【原ゆみこのマドリッド】今度は違う結末がいい…

2016.05.28 15:30 Sat
▽「戸惑う気持ちはわかるわね」そんな風に私が頷いていたのは金曜日、ラス・ロサス(マドリッド近郊)での3日間の練習を終えたスペイン代表がオーストリアのシュルンスに移動、地元民が見守る中、セッションを行っているのをお昼のニュースで見た時のことでした。いやあ、たとえフランスのユーロ大会に行けるかもしれないメンバーはまだ8人しか来ていなくても一応、3連覇の偉業を目指しての新チームの門出。近頃は午後7時といってもまだ昼間のように明るいのも手伝って、私も水曜にはセッションを見学に行ってきたんですけどね。

▽セルクやペドロ(チェルシー)、シルバ(マンチェスター・シティ)といったところはともかく、さすがにメレ(スポルティング)やオジャルサバル(レアル・ソシエダ)、フォルナルス(マラガ)ら、meritorios(メリトリオス/サポートメンバーのこと)の顔まで見分けるのは正直、不可能なこと。普段よりは断然、少なかったんですが、スペイン・サッカー協会施設のスタンドにいた大人のファンたちですら、「どうしてイニエスタやピケがいないんだ?」、「カシージャスでもないし、デ・ヘアでもない。あのGKたちは誰だろう(ビジャレアルのアセンホとエスパニョールのパウだった)」といった具合に首を傾げているとなれば、2008年のユーロと2010年のワールドカップ前の合宿で有名選手たちを見慣れていたシュルンスの人々が、ややすかされた気分になるのも理解できたから。

▽それでも水曜の練習の後は、おそらく第1陣の中では一番の多数派だったからですかね。アドゥリスを始め、ウィリアムス、サン・ホセら、アスレティックの選手たちがスタンドまで寄ってきてファンサービス。うーん、この土曜にコパ・デル・レイ決勝を先週末に戦ったバルサ陣(イニエスタ、ピケ、ジョルディ・アルバ、ブスケツ、バルトラ)、同様にイングランド(デ・ヘア)やドイツ(チアゴ・アルカンタラ)、イタリア(モラタ)、ポルトガル(カシージャス)でカップ戦決勝を戦ったメンバーらが合流したら、彼らをコールしてくれるファンの数も減ってしまうでしょうからね。ましてやオーストリアでのボスニア・ヘルツェゴビナ戦、韓国戦を終えた後、CL決勝をプレーするレアル・マドリー、アトレティコからの招集選手が加わっての6月4日からの合宿最終フェーズに入れば、お手伝い要員はお役目御免。となれば、将来のため、今のうちにスペインA代表の人気を味わっておくのも悪くはないかもしれませんね。
▽え、ユーロは6月10日まで開幕しないし、スペインのグループリーグ初戦は13日のチェコ戦なんだから、今は土曜に迫ったCL決勝の話が聞きたいって?そうですね、先週土曜にオープンメディアデーを大なったアトレティコに続いて、今週は火曜にお隣さんがバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場で同じイベントを実施。こちらは記者会見で話したのはジダン監督とペペだけで、セッション後、施設のベランダにミックスゾーンを作って、選手が何人も場所を移動しながら喋っていくという方式だったため、立って聞いているこちらはかなり疲れたんですが、何度も何度も同じことを訊かれる選手たちも大変だったかと。

▽そんな中、一番の注目を浴びていたのはやはりクリスチアーノ・ロナウドで、いえ、その日のセッションの終盤に当人がGKカシージャと交錯、どこか痛めたのか、早退してしまったせいもあったんですけどね。自分でも「un bocadillo/ウン・ボカディージョ(スペイン風サンドイッチのことだが、打撲の意味もある)」と言っていたように大したことはなかったのか、試合出場には何の問題もないとのこと。何せ、2年前のリスボンでの決勝の時はシーズン終盤からヒザを痛めていたせいで、その後のワールドカップにまで悪影響がありましたからね。今季の決勝を故障のない状態で迎えられるのは、ファンにとっても心強いことじゃないでしょうか。
▽そんな彼だけが、ジダン監督を始め、他の選手たちが否定していたにも関わらず、「Perder la final seria un fracaso, pero vamos a ganar../ペルデル・ラ・フィナル・セリア・ウン・フラカソ、ペロ・バモス・ア・ガナール(決勝に負けるのは失敗、でもウチは勝つよ)」と言っていたのが印象に残ったんですが、自信家という点では「どのポジションをとってもレアル・マドリーの方が上」と断言していたベイルもなかなかのもの。

▽ええ、メディアデー終了の後、ガイドツアーに参加して見学したカンテラ(下部組織)の合宿所でも置いてあるTVの全てで映っていた2年前のリスボンでの決勝ではつい、後半ロスタイムに決まったセルヒオ・ラモスの起死回生の同点ヘッドへ目が行ってしまうんですけどね。延長戦で勝ち越し点を挙げたのはこのベイル。しかも今回の会場のサン・シーロではトッテナム時代、インテル相手に世間を唖然とさせたハットトリックを決めているとなれば、楽観的なのも当然だった?

▽あとはケイロル・ナバスやルーカス・バスケス、クロース、カセミロ、マルセロといったところが次々と抱負を語っていたんですが、やっぱり決戦までリーガ終了から2週間空いているだけあって、どの選手も早く試合をしたがっていたような。そこから水木と、更にバルデベバスで練習を続けた彼らは金曜になってようやくミラノへ移動。一時筋肉痛だったハメス・ロドリゲスも回復したようで、結局、試合に出られないのは先週土曜のミニゲームで肉離れを起こしたバランだけだとか。実際、気の毒なことに彼はフランス代表メンバーからも外れることになり、この夏はベンゼマと共に自国開催のユーロを自宅で応援することになっています。

▽一方、その間、アトレティコはどうしていたのかというと。いやあ、こちらはやっぱり飽きっぽい選手が多いんですかね。シメオネ監督が週末のミラノ視察から帰って来た後、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でセッションをしたのは月曜だけで、火曜はビセンテ・カルデロンに河岸を変えて秘密特訓&決起ランチ。水曜はポスエロ(マドリッド近郊)にあるリーボック・スポーツ・クラブでジムとスパ三昧しているし、木曜にはまたスタジアムでの非公開練習をしてから、まだ試合前々日というのにミラノへ行ってしまったとなれば、決勝は行けなくても練習の応援に行ってチームを励ましたいと思っていたファンはちょっと寂しかったかも。

▽え、その辺は迷信深いシメオネ監督が2年前と同じことを繰り返さないことに固執しているせいだからじゃないのかって?そうですね、2014年はリーガ優勝が決まった後、地獄のプレシーズンキャンプで使うロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)にチームを連れて行って、数日合宿してから、前日に現地移動したんですが、今回はそれはなし。更にミラノ行きにも先日、セビージャが3連覇を果たしたヨーロッパリーグ決勝でバーゼルに飛んだ際にチャーター、更にリーガ最終節にグラナダで優勝を決めたバルサも乗っていた飛行機をわざわざ使っているなんていうのは結構、マニアックな感がしなくなくもありません。

▽いえ、シメオネ監督自身は金曜の試合前記者会見で、「Subestiman nuestro trabajo opinando de esa manera/スブエスティマン・ヌエストロ・トラバッホ・オピナンドー・デ・エサ・マネラ(そういう意見はウチの仕事ぶりを見下すもの)」と反論していましたけどね。実際、試合に勝つには運も必要となれば、用心に越したことはない?ちなみにこの日も彼がマドリーの選手で警戒していたのはカセミロで、曰く「La presencia de Casemiro les hace mas peligrosos a la contra/ラ・プレセンシア・デ・カセミロ・レス・アセ・マス・ペリグローソス・ア・ラ・コントラ(カセミロの存在はカウンターで彼らをずっと危険にする)」と相変わらず、マドリーが引いて守ってカウンター攻撃でくるという考えを変えてないよう。

▽うーん、ジダン監督も「まずは上手く守ること。特にボールを持っていない時はね。ウチには上手い攻撃ができる武器もあるが、hay que correr, correr, correr, corer/アイ・ケ・コレール、コレール、コレール(とにかく走って走って走らないと)」と言っていたため、シメオネ監督の駆け引きに乗ってあげている感じもしますが、こればっかりはねえ。ただ上司の思惑を実行するのは選手たちなので、「Zidane lleva cinco meses y Simeone cinco anos/ジダン・ジェバ・シンコ・メセス・イ・シメオネ・シンコ・アーニョス(ジダン監督は5カ月、シメオネ監督は5年指揮をしている)。そういう意味ではウチにアドバンテージがあるよ」(コケ)という面もあったりする?

▽そして準決勝の2試合に続き、監督のお供をして会見に挑んだのはキャプテンのガビとフェルナンド・トーレスだったんですが、なかなか真摯に感動できたのは、「Es el partido mas importante, mas especial y mas bonito de mi carrera/エス・エル・パルティードー・マス・インポルタンテ、マス・エスペシアル・イ・マス・ボニートー・デ・ミ・カレラ(これはボクのキャリアにおいて、一番大事で、一番特別で、一番美しい試合)。チェルシーや代表でいくつもビッグタイトルを獲ったけど、5歳からいたクラブでだから、es diferente/エス・ディフェレンテ(違うんだ)」という後者の言葉。

▽そうですよねえ。CL、EL、ユーロにワールドカップと優勝経験は豊富にあるトーレスですが、アトレティコがタイトルを獲得するようになったのは自分が去った後。そう思うと、「eran ninos cuando estaba en el primer equipo/エラン・ニーニョス・クアンドー・エウタバ・エン・エル・プリメール・エキポ(ボクがトップチームにいた頃は子供だった)」という、コケやサウルが羨ましくなったとしても仕方ない?そんな後輩たちは、サウルなど、2年前の決勝ではラージョへのレンタル移籍をしていたシーズンだったため、リスボンまで家族と遥々、車で駆けつけなければならなかったのが、今回はチームメートと一緒に飛行機に乗って行けることになって余裕が出たんですかね。

▽フライト中にクラブのメディアにインタビューされて、「Psicologicamente estamos muy bien y fisicamente todavia mejor/シコロヒカメンテ・エスタモス・ムイ・ビエン・イ・フィシカメンテ・トダビア・メホール(ボクらはメンタル的にとてもいい感じだし、身体的にはもっといい)」と、自分たちの体調がいいことをアピールしていましたが、さあて試合ではどうなることやら。そんな、ここ3年で2度目となるCLマドリーダービーは土曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)キックオフ。ケガ人のいないアトレティコはGKオブラク、ファンフラン、サビッチ、ゴディン、フィリペ・ルイス、アウグスト、ガビ、コケ、サウル、グリースマン、トーレス。マドリーの方はGKナバス、カルバハル、ペペ、ラモス、マルセロ、カセミロ、クロース、モドリッチ、ベイル、ベンゼマ、ロナウドと、どちらもベストメンバーでサン・シーロのピッチで激突することになります。

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