【東本貢司のFCUK!】母国の復権への壮大な計画?!
2016.07.28 14:45 Thu
▽今シーズンから“ローンチ”される「プレミアリーグ2」。実質的にはこれまでの「U21リーグ」に“オーバーエイジ枠”を加えただけのようにも見え、オーバーエイジの定義も「23歳」でフィールドプレーヤー3名まで+ゴールキーパーといたって“控えめ”。が、どうやらこの“新機軸”に対する期待度といったら並大抵ではないようなのだ。参加するのは全24チームで、プレミアから15、チャンピオンシップ(2部)から9。それぞれ12チーム二部制で行われる。内訳は(アルファベット順に)ディヴィジョン1がアーセナル、チェルシー、ダービー、エヴァートン、レスター、リヴァプール、マン・シティー、マン・ユナイテッド、レディング、サウサンプトン、サンダランド、トテナム、ディヴィジョン2にはアストン・ヴィラ、ブラックバーン、ブライトン、フルアム、ミドゥルズブラ、ニューカッスル、ノリッチ、スウォンジー、ストーク、WBA、ウェスト・ハム、ウルヴズが入る。計算が合わない? お忘れなく。これはあくまで“二軍”がベースの新リーグなのだ。ちなみに、旧U21リーグ“最後”のチャンピオンはマンチェスター・ユナイテッド。
▽各チーム、ホーム&アウェイで合計22試合を戦い、ディヴィジョン1の下位2チームが自動的に降格。一方、ディヴィジョン2では優勝チームが昇格、2位、3位、4位、5位がもう一つの昇格枠を争うプレーオフに臨む。ディジョン2からの降格はない。現状の見通しでは、過去4シーズンで3度(U21リーグの)優勝をさらったマン・ユナイテッドが本命、対抗は2013-14の覇者チェルシー。チェルシーはFAユースカップを三連覇中、またUEFAユースリーグも連覇している。さて、このユースリーグ“改変”のキモは、冒頭に触れた「オーバーエイジ枠」。ファーストチームでの経験がそこそこ豊富な22、23歳のプレーヤーが加わることで、今や異邦の助っ人全盛の現プレミアとの実質的リンクを強化し、若手国産プレーヤーを引き上げる一助と成すのが最大の狙いだ。無論、ゲーム数の増加に伴う実戦経験を増やす意味もある。要するに、近年、毎度のように優勝候補と言われながら、成績芳しからざるスリーライオンズ(イングランド代表)に喝を入れようという算段。おそらくは、先ごろ新監督にサム・アラダイスを指名したこととも密接に関連していよう。
▽このユース強化一大プラン、実はこれだけにとどまらない。各クラブのユースチームには新たにリーグカップ(年度恒例のプレミアから4部までのプロ92チームによるトーナメント)に、EFLカップ(同3部と4部の全48チームによるトーナメント)にも、参加の道が開かれることになったのだ。もちろん、だからといってこれらにすべて参加するとなると、さすがにプレーヤーフィットネスは言うまでもなく、各クラブサイドの管理も大変になる。プランの骨子が「ユース強化=プレミアの国産化/世代交代推進」なのだからして、闇雲にゲーム数を増やすことが支障をきたすことは明らか。どのクラブとて、一軍(プレミア)は即戦力外国人中心でやっていけばいいなどとは考えていないはず。現に、早速EFLカップ(イニシャルプランは全64チームで開催)の“招待”辞退が相次いでいる。具体的にはアーセナル、マン・シティー、マン・ユナイテッド、トテナム、ニューカッスル以下、ノリッチ、ブライトン、ダービー、ウルヴズ、ブラックバーン、レディングまで、辞退を表明している。ざっと見て、層の厚い薄いだけの問題ではないと察せられるだろう。
▽要するに、メニューが一気に盛りだくさんになりすぎ、多くのクラブサイドで対応が追いつけない(つきにくい)というのが実状のようだ。当然それぞれのトーナメントでは勝ち進めば賞金がついてくるわけで、それはそれで美味しい。ピータボロ(のチェアマン辺り)が声を上げているように「どうなるかやってみるだけやってみよう。これは一つの大きなチャンス」と前向きな意見も少なくない。そうなのだ。肝心のプレーヤーたちが若くして疲弊してしまっては元も子もない(辞退したクラブの主な言い分)のは気がかりだが、それはそれで立派なお題目(根拠)もあるのだ。近年のユースレベルの快進撃(U18ユーロ優勝など)と惨敗続きのA代表との、あまりにも対照的なギャップ。お休みが多ければいいなどと、うそぶくユースプレーヤーなどどこにもいない。メッシやロナウドもそんなハードスケジュールに耐えて出てきたはず。辞退が多く出たのは残念だが、この計画はまだ始まったばかり。「強い母国の復権」につながる元年として今後の意識拡大を期待したい。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
▽各チーム、ホーム&アウェイで合計22試合を戦い、ディヴィジョン1の下位2チームが自動的に降格。一方、ディヴィジョン2では優勝チームが昇格、2位、3位、4位、5位がもう一つの昇格枠を争うプレーオフに臨む。ディジョン2からの降格はない。現状の見通しでは、過去4シーズンで3度(U21リーグの)優勝をさらったマン・ユナイテッドが本命、対抗は2013-14の覇者チェルシー。チェルシーはFAユースカップを三連覇中、またUEFAユースリーグも連覇している。さて、このユースリーグ“改変”のキモは、冒頭に触れた「オーバーエイジ枠」。ファーストチームでの経験がそこそこ豊富な22、23歳のプレーヤーが加わることで、今や異邦の助っ人全盛の現プレミアとの実質的リンクを強化し、若手国産プレーヤーを引き上げる一助と成すのが最大の狙いだ。無論、ゲーム数の増加に伴う実戦経験を増やす意味もある。要するに、近年、毎度のように優勝候補と言われながら、成績芳しからざるスリーライオンズ(イングランド代表)に喝を入れようという算段。おそらくは、先ごろ新監督にサム・アラダイスを指名したこととも密接に関連していよう。
▽このユース強化一大プラン、実はこれだけにとどまらない。各クラブのユースチームには新たにリーグカップ(年度恒例のプレミアから4部までのプロ92チームによるトーナメント)に、EFLカップ(同3部と4部の全48チームによるトーナメント)にも、参加の道が開かれることになったのだ。もちろん、だからといってこれらにすべて参加するとなると、さすがにプレーヤーフィットネスは言うまでもなく、各クラブサイドの管理も大変になる。プランの骨子が「ユース強化=プレミアの国産化/世代交代推進」なのだからして、闇雲にゲーム数を増やすことが支障をきたすことは明らか。どのクラブとて、一軍(プレミア)は即戦力外国人中心でやっていけばいいなどとは考えていないはず。現に、早速EFLカップ(イニシャルプランは全64チームで開催)の“招待”辞退が相次いでいる。具体的にはアーセナル、マン・シティー、マン・ユナイテッド、トテナム、ニューカッスル以下、ノリッチ、ブライトン、ダービー、ウルヴズ、ブラックバーン、レディングまで、辞退を表明している。ざっと見て、層の厚い薄いだけの問題ではないと察せられるだろう。
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。
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