【原ゆみこのマドリッド】緊張感が高まってきた…

2016.06.27 22:28 Mon
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▽「やっぱり決勝トーナメントは過酷よね」そんな風に私が呟いていたのは日曜日、前日のベスト16のポルトガル戦で延長戦残り3分にゴールを決められ、敗退が決まったクロアチアのモドリッチが泣きじゃくっているシーンをニュースで見た時のことでした。いやあ、戦前にグループリーグを3分けで突破したポルトガルのフェルナンド・サントス監督が、「全部引き分けでユーロに優勝してもいい」なんて言っていたこともあって、どちらのチームも枠内シュートをまったく撃たないまま、試合が進むにつれ、この試合もスイスvsポーランド戦に倣って、とかく心臓に悪いPK戦に突入かと私も憂鬱になっていたんですけどね。

▽それがまさか、同僚のクリスティアーノ・ロナウドのシュートはGKスバシッチ(モナコ)が弾いたものの、ちょうどいい位置に詰めていたクアレスマ(ベシクタシュ)に頭で押し込まれてしまうとは。いやあ、グループリーグではスペインを破っていた彼らが、こんなに早く帰国となってしまう辺り、さすがノックアウト方式。まあ、試合後にはペペもモドリッチを慰めに来てくれていましたし、レアル・マドリーのジダン監督としては、ウェールズも北アイルランドに勝ち、ドイツもスロバキアに勝ったため、ベイルとクロースがまだこの先、フランスに滞在しないといけないため、せめてスペイン戦は負傷欠場したモドリッチとコバチッチだけでも早く帰って来てくれるのは嬉しいかもしれません。

▽え、それを言ったら、アトレティコのシメオネ監督も、こちらはプレシーズン開始が7月7日と妙に早いため、もちろんユーロやコパ・アメリカの決勝トーナメントまで進んだ選手たちはロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)での地獄のキャンプには参加できなくても、他のメンバーたちとあまり体力差をつけないため、いつまでの代表に拘束されているのは困るじゃないかって?
▽うーん、こちらについては先日、クロアチア代表の合宿中にメディカルチェックを済ませた右SB、ヴルサリコ(サッスオーロ)が早めの入団プレゼンとなるかもしれませんが、日曜にはアイルランド戦でグリースマンが大活躍。「アトレティコで1-0の試合は慣れているから」と、前半2分からポグバの与えたPKで敵にリードされていたのを後半13分、まずはヘッドで同点に。更にその3分後にも勝ち越しゴールを挙げて、フランスを勝利に導いてしまったから、感心したの何のって。

▽ちょうど彼は先週、アトレティコとの契約を2021年まで延長し、破棄金額もオブラクと並んで1億ユーロ(約113億円)となって、そのお祝いもあったのかもしれませんけどね。実際、もうすでにサインしていていいフェルナンド・トーレスとの延長契約も2年目を条件付きのオプションするように内容が変わったとかで、まだ済んでないようですし、もう1人のCF獲得もジエゴ・コスタ(チェルシー)、イグアイン(ナポリ)、カバーニ(PSG)といった大物狙いのため、時間がかかる見込みだとか。だったら、せめてグリースマンだけでも来季も引き続きゴールを期待できるところを披露してくれているのは有難いんですが…いえ、もちろんフランスがイングランドもしくはアイスランドを破って、準決勝でコケとファンフランのいるスペインと当たった場合は別ですけどね。
▽ただ、クロアチアに負けてグループ2位通過となり、決勝トーナメントではいわゆる、lado oscuro(ラードー・オスクーロ/ダークサイド)に落ちてしまったスペインにとって、準々決勝も相手はドイツとなってしまったため、準決勝云々は捕らぬ狸の皮算用もいいところで、まずは月曜のベスト16、イタリアに勝つことができるのかどうか。いやあ、グループリーグ3節が火曜だったため、体力回復には中5日と十分、時間があった彼らなんですけどね。その間、大西洋に浮かぶイル・ド・レ(レ島)でじっくり練習もできましたし、現在、チームにはケガ人もおらず。

▽おまけにイタリアにはあとイエローカード1枚で出場停止となる選手が10人もいるのに比べ、スペインにはセルヒオ・ラモスしかいないため、厳しい接触プレーとかでは有利になるかもしれないんですが、ちょっと気になるのはサンドニのスタッド・ド・フランスで行われる試合ではアウェイチーム扱いの彼らが白い第2ユニフォームを着用するということ。というのもどうやら、この色、スペインにとってはあまりゲンが良くないようで、1994年のW杯では準々決勝のイタリア戦で敗退、2994年ユーロでもグループリーグ最終戦でポルトガルに負けて敗退、2014年のW杯に至っては初戦のオランダ戦で1-5と大敗を喫しているという、いわくつきだったから。

▽まあ、色に関しては縁起が悪いぐらいで気にしなければいいんですが、それだけで済ませられない事実もあって、何とそのオランダ戦、次のチリ戦とW杯のグループリーグで2連敗した試合ではどちらのチームも5人DF制を敷いていたのだとか。そう、このユーロのコンテ監督率いるイタリアと同じです。しかもその核となる3人のCBボヌッチ、バルザーリ、キエッリーニ、いわゆるBBCとGKブッフォンはユベントスでずっと一緒にプレーしている仲に加えて、スペインのここまで3試合、ずっとCFを務めているモラタはこの2年間、彼らのお世話になっていたとなれば、もう欠点とか、バレバレじゃない?

▽おかげでここ数日、インタビューの受けまくりだったモラタも「Me han dicho que me ponga un casco para jugar contra ellos/メ・アン・ディッチョー・ケ・メ・ポンガ・ウン・カスコ・パラ・フガール・コントラ・エジョス(彼らと試合する時はヘルメットをかぶるようにって言われたよ)」なんて、冗談めかして話していた程なんですが、実際、別に彼がレアル・マドリーに戻ることが決まったからではないでしょうけど、バルザーリも「ピッチに友だちはいない」と断言していましたししね。ちなみにモラタによると、「3人のボスはボヌッチで、バルザーリは質の高さ、キエッリーニは強さが美点」なんだそうですが、ついでに彼らの弱点も見つけていることを祈るばかりです。

▽え、そう言ったって、イタリアにもスペインに苦手意識があるんじゃないかって?そうですね、最近のことを考えると、2008年ユーロの準々決勝でのPK戦に始まり、2013年のコンフェデ杯準決勝でもPK戦で勝利、それどころか、2012年ユーロ決勝などでは4-0で圧勝していますからね。そう思うと相手もそれ程、強気にはなれないかと思いますが、こればっかりは何とも。

▽そんなスペインにとって朗報なのはイタリアのcarrilero(カリレーロ/ウィングを兼ねたSB)の1人であるカンドレーバ(ラツィオ)のケガが治らず、相手のDF陣がベストメンバーを組めないことぐらいですが、クロアチア戦で負けたにも関わらず、当面のところ、デル・ボスケ監督にはスタメンをいじる予定はないよう。ええ、ペリシッチ(インテル)に決められた2点目のゴール時に自身のニアポストを守れなかったことに対し、批判を浴びたGKデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)もそのまま続投するようです。

▽ちなみにここ数日、スポーツ紙のコラムなどを読んでいると、イタリアは闘争心の強いチームだから、アトレティコでそういう試合に慣れているコケを入れたいいのではなんていう意見もチラホラ。うーん、でも当人は「ボクはユース代表とアトレティコで育ってきたから、tengo esas dos filosofías asimiladas/テンゴ・エサス・ドス・フィロソフィアス・アシミラーダス(2つのサッカー哲学を習得しているよ)」とは言っているものの、大人の代表のティキタカ(短いパスを繋ぐバルサ風サッカーのこと)に合わせるのはかなり難易度が高いですからね。

▽とりあえず、月曜午後6時(日本時間翌午前1時)からの試合では、グループリーグのトルコ戦では相手を圧倒した選手たちを信頼しかありませんが…何となく、またゴールがあまり入らないゲームになりそうな。そうそう、元々、成功率の低いスペインですから、普通のPKでの得点はあまり期待していないんですが、きっとPK戦になったら、CLバイエルン戦で天高く撃ち上げた後、夏のユーロではパネンカ風のキックを決めたセルヒオ・ラモスは、きっと名誉挽回してくれると思いますよ。

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