【原ゆみこのマドリッド】いいスタートが切れるといいけど…

2016.06.13 20:24 Mon
Getty Images
▽「早く帰って来てくれるのは嬉しいわね」そんな風に私が頷いていたのは土曜日。アトレティコのゴディンとヒメネスのCBコンビがすでにコパ・アメリカ・グループリーグでお役御免が決まり、プレシーズン練習を開始する7月6日からチームに参加。恒例のロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)での地獄のキャンプでしっかり励んで、来季を乗り切る体力作りができることがわかった時のことでした。フィリペ・ルイスもお隣さんのカゼミロと一緒に参加しているブラジルが敗れたことで早めの復帰。一方でアウグストとクラネビネテルがいるアルゼンチンなどは順当に決勝トーナメントに進んで、アメリカ滞在が長引きそうなんですけどね。

▽ただし、レアル・マドリーはプレシーズン開始が7月15日でアトレティコより1週間程遅め。となると、最初の2試合では活躍しながら、3戦目は控えスタートとなったコロンビアのハメス・ロドリゲスも、グループリーグを2位通過したとはいえ早期敗退となれば、2人揃って初日からジダン監督との再会が叶うかも。

▽え、プレシーズンのことはともかく、ルイス・スアレスがアップしたのも空しく出場できずにベンチで怒り狂っている間に0-1で負けてしまったウルグアイが、2連敗で大会敗退というのは、どこかの黒歴史を思い出さないかって? その通りで、そんな恥ずかしい真似をしたのは2014年のスペイン代表です。国際主要トーナメント3連覇の威を借りて、優勝候補として乗り込んだブラジルでのワールドカップで、まずオランダに大敗。続くチリにも負けて、早々に敗退が決まった時には、2004年にイニャキ・サエス監督の下でグループリーグ敗退をしたユーロ以来となる、深い虚無感に私も襲われたものでしたっけ。
▽逆にスイスとの初戦を落とした2010年ワールドカップでは、その後の快進撃で優勝を掴んだだけに、その大会のオランダとの決勝延長戦でトロフィーを引き寄せるゴールを決めたイニエスタ(バルサ)など、「もちろん初戦に勝たないと、その先焦燥感に襲われるけど、de nada serviría ganar el primer partido y fallar en los otros dos/デ・ナーダ・セルビリア・ガナール・エル・プリメール・パルティードー・イ・ファジャール・エン・ロス・ドス(最初の試合に勝っても次の2試合に負けたら、何にもならない)」と、どっちがいいとも言えないようなコメントをしていんですけどね。

▽とはいえ、最初に2つ勝ってしまえば、3試合目にはデル・ボスケ監督のベストイレブンに入れなかった選手たちにも大会を経験させてあげることができますし、何より代表の黄金時代には招集されておらず、CL決勝に2度も負けて、最高峰のタイトルとまだ縁がなく、「Es cierto que no juego al nivel del Atlético, que es otro fútbol/エス・シエルトー・ケ・ノー・フエゴ・アル・ニベル・デル・アトレティコ、ケ・エス・オトロ・フトボル(確かに代表ではアトレティコとは同じレベルでプレーしていない。別のサッカーだからね)」というコケや、ミラノでのPK失敗のリベンジをしたいファンフランに、2年前と同じ思いで帰国してはもらいたくないかと。
▽え、そんな時に限って、逆境の風が吹くのは少々、アトレティコ的じゃないかって? その通りで、いよいよユーロが開幕を迎えた先週金曜日になって、とんでもないスキャンダル禍がスペイン代表を襲うとは一体、誰が想像できたでしょう…。それは、まさに元アトレティコのデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)に関してで、ポルノ制作会社に関する捜査により、当局に証人として保護された女性から、未成年だった2012年のU21代表期間中にアスレティックのムニアインと強制的に関係を持たされたという事件が発覚。

▽その手配をしたのが、各年代の代表でずっと一緒で仲の良いデ・ヘアだったとかで、その女性との『What's App』での会話が残っているそうなんですが、その現場となったマドリッドの一流ホテルの部屋には彼自身はいなかったものの、他にイスコだったか、ムニアインのアスレティックのチームメイトだったかもいたとか、いなかったとか…。

▽外聞の悪い話であることは確かですし、何よりデ・ヘアは代表にいて、ムニアインはバケーションを満喫中だったため、世間の注目はとにかく前者に集まることに。いやあ、その大事ぶりには本人も驚いたんでしょうね。代理人のホルヘ・メンデス氏とも相談して、その日、当人は順番でなかったにも関わらず、夕方の練習前、アドゥリス(アスレティック)とベジェリン(アーセナル)が記者会見に出た後、急遽、1人で記者たちの前に立つことに。もちろん「Es todo falso, sé lo que he hecho con mi vida/エス・トードー・ファルソ、セ・ロ・ケ・エ・エッチョー・コン・ミ・ビダ(全部ウソだ。人生で自分がしてきたことはわかっているよ)」と全面否定していましたが、やはりチームメイトたちも心配だったんでしょう。

▽ピケとジョルディ・アルバのバルサコンビが陰から様子を伺っている映像が届いていましたが、この騒動の影響がスペインのプレーに出ないといいのですが…。ちなみにこのスキャンダルが広まった後、マルカ(スポーツ紙)の誰をユーロでの正GKに選ぶかのウェブアンケートでデ・ヘアの支持率は72%から54%に低下。ただ、その先発を決めるデル・ボスケ監督は、「もし選手のパフォーマンスが低下するようなら、手段を講じないといけないが、そうでないのなら、actuaremos como lo íbamos a hacer sin ningún problema/アクトゥアレモス・コモ・ロ・イバモス・ア・アセール・シン・イングン・プロブレマ(問題なく、予定通りの起用をするだろう)」と、先発GKについて明言を避けていましたけどね。

▽逆にこれが原因となって、カシージャスにまた主役の座が回ってくるようになれば、2002年にマドリーが優勝したCL決勝ではセサルのケガでピッチに入ることができたり、同年のワールドカップ日韓共催大会ではカニサレスの負傷でスペインの正GKの座が回ってきたりという、彼のラッキー神話が増えることになるんですが…。こればっかりはねえ。他の先発予想はフアンフラン、ピケ、セルヒオ・ラモス(マドリー)、ジョルディ・アルバ、ブスケツ(バルサ)、セスク(チェルシー)、イニエスタ、シルバ(マンチェスター・シティ)、モラタ(ユベントス)といった感じなんですが、敵のチェコの選手で、ビクトリア・プルゼニュでアトレティコやバルサと過去のヨーロッパの大会で対戦した経験を持つコラージュが、「スペイン代表と戦う方がバルサと戦うよりたやすい」とうそぶいていたものの、MSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの頭文字)がいないだけで十分、今回もバルサ色は結構、強くない?

▽そんなスペインvsチェコ戦は月曜日午後3時(日本時間午後10時)からと、午後9時キックオフの木曜日のトルコ戦、来週火曜日のクロアチア戦と違って、日本のファンにも見やすい時間帯になっているため、是非、応援してもらいたいかと思いますが、ちなみにここまでのユーロでマドリッドのクラブの選手たちの活躍ぶりを見てみると、どうしてもマドリー勢に目を引かれることに。ええ、開幕戦に先発をしたフランスのグリーズマンがまだCL決勝での敗戦を引きずっているのか、今イチ覇気がなかったのに比べ、2日目のウェールズvsスロバキアではベイルがFKで先制点を決めて、チームの2-1での勝利に貢献。

▽3日目にはモドリッチがこちらも圧巻のvolea(ボレア/ボレーシュート)でクロアチアの決勝点を挙げ、トルコに0-1で勝ったかと思いきや、クロースもウクライナ戦でムスタフィ(バレンシア)のヘッドでの先制点をFKからアシストして、ドイツを2-0の勝利に導いていますからねえ。あとはスペインと同じ月曜日、マドリーとのCL決勝でのケガがようやく治ったらしいカラスコのいるベルギーがイタリアと対戦、火曜日にはいよいよ大御所、クリスチアーノ・ロナウドがペペと一緒にポルトガルのユニフォームを着て、アイスランドとの初戦に臨みますが、そこまでは大会もまだ序の口。何だかんだと真剣味が増してくるのは2戦目以降になるかと思いますが、やっぱりワールドカップ並に24カ国参加のグループリーグとなると、どうにも決勝トーナメントまでが長く感じられるのは仕方ないですかね。

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly