【原ゆみこのマドリッド】まだ終わった訳じゃない…

2016.05.11 13:52 Wed
▽「寒いし雨も降っているのに、よく行列なんてできるわね」そんな風に私が感心していたのは火曜日。週明けから始まるCL決勝のチケット販売のため、夜中の1時からビセンテ・カルデロンの窓口に並んでいたというソシオ(協賛会員)歴49年のお爺さんの記事をマルカ(スポーツ紙)で読んだ時のことでした。いやあ、アトレティコの販売初日は25年間以上ソシオを続けているファンにしか、購入権利がないため、中高年の率は高かったんですけどね。やはり悪天候が続いた火曜日も窓口まで3時間待ちだったのに、スタジアムを取り巻く列はいつまでも途切れず。週末のリーガのせいでプチ鬱に襲われ、傘をさしてまで外出する気になれなかった私には信じられない程、みんなが決勝で2年前のリベンジを果たすことに楽観的なようだったから。

▽え、対戦相手はレアル・マドリーなのに、どうしてサンティアゴ・ベルナベウには行列ができないのかって? それは販売方式の違いで、お隣さんでは購入を希望するソシオはインターネットで申し込み。その後、抽選で買える人を決めるという、2年前と同じやり方なんですが、どちらのクラブもUEFAから割り当てられた枚数より、希望者の方が断然多いのは変わりませんしねえ。すでに一部のチケットサイトではミラノのホテル込みのペアチケットパックが4000とか5000ユーロ(約50万~62万円)といった高値で出回っているとTVでは言っていましたが…。今回は開催地がイタリアと遠いため、どうしても決勝を見に行きたいファンには夏のバケーションどころではない出費になってしまうかも。

▽まあ、そんなことは置いておいて、怒涛のような日曜日に10試合同時開催された37節のリーガがどうだったのか、お話していくことに。予定通り、私はサンティアゴ・ベルナベウにレアル・マドリーvsバレンシアを見に行ったんですが、最近は本当に便利なんですね。ふと目をやると、下の段に座ったイタリア人記者たちが、パソコンでレバンテvsアトレティコとバルサvsエスパニョールのTV中継を映していたため、自分もオンダ・マドリッド(ローカル・ラジオ局)の多元中継のみに頼らず、開始2分にコケのスルーパスからフェルナンド・トーレスが先制点を決めるところを目撃できることに。とはいえ、負傷のベイル、GKケイロル・ナバス、そして直前の筋肉痛発覚でモドリッチが欠場したマドリーが最初のゴールを挙げるまでには結構、時間がかかります。
▽相手はもう何も懸かっていないバレンシアでしたが、ようやくクリスチアーノ・ロナウドが先制点を決めてくれたのは27分になってのことでした。ただもう、その頃にはメッシが見事なFKゴールを決めて、バルサがリードしていることがわかっていたため、このままだと、マドリーの両雄はまたしても同じ状態で最終節を迎えることになるはずだったんですが…。やっぱり優勝争い常連と違って、どこか抜けているのはアトレティコ。

▽何だか、レバンテがバイエルンのように攻めているなと遠目で画面を見ていたところ…。「Salimos fuertes y conseguimos marcar, pero despues nos relajamos/サリモス・フエルテス・イ・コンセギモス・マルカル、ペロ・デスプエス・ノスレラハモス(スタートは強く出てゴールを入れたけど、その後、リラックスしてしまった)」(サウール)という、とんでもない理由で30分にはカサデススにヘッドを決められ、1-1の同点にされてしまったのですから、この人たち、全然、学習していないじゃないですか!!
▽というのも、彼らは3月にもアウェイのスポルティング戦で同じ過ちを犯し、それさえなければ、今頃、バルサに勝ち点3差をつけて首位にいられたんですよ。ところが、それを思い出して私がムカムカしている間に眼下のピッチでは信じられない光景が展開することに。40分、ロナウドのパスを受けてベンゼマがシュートしたボールはアウベスが弾いたものの、この時の彼の位置は明らかにオフサイド。ところがプレーはそのまま続行され、バレンシアの選手たちに当たって戻ってきたボールを再びベンゼマがボールを押し込んだところ、その得点が認められてしまったから、驚いたの何のって。

▽それでも2-0になったためマドリーは楽になったんですが、こちらも気が緩んだんでしょうかね。56分にはヴァランがエリア内でクリアしたボールがどういう訳か、ロドリゴの正面に。そのシュートが決まって1点差となれば、何せここ4年間、ホームゲームでバレンシアに勝てていない彼らですからね。場内にも不安な空気が漂ったんですが、大丈夫。59分にはハメス・ロドリゲスのスルーパスに抜け出したロナウドが追加点を奪ってくれたから有難いじゃないですか。

▽ただその後、ナバスの代わりに入っていたGKカシージャは、「Ha demostrado que puede suplir a Keylor con tranquilidad/ア・デモストラードー・ケ・プエデ・スプリル・ア・ケイロル・コン・トランキリダッド(ナバスの代理が落ち着いてできることを示した)」とジダン監督に後で褒められる程、しっかりやっていたものの、81分にアンドレ・ゴメスがエリア外から放った弾丸シュートにはどうすることもできず。

▽その時はすでにロナウドが、ピッチにおらず…。今季限りでマドリーを退団するアルベロアがベルナベウのファンにお別れするため、ロナウドは交代させられていて、残り時間はヒヤヒヤしましたけどね。85分にはジャッジに怒り、「Le dije al linea que era un cagon/レ・ディヒ・アル・リネア・ケ・エラ・ウン・カゴン(線審に臆病者と言った)」というロドリゴがレッドカードで退場させられたせいもあり、最後は3-2で逃げ切ることに成功。試合後はアルベロアがチームメートに胴上げされたり、スタンドのファンと長々とお別れをしたりといった場面が続いていたんですが…。

▽いやあ、一斉スタートと言っても、実は会場により数分の時差があるんですが、丁度、マドリーの勝利が決まった頃だったんですよ。グリーズマン、カラスコを投入して、後半総攻撃体制に入っていたアトレティコが89分、レバンテのカウンターを喰らい、最後はロッシに一対一を決められて2点目を失ってしまうことに…。すでに時間もなく、そのまま1-2で負けて、逆転優勝の可能性がゼロになってしまったとなれば、いくらバルサが後半の猛攻で5-0のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)勝利を挙げていたとしても、「Ha sido un accidente, pero se nos ha ido la Liga/ア・シードー・ウン・アクシデンテ、ペロ・セ・ノス・ア・イドー・ラ・リーガ(事故のようなもんだったけど、リーガを失ってしまったね)」(コケ)なんて、軽く言ってほしくはなかったかも。

▽いえ、3試合のベンチ入り禁止処分中で、その日もマスコミ用のボックスで観戦していたシメオネ監督は、「以前は終了10節前には脱落していたことを考えると、今日負けたこと、優勝争いから外れたことによる痛みより、me invade la alegria de seguir peleando con los dos mejores a falta de una fecha/メ・インバデ・ラ・アレグリア・デ・セギール・ペレアンドー・コン・ロス・ドス・メホーレス・ア・ファルタ・デ・ウナ・フェッチャ(あと1試合まで、2強と争い続けていたことに喜びを感じる)」と、選手たちを誇りに思っているようでしたけどね。確かに先週火曜日にはCL準決勝2ndレグの死闘を終えたばかりで疲れもあったんでしょうが、逆に天下のバイエルンの猛攻をかわしきった自分たちの守備力を過信してしまったということはなかった?

▽何せ、相手はルビ監督も「No me llena esta victoria, sigo triste igual/ノー・メ・ジェナ・エスタ・ビクトリア、シゴ・トリステ・イグアル(この勝利で満足はできない。悲しいままだ)」とコメント。むしろアスレティック戦やマラガ戦で勝ち点を落としてしまったことを悔やんでいるような、前節で2部降格が決まったチームだったんですよ…。ただ、アトレティコがシュタット・デ・バレンシア(レバンテのホーム)との相性が悪いのは明らかで、シメオネ監督になってから1度もここでは勝っていません。彼らにとって幸いなことに来季は訪問しなくてすみますが…。これには前日に現地ホテルでbengala(ベンガラ/発煙筒)を景気よく焚いて、マドリッドでのようにチームを鼓舞し、スタジアムにも1500人以上詰めかけたアトレティコのサポーターにとって、辛い帰りの道中になったことでしょうね。

▽その結果、最終節はすでに3位以上は確定。そのため、来季のヨーロッパリーグ出場権をゲットしているセルタとの最終節でやることはなくなってしまったんですが…。この土曜日のデポルティボ戦でも気が抜けないのがお隣さん。いえ、1部残留が決定したグラナダのホームに乗り込むバルサが勝てないとは思えないんですけどね。実際、グラナダの選手たちも日曜日の夜にはまるでシーズンがもう終了したかのようなパーティをしていたので、あまり頼りにはならないんですが、万が一の時、後悔先に立たずとなれば、同じくビジャレアルに勝って残留が決まったデポルティボを叩いておくにこしたことはないかと。

▽え、そんなに残留確定チームが決定し、バルサに大敗したエスパニョールでさえ降格争いを離脱したってことは、マドリッドの弟分チームがヤバいことになっているんじゃないかって? その通りで、これもマドリー戦を見ていた私の頭痛の種になっていたんですけどね。アノエタでレアル・ソシエダに挑んだラージョは、12分にもう失点。後半開始すぐにもバウティスタに2点目を奪われてしまったため、ハビ・ゲラの一発だけでは足らずに1-2と負けてしまったから、さあ大変!

▽いやあ、パコ・ヘメス監督の「El vestuario esta muy triste, con gente llorando como ninos/エル・ベストゥアリオ・エスタ・ムイ・トリステ、コン・ヘンテ・ジョランドー・コモ・ニーニョス(ロッカールームは悲しみで溢れていた。子供のように泣いている選手もいたよ)」という言葉にはかなり実感がこもっていて、私も胸が痛んだんですけどね。「ヨソの結果に頼らないため、最高のパフォーマンスが必要だったのに今季最悪の日になってしまった。Intuyo que nos manda a Segunda/イントゥイジョ・ケ・ノス・マンダ・ア・セグンダ(2部行きを予感するよ)」とまで言われては、もうどうしたらいいのか。

▽もう1つの弟分チーム、ヘタフェもコリセウム・アルフォンソ・ペレスで直接ライバルのスポルティングを相手に49分、セルヒオ・アルバレスに先制点を奪われます。しかし80分にはステファンのヘッドで何とか引き分けを達成。同じ勝ち点の相手にはゴールアベレージで上回っており、ラージョよりも勝ち点1多いため、最終節のベティス戦で勝てばもちろん、両チームと同じ結果を出せば、残留ラスト1席に滑り込むことができます。逆にラージョが残留できるのはレバンテに勝って、ヘタフェと、スポルティングが引き分けで終わる。またはラージョが引き分けて、両チームが負けた時のみ。要は3チームのうち、2チームが落ちるということで、少なくも1チーム、下手したら、マドリッドの2チーム共、来季は2部プレーすることになるって、あんまりじゃない?

▽いえ、シーズンは長いですから、こんな破目に陥ったのはどちらも自己責任と言えなくはないんですけどね。4位が確定しているビジャレアルはEL準決勝2ndレグでリバプールにコテンパンにやられて以来、力が出ないようですし。現役時代にはスポルティングでプレー、さらに率いたこともあるマルセリーノ監督も相手の降格を望んでいないため、あまり勝利は望めず。となると、ヘタフェが頑張って勝つしかないんですが、ベティスもベティスでスポルティングとは昔からいい関係らしく、サポーターが応援ハッシュタグまで作って勝利を求めているとなると、かなり厳しい戦いになりそうな。

▽おまけに残留が決まった途端、その功績者のメリノ監督をよそに、来季はウルグアイ人のポジェト監督を招聘することを発表。早速、火曜日にはセビージャ(スペイン南部の街)入りした次期上司がベニト・ビジャマリンのスタンドで観戦しているとなれば、契約の懸かっている選手たちが発奮してしまうかも。

▽まあ、そんなこんなでドラマが続くリーガ最終節は優勝決定カードが土曜日の午後5時(日本時間翌午前零時)、アトレティコvsセルタが同午後7時半(日本時間翌午前2時半)、降格決定カードが日曜日午後7時半からスタート。この先もまだEL決勝(18日、リバプールvsセビージャ)、コパ・デル・レイ決勝(21日、バルサvsセビージャ)、CL決勝(28日、マドリーvsアトレティコ)とスペイン勢の試合はあるんですが、何だか2015-16シーズンもあっという間だったですよね。

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