【原ゆみこのマドリッド】恐れていた事態が起こった…
2016.05.17 14:00 Tue
▽「こんな時にお祝い風景なんて見たくないわ」。そんな風に私が愚痴っていたのは月曜日、お昼のニュースで前日、バルセロナであったリーガ優勝パレードの模様が延々と流れていた時のことでした。いやあ、その後はヒホン(スペイン北部のビーチリゾート)のエル・モリノン(スポルティングのホーム)でのアベラルド監督の胴上げシーンや大喜びしている選手たちの姿が続いて、それにも十分心が痛かったんですけどね。というのも2015-16シーズンが最終節を迎えた先週末、かなりガックリする思いを味わった自分としては、幸せな人たちを見ているのが何だか、シャクに触ったから。
▽でも仕方ありません。とりあえず、マドリッド勢がどういう結末に終わったのか、順々にお話ししていくことにすると、土曜には遅いランチを兼ねて、レアル・マドリーのデポルティボ戦を見ようとビセンテ・カルデロン近辺のバル(スペインの喫茶店兼バー)に入った私は初っ端から、逆境に直面することに。いえ、優勝争いをしているバルサの試合とは同時開催ですから、一応、席に着く前にカマレロ(ウィエター)に確認は取ったんですけどね。注文をした後、TVに映ったのがロス・カルメネス(グラナダのホーム)だったから、困ったの何のって。ええ、やっぱりスペイン人の言うことは当てになりません。
▽何せ、周囲は次の時間帯に始まるセルタ戦に行く前、ドリンクとお喋りを楽しんでいるアトレティコファンばかりでしたからね。お隣さんを応援していると思われるのを恐れて、私にはチャンネルを変えてほしいと頼むこともできず。急いで頼んだサンドイッチを片付け、マドリー戦を流していた隣のバルに移るしかなかったんですが、おかげでリアソル(デポルティボのホーム)で、クリスティアーノ・ロナウドが前半7分に入れたゴールを見逃してしまうことに。それからしばらくはリーガのトロフィーがマドリッドに来ることになっていたんですが、やはりそう上手くはいきませんよね。21分にはルイス・スアレスの先制点が決まり、淡い期待が消えてしまいます。
▽え、それでもロナウドは24分にもCKから2点目を奪い、試合開始前で4本差あったpichichi(ピチチ/得点王)争いを諦めていないところを示したんだろうって?うーん、そうなんですけどね。37分にまたしてもルイス・スアレスにゴールを決められては、どんなに不屈の精神の持ち主でもサジを投げたくなるかと。当人は試合後、「Como estoy? No habeis visto el partido?/コモ・エストイ? ノー・アベイス・ビスト・エル・パルティード(自分の具合がどうかって?試合を見なかったのかい?)」と言っていたため、大したことはなかったんでしょうが、前半途中にアリバスに足を踏まれたせいもあって、結局、後半のピッチには戻って来ませんでしたっけ。
▽実際、マドリーの選手たちも「Yo me entere antes del descanso/ジョ・メ・エンテレ・アンテス・デル・デスカンソ(自分はハーフタイム前に気づいたよ)」(セルヒオ・ラモス)と言うように、バルサが勝っているせいで、後半はまったくパッとしない彼らだったんですが、だからといって、「順位をちょっとでも上げたい」(ビクトル・サンチェス監督)程度の目的意識しかなかったデポルティボの選手たちが発奮する訳でもなし。
▽こちらはマドリーが勝ったため、アトレティコはどうあがいても2位にはなれないことがわかった後のキックオフだったため、尚更、28日のCL決勝のensayo general(エンサージョ・ヘネラル/総合リハーサル)的な感じが強かった試合だったんですが、概ね、アトレティコの仕上がりは順調そう。ええ、前半こそ得点できなかったものの、後半早々の6分にはコケのCKがセルタのDFにクリアされたところをフェルナンド・トーレスがファーポストで逃さず。というか、若き日はかくもありきやとも言える、アクロバティックなvolea(ボレア/ボレーシュート)が決まった時には呆気に取られたものでしたが、その日の彼は愛するクラブとの契約延長交渉が「Hay conversaciones y voluntad/アイ・コンベルサシオネス・イ・ボルンダット(話し合いがあるし意志もある)」(トーレス)と、軌道に乗ったことに余程、気を良くしていたんでしょうね。
▽その4分後には今度は果敢にもchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)を試みて、これはゴール枠に弾かれてしまったんですけどね。抜かりなく詰めていたグリースマンがそのボールをヘッドで押し込んで、2点差にしてくれたから、ミラノ行きを控えたチームを励まそうと駆けつけたスタンドのファンたちもどんなに安心したことか。とはいえ、クライマックが訪れたのは31分のことで、いえ、もうピッチサイドに姿を現した瞬間から、当人も後で「Tuve que aguantar para no llorar/トゥベ・ケ・アグアンタル・パラ・ノー・ジョラール(泣かないように我慢しないといけなかった)。ファンがアップの時からずっと応援してくれいたからね」と告白していたように、コールが止まなかったんですけどね。そう、トーレスに代わって、昨年11月のスポルティング戦で腓骨を骨折、以来、地道にリハビリを続けていたチアゴがとうとう戻って来たから、盛り上がったの何のって。
▽まあ、結局、同じ時間に5位を争っているアスレティックがセビージャに3-1と勝っていたことがわかりながら、そのセビージャが水曜のヨーロッパリーグ決勝でリバプールを倒して優勝すれば、来季のCL出場権を獲得。そのため、バーゼルに行く前にローテーションして、あっさり負けた相手には、その恩賞と引き換えに、6位でもグループリーグから参戦できるようにする義務があると腹を括ったんですかね。当てが外れて、7月末からの予選3回戦に備えてバケーションが短くなる可能性には目をつぶったか、セルタはその後も大した反撃もせず、アトレティコが2-0で勝って終了します。
▽いやあ、心の狭い私などは、「こういう試合をアウェイだったとはいえ、前節のレバンテ戦や3月のスポルティング戦でやっていれば優勝できたのに」という思いもなきにしろあらずだったんですが、何とかGKオブラクも38試合で18失点、平均0.47ゴールとなって、1993-94シーズンにデポルティボでリアニョが残したスペイン記録に並んでサモラ(リーガで一番失点率が低いGKに与えられる賞)をゲットできましたしね。シメオネ監督も「Cerramos una Liga muy buena, no excelente, porque la excelencia es salir campeon/セラモス・ウナ・リーガ・ムイ・ブエナ、ノー・エクセレンテ、ポルケ・ラ・エクセレンテ・エス・サリール・カンペオネス(とてもいいリーガで終われた。最上ではないがね。最上はチャンピオンになることだから)」と、クラブ史上2番目に多い勝ち点を溜めたこともあって納得していたようなので、まあ、いいかと。
▽え、それよりビックリだったのはスタジアム帰りにはもう、月曜午前9時からしか開かないチケット売り場に列ができていたことじゃなかったかって?そうなんですよ、どうやら残りはすでに2000枚強になっていたようで、ようやく古い順で番が回ってきたソシオ(協賛会員)たちがこれは大変とばかりに2晩を屋外で並んで過ごすことにしたよう。実際、それは正解で月曜にはとうとう、UEFAから割り当てられた1万5000枚程が完売したんですが、実は意外なところから、このサポーターたちの忠誠心を試すような販売方法を羨む声が出ていて、それはミラノで2年越しのCL決勝ダービーに挑むお隣さんのソシオたち。
▽というのも、マドリーはインターネーット申し込みを先週金曜に抽選にかけて購入者を決定したんですが、ソシオ歴による優遇もない上、アトレティコが月曜から販売を始めていたため、その5日間分、ミラノへのフライトやホテルの手配に出遅れ、割を喰ったのだとか。うーん、自分のチームを信じるアトレティコのサポーターたちの中には半年前から旅行を手配していた、肝の据わったドリーマーも結構、いるようですしね。最悪でも陸続きのため、夜間往復バスツアーを利用という手もあるため、希少なチケットが当たったファンは諦めず、是非とも応援に行ってもらいたいものです。
▽そして、「Primero descansar y luego trabajar/プリメーロ・デスカンサル・イ・ルエゴ・トラバハル(まず休んで、それから練習する)」(ジダン監督)というマドリー同様、アトレティコも2日間の休養日に入った日曜には運命の残留降格決定カードが行われたんですが、やはりこちらの方はしんどかったですよ。いえ、向かったエスタディオ・バジェカスではラージョがすでに2部落ちが決まっているレバンテ相手に前半11分にはパブロ・エルナンデスが、22分にもトラスオラスがエリア外からのゴールを決めて、余裕でリードしていたんですけどね。28分にスポルティングがジョニーのゴールで先制したことが、ラジオやスマホから情報を得ていた観客から伝わってきては、とても平静ではいられません。
▽それどころか、後半に入ると気の毒にも、ベニト・ビジャマリンに入る際から、ベティスのサポーターに「A Segunda oé, a Segunda oé!/ア・セグンダ・オエ(2部に行っちまえ)」と歌われていたヘタフェがプレッシャーに耐えきれなくなったんでしょうかね。ペセラのヘッドで失点し、この時点でマドリッドの弟分チームは双方とも降格することになってしまったから、私の頭もグルグルしてしまうことに。だってえ、このまま勝ったって、スポルティングが勝てばラージョはアウトだし、ヘタフェも逆転しないといけなかったんですよ。目の前ではアマジャがPKを献上し、レバンテが1点差に追い上げてきていたものの、他会場の結果が動くことを祈ることが最優先になってしまっては、無力感がつのるのも仕方ありません。
▽その後は27分にベティスがルーベン・カストロのPKゴールで1点追加、ラージョもその1分後にミクが3点目を挙げたものの、とうとう33分にはセルヒオ・アルバレスがスポルティングの2点目を挙げたという絶望的な知らせが。何せ元々、4位が確定しているため、先週は木曜からしか練習をせず、しかもスポルティングのOBで相手の降格を望んでいないマルセリーノ監督がレギュラー4人をベンチに置いたビジャレアルに反撃など、とても期待できませんでしたからね。後でアマジャも「ただ1人、ビジャレアルで走っていたのはレオ・バプチストンで、それも70分には代えられた」と、昔、世話になったチームに恩返ししようと頑張っていた選手までピッチにいなくなっては、もうどうすることもできなかったかと。
▽結局、スポルティングは2-0で勝ち、まだ可能性はあったヘタフェもメドランのゴールで1点返しただけに留まり、2-1で負けて降格が決定。うーん、奇跡の残留を果たしたアベラルド監督は「Gracias al Betis/グラシアス・アル・ベティス(ベティスのおかげだ)。彼らはプロ精神を見せてくれた」と絶賛していましたけどね。来季からチームを引き継ぐポジェト監督がパルコ(貴賓席)で見守る中、最後の指揮を執ったメリノ監督曰く、チームの動機は「順位が上がれば、その分、クラブのTV放映権収入が増える」ことしかなかったのですから、いくらエスナイデル監督が「Marcelino estará content/マルセリーノ・エスタラ・コンテントー(マルセリーノ監督は満足だろう)」と皮肉を言ったとて、やはりこれは勝てば、自力で残留が決められたにも関わらず、力を出せなかったヘタフェの自業自得ですよね。
▽一方のラージョは3-1と勝ったものの、敗因は「Se nos fue la permanencia en Anoeta/セ・ノス・フエ・ラ・ペルマネンシア・エン・アノエタ(残留はアノエタで消えてしまった)」(トラスオラス)というように、前節のレアル・ソシエダ戦で負けて、ヨソ様頼みの最終節になってしまったことなんですが、立派だったのはサポーター。チームの降格が決まっても、「Vallecas es de Primera!/バジェカス・エス・デ・プリメーラ(ラージョは1部のチーム)」と歌うのを止めず、ピッチに戻って来て涙していたパコ・ヘメス監督も「ファンは選手たちが全力を尽くしたことを知っている。罵りもせずに教訓を残した」と言っていましたが、それには私も同感です。
▽ええ、世の中には成績が悪くなると、すぐに「Jugadores, mercenaries/フガドーレス、メルセナリオス(選手たち、金目当ての傭兵たち)」といったカンティコ(節のついたシュプレヒコール)の大合唱になったり、panolada(パニョラダ/辞めちまえという意味で振る白いハンカチ)の嵐になったりするところも決して珍しくないんですけどね。
▽最後の最後までラージョのファンからは励まし以外の声は聞こえず。低予算ながら、5年間も1部頑張ったチームを称える彼らは、2部でプレーする来季もきっと力強い味方になってくれるはずです。対照的に12年ぶり、初の降格を体験したヘタフェのファンはあまり頼りにならないような気がしますが、それでもセビージャ(スペイン南部)まで2000人近くが応援に駆けつけてくれましたからね。心機一転、また昇格が身近になってくれば、一時期は1部状態がマンネリ化して、コリセウム・アルフォンソ・ペレスに足を運ぶのをサボッていた地元のサポーターたちもまた気分が盛り上がるのでは?
▽そんな感じで幕を閉じた今シーズンでしたが、スペインの首都で見られる試合が減ってしまうとお嘆きの方に朗報なのは、やはりマドリッド近郊にある2部のレガネスが38節まで首位をキープ。あと4試合を乗り切れば、1部昇格ができることで、同じくアルコルコンも9位ながら、プレーオフ参加圏まで勝ち点3差とまだ可能性はありますからね。最高のシナリオが実現すれば、再びマドリッド勢1部4チーム体制が維持できる可能性も。
▽まあ、まだわかりませんけどね。それまではEL決勝のリバプールvsセビージャ戦(水曜午後8時45分/日本時間翌午前3時45分)、そしてコパ・デル・レイ決勝バルサvsセビージャ戦(日曜午後9時半/日本時間翌午前4時半)などで気分を紛らわせて、28日のCL決勝を待つのみかと。そうそう、この火曜にはスペイン代表のユーロ用招集リストも出ますし、リーガは終わっても、今季は意外と退屈しているヒマはないかもしれませんよ。
▽でも仕方ありません。とりあえず、マドリッド勢がどういう結末に終わったのか、順々にお話ししていくことにすると、土曜には遅いランチを兼ねて、レアル・マドリーのデポルティボ戦を見ようとビセンテ・カルデロン近辺のバル(スペインの喫茶店兼バー)に入った私は初っ端から、逆境に直面することに。いえ、優勝争いをしているバルサの試合とは同時開催ですから、一応、席に着く前にカマレロ(ウィエター)に確認は取ったんですけどね。注文をした後、TVに映ったのがロス・カルメネス(グラナダのホーム)だったから、困ったの何のって。ええ、やっぱりスペイン人の言うことは当てになりません。
▽何せ、周囲は次の時間帯に始まるセルタ戦に行く前、ドリンクとお喋りを楽しんでいるアトレティコファンばかりでしたからね。お隣さんを応援していると思われるのを恐れて、私にはチャンネルを変えてほしいと頼むこともできず。急いで頼んだサンドイッチを片付け、マドリー戦を流していた隣のバルに移るしかなかったんですが、おかげでリアソル(デポルティボのホーム)で、クリスティアーノ・ロナウドが前半7分に入れたゴールを見逃してしまうことに。それからしばらくはリーガのトロフィーがマドリッドに来ることになっていたんですが、やはりそう上手くはいきませんよね。21分にはルイス・スアレスの先制点が決まり、淡い期待が消えてしまいます。
▽実際、マドリーの選手たちも「Yo me entere antes del descanso/ジョ・メ・エンテレ・アンテス・デル・デスカンソ(自分はハーフタイム前に気づいたよ)」(セルヒオ・ラモス)と言うように、バルサが勝っているせいで、後半はまったくパッとしない彼らだったんですが、だからといって、「順位をちょっとでも上げたい」(ビクトル・サンチェス監督)程度の目的意識しかなかったデポルティボの選手たちが発奮する訳でもなし。
▽おかげで淡々と進む試合が終盤に近付くと、とうとう2軒目のバルにまで、チャンネルをルイス・スアレスが後半40分にハットトリックを達成したバルサ戦に変えられてしまったのはもう、ご愛嬌。ええ、そのままマドリーは0-2で勝利したものの、0-3と完勝したバルサの優勝が決まり、最後は1節前に決まったグラナダの1部残留を祝いたかったのか、単に有名選手の近くに行くのが目当てだったのか、目的はよくわからないんですけどね。地元のファンたちがピッチに大量乱入し、バルサの選手たちが人混み揉まれながらローカールームに逃げていく映像を最後に、私もビセンテ・カルデロンへ向かったんですが…。
▽こちらはマドリーが勝ったため、アトレティコはどうあがいても2位にはなれないことがわかった後のキックオフだったため、尚更、28日のCL決勝のensayo general(エンサージョ・ヘネラル/総合リハーサル)的な感じが強かった試合だったんですが、概ね、アトレティコの仕上がりは順調そう。ええ、前半こそ得点できなかったものの、後半早々の6分にはコケのCKがセルタのDFにクリアされたところをフェルナンド・トーレスがファーポストで逃さず。というか、若き日はかくもありきやとも言える、アクロバティックなvolea(ボレア/ボレーシュート)が決まった時には呆気に取られたものでしたが、その日の彼は愛するクラブとの契約延長交渉が「Hay conversaciones y voluntad/アイ・コンベルサシオネス・イ・ボルンダット(話し合いがあるし意志もある)」(トーレス)と、軌道に乗ったことに余程、気を良くしていたんでしょうね。
▽その4分後には今度は果敢にもchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)を試みて、これはゴール枠に弾かれてしまったんですけどね。抜かりなく詰めていたグリースマンがそのボールをヘッドで押し込んで、2点差にしてくれたから、ミラノ行きを控えたチームを励まそうと駆けつけたスタンドのファンたちもどんなに安心したことか。とはいえ、クライマックが訪れたのは31分のことで、いえ、もうピッチサイドに姿を現した瞬間から、当人も後で「Tuve que aguantar para no llorar/トゥベ・ケ・アグアンタル・パラ・ノー・ジョラール(泣かないように我慢しないといけなかった)。ファンがアップの時からずっと応援してくれいたからね」と告白していたように、コールが止まなかったんですけどね。そう、トーレスに代わって、昨年11月のスポルティング戦で腓骨を骨折、以来、地道にリハビリを続けていたチアゴがとうとう戻って来たから、盛り上がったの何のって。
▽まあ、結局、同じ時間に5位を争っているアスレティックがセビージャに3-1と勝っていたことがわかりながら、そのセビージャが水曜のヨーロッパリーグ決勝でリバプールを倒して優勝すれば、来季のCL出場権を獲得。そのため、バーゼルに行く前にローテーションして、あっさり負けた相手には、その恩賞と引き換えに、6位でもグループリーグから参戦できるようにする義務があると腹を括ったんですかね。当てが外れて、7月末からの予選3回戦に備えてバケーションが短くなる可能性には目をつぶったか、セルタはその後も大した反撃もせず、アトレティコが2-0で勝って終了します。
▽いやあ、心の狭い私などは、「こういう試合をアウェイだったとはいえ、前節のレバンテ戦や3月のスポルティング戦でやっていれば優勝できたのに」という思いもなきにしろあらずだったんですが、何とかGKオブラクも38試合で18失点、平均0.47ゴールとなって、1993-94シーズンにデポルティボでリアニョが残したスペイン記録に並んでサモラ(リーガで一番失点率が低いGKに与えられる賞)をゲットできましたしね。シメオネ監督も「Cerramos una Liga muy buena, no excelente, porque la excelencia es salir campeon/セラモス・ウナ・リーガ・ムイ・ブエナ、ノー・エクセレンテ、ポルケ・ラ・エクセレンテ・エス・サリール・カンペオネス(とてもいいリーガで終われた。最上ではないがね。最上はチャンピオンになることだから)」と、クラブ史上2番目に多い勝ち点を溜めたこともあって納得していたようなので、まあ、いいかと。
▽え、それよりビックリだったのはスタジアム帰りにはもう、月曜午前9時からしか開かないチケット売り場に列ができていたことじゃなかったかって?そうなんですよ、どうやら残りはすでに2000枚強になっていたようで、ようやく古い順で番が回ってきたソシオ(協賛会員)たちがこれは大変とばかりに2晩を屋外で並んで過ごすことにしたよう。実際、それは正解で月曜にはとうとう、UEFAから割り当てられた1万5000枚程が完売したんですが、実は意外なところから、このサポーターたちの忠誠心を試すような販売方法を羨む声が出ていて、それはミラノで2年越しのCL決勝ダービーに挑むお隣さんのソシオたち。
▽というのも、マドリーはインターネーット申し込みを先週金曜に抽選にかけて購入者を決定したんですが、ソシオ歴による優遇もない上、アトレティコが月曜から販売を始めていたため、その5日間分、ミラノへのフライトやホテルの手配に出遅れ、割を喰ったのだとか。うーん、自分のチームを信じるアトレティコのサポーターたちの中には半年前から旅行を手配していた、肝の据わったドリーマーも結構、いるようですしね。最悪でも陸続きのため、夜間往復バスツアーを利用という手もあるため、希少なチケットが当たったファンは諦めず、是非とも応援に行ってもらいたいものです。
▽そして、「Primero descansar y luego trabajar/プリメーロ・デスカンサル・イ・ルエゴ・トラバハル(まず休んで、それから練習する)」(ジダン監督)というマドリー同様、アトレティコも2日間の休養日に入った日曜には運命の残留降格決定カードが行われたんですが、やはりこちらの方はしんどかったですよ。いえ、向かったエスタディオ・バジェカスではラージョがすでに2部落ちが決まっているレバンテ相手に前半11分にはパブロ・エルナンデスが、22分にもトラスオラスがエリア外からのゴールを決めて、余裕でリードしていたんですけどね。28分にスポルティングがジョニーのゴールで先制したことが、ラジオやスマホから情報を得ていた観客から伝わってきては、とても平静ではいられません。
▽それどころか、後半に入ると気の毒にも、ベニト・ビジャマリンに入る際から、ベティスのサポーターに「A Segunda oé, a Segunda oé!/ア・セグンダ・オエ(2部に行っちまえ)」と歌われていたヘタフェがプレッシャーに耐えきれなくなったんでしょうかね。ペセラのヘッドで失点し、この時点でマドリッドの弟分チームは双方とも降格することになってしまったから、私の頭もグルグルしてしまうことに。だってえ、このまま勝ったって、スポルティングが勝てばラージョはアウトだし、ヘタフェも逆転しないといけなかったんですよ。目の前ではアマジャがPKを献上し、レバンテが1点差に追い上げてきていたものの、他会場の結果が動くことを祈ることが最優先になってしまっては、無力感がつのるのも仕方ありません。
▽その後は27分にベティスがルーベン・カストロのPKゴールで1点追加、ラージョもその1分後にミクが3点目を挙げたものの、とうとう33分にはセルヒオ・アルバレスがスポルティングの2点目を挙げたという絶望的な知らせが。何せ元々、4位が確定しているため、先週は木曜からしか練習をせず、しかもスポルティングのOBで相手の降格を望んでいないマルセリーノ監督がレギュラー4人をベンチに置いたビジャレアルに反撃など、とても期待できませんでしたからね。後でアマジャも「ただ1人、ビジャレアルで走っていたのはレオ・バプチストンで、それも70分には代えられた」と、昔、世話になったチームに恩返ししようと頑張っていた選手までピッチにいなくなっては、もうどうすることもできなかったかと。
▽結局、スポルティングは2-0で勝ち、まだ可能性はあったヘタフェもメドランのゴールで1点返しただけに留まり、2-1で負けて降格が決定。うーん、奇跡の残留を果たしたアベラルド監督は「Gracias al Betis/グラシアス・アル・ベティス(ベティスのおかげだ)。彼らはプロ精神を見せてくれた」と絶賛していましたけどね。来季からチームを引き継ぐポジェト監督がパルコ(貴賓席)で見守る中、最後の指揮を執ったメリノ監督曰く、チームの動機は「順位が上がれば、その分、クラブのTV放映権収入が増える」ことしかなかったのですから、いくらエスナイデル監督が「Marcelino estará content/マルセリーノ・エスタラ・コンテントー(マルセリーノ監督は満足だろう)」と皮肉を言ったとて、やはりこれは勝てば、自力で残留が決められたにも関わらず、力を出せなかったヘタフェの自業自得ですよね。
▽一方のラージョは3-1と勝ったものの、敗因は「Se nos fue la permanencia en Anoeta/セ・ノス・フエ・ラ・ペルマネンシア・エン・アノエタ(残留はアノエタで消えてしまった)」(トラスオラス)というように、前節のレアル・ソシエダ戦で負けて、ヨソ様頼みの最終節になってしまったことなんですが、立派だったのはサポーター。チームの降格が決まっても、「Vallecas es de Primera!/バジェカス・エス・デ・プリメーラ(ラージョは1部のチーム)」と歌うのを止めず、ピッチに戻って来て涙していたパコ・ヘメス監督も「ファンは選手たちが全力を尽くしたことを知っている。罵りもせずに教訓を残した」と言っていましたが、それには私も同感です。
▽ええ、世の中には成績が悪くなると、すぐに「Jugadores, mercenaries/フガドーレス、メルセナリオス(選手たち、金目当ての傭兵たち)」といったカンティコ(節のついたシュプレヒコール)の大合唱になったり、panolada(パニョラダ/辞めちまえという意味で振る白いハンカチ)の嵐になったりするところも決して珍しくないんですけどね。
▽最後の最後までラージョのファンからは励まし以外の声は聞こえず。低予算ながら、5年間も1部頑張ったチームを称える彼らは、2部でプレーする来季もきっと力強い味方になってくれるはずです。対照的に12年ぶり、初の降格を体験したヘタフェのファンはあまり頼りにならないような気がしますが、それでもセビージャ(スペイン南部)まで2000人近くが応援に駆けつけてくれましたからね。心機一転、また昇格が身近になってくれば、一時期は1部状態がマンネリ化して、コリセウム・アルフォンソ・ペレスに足を運ぶのをサボッていた地元のサポーターたちもまた気分が盛り上がるのでは?
▽そんな感じで幕を閉じた今シーズンでしたが、スペインの首都で見られる試合が減ってしまうとお嘆きの方に朗報なのは、やはりマドリッド近郊にある2部のレガネスが38節まで首位をキープ。あと4試合を乗り切れば、1部昇格ができることで、同じくアルコルコンも9位ながら、プレーオフ参加圏まで勝ち点3差とまだ可能性はありますからね。最高のシナリオが実現すれば、再びマドリッド勢1部4チーム体制が維持できる可能性も。
▽まあ、まだわかりませんけどね。それまではEL決勝のリバプールvsセビージャ戦(水曜午後8時45分/日本時間翌午前3時45分)、そしてコパ・デル・レイ決勝バルサvsセビージャ戦(日曜午後9時半/日本時間翌午前4時半)などで気分を紛らわせて、28日のCL決勝を待つのみかと。そうそう、この火曜にはスペイン代表のユーロ用招集リストも出ますし、リーガは終わっても、今季は意外と退屈しているヒマはないかもしれませんよ。
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