【原ゆみこのマドリッド】あまり分は良くない…

2016.05.14 13:45 Sat
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▽「優勝セレモニーはどうなるのかしらね」。そんな風に私が首を捻っていたのは金曜日、いよいよリーガの優勝チームが決まる試合が明日に迫り、予定を練らないといけなくなった時のことでした。いやあ、21節からずっと首位だったバルサは土曜にグラナダ(スペイン南部の街)からチームが戻った後、市内パレードをする予定と聞いていたんですけどね。それが木曜になって、到着が午後11時頃になるため、バルセロナでは遅い時間過ぎ(マドリッドだと平気で午前零時、1時からでも始める)な上、当日夜はカンプ・ノウでブルース・スプリングスティーンのコンサートもあって、丁度終演の時刻と重なるため、セキュリティ上の理由でパレードはなくなることに。

▽そこで今では来週日曜のコパ・デル・レイ決勝の後、まとめて祝賀行事をやろうという案が出ているそうですが、万が一、セビージャに負けた場合、同じテンションではできないだろうという至極まっとうな意見もあるため、未だに予定が立っていないのだとか。

▽一方、もう1つの優勝候補、レアル・マドリーはこちらも遠征先のラ・コルーニャ(スペイン北西部の避暑地)から戻ってから、サンティアゴ・ベルナベウでお祝いをするという記事を読んだんですが、もしかして、その場合、私はビセンテ・カルデロンでアトレティコの最終戦を見た後、駆け付けなければならない?うーん、リーガ優勝32回、CL10回とタイトル獲得数では群を抜いている彼らですが、バルサが何かというと3冠(リーガ、CL、コパ・デル・レイ)を達成しているのと対照的に、3冠どころか、マドリーがこれまでリーガとCLの2冠を達成したのは長いその歴史の中でたったの2回だけ。
▽しかも1957年と1958年という大昔なだけに、土曜に奇跡が起こってリーガ優勝が転がり込んできた場合、まずはとにかく祝っておかないと、という気持ちになるのもわかりますが、何にしても遅い時間になるのは確か。翌日にはマドリッドの弟分チームたちの命運が決まる大事な試合もあるため、あまり夜更かしはしたくないんですが、それもこれもホームでファンと一緒に優勝が祝えるという好条件だったアトレティコが前節のレバンテ戦で脱落したせい? いえ、これは単なる私の八つ当たりだっていうのはわかっていますけどね。どうも今季は悲劇が避けられない状況になってしまっただけに、リーガに関してはどこか暗くなってしまうんですよ。

▽まあ、そんなことはともかく、その最終節に向けてのマドリッド勢の様子をお伝えしていかないと。バルサがグラナダと引き分け以下で終わることを願いつつ、デポルティボ戦に必勝を期しているマドリーは土曜の午後5時(日本時間翌午前零時)からキックオフ。ジダン監督は「No me voy a enterar hasta el final/ノー・メ・ボイ・ア・エンテラール・アスタ・エル・フィナル(自分は最後まで結果は聞かない)。ウチ次第ではないのだから、考えずに勝つのみ。その後、見ることにしよう」と言っていましたが、やっぱりベンチの誰かがスマホやタブレットに釘付けになるのは間違いないかと。
▽チームの方は金曜夜に現地入りしたんですが、万が一を考えて、前節のバレンシア戦でヒザを捻り、28日のCL決勝を目指してリハビリしているルーカス・バスケスも含め、選手たちは全員帯同。不具合を抱えていたベイル、モドリッチ、ケイロル・ナバス、カルバハルらは元気になったようで、久々のBBC(ベイル、ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)揃い踏みを見ることができるかもしれません。ちなみに先週、2ゴールを挙げたロナウドはあと1本で6年連続、公式戦50ゴール以上という滅多にない記録を達成。いやあ、リーガのピチチ(得点王)は最近、固め打ちしたルイス・スアレスが現在37本と、33本のロナウドとは4ゴール差あるため、今季は諦めざるを得ないかもしれませんけどね。

▽昔、ビジャレアルやアトレティコで最後の試合に猛ラッシュをかけてゴールデンシュー(ヨーロッパの得点王)を獲ったフォルランなどの例もありますし、ロナウドは1試合5得点の経験もあるので、絶対とは言い切れませんが、それより大事なのは苦手なアウェイでマドリーに勝利をもたらす決勝点を挙げること。どうやらデポルティボの方は前節に残留が決まったにも関わらず、ルイシーニョやロポとビクトル・サンチェス監督の不仲が発覚したりと、チーム内の雰囲気は最悪のようで、もちろん勝利で今季も応援してくれた地元のサポーターに感謝したいと思っている選手もいるでしょうけどね。ここリーグで11連勝中のマドリーが優勢という見方が一般的じゃないでしょうか。

▽え、それより今週は、バルサから勝ち点を奪えば、マドリーに土壇場の逆転優勝を贈ることになるグラナダの選手たちがマスコミに引っ張りだこだったじゃないかって?その通りで、とりわけフラン・リコ、ダビド・バラル、ヘスス・フェルナンデスら、3人のRMカスティージャ(マドリーのBチーム)出身者たちなど、インタビュー記事がマルカ(スポーツ紙)のトップページを飾る程のモテモテぶり。いやあ、いくら前節セビージャに1-4と快勝して、堂々残留を確定したとはいえ、ここまだずっと低空飛行だったから、ギリギリまで苦労していたチームですからね。たとえ、マドリーからmaletin(マレティン/アタッシュケース、現金の賄賂のこと)が届いているという噂が本当だったとしても、ここ数試合、また調子が戻ってきたバルサに太刀打ちするのは難しいかと。当然、そのバルサもクラウディオ・ブラボ、サンドロら、ケガ人を含めて、金曜に全員で現地入りしています。

▽そして同じ土曜、リーガ優勝が決定した後、午後7時半(日本時間翌午前2時半)からビセンテ・カルデロンにセルタを迎えるのがアトレティコで、一応、マドリーが負けた場合、勝てばリーガを2位で終われるという小さな慰めはありますけどね。来季のCLで言えば、3位でも同じグループリーグから出場なので、やはりこの試合の目的は、シメオネ監督も「La mejor manera de llegar a la final es seguir compitiendo/ラ・メホール・マネラ・デ・ジェガール・ア・ラ・フィナル・エス・セギール・コンピティエンドー(決勝に到達する最高の方法は競い続けること)」と言っていたように、28日のミランでの大一番前にできる最後の実戦リハーサルの方かと。

▽ちなみにチームにはケガ人もなく、腓骨の骨折で長いリハビリをしていたチアゴも前節に続いて招集メンバー入りしていますが、金曜のマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でのセッションでは先日のCL準決勝バイエルン戦2ndレグのベストメンバーから、ヒメネスをサビッチに代えただけという、仮想イレブンで仕上げを行っていたとか。何せ、CL決勝まであと2週間もありますからね。リーガ最終戦でバルサとの死闘の末、優勝が決定、そこから1週間程しか時間のなかった2年前に比べると、余裕があって有難いんですが、せめて今季最後のホームゲームは、何度もスタンドを盛り上げてくれたファンに感謝する意味でも、勝利で締め括ってくれたらと思います。

▽え、でもファンたちの方はそれどころじゃなく、今週はずっと寒くて雨も降っていたのに、連日スタジアムのチケット売り場に列を作っていたんだろうって?いやあ、ソシオ(協賛会員)でない私はただ報道を見守っているしかできなかったんですが、どうやらreventa(レベンタ/ダフ行為)が凄いことになっているらしく、窓口を離れた途端、70~440ユーロ(約9000~5万4000円)のチケットを1000~3000ユーロ(約12万~37万円)で買い取ろうという声がかかるのだとか。そのあまりの露骨さにどんどん周囲の警官の数も増え、ネット販売などで情報をキャッチしたクラブも売ったソシオの権利を剥奪など、手は打っているものの、ほとんどイタチごっこの様相を呈しているようです。

▽そんな光景を見ると、金曜にインターネットで受け付けた申し込みを機械による抽選にかけ、購入できるソシオを決めていたお隣さんの方がスマートに見えますが、どこか味気ない感も。こちらも同様にレベンタは発生するはずですし、自分が応援するチームが一生にもう2度とないかもしれないビッグゲームに挑むにあたって、ミラン旅行の計画を立てながら、辛抱強く列に並んでチケットを買うのも、ファンにとってはいい思い出なるんじゃないでしょうか。

▽そうそう、相手のセルタの目標は現在、アスレティックと勝ち点差1の5位を死守することで、何せ、同じヨーロッパリーグ出場でも6位になると、7月末からの予選3回戦からの参加となるかもしれなくて、バケーション日数に深刻に影響が出ますからね。ただ先週日曜、マラガを破ってEL出場権を確定した後、街を挙げて盛大なお祝いをしていたチームだけに、もう気が緩んでいる可能性もなきにしろあらず。今季は彼らにコパのホーム戦で負けて、準々決勝で敗退をしたアトレティコだけに、そうだとちょっと助かるかもしれませんね。

▽え、それより2部行きの危機に瀕しているヘタフェとラージョはどうしているんだって?まあ、今更ガタガタしたって仕方ないんで、とりわけ自身が勝てば、相手の結果に関わらず、最後の一席に滑り込める前者などはエスナイデル監督の下、残留もすでに決まり、あとは8位から14位まで勝ち点3でひしめく中、できるだけ順位を上げて来季のTV放映権収入の割り当てを増やしたいという、あまり夢をかきたてない目標しかないベティスとの一戦に向けた練習を黙々としていたようですが、何かと騒がしかったのはラージョ。いきなりパコ・ヘメス監督が水曜に記者会見を開いたかと思えば、来季のバレンシア監督就任のオファーを受けてオーナーのピーター・リム氏と会うため、シンガポールまで出向いたという噂を否定するためだったというのも大袈裟ですが、金曜にはプレサ会長を始め、監督とチーム全員が揃ってまたしても記者会見。

▽というのも、LEP(スペイン・プロリーガ協会)のテバス会長がネットのブックメーカーの異常な動きから、前節のレアル・ソシエダ戦でラージョが八百長をして負けた疑いがあると言い出したためで、でもちょとお。その結果のせいで、彼らは今のドツボにはまっているんですよ。いえ、確かに毎年、総取っ替えに近いくらいメンバーが変わるラージョですから、自分が来季いないとなれば、2部落ちだって構わないと思う選手もいるのではと疑われたかもしれませんけどね。とはいえ、証拠もないのに、primas a terceros(プリマス・ア・テルセーロス/第3者からのボーナス、順位争いをしている相手に勝ってもらいたいクラブが出す賄賂)どころでない重罪となる、そんな言いがかりを最後の試合間際になってつけてくるのもかなり陰険なのでは?

▽どちらにしろ、ラージョの場合、残留争い3チームが一斉にキックオフする日曜午後7時半(日本時間翌午前2時半)からのレバンテ戦でまず勝って、ヘタフェとビジャレアルと戦うスポルティングが引き分け以下となるか、引き分けて、両者が負けるパターンしか、救われる道はありませんからね。かなり確率は低いんですが、最終日に予想外の結果が出るのはこれまでに何度もあったこと。マドリッド勢を応援する身としてはラージョもヘタフェも2部に行ってしまうのが一番、辛いんですが、というのも彼らはベティスやセルタのように昇降格を短いスパンで繰り返すことができるチームのような気がしないから。運命の最終節、果たしてお天道様が微笑んでくれるのは一体、どこになるのでしょうか。

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