【セリエA総括&ベスト11】超WSの最優秀選手はブッフォン

2016.05.27 12:00 Fri
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▽開幕前は群雄割拠のシーズンになると予想された今季だったが、最終的には王者のユベントスがスクデットを獲得。大きく出遅れたにも関わらず、見事な巻き返しで5連覇の偉業を成し遂げた。

▽結局のところ、3試合を残してスクデットを獲得したユベントスだが、スタートは最悪だった。クラブ史上初の開幕連敗を喫し、一時期は15位に低迷。それでも、第11節のトリノ・ダービーで飾った劇的勝利を皮切りに、15連勝を含む26戦無敗(25勝1分け)という圧巻の成績で戴冠した。無双した王者は、セリエA新記録となる6連覇も夢ではない。

▽一方、ユベントスの驚異的な追い上げに最後まで立ちはだかったのが2位のナポリだ。メンバーを固定した影響もあり、終盤戦でやや調子を落としたが、今季のセリエAで最も魅力的な試合内容を披露。サッリ監督が攻撃陣の豊富なタレントに戦術的な要素をプラスし、欧州屈指のスペクタクルなチームに仕立て上げた。そして、忘れてはならないのがイグアイン。1試合1得点ペースでゴールを量産し、36ゴールで66年ぶりにセリエAのシーズン得点記録を塗り替えた。
▽ユベントスの対抗馬と目されていたローマは、曲がりなりにもCLプレーオフに参戦できる3位で終了した。順調なスタートを切るも11月から不振に陥り、年明けにはガルシア監督を解任。しかし、6年ぶりに戻ってきたスパレッティ監督が見事に復活させた。大黒柱トッティのマネジメントに関して少なからず騒動を起こしたが、試合を経る毎に結果と自信をもたらし、2位まであと一歩のところまで押し上げた。トッティも途中出場で圧巻の存在感を見せ付け、契約延長を勝ち取る予定としている。

▽今季こそ復権を目指したインテルとミランのミラノ勢だったが、結局はどちらも目標に届かなかった。堅守を武器に2015年を首位で終えたインテルだが、年を明けてから失速。得点力不足と試合終盤での失点が相まって取りこぼしが続き、首位から一気に転がり落ちた。4位に終わったため、至上命題だったCL出場権を逃しており、財政的に今夏は主力の売却などメンバーの刷新を迫られるだろう。一方のミランは、インテル以上に不甲斐無いシーズンを過ごして7位で終戦。コッパ・イタリア決勝に進んだものの、ユベントスに敗れて3季連続で欧州カップ戦への出場を逃した。
▽ナポリと同じく魅惑の攻撃的スタイルで前半戦に首位にも立ったフィオレンティーナは、後半戦で急失速。パウロ・ソウザ監督は攻撃時と守備時でシステムを使い分ける興味深い戦い方を披露したが、モチベーションを失い始めた3月以降の11試合でわずか2勝と、苦しい後半戦を過ごした。昨季3位のラツィオは、シーズンを通して低迷。CLプレーオフで敗退すると、そのまま波に乗れずに中位をさまよい、ダービーでの敗戦後にピオリ監督が解任の憂き目に遭った。

▽健闘ぶりが光ったプロヴィンチャでは、6位フィニッシュを果たしたサッスオーロやマラン監督の下でハードワークを続けたキエーボ、ドナドーニ監督が見事に復活させたボローニャあたり。その一方で、昨季の躍進から一転し、モンテッラ体制でも好転しなかったサンプドリア、新フリウリが完成したウディネーゼらが残留争いを強いられた。

▽降格した3チームは、セリエA初挑戦ながら最後まで奮闘したカルピとフロジノーネ、トニが現役引退するヴェローナとなった。ザンパリーニ会長による9度の監督交代というカオスなシーズンを過ごしたパレルモだったが、最終節に残留を勝ち取っている。

【最優秀選手&監督】
★最優秀選手
◆ジャンルイジ・ブッフォン(ユベントス)
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▽圧巻の巻き返しで達成したユベントスの5連覇は、ブッフォンの存在なくして不可能だった。38歳になった今でもトップレベルを維持し、守備陣とともにリーグ最小の20失点にとどめたピッチ内でのパフォーマンスだけでなく、主将として不振に喘いだチームをまとめることに尽力した。とりわけ、0-1で敗れた第10節のサッスオーロ戦後、ロッカルームでチーム全員に渇を入れたことがユベントスにとって今季の分岐点。それ以降、15連勝を含む26戦無敗(25勝1分け)を記録し、そのままスクデット獲得も決めた。また、決して自身の力だけではないとはいえ、個人では元ミランのGKセバスティアーノ・ロッシが保持していたセリエA連続無失点記録を更新し、973分間の新記録を樹立した。今季のあらゆる功績は、プレー面だけでなく、全てに敬意を持って接するその温かい人間性があってのものだろう。

★最優秀監督
◆マッシミリアーノ・アッレグリ(ユベントス)
▽元々、スロースタートの傾向があるアッレグリ監督だが、昨季までの主軸であるテベス、ビダル、ピルロが去り、最悪のスタートを切ったチームを立て直すのは並大抵のことではなかったはずだ。昨夏の移籍市場で念願のトップ下を獲得することができず、自身が好む[4-3-1-2]の布陣が機能しないと見るや、GKブッフォン+3バックの守備ユニットで守備の安定を図れる[3-5-2]を基本システムに採用。マンジュキッチやケディラといった新戦力が徐々にフィットしてからは、一気に連勝街道を走って首位に到達した。ディバラとルガーニという若い才能を適切に管理し、消耗の激しい両ウイングバックを各2人で併用(攻撃的か守備的かも考慮)するなど、的確なマネジメントも光った。また、CLバイエルン戦で見せたように、守備戦術の構築に関しては欧州屈指の才があることを改めて証明。名実ともに、イタリア最高年俸を受け取るに相応しい手腕を見せ付けている。

【期待以上】
★チーム
◆サッスオーロ
▽“イタリア版レスター”とまでは言わないが、サッスオーロが快挙を成し遂げた。3年前に初めてセリエAの舞台に立ったチームは、シーズンを経る毎に着実に進歩。今季は、前半戦で上位陣から軒並み勝ち点を奪うと、後半戦に入っても大きく崩れることなく、一桁順位に位置し続けた。6位フィニッシュを果たし、クラブ史上初の欧州カップ戦への出場権(EL予備予選3回戦からの出場権)を手にした。ビッグクラブに引き抜かれる噂もあったディ・フランチェスコ監督との契約を2019年まで延長しており、継続路線を貫き、優良プロヴィンチャとしての地位を確立したい。

★選手
◆パウロ・ディバラ(ユベントス)
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▽約4000万ユーロで絶対王者に迎え入れられた“宝石”が眩い光を放った。パレルモで見せたストライカーとしての役割だけでなく、ユベントスではライン間でボールを引き出すプレーなどチャンスメーク力も要求された。ただ、持ち前のポテンシャルの高さで完璧に務め上げて攻撃を牽引。同胞の先輩であるテベスの穴を完全に埋め、数字の上でも19ゴール9アシスト(テベスは19ゴール7アシスト)をマークした。22歳のディバラは期待されていたものの、予想以上の活躍を絶対王者で披露した。

【期待外れ】
★チーム
◆ミラン
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▽ミランの凋落が止まらない。ミハイロビッチ監督が率いた今季はシーズンの途中に好調を維持する時期もあったが、結局は主力の負傷離脱に伴いトーンダウン。決定的だったのが、佳境を迎えたシーズン終盤にベルルスコーニ名誉会長の鶴の一声でミハイロビッチ監督を解任し、プリマヴェーラを指揮していたブロッキ監督を昇格させてしまったことだ。名誉会長の意向に従う若手指揮官の下では、[4-3-1-2]のシステムを固執するなど、当然ながらチーム状態が好転することはなく、最終的に7位でフィニッシュ。コッパ・イタリア決勝で敗れ、3季連続の欧州カップ戦出場を逃した。中国企業への身売りが進展している模様だが、来季から“チャイナ・ミラン”として生まれ変わることになるだろうか。

★選手
◆フェリペ・アンデルソン(ラツィオ)
▽昨季に大ブレイクを果たしたブラジルの23歳アタッカーは、2年目のジンクスに阻まれた。新しく10番を背負ったフェリペ・アンデルソンだが、今季は序盤戦から低調なパフォーマンスに終始。徐々にコンディションを上げていった様子だったが、躍進した1年前に比べてチームを勝利に導くプレーが格段に少なかった。エースとしての重圧に耐えられず、以前に挙がっていたビッグクラブ移籍の噂もめっきりなくなってしまった。

【ベストイレブン】
GK:ブッフォン
DF:バルザーリ、ボヌッチ、クリバリ、アレックス・サンドロ
MF:サラー、ナインゴラン、ポグバ、インシーニェ
FW:ディバラ、イグアイン

GK
ジャンルイジ・ブッフォン(ユベントス)
▽抜群の安定感を披露し、強固な守備陣と協力しながらリーグ最小の20失点を記録。守備機会が少ない中でも準備を怠らず、ピンチの場面でも的確にシャットアウトした。セリエA連続無失点の新記録を樹立し、21試合のクリーンシートを達成した。
35試合(先発35)3150分出場

DF
アンドレア・バルザーリ(ユベントス)
▽“ザ・ウォール(壁)”は今季も健在。昨季は負傷に悩まされたものの、今季はほとんど欠場することなく、抜群の安定感でユベントスの堅守を築いた。派手さは全くないが、適切な対応を随所に披露。新米のルガーニの良きお手本にもなった。さらには、4年ぶりにゴールもマークしている。
31試合(先発31)2739分出場
1得点

レオナルド・ボヌッチ(ユベントス)
▽3バックの中央で安定した対応と正確なビルドアップを今季も継続させた。とりわけ、2月に行われたナポリとの天王山で見せたスーパークリアは圧巻。ゴール前に陣取るイグアインへのボールを間一髪で遮断し、単なる守備のワンプレー以上の価値を見せ付けた。
36試合(先発35)3156分出場
3得点

カリドゥ・クリバリ(ナポリ)
▽強靭なフィジカルを有するセネガル代表DFは、サッリ監督の下で緻密な守備戦術を身に着け、もうランランク上のセンターバックに成長した。対人や空中戦、カバーリングなどで見事な対応を続け、好調のナポリを最終ラインから支えた。
33試合(先発32)2888分出場
0得点

アレックス・サンドロ(ユベントス)
▽左ウイングバックや左サイドバックのポジションでエブラと併用される形が多かった中、持ち前の攻撃性能を遺憾なく発揮。左サイドでアップダウンを繰り返し、正確なクロスで幾度もチャンスを演出した。
22試合(先発15)1489分出場
2得点

MF
モハメド・サラー(ローマ)
▽新天地のローマでも抜群のスピードを披露。圧巻の加速力で右サイドを疾走し、ある意味“戦術”として攻撃のキーマンを担った。また、フィニッシュワークの精度も向上し、右45度から左足で放つシュートを武器に14ゴール8アシストを記録。エジプトのスピードスターは、イタリアで着実に進化を遂げている。
34試合(先発32)2735分出場
14得点

ラジャ・ナインゴラン(ローマ)
▽質と量を兼ね備え、10ゴール12アシストをマークしたピャニッチとともにローマの中盤を支えた。激しいタックルでボール奪取を繰り返し、正確な長短のパスや強烈なミドルシュートで攻撃を牽引。スパレッティ監督の下では、より前線に近い位置でもプレーし、チームを救うゴールを奪うなど勝負強さも際立った。
35試合(先発33)2940分出場
6得点

ポール・ポグバ(ユベントス)
▽序盤戦は新しく10番を背負ってもがき苦しんだが、チームの復調とともに本来のパフォーマンスを取り戻した。とりわけ、2016年に入ってからは、5ゴール10アシストの大活躍。持ち前の規格外のプレーと精細かつ優雅なタッチで、ユベントスの5連覇に大きく貢献した。
35試合(先発33)3018分出場
8得点

ロレンツォ・インシーニェ(ナポリ)
▽今季のセリエAを魅了したナポリの中で、持ち前の創造性をまじまじと見せ付けた。とりわけ、左サイドからカットインしながらのシュートやクロスで幾度もチャンスを創出。2月の段階でゴールとアシストの両方で2桁に達した。疲労の影響もあり終盤戦はややパフォーマンスが低下したが、イグアインとともに今季のナポリを象徴する選手となった。
37試合(先発34)2621分出場
12得点

FW
パウロ・ディバラ(ユベントス)
▽ユベントス1年目の22歳が躍動した。左足にボールを吸い付かせながら、鋭いドリブルを随所に披露し、繊細な左足のキックで数多くのゴールやチャンスに関与。テベスのユベントス1年目に比類する19ゴール9アシストをマークし、抜群の存在感を放った。
34試合(先発29)2460分出場
19得点

ゴンサロ・イグアイン(ナポリ)
▽開幕からコンスタントに得点を積み重ねたイグアインは、終盤戦で3試合の出場停止処分を科されながらも、最終的に36ゴールまで到達。グンナー・ノルダール氏が持つセリエA年間得点記録を66年ぶりに更新した。欧州でも指折りのチャンス創出を誇ったナポリの中で最上級のフィニッシュワークを随所に披露。守備の国・イタリアで、ここまで得点を挙げたのは絶賛に値する。
35試合(先発35)2972分出場
36得点

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