧れのエセックス・ハウス。となれば、数日前にはビバリーヒルズに出現して、人だかりの中、悠々、高級ブランド店巡りをしていた、まだバケーション中のクリスチアーノ・ロナウドではありませんが、他の選手たちだって、そのロケーションを利用してお土産を買いに行きたくなる気持ちもわからなくもない?

▽おまけに先週、チームに合流したばかりのセルヒオ・ラモス、モドリッチ、ハメス・ロドリゲスらはホテルのジムでトレーニングって、これだって貸し切りにしてもらうのにどれだけお金がかかることか。もちろん、そんな贅沢さえ、先週の彼らのプレシーズンマッチ2試合が、ロナウドとベイルがいないにも関わらず、どちらも10万人以上の大観衆をスタジアムに集めているところを見れば、十分、正当化できるんですけどね。対照的にドバイ、シンガポールでの給油を経て、24時間かけて遥々、オーストラリアのメルボルンを訪れたお隣さんは着くなり、現地の観光アピールに駆り出される始末。

▽ええ、ホテルで旅の疲れを癒す間もなく、フェルナンド・トーレスとサウルは動物園に直行。カンガルーにエサをやりながらでも、女子受け間違いなしの決めの笑顔ができる前者には、さすがベテランと感心させられたものですけどね。ガイドさんのインストラクションも通訳してもらわないといけなかったカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)の後輩の方からは、「La verdad que es un poco tonto, pero esta bastante bien/ラ・ベルダッド・ケ・エス・ウン・ポコ・トント、ペロ・エスタ・バスタンテ・ビエン(実際、ちょっとバカみたいだけど、まあいいよね)」などと、ちょっとフォローに困る発言もチラホラ。それでも「Es la primera vez que le toco/エス・ラ・プリメーラ・ベス・ケ・レ・トコ(触ったの、初めてなんだ)」(サウル)、「ボクもさ」(トーレス)と2人共、コアラやカンガルーと遊べたのは結構、嬉しかったようです。
▽一方、シメオネ監督に率いられたチアゴ、フィリペ・ルイス、サビッチ、オブラクの4人組は市内の名所、ユーレカタワーへ連れていかれ、88階の展望室で南半球一という、地上297メートルの高みを体験。何故か、一番若いオブラクが地面を覗けるガラスのテラスで怖そうにしていたのが印象に残ったんですが、字幕はないものの、それらの様子はアトレティコのオフィシャルウェブで見られますので(http://www.atleticodemadrid.com/videos/asi-fue-el-primer-dia-de-nuestro-equipo-en-melbourne)、お暇な方は覗いてみてください。

▽まあ、そんなことはともかく、先週はマドリッドの両雄がツアー先でそれぞれ、プレシーズンマッチを2試合ずつ行ったので、その報告をしておくことにすると。まずは木曜、マドリーがオハイオのコロンバスで今季からエメリ監督が指揮を執るPSGと対戦したんですが、キャンプに参加している選手ではベストメンバーを組んだ彼らが開始2分、まだトップチームデビューもしていないイコネを誰も止められず、いきなりゴールを決められてしまったから、驚いたの何のって。
▽おまけに35分には、コバチッチがエリア内からのクリアをクラブ・ブルージュから移籍したてのムニエルにナイスパス。そのボールをgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)にされた上、更4分後には左サイドから入って来た同選手のシュートを一度はGKカシージャが弾いたものの、こぼれたボールを撃ち込まれ、とうとう3点差になってしまったとなれば、やはり今季もバランとナチョがラモスとペペの正CBコンビを脅かすことは難しい?

▽前半終了間際にはイスコのパスがオーリエのハンドを誘い、マルセロがPKを決めて差が2点に縮まったんですが、公式戦ではないですしね。ユベントスから古巣に戻ったモラタにはもう少し、頑張ってもらいたかったところとはいえ、「Sabemos que durante el ano jugaremos con la BBC/サベモス・ケ・ドゥランテ・エル・アーニョ・フガレモス・コン・ラ・ベーベーセー(シーズン中、ウチはベイル、ベンゼマ、ロナウドでプレーすることはわかっている)」ため、ジダン監督もその日の勝ち負けにはこだわっていなかったんでしょう。後半は予定通り、メンバー全員をスイッチ。カルバハルとアセンホ以外、カンテラーノ(RMカステイージャの選手)というメンツでは、いえ、プレー自体のリズムは良くなったんですけどね。とてもゴールを決めて、スコアを引っくり返すまでには及ばず、試合は1-3のままで終了します。

▽そして中1日おいた土曜、場所をミシガン・スタジアムに変えてチェルシーに挑んだマドリーだったんですが、こちらではスタメンからイスコ、ヘセ、ダニーロを代えただけのセミベストメンバーで対応。ただ、結果は真逆になって、いえ、今度もモラタがこの夏のユーロで3得点を挙げ、スペイン代表のエースになった実力を示した訳ではなかったんですけどね。ラモスがまだ調整不足のため、キャプテンを務めていたマルセロがそのタレントを大いに発揮。ええ、前半18分にはエリア前から、苦手の右足で先制点を挙げたかと思えば、25分にも2点目を追加。36分には昨季のRMカスティージャのピチチ(得点王)、マリアーノも豪快な一発を決めて、3-0で折り返すことに。

▽ちなみにこの日も後半15分にはほとんどの選手が交代したんですが、やはりカンテラーノばかりだと多くは望めないんですかね。交代でゴールに立ったGKクルトワを破る追加点がなかったばかりか、34分、47分には中盤からのパスに1人、抜け出したアザールにGKジャネスが翻弄され、まんまと2点を返されてしまったのはいただけなかったかと。おかげで最終スコアは3-2で落ち着いて、ジダン監督のユベントス時代の同僚、ユーロでスペインをベスト16敗退に追いやったイタリアを率いていたコンテ監督の面目も立ちましたが、何せ、昨季はプレミアリーグを10位で終わって、今年はヨーロッパの大会とは縁のないチェルシーですからね。

▽その日は出場しなかったセスクを始め、ペドロ、アスピリクエタとスペイン代表常連メンバーも複数いるため、ロペテギ監督体制になる新シーズン、アピールの機会が減ってしまうのは気の毒かも。一方、こちらも理由はわからないんですが、チェルシーのアメリカでの2試合目でもプレーをしなかったジエゴ・コスタには、ユーロ大会には呼ばれなかったものの、代表で顔なじみのラモスが挨拶。いえ、おそらく彼もコスタが自身のインスタグラムにまるでチームメートへのお別れとも取れるような、「Thank you very much por all my friends!」といったメッセージを載せた翌日、新ユニフォームのビデオで主役を務めていたりと、意味不明な行動が続いているのが気になっていたんでしょうかね。

▽スタジアムの通路で相手を捕まえて、「Por que no te vas? No te dejan?/ポル・ケ・ノー・テ・バス?ノー・テ・デハン?(何で移籍しないんだ?させてくれないのか?)」と、アテレティコ復帰について、しつこく訊いていたのにはかなり引きましたが、最後には「Ah..que viene Gameiro/アー、ケ・ビエネ・ガメイロ(ガメイロが来るのか)」と目を真ん丸にしていたって、そんなにダービーでのガチンコ対決復活を楽しみにしていた?うーん、このクアトロ(スペインの民放)の映像(http://www.cuatro.com/deportes/futbol/Diego-Costa-Chelsea-Sergio-Ramos_2_2220780098.html)が流れたのはガメイロ移籍が公けになった後だったため、残念ながら、スクープにはなりませんでしたけどね。

▽とはいえ、ラモスにはもう少し、慎重な行動が求められるところですが、アメリカツアー最後となる木曜午前1時半(日本時間8時半)から、レッド・ブル・アリーナで行われるバイエルン戦には彼もいよいよ、出場の準備が整うよう。ただ、さすがにニューヨーク2日目、月曜の全員ジムセッションではホテルの施設は狭すぎたのか、近くの高級ジムに河岸を変えていたマドリーですが、未だ腰痛でプレーできていないベンゼマに加え、ベイル、クロースのチーム合流が8月6日まで延期。ペペも負傷しているロナウドと一緒に10日まで戻らないというのは、9日のセビージャとのUEFAスーパーカップに向けて、あまりファンが勇気づけられる知らせでないのは確かでしょう。

▽え、それでガメイロ引き抜きでセビージャの弱体化に一役買っているアトレティコの2試合の方はどうだったのかって?いやあ、金曜の初戦、トッテナム戦は現在のベストメンバーで挑んだ前半39分、ガビのFKを敵DFがクリアしたボールをゴディンが押し込み、あとはGKオブラクの大車輪の活躍があって、0-1で何とか逃げ切ったんですけどね。彼らの場合、元々、それ程、得点力はない上、昨季のチームのピチチ(得点王)、グリースマンがまだバケーション中。加えてカラスコ、ガイタン(ベンフィカから移籍)、コケらがマドリッドでお留守場して体力強化しているという事情から、それでも勝てたのは喜ばしかったものの、やはりCFがトーレス1人では厳しいのは否めなかったかと。

▽いえ、その時はまだガメイロ移籍は決まっておらず、トーレス本人も「Nueve hay uno solo, eso pone la camiseta/ヌエベ・アイ・ウノ・ソロ、エソ・ポネ・ラ・カミセタ(ユニフォームに9番をつけるのは1人だけだよ)」と笑っていましたけどね。おまけに日曜朝6時から、眠い目をこすって、メルボルン・ビクトリーとの2試合目を見てみれば、いえ、トッテナム戦のスタンドがガラガラだったため、シメオネ監督が名のある選手を出し渋ったということではないと思いますけどね。オブラク、チアゴ以外はカンテラーノ、トップにはコロンビアのデポルティボ・カリから来たばかりの20歳のサントス・ボレを並べたとなれば、先は押して知るべし。そう、コレアはリオ五輪アルゼンチン代表に行っていますし、ビエットもこのツアーには同行せず、セビージャのドイツ遠征に体験参加と、もう大人のチームのFWがいないとなれば、前半43分にFKから敵に奪われた1点を最後まで返せなかったとしても仕方ない?

▽これには丁度、前夜のうちに契約成立がアナウンスされていたため、シメオネ監督も「Ahora Gameiro puede y debe aportarnos gol/アオラ・ガメイロ・プエデ・イ・デベ・アポルタールノス・ゴル(今はガメロがウチにゴールをもたらすことができるし、そうしなければならない)」と言うしかありませんでしたが、何にせよ、この2試合はどちらも0-1で勝負が決着。カンテラーノを含めて、相変わらずチームの守備が堅いのは評価できますが、ああいう風に点がなかなか入らないのを見ると、フロントがコスタを諦めて、オプションを含めて移籍金3700万ユーロ(約42億円)という、インフレ状態の市場ではお手頃なガメイロで手を打った気持ちはわからないでもありませんね。

▽え、そのガメイロ、先週の木曜はビエットがスタンド観戦していたマインツ戦で90分プレーして、何度もチャンスに失敗していなかったかって?まあ、そういう日もあるんですが、実は昨季の成績を見てみると、52試合出場で29得点と16ゴールだったコスタより豊作。土曜の夜にバラハス空港に着いた後、翌日午前中にはメディカルチェックを終えて、午後8時半から早速、ビセンテ・カルデロンでプレゼンとなった際にはまあ、昨季のジャクソン・マルティネス(1月に中国の広州恒大に移籍)の失敗から、あまりに待たされすぎたせいもあったんでしょうね。ガイタンの時より更に多い、およそ7000人のファンがスタンドに駆けつけることに。

▽その場では先日、入団したクロアチア人のVrslajko(ブルサリコ、サッスオーロから移籍)の名前を言うのに苦労したセレソ会長から、「se pronuncia fácilmente y el gol está con el/セ・プロヌンシア・ファシルメンテ・イ・エル・ゴル・エスタ・コン・エル(発音しやすいし、ゴールは彼と共にある)」と歓迎され、「voy a marcar muchos goles aquí/ボイ・ア・マルカル・ムーチョス・ゴーレス・アキー(ボクはここでゴールを沢山入れるよ)」と抱負を述べていたガメイロでしたが、バルサのオファーを蹴って、アトレティコを選んだ当人がこのチームの大変さを知るのはまだ先のこと。いえ、月曜にはもう、酷暑のマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場で早速、居残り組と合流して、地獄のトリプルセッションの洗礼を受けていたようですけどね。

▽4日までバケーション中だから、まだ連絡を取っていないと当人が言っていた、同じフランス人のグリースマンなどもレアル・ソシエダから移ってきた2年前、チームメートと同じ体力がつくまで、ろくろく試合で使ってもらえなかったという例もありますし、入れ替わりにセビージャへのレンタル移籍が決まった途端、日曜のザンクト・パウリ戦に先発させられていたビエットのようにはいかないかと思いますが、さて。とはいえ、一応、9日のUEFAスーパーカップを目指して体作りをやっていたはずのガメイロなので、8月21日のリーガ開幕、アラベス戦までには追いつける可能性はあります。

▽そして火曜にはオーストラリから帰国するアトレティコなんですが、月曜には次戦として、この土曜に予定していたイスタンブールでのガラタサライとの親善試合がトルコ国内の治安事情から中止となることに。その代替策はまだ出ていませんが、そこを飛ばすと、12日、13日のカランサ杯(カディス主催の伝統ある夏の親善トーナメント)まであまりに日にちが開いてしまいますからね。おそらくクラブもどこか近場で手頃な相手を探していると思いますが、開幕までいよいよ3週間となった今頃、果たして見つかるんでしょうかね。

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly