【原ゆみこのマドリッド】シーズン中より試合が多くなる…

2016.06.04 14:38 Sat
Getty Images
▽「もう始まるんだ」そんな風に私が驚いていたのは金曜日。スペイン1部チームの今季がCL決勝で幕を閉じて以来――いえ、ちょっと現実逃避の意味合いもあったんですけどね。10日から始まるユーロについてばかり、あれこれ考えていたせいで、その日の深夜からコパ・アメリカがスタートするのを忘れていたことに気がついた時のことでした。うーん、どちらにしろ、新聞の日程表を見た限り、ヨーロッパでは一番早い試合で午後11時から。しかもウチにはない有料チャンネルでの中継ばかりとなれば、そんな時間に流してくれるバル(スペインの喫茶店兼バー)だって、中南米から働きに来ている人々が集まる一部のお店に限られてしまうでしょうしね。

▽となると、私にはニュースでサマリーを見ることぐらいしかできそうにありませんが、開幕戦のアメリカvsコロンビアには、CL決勝でも出番がなく、この夏の移籍を希望していると報じられていたハメス・ロドリゲスが出ると聞けば、やっぱり見てみたい気もするかも…。ちなみにレアル・マドリーの選手では、ミラノではしっかりゴールを守っていたケイロル・ナバスがシーズン中、ずっと悩まされていたアキレス腱の故障を手術で治すため、コスタリカ代表に参加せず。マルセロは折り合いの悪いドゥンガ監督に呼ばれず、あとはブラジル代表のカゼミロに注目すればいいだけなんですが…。木曜日にはもう、フィリペ・ルイスがロサンゼルスでの合宿で彼と並んで走り込みをしていた姿には、心の痛んだアトレティコファンもいたのでは?

▽それだけでなく、アトレティコ勢はヒメネスを伴ったゴディンがこの夏の加入を熱心に勧誘しているというカバーニ(PSG)と共に出場するウルグアイや、脱税容疑の裁判のため、水曜日にバルセロナへととんぼ帰りしていたメッシ擁するアルゼンチンにもアウグストがいますからね。ブラジルのネイマール同様、コレア、ビエット、クラネビテルの若手アルゼンチン人3人組はリオデジャネイロ五輪の方に出るため、そちらも試合を見てみたい気はするものの、やっぱりネックは時間…。そう考えると、日本で眠い目をこすりながら、深夜早朝にリーガやCLを生放送で見ているファンは凄い根性があると思ってしまったんですが…。
▽まあ、コパ・アメリカに関しては面白い話があったら、おいおい伝えていくことにします。そして、こちらもだんだん開幕が近づいてきたユーロに出場するスペイン代表が今週、何をやっていたのかというと…。日曜日にボスニア・ヘルツェゴビナとの親善試合に3-2で勝った後、再びキャンプ地のオーストリア、アルプスの麓にあるシュルンス村に戻った彼らでしたが、火曜日にはザルツブルクで親善試合の第2弾を実施。いやあ、午後4時半キックオフという、不思議な時間帯だったせいでしょうかね。会場のレッドブル・アレナがU21代表の試合でも稀というぐらいのガラガラぶりだったのにビックリさせられたんですが、後で聞くと、クアトロ(スペインの民放)の生中継もレギュラー娯楽番組に劣る視聴率だったって、もしや2年前のワールドカップの大失態のせいで、スペイン代表の人気が国内外で落ちている?

▽それはともかく、サポートメンバーが引き上げ、代わりにバルサを中心とした本大会用メンバーが合流したその日の彼らはかなり強くて…。いえ、相手は韓国でしたからね。ヨーロッパの一流チームを相手にするのとはまったく違うんですが、敵の抵抗が持ったのは30分まで。シルバ(マンチェスター・シティ)がFKをゴール右上ギリギリに直接決めて、口火を切ったかと思いきや、その1分後にはモラタ(ユベントス)GKキム・ジンヒョンのミスを誘い、セスク(チェルシー)が2点目をゲット。更に37分にはアスピリクエタ(チェルシー)のラストパスをノリート(セルタ)が撃ち込んで、あっという間に3-0になってしまったから、景気がいいったらないじゃないですか。
▽後半、イニエスタ(バルサ)やシルバ、セスク、アスピリクエタが下がり、ペドロ(チェルシー)、チアゴ・アルカンタラ(バイエルン)、ブスケッツ、ジョルディ・アルバ(バルサ)が入ってからもスペインは手を緩めず、49分にはチアゴのCKをモラタが頭で決めて4点目。53分にもサポートグループからの唯一の生き残り組、ベジェリン(アーセナル)がエリア内奥からパスを出してノリートが自身2点目を挙げます。ちなみに彼は1戦目のボスニア・ヘルツェゴビナ戦でも2点を決めていて、この調子なら本大会でもゴール不足に悩まされることはなさそうと、私も小躍りしていたんですけどね。デル・ボスケ監督は更に貪欲。ピケ(バルサ)の代わりにアドゥリス(アスレティック)を入れ、緊急事態に備えてボランチのブルーノ(ビジャレアル)をCBで試すのと同時に、モラタとのCF2人体制までシミュレーションとはまったく用意のいいことです。

▽ただ、5点を取って安心したか、82分にはチュ・セジュンのシュートがブルーノに当たってゴールを破り、残り15分でカシージャス(ポルト)と交代。夢の代表デビューを果たしたセルヒオ・リコ(セビージャ)は無失点では終われなったんですが、大丈夫。88分にはアドゥリスがエリア前から送ったスルーパスをモラタが粘って、角度のないところからシュート。チームの6点目、自身のdoblete(ドブレテ/2得点のこと)を奪ってくれたとなれば、文句をつける気にもなりませんって。

▽いやあ、イタリアでのシーズンが終わってからは、古巣のマドリーが買い戻しオプションを行使するかもしれないという噂が流れ、当人も落ち着かなかったはずなんですけどね。おかげで彼自身も「Mi deseo es jugar y triunfar en el Madrid/ミ・デセオ・エス・フガール・イ・トリウンファル・エン・エル・マドリッド(ボクの望みはマドリーでプレーして成功すること)」と、かなりその気になっていたようですが、日が経つにつれ、話はBBC(ベイル、ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)を手放すつもりのないマドリーは選手の高値転売を狙っているという展開に。

▽実際、ウンデシマ(11回目のCL優勝のこと)の祝賀行事の後、トリノ旅行に行っていたジダン監督は「ユベントスは放出したがらないんじゃないかな」とあまり乗り気ではないようでしたし、ロナウドに至っては「Me voy a retirar en el Madrid con más de 40 años/メ・ボイ・ア・レティラール・エン・エル・マドリッド・コン・マス・デ・クアレンタ・アーニョス(自分は40歳以上で、マドリーで引退する)」なんて宣言しているとなれば、ここはモラタも達観して、今は目の前のユーロに集中するしかありません。

▽え、それでもマドリーにいた頃よりモラタはずっとしっかりしてきたようだし、こんな強いスペインを見れば、ファンも3連覇を期待していいんじゃないかって? いやあ、試合後のデル・ボスケ監督は「Somos favoritos en la Eurocopa/ソモス・ファボリートス・エン・ラ・エウロコパ(ウチはユーロの優勝候補)」と自信を持っていたようでしたし、1977年から1985年まで一緒にマドリーでプレーした韓国のウリ・シュティールケ監督も「No hay un equipo en Europa al nivel técnico de España/ノー・アイ・ウン・エキポ・エン・ヨーロッパ・アル・ニベル・テクニコ・デ・エスパーニャ(ヨーロッパにはスペインのレベルのテクニックを持ったチームはいない)」とベタ褒めしていましたけどね。「No esperaba que la diferencia fuera tanta/ノー・エスペラバ・ケ・ラ・ディフェレンシア・フエラ・タンタ(あれ程、差があるとは思わなかった)」(シュティールケ監督)という相手では、まだまだ今回のスペインの実力を計る参考にはならないかと。

▽とはいえ、その日のうちに帰国したチームは2日間の休養日を取って、CL決勝に出ていたセルヒオ・ラモス、ルーカス・バスケス(マドリー)、コケ、ファンフラン(アトレティコ)らが土曜日にラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設で合流した後、残る親善試合は来週火曜日、ヘタフェのコリセウム・アルフォンソ・ペレスでやるジョージア戦のみ。カード的にこれもあまりアテにはなりませんが、楽しみなのは今大会でとうとう、カシージャスから正GKの座を奪うことになるだろうと言われているデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)の成長ぶりをこの目で見られることでしょうか。

▽それ以外、チェコとのグループリーグ初戦でお目見えする先発組などは、その試合の翌日に向かう、フランスでのベースキャンプ地、イル・ド・レ(レ島、パリから3時間の大西洋に面したリゾート)での練習ではっきりしていくんだと思いますが、スペインの公式戦を見るにはどれだけ待ったらいいんだと嘆くことはありませんよ。ユーロは来週金曜日にスタート、開幕戦のフランスvsルーマニアではグリーズマンがCL決勝での失意を乗り越えられたかどうかを確かめられますし、土曜日にはウェールズvsスロバキアでベイルが登場。日曜日はクロースのドイツがウクライナに挑み、モドリッチとコバチッチのクロアチアもトルコと対戦します。

▽いえ、サン・シーロでの同点ゴールでSNSのフォロワー数が急上昇したというカラスコや、今では懐かしいGKクルトワのいるベルギーを見るのもスペイン同様、13日の月曜日まで待たされますけどね。それどころか、スペイン勢と歩調を揃え、イビサ島(地中海にあるリゾート地)でビーチを満喫しながら、プライベートのトレーナーと走り込みなどをしていたロナウド、決勝のPK戦時には泣いてしまったとマルカ(スポーツ紙)のインタビューで告白していたペペがこの土曜日に合流するポルトガルなど、その翌日の火曜日が初戦のアイスランド戦だったりしますが、おやおや。これじゃ、大会が始まったら、見たい試合のない日がないじゃないですか。

▽え、でもユーロにもコパ・アメリカにも行かない選手たちはすでにバケーション三昧なんだろうって? そうですね、代表チームメートへの恐喝事件関与の件で訴えられ、フランス代表に呼ばれなかったベンゼマなどは、水曜日に「デシャン監督は国内の人種差別主義者たちからのプレッシャーに屈した」と発言したインタビューが大きな物議を醸し、フランスの政治家やサッカー関係者から大反撃を浴びていましたけどね。デシャン監督自身は「この件に関して言うことはない」とコメントを控えたものの、私が頷いてしまったのは、元フランス代表でバルサでもプレーしたテュラムの意見。

▽曰く、「ベンゼマはそういう理屈で責任を回避しようとしている。招集されなかったのはヴァルブエナとのことがあったからで、それを忘れてはならない。フランスの社会に人種差別は存在するが、彼にはもっとできることがあったはず。キャプテンになれていたら素晴らしかっただろうが、そのためには一切、非難されないように振る舞うことが必要だった」というのですが、まあ、これが正論というものでしょう。

▽おまけに夏休みに入っても当人が毎日、トレーニングに励んでいるところをインスタグラムやツィッターにアップしてくるのも、何となく、「絶好調で最高のシーズンを送った自分を呼ばないフランス代表は後悔するに違いない」というメッセージを送っているような気がして、あまりいい感じはしませんが、こればっかはねえ。早いところ、恐喝裁判の決着がついて、次のワールドカップ予選には呼んでもらえるといいですね。

▽一方、ユーロに行かないアトレティコの選手では悲劇のCL決勝後、初めてフェルナンド・トーレスがマクドナルドの商業イベントでマスコミの前に姿を現し、注目を浴びていたんですが、思いの他、当人が前向きだったのが印象に残ることに。ええ、「2度も負けるのは失敗。今は考えるべき時」と心情を吐露した後、妊娠初期の彼女と一緒にマイアミでバケーション、水曜日にはビセンテ・カルデロン前に3000人のファンが集まり、「Cholo quedate!/チョロ・ケダテ(チョロ、チームに残って)」と大合唱したにも関わらず、何の音沙汰もないシメオネ監督とは違い、「戦って、心の底からのプレーをして、ピッチで全力を尽くすことは、para mí nunca será un fracaso/パラ・ミー・ヌンカ・セラ・ウン・フラカソ(自分にとって、決して失敗ではない)」のだとか。

▽続けて、「過去は過去。敗戦から学んで立ち上がり、次に向けて戦い続けるだけだ。ボクはそれをこのクラブに教わった。あれは自分の人生、最大の試合だったけど、いい結果が出なかったから、buscaré la ocasión de volver a jugar el partido de mi vida/ブルカレ・ラ・オカシオン・デ・ボルベル・ア・フガール・エル・パルティードー・デ・ミ・ビダ(また人生、最大の試合をプレーできる機会を探すよ)」と、32歳の彼に誓われては、アトレティコファンだって、性懲りもなく、また期待するしかないじゃないですか。

▽そんなトーレスはユーロ行きが確実視されていたにも関わらず、CL決勝後、最終メンバーから落とされて、ダブルショックとなったサウールについても、「Hablé con él, le dije que descansara/アブレ・コン・エル、レ・ディヘ・ケ・デスカンサラ(彼と話して、休むように言ったよ)。来季のアトレティコが必要としているからってね」と後輩のフォローを怠っていませんでしたが、何せ、あちらはまだ21歳ですからね。早速、実家のあるエルチェ(スペイン南部)に帰って、お兄さんのジョナタン(コペル)、アーロン(ブラガ)と仲良く一緒に夏の子供向けサッカースクールのプロモーションなどしていたため、多分、大丈夫なんじゃないかと。

▽対照的に同じ憂き目に遭ったマドリーのイスコからはサンティアゴ・ベルナベウでの祝賀イベント以来、何のコメント発信もないため、落ち込んでいるんじゃないかと心配ですが、ジダン監督は「Isco no se mueve del Real Madrid/イスコ・ノー・セ・ムエベ・デル・レアル・マドリッド(イスコはマドリーから動かない)」と断言してくれましたしね。この夏はゆっくりTVでスペインの試合を見て、来季のリベンジを目指したらと思います。

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly