【原ゆみこのマドリッド】まるで昔のようだ…
2016.06.30 12:35 Thu
▽「やっぱり勝たないとダメよね」そんな風に私が頷いていたのは水曜日。アイスランドの監督記者会見に大勢のマスコミが詰めかけ、1時間近くも質疑応答が続いたという記事をスポーツ紙のサイトで見つけた時のことでした。いえ、ユーロ開始時には24チームもあったのに今や、残っているのは8チームだけ。スペイン同様、母国代表の追っかけ要員は敗退と同時に撤収するものの、どの国だって大会全般をカバーする取材陣がいますし、参加してない国のメディアだって、もうここまでチーム数が減れば、優勝候補以外にも人員を派遣する余裕が出てくるのは当然ですけどね。
▽おかげでラーゲルベック共同監督が、ベスト16でイングランドを破った後、翌火曜日はオフだった選手たちの何人かが夕食の時間に20分遅れて来たことについて、「プロ意識に欠けている」と批判したといった細かいことまで報道されるようになってしまったんですが…。実はこのアイスランド代表、相棒のハルグリムソン共同監督からして開業経験もある歯科医。
▽正GKのハルドーソン(ボーデ・グリムト)も、大会後はユーロビジョン(ヨーロッパの各国対抗歌合戦)の同国代表ビデオクリップを作成した実績のある映像プロデュースの仕事に戻りたいようですし、中にはこれまで夏季に開催される北欧のリーグでプレーしていて、冬の間は実家で農業を手伝っていたボドバルソン(カールスルーヘ)のような選手もいるため、ここへ来ていきなりサッカーのプロはと言われても、困ってしまう人たちがいるかもしれないんですが…。
▽まあ、そんなことはともかく、2年前のW杯ブラジル大会の時より、ほんの少ししかマシな結果が出せなかったスペインの今大会最後の試合の話をしておかないと。いやあ、相手のイタリアには2008年、2012年のユーロで勝っていましたし、コンテ監督の率いるチームはカテナチオの伝統を踏襲した堅い守りがウリのチームと聞いていたため、まさか試合のスタートから、あんなに攻めてくるとは私も思っていなかったんですけどね。キックオフと同時にドシャ降りになって、気が散ってしまったのか、百戦錬磨であるはずのスペインの選手たちまでが意表を突かれているって、そんなことがあっていい?
▽実際、ボールを保持することもできず、相手のプレスにGKからはロングボールしか蹴れず、逆にイタリアがブッフォン(ユベントス)からパスを繋いでくる光景には、これまでのサッカースタイルが互いに逆転したようにしか見えなかったんですが、それでも30分ぐらいまでのスペインはペッレ(サウサンプトン)やジャッケリーニ(ボローニャ)のシュートをデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)が弾いてくれたため、スコアは動かず。すると32分、自陣エリア前でセルヒオ・ラモス(レアル・マドリー)がファールを犯し、FKを献上したところ、とんでもない悲劇が発生します。
▽結果、押し込もうとしたジャッケリーニは寸前でデ・ヘアが防いだものの、そのボールをキエッリーニ(ユベントス)がネットに収めてしまったから、さあ大変! いやあ、あとでペッレなどから、「FKの時、キエッリーニはこぼれ球を追ってゴールを入れてやるって予告していた」という証言もあったため、これは完全にイタリアの作戦勝ちだったようですけどね。とはいえ、残りはまだ1時間程もありましたし、まだその段階では私もremontada(レモンターダ/逆転)はきっとできると信じていたんですが…。
▽どうも上手くいきません。後半は、「Hemos hecho un primer tiempo timido/エモス・エッチョー・ウン・プリメール・ティエンポ・ティミドー(ウチは前半、プレーが内向的だった)」(デル・ボスケ監督)という反省をもとに、しばしばジョルディ・アルバ(バルサ)と議論をしていたノリート(セルタ)をアドゥリス(アスレティック)に代え、モラタ(ユベントス)を左サイドに移して攻撃力増強を図った彼らだったんですが、やっぱり1点を守るイタリアは強いんですよ。元々、5人DF体制を敷かれると突くポイントがわからなくて手をこまねいてしまう傾向があるスペインな上、プレーにスピードもなかったため、15分程でモラタをルーカス・バスケス(マドリー)にしてみたものの、相変わらずチャンスはほとんど作れません。
▽それどころか、80分にはハイボールを敵と争った時に体を激しく地面に打ちつけて負傷したアドゥリスが、交代を余儀なくされることになったから、さあ大変! え、スペインはCFを2人しか招集していないのに、それってマズくないかって? もちろん、そうなんですけどね。とりあえず、ここはペドロ(チェルシー)を入れて、falso nueve(ファルソ・ヌエベ/偽9番)で代用することにしたんですが、ブッフォンにナイスセーブを披露させる機会にしても、せいぜいCBピケの2度のシュートぐらいしかなくてはねえ。
▽そうこうするうちに90分、前がかりになっているところを狙われてカウンターを喰らい、ダルミアン(マンチェスター・ユナイテッド)のクロスがラモスに当たってペッレの下へ。それをvolea(ボレア/ボレーシュート)で綺麗に撃ち込まれ、スペインのユーロは終わりを告げることになりました(最終結果2-0)。
▽うーん、前回のW杯はグループリーグ敗退、今回は決勝トーナメント初戦で敗退というのは、2004年のユーロ、2006年のW杯と同じ流れで、その後からスペインはご存知の通り、国際主要大会3連覇の黄金時代に突入したんですけどね。どうも今の代表からは、これからまた昇り調子になる気配が感じられず、いえ、ラモスなどは試合後、「Con una bolsa de papas y desde el sofa es facil hablar/コン・ウナ・ボルサ・デ・パパス・イ・デスデ・エル・ソファ・エス・ファシル・アブラル(ポテチの袋を持ってソファから話すのは簡単だよ)。改革が必要なのかはわからない。だって、他の代表では35歳以上の選手だってプレーしているんだから」と、その黄金時代を担った選手たちの高齢化によるチーム力の低下を断固、否定していたんですけどね。
▽実際、イタリアには、「彼のいるスペインには1度も勝ったことなかったから、今日はイニエスタ(バルサ)にユニ交換してもらった」と嬉しそうに言っていた38歳のブッフォンを筆頭に、ユーベのBBC(ボヌッチ、バルザーリ、キエッリーニの頭文字)ら、ベテランが多かったですし、若い方がいいってことはないかと思いますけど、「No tenemos el nivel de cuando ganamos el Mundial y la Eurocopa/ノー・テネモス・エル・ニベル・デ・クアンドー・ガナモス・エル・ムンディアル・イ・ラ・エウロココパ(今のウチはW杯とユーロに勝った時のレベルにない)」(ピケ)という事実は、火を見るより明らかかと。
▽そういう意味ではセスク(チェルシー)やシルバ(マンチェスター・シティ)など、若いうちから何度も栄華を極めてきたせいで、実年齢はともかく、精神的に老けてしまったような気がしなくもありませんが、彼らが絶対譲れないと言っているティキタカ(短いパスをつなぐサッカースタイル)もチャビ(アル・サッド)やシャビ・アロンソ(バイエルン)がいなくなった辺りから、あまり効率的に機能していないようですしね。
▽となれば、同日、アイスランド戦に負けて即辞任を発表したイングランドのホジソン監督と違い、まだ自身の先行きについて明言をしていないデル・ボスケ監督ですが、おそらく続投はないはずなので、バルサだってグアルディオラ監督時代からルイス・エンリケ監督時代になってバリエーションが加わったように、次期スペイン代表監督となる人が、これからの中心メンバーとなる選手たちに合ったプレースタイルを見つけてくれることを祈るしかないんじゃないでしょうか。
▽ちなみに試合後、一旦、イル・ド・レに戻り、火曜日に揃ってマドリッドに着いたスペイン代表に関しては、いえ、選手たちがすぐさまバケーション入りしてしまったせいもあるんですけどね。もう話題的には後継監督になるのはカパロス、ミチェル、パコ・ヘメスetcといった人事系か、スタッド・ド・フランスで長年のライバル、ブッフォンと熱く抱擁を交わし、ユーベで2年間お世話になったお礼を言おうと近づいてきたモラタが割って入る余地のない親密さを披露。そのカシージャス(ポルト)が自身のツィッターに映画『ランボー2』のラストシーンをアップし、スペイン語に吹き替えられたスタローンの「No sé adónde, pero me voy/ノー・セ・ドンデ、ペロ・メ・ボイ(どこかは知らないが、自分は行く)」という台詞に、今回のユーロで1度も出場機会のなかった彼が代表引退を示唆しているのではないかという憶測が飛び交ったりといった程度で、あまり面白くないですけどね。
▽そんな中、おやこれはと私が思ったのは、試合中のエキサイトぶりもそうなんですが、イタリアのコンテ監督の「ウチの考えと信念は才能あるチームにも勝てるということだった。戦術、戦略的にいい仕事をして、選手たちを確信させられれば、ポジティブな結果、勝利を期待できるとわかっていた」というコメント。うーん、先日はチャビが「イタリアはバルサとアトレティコをミックスしたみたいなスタイル」と言っていたんですが、これって、完全にチョリスモ(シメオネ監督のサッカー哲学)が入っていない? さらに「スペインは素晴らしく質が高く、才能のある代表だが、イタリアは代表というよりチーム」と続けられては、昨季はタレントには明らかに不足しながらも、努力と根性とチームの団結力だけで強敵を破ってCL決勝に進出したアトレティコを彷彿しても仕方ない?
▽いえ、それでも最後は運がなければ、決勝でこの3年間に2度もお隣さんに負けてしまうといった悲劇に終わるんですけどね。その辺はまあ、日曜日にはフベニル(ユースのカテゴリー)がコパ・デル・レイ決勝でレアル・マドリーを3-4と破り、女子チームもコパ・デル・レイナ決勝で2-3とバルサを退けて優勝と、少なくとも前者は数年後のアトレティコの力になってくれることがわかったため、まあ置いておいて、次は準々決勝で土曜日にクロースやエジルら、テクニシャンのいるドイツと当たるイタリアですが、2年前のW杯覇者もベスト16のスロバキア戦では3-0と快勝し、いよいよエンジンがかかってきたよう。その順番もバルサを破った後にバイエルンも倒したアトレティコみたいなんですが、どんな戦いになるのか、とても興味が持たれます。
▽え、それで他の準々決勝はどうなっているのかって? そうですね、まずは木曜日にポルトガルがポーランドと当たるんですが、見どころはクリスチアーノ・ロナウド(マドリー)とレバンドフスキ(バイエルン)のストライカー対決。いえ、前者はグループリーグ第3戦のハンガリー戦で2点を決めただけ、予選得点王の後者に至ってはまだノーゴールと本調子には程遠いんですが、今のところ、本大会得点ランキング1位はベイル(マドリー)とモラタ、そしてグリーズマン(アトレティコ)の3ゴールとハードルはそんなに高くないですからね。ロナウドにしてみれば、来季は古巣に復帰してチームメートとなるモラタはもちろん、ベイルにもゴール数で負けたくはないんじゃないでしょうか。
▽そして金曜日にはそのベイルとアーロン・ラムジー(アーセナル)率いるウェールズがベルギーと対戦。ベイルの呼び込んだオウンゴールでアイルランドに勝った相手に対し、ベルギーもベスト16ではハンガリーに0-4と大勝して、ついに実力発揮かと言われているんですが、その試合ではアトレティコのカラスコも大会初ゴールを挙げています。
▽ちなみにグループリーグ初戦のルーマニア戦でパッとせず、批判を浴びたグリーズマンがその彼から、「耐えて、ピッチで自分の力をピッチで見せろ」というメッセージを贈られた後、アルバニア戦の先制ゴール、そしてベスト16の北アイルランド戦では逆転勝利を導く2ゴールと大活躍しているフランスは日曜日に、今一番注目を集めているアイスランドと戦うことに。何せ、スペイン敗退で応援するチームがなくなってしまった私ですからね。あとはまだユーロに残っているマドリッドのチームの選手たちの頑張りに期待するしかないんですよ。
▽おかげでラーゲルベック共同監督が、ベスト16でイングランドを破った後、翌火曜日はオフだった選手たちの何人かが夕食の時間に20分遅れて来たことについて、「プロ意識に欠けている」と批判したといった細かいことまで報道されるようになってしまったんですが…。実はこのアイスランド代表、相棒のハルグリムソン共同監督からして開業経験もある歯科医。
▽正GKのハルドーソン(ボーデ・グリムト)も、大会後はユーロビジョン(ヨーロッパの各国対抗歌合戦)の同国代表ビデオクリップを作成した実績のある映像プロデュースの仕事に戻りたいようですし、中にはこれまで夏季に開催される北欧のリーグでプレーしていて、冬の間は実家で農業を手伝っていたボドバルソン(カールスルーヘ)のような選手もいるため、ここへ来ていきなりサッカーのプロはと言われても、困ってしまう人たちがいるかもしれないんですが…。
▽実際、ボールを保持することもできず、相手のプレスにGKからはロングボールしか蹴れず、逆にイタリアがブッフォン(ユベントス)からパスを繋いでくる光景には、これまでのサッカースタイルが互いに逆転したようにしか見えなかったんですが、それでも30分ぐらいまでのスペインはペッレ(サウサンプトン)やジャッケリーニ(ボローニャ)のシュートをデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)が弾いてくれたため、スコアは動かず。すると32分、自陣エリア前でセルヒオ・ラモス(レアル・マドリー)がファールを犯し、FKを献上したところ、とんでもない悲劇が発生します。
▽ええ、これってまさに緊張感の欠如の証明としか思えないんですが、まだデ・ヘアが壁の指示をしているうちにイタリアはエデル(インテル)がFKを蹴ります。その勢いのあるボールはデ・ヘアが弾いたんですが、何とそこへ詰め寄った選手はイタリアが3人に対してスペインはピケ(バルサ)1人だったとなれば、見ているこっちだって呆気に取られてしまいますって。
▽結果、押し込もうとしたジャッケリーニは寸前でデ・ヘアが防いだものの、そのボールをキエッリーニ(ユベントス)がネットに収めてしまったから、さあ大変! いやあ、あとでペッレなどから、「FKの時、キエッリーニはこぼれ球を追ってゴールを入れてやるって予告していた」という証言もあったため、これは完全にイタリアの作戦勝ちだったようですけどね。とはいえ、残りはまだ1時間程もありましたし、まだその段階では私もremontada(レモンターダ/逆転)はきっとできると信じていたんですが…。
▽どうも上手くいきません。後半は、「Hemos hecho un primer tiempo timido/エモス・エッチョー・ウン・プリメール・ティエンポ・ティミドー(ウチは前半、プレーが内向的だった)」(デル・ボスケ監督)という反省をもとに、しばしばジョルディ・アルバ(バルサ)と議論をしていたノリート(セルタ)をアドゥリス(アスレティック)に代え、モラタ(ユベントス)を左サイドに移して攻撃力増強を図った彼らだったんですが、やっぱり1点を守るイタリアは強いんですよ。元々、5人DF体制を敷かれると突くポイントがわからなくて手をこまねいてしまう傾向があるスペインな上、プレーにスピードもなかったため、15分程でモラタをルーカス・バスケス(マドリー)にしてみたものの、相変わらずチャンスはほとんど作れません。
▽それどころか、80分にはハイボールを敵と争った時に体を激しく地面に打ちつけて負傷したアドゥリスが、交代を余儀なくされることになったから、さあ大変! え、スペインはCFを2人しか招集していないのに、それってマズくないかって? もちろん、そうなんですけどね。とりあえず、ここはペドロ(チェルシー)を入れて、falso nueve(ファルソ・ヌエベ/偽9番)で代用することにしたんですが、ブッフォンにナイスセーブを披露させる機会にしても、せいぜいCBピケの2度のシュートぐらいしかなくてはねえ。
▽そうこうするうちに90分、前がかりになっているところを狙われてカウンターを喰らい、ダルミアン(マンチェスター・ユナイテッド)のクロスがラモスに当たってペッレの下へ。それをvolea(ボレア/ボレーシュート)で綺麗に撃ち込まれ、スペインのユーロは終わりを告げることになりました(最終結果2-0)。
▽うーん、前回のW杯はグループリーグ敗退、今回は決勝トーナメント初戦で敗退というのは、2004年のユーロ、2006年のW杯と同じ流れで、その後からスペインはご存知の通り、国際主要大会3連覇の黄金時代に突入したんですけどね。どうも今の代表からは、これからまた昇り調子になる気配が感じられず、いえ、ラモスなどは試合後、「Con una bolsa de papas y desde el sofa es facil hablar/コン・ウナ・ボルサ・デ・パパス・イ・デスデ・エル・ソファ・エス・ファシル・アブラル(ポテチの袋を持ってソファから話すのは簡単だよ)。改革が必要なのかはわからない。だって、他の代表では35歳以上の選手だってプレーしているんだから」と、その黄金時代を担った選手たちの高齢化によるチーム力の低下を断固、否定していたんですけどね。
▽実際、イタリアには、「彼のいるスペインには1度も勝ったことなかったから、今日はイニエスタ(バルサ)にユニ交換してもらった」と嬉しそうに言っていた38歳のブッフォンを筆頭に、ユーベのBBC(ボヌッチ、バルザーリ、キエッリーニの頭文字)ら、ベテランが多かったですし、若い方がいいってことはないかと思いますけど、「No tenemos el nivel de cuando ganamos el Mundial y la Eurocopa/ノー・テネモス・エル・ニベル・デ・クアンドー・ガナモス・エル・ムンディアル・イ・ラ・エウロココパ(今のウチはW杯とユーロに勝った時のレベルにない)」(ピケ)という事実は、火を見るより明らかかと。
▽そういう意味ではセスク(チェルシー)やシルバ(マンチェスター・シティ)など、若いうちから何度も栄華を極めてきたせいで、実年齢はともかく、精神的に老けてしまったような気がしなくもありませんが、彼らが絶対譲れないと言っているティキタカ(短いパスをつなぐサッカースタイル)もチャビ(アル・サッド)やシャビ・アロンソ(バイエルン)がいなくなった辺りから、あまり効率的に機能していないようですしね。
▽となれば、同日、アイスランド戦に負けて即辞任を発表したイングランドのホジソン監督と違い、まだ自身の先行きについて明言をしていないデル・ボスケ監督ですが、おそらく続投はないはずなので、バルサだってグアルディオラ監督時代からルイス・エンリケ監督時代になってバリエーションが加わったように、次期スペイン代表監督となる人が、これからの中心メンバーとなる選手たちに合ったプレースタイルを見つけてくれることを祈るしかないんじゃないでしょうか。
▽ちなみに試合後、一旦、イル・ド・レに戻り、火曜日に揃ってマドリッドに着いたスペイン代表に関しては、いえ、選手たちがすぐさまバケーション入りしてしまったせいもあるんですけどね。もう話題的には後継監督になるのはカパロス、ミチェル、パコ・ヘメスetcといった人事系か、スタッド・ド・フランスで長年のライバル、ブッフォンと熱く抱擁を交わし、ユーベで2年間お世話になったお礼を言おうと近づいてきたモラタが割って入る余地のない親密さを披露。そのカシージャス(ポルト)が自身のツィッターに映画『ランボー2』のラストシーンをアップし、スペイン語に吹き替えられたスタローンの「No sé adónde, pero me voy/ノー・セ・ドンデ、ペロ・メ・ボイ(どこかは知らないが、自分は行く)」という台詞に、今回のユーロで1度も出場機会のなかった彼が代表引退を示唆しているのではないかという憶測が飛び交ったりといった程度で、あまり面白くないですけどね。
▽そんな中、おやこれはと私が思ったのは、試合中のエキサイトぶりもそうなんですが、イタリアのコンテ監督の「ウチの考えと信念は才能あるチームにも勝てるということだった。戦術、戦略的にいい仕事をして、選手たちを確信させられれば、ポジティブな結果、勝利を期待できるとわかっていた」というコメント。うーん、先日はチャビが「イタリアはバルサとアトレティコをミックスしたみたいなスタイル」と言っていたんですが、これって、完全にチョリスモ(シメオネ監督のサッカー哲学)が入っていない? さらに「スペインは素晴らしく質が高く、才能のある代表だが、イタリアは代表というよりチーム」と続けられては、昨季はタレントには明らかに不足しながらも、努力と根性とチームの団結力だけで強敵を破ってCL決勝に進出したアトレティコを彷彿しても仕方ない?
▽いえ、それでも最後は運がなければ、決勝でこの3年間に2度もお隣さんに負けてしまうといった悲劇に終わるんですけどね。その辺はまあ、日曜日にはフベニル(ユースのカテゴリー)がコパ・デル・レイ決勝でレアル・マドリーを3-4と破り、女子チームもコパ・デル・レイナ決勝で2-3とバルサを退けて優勝と、少なくとも前者は数年後のアトレティコの力になってくれることがわかったため、まあ置いておいて、次は準々決勝で土曜日にクロースやエジルら、テクニシャンのいるドイツと当たるイタリアですが、2年前のW杯覇者もベスト16のスロバキア戦では3-0と快勝し、いよいよエンジンがかかってきたよう。その順番もバルサを破った後にバイエルンも倒したアトレティコみたいなんですが、どんな戦いになるのか、とても興味が持たれます。
▽え、それで他の準々決勝はどうなっているのかって? そうですね、まずは木曜日にポルトガルがポーランドと当たるんですが、見どころはクリスチアーノ・ロナウド(マドリー)とレバンドフスキ(バイエルン)のストライカー対決。いえ、前者はグループリーグ第3戦のハンガリー戦で2点を決めただけ、予選得点王の後者に至ってはまだノーゴールと本調子には程遠いんですが、今のところ、本大会得点ランキング1位はベイル(マドリー)とモラタ、そしてグリーズマン(アトレティコ)の3ゴールとハードルはそんなに高くないですからね。ロナウドにしてみれば、来季は古巣に復帰してチームメートとなるモラタはもちろん、ベイルにもゴール数で負けたくはないんじゃないでしょうか。
▽そして金曜日にはそのベイルとアーロン・ラムジー(アーセナル)率いるウェールズがベルギーと対戦。ベイルの呼び込んだオウンゴールでアイルランドに勝った相手に対し、ベルギーもベスト16ではハンガリーに0-4と大勝して、ついに実力発揮かと言われているんですが、その試合ではアトレティコのカラスコも大会初ゴールを挙げています。
▽ちなみにグループリーグ初戦のルーマニア戦でパッとせず、批判を浴びたグリーズマンがその彼から、「耐えて、ピッチで自分の力をピッチで見せろ」というメッセージを贈られた後、アルバニア戦の先制ゴール、そしてベスト16の北アイルランド戦では逆転勝利を導く2ゴールと大活躍しているフランスは日曜日に、今一番注目を集めているアイスランドと戦うことに。何せ、スペイン敗退で応援するチームがなくなってしまった私ですからね。あとはまだユーロに残っているマドリッドのチームの選手たちの頑張りに期待するしかないんですよ。
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