【原ゆみこのマドリッド】今季の締めはマドリッド・ダービー
2016.05.07 12:20 Sat
▽「残念だったわね」。そんな風に私が首を振っていたのは木曜日、ELの試合が終わった時のことでした。いやあ、今週はヨーロッパの大会の準決勝2ndレグがあったため、CL、EL両方の決勝がスペイン勢対決になったら、物凄い偉業だとマスコミは期待していたんですけどね。前日までにマドリッドの両雄は何とか、ミラノに行けることになったんですが、やっぱり他の国のファンにも5月のいい時期に旅行させてあげないのは気の毒とサッカーの神様が思ったんでしょうか。前人未到のEL3連覇を狙うセビージャはこの大会が大好きなサンチェス・ピスファンのサポーターの前でシャフタールに3-1で勝って、総合スコア5-3で堂々勝ち抜けしたものの、ビジャレアルはアンフィールドでリバプールの逆襲に遭い、3-0であっさり1-0の1stレグの勝利を引っくり返されてしまうことに。
▽結果、2006年からアイントホーフェン、グラスゴー、トリノ、ワルシャワとヨーロッパ各都市でチームがEL優勝杯を掲げるのを楽しんできたセビージャのファンたちがまた1つ、応援旅行記にバーゼルを付け加えることになり、ビジャレアルはCLと合わせて3度目になる、あと1歩で決勝進出を逃すという経験をしたんですが、大丈夫ですよ。EL決勝でリバプールを18日に倒さない限り、来季はCLには出られず、更に21日にコパ・デル・レイ決勝でバルサを退けない限り、EL出場もかなり難しいセビージャと違って、すでに彼らはリーガで4位が確定。CLプレーオフから参戦できることが保証されているんですから、きっと来シーズンはもっと楽しい思いができますって。
▽まあ、そんなことはともかく、まずはマドリッド勢のCL準決勝2ndレグがどうだったのかお伝えしておかないと。先週とは逆に今週、先にプレーしたのはアトレティコの方で、いやあ、彼らがアリアンツ・アレナでの前日練習をした時にはピッチの芝を刈っておらず、試合当日に剪定。おまけにキックオフ前10分に水を撒くというのは、ある意味、あこぎなやり方じゃないかと呆れたんですが、敵の思惑通り、前半はバイエルンのなすがままだったから、とにかく1stレグでのリードが1点しかなかったアトレティコが気の毒だったの何のって。
▽ええ、シメオネ監督も「前半のバイエルンは自分が対決した最高のチームで、惚れてしまったぐらい」と言っていた程、押されてしまい、コケが自陣エリア内で無謀にも長身FWとの空中戦に参加するぐらいの極度の混乱状態に。ポゼッションも一時は20%にも満たなかったそうですが、意外にも失点はセットプレーからでした。そう、アウグストが自陣エリアすぐ前で敵を倒した後、シャビ・アロンソが蹴ったFKがえりに選ってヒメネスに当たって軌道が変わり、GKオブラクが破られてしまったから、ツイていないじゃないですか。おまけにその2分後、またそのヒメネスがCKの守備でハビ・マルティネスを倒してペナルティを献上って、もしや彼、この日は天中殺だった?
▽でも捨てる神あれば拾う神ありとはまさにこのこと!何とミュラーが蹴ったPKをオブラクが弾き、更にアロンソのシュートも防いで、敵の勝ち越しを防いでくれたから、すでに絶望しかけていたアトレティコファンがどんなにホッとしたことやら。それは選手たちも同じだったようで、その後は気を取り直し、ハーフタイムまでそれ以上の失点を避けることに専念。そしてロッカールームで「Charlamos de los que somos y de lo que queremos ser/チャルラモス・デ・ロス・ケ・ソモス・イ・デ・ロス・ケ・ケレモス・セル(自分たちが何者なのか、何者になりたいのかを話した)」(シメオネ監督)のと、後半頭からアウグストをカラスコに代えたことが相まって、落ち着きを取り戻した彼らにとうとうチャンスがやって来ます。
▽ただまあ、おかげでますます必死になったバイエルンが怖かったのは当然で、29分にはアラバのクロスをアルトゥロ・ビダルがゴール右横からヘッドで繋ぎ、レバンドフスキに2点目を奪われてしまったんですけどね。それでもアウェイーゴールのおかげで勝っていたアトレティコでしたが、最後まで苦しみたがるは彼らのDNAに刻み込まれた習性?だってえ、グリースマンが守備固めのトーマスに代わった後、トーレスがハビ・マルティネスにエリアギリギリで倒され、鷹揚な審判がPKをくれたにも関わらず、お情けを受けるのはイヤだったんですかね。トーレスのキックがノイアーに弾かれてしまったから、残りの6分間プラス、ロスタイム5分間、どんなに胃がキリキリさせられたことか。
▽おかげでシメオネ監督など、最後の守備増強でサビッチをピッチに送りだしたかったのに審判の許可がなかなか下りず。八つ当たりでクラブの係員をど突いていたりもしたんですが、良かったです!とうとう試合終了の笛が鳴って、「Pense que no volveria y ha vuelto, ahora podemos cambiar la historia/ペンセ・ケ・ノー・ボルベリア・イ・ア・ブエルトー、アオラ・ポデモス・カンビアール・ラ・イストリア(もう2度とないと思ったのにまたあった。今のボクらは歴史を変えられる)」(フィリペ・ルイス)という、ここ3年で2度目のCL決勝進出が決まってくれたから、感心したの何のって。
▽もちろんそれにはバルサ、バイエルンという、「Hemos eliminado a dos de los tres mejores equipos del mundo/エモス・エリミナードー・ア・ドス・デ・ロス・トレス・メホーレス・エキポス・デル・ムンド(ウチは世界の3強のうち、2強を倒した)」(シメオネ監督)ということもありますけどね。「La única vez que vieron la pelota fue la del gol/ラ・ウニカ・ベス・ケ・ビエロン・ラ・ペロータ・フエ・ラ・デル・ゴル(唯一、ボールを持ったのはゴールの時だけ)」(ビダル)なんて言われてしまうサッカー力にも関わらず、全員の努力と献身で才能の足りない部分を補ってしまうのは凄いことかと。
▽その後の彼らの喜びようはアトレティコのオフィシャルウェブでのインサイダービデオ(http://www.clubatleticodemadrid.com/videos/atminsider-asi-vivio-el-vestuario-la-clasificacion-para-la-final-de-milan-2)を見るとよくわかるんですが、やっぱり懲りないのはカンテラーノ(アトレティコ下部組織出身の選手)たち。カメラを向けられたサウルがトーレスに「Nos queria hacer sufrir un poco/ノス・ケリア・アセール・スフリル・ウン・ポコ(ちょっとボクらに苦難を与えたかったんだよね)」と言ったのに、大先輩の方は「El gol lo guardamos para la final/エル・ゴル・ロ・グアルダモス・パラ・ラ・フィナル(ゴールは決勝のためにとっておくんだ)」と応えていましたが、ちょっとそれ、ホントに実行してくださいよ。
▽そして翌日はサンティアゴ・ベルナベウにお隣さんのマンチェスター・シティ戦を見に行った私だったんですが、感動の程度はあまりに対照的。いえ、チームバスのスタジアム入りには1万5000人のファンが駆けつけて声援を送り、キックオフ前はスタンド全面を覆うモザイクで雰囲気は盛り上がっていたんですけどね。シルバがケガで欠場したせいか、アグエロがまったくパッとせず、シティがあまり攻撃しなかったのはともかく、復帰したクリスチアーノ・ロナウドも今イチだったせいか、前半20分にベイルのシュートがフェルナンドに当たってオウンゴールにならなければ、「どちらも勝つに値しなかった。Lo mas justo habria sido una definicion a penaltis/ロ・マス・フスト・アブリア・シドー・ウナ・デフィニシオン・ア・ペナルティス(より正当だったのはPK戦による決着だったろう)」というシティのペレグリーニ監督の言葉通りになっていたかと。
▽それでももちろん、「一番大事なのはゴール。誰が入れたのかは関係ない」(ベイル)というのは正しくて、私も延長戦やPK戦で神経を削るのはイヤでしたしね。1stレグが0-0だったため、1-0のままでだと、シティが点を取ったら、マドリーの敗退になるという緊張は最後まであったものの、幸い相手は一矢も報いることなく試合は終了。これで2年前同様、CL決勝ダービーが決定しました。え、リスボンでは後半ロスタイム3分にセルヒオ・ラモスの起死回生の同点ヘッドが決まり、延長戦でアトレティコをボコボコにやってつけているだけに、試合後のマドリー選手たちは強気じゃなかったかって?
▽うーん、「Esperamos el mismo partido y ojala el mismo resultado/エスペラモス・エル・ミスモ・パルティードー・イ・オハラ・エル・ミスモ・レスルタードー(同じ試合と同じ結果を期待しているよ)」(モドリッチ)という意見もありましたが、ラモスなどは「Quiza el Atletico sea mas incomodo que el Bayern/キサ・エル・アトレティコ・セア・マス・インコモドー・ケ・エル・バイエルン(多分、アトレティコはバイエルンよりやりにくいだろうね)」と殊勝気なコメントでしたけどね。
▽ただ、その日、パルコ(貴賓席)に応援にきたスペインのフエリペ6世陛下がロッカールームに来てくれたことについて、「王様はボクらを祝福してくれたよ。アトレティコファンだけどね。でも娘さんはマドリーファンだと思う」(ラモス)というのはちょっと早合点。ええ、その日、国王が連れていた次女のソフィア姫はマドリーびいきなんですが、先週ビセンテ・カルデロンでのバイエルン戦1stレグに来ていた長女のレオノール姫はアトレティコファンだそう。きっと決勝で国王が王女2人をミラノのサン・シーロに連れていったら、2対1で負けていますよ。
▽そして翌日からは2年前のデジャブのように決勝チケットを巡ってのフィーバーが始まり、いえ、金曜にはUEFAと両クラブの会合で各チームのファン向け割り当ては1万9500枚ずつということになったんですけどね。当然、これらはソシオ(協賛会員)にしか販売されませんから、それ以外に決勝に行きたい人はすでに一般向けチケットをUEFAのサイトで購入済みであるか、旅行会社が用意する2000ユーロ(約24万円)以上するパックに乗るか、同じく高値のダフチケットを探すしかないことに。
▽おまけにマドリーの決勝進出が決まった直後から、マドリッドーミラノ間の航空チケットが高騰。いえ、だからっていくら、準決勝2ndレグでもマドリーより15キロ多い約120キロを走行、CL12試合のチーム合計でミラノまで走って到達できる距離になっているというアトレティコでもフライトには苦労しないはずですし、料金が28日の週末は暴利状態になっているホテルもメリア・ミラノ、マドリーもラディソン・ブル・ミラノとUEFA手配で決まっているため、当事者たちは大丈夫なんですけどね。観戦希望のファンにとっては、車でも行けるとは言っても隣国ポルトガルのリスボンより全然、遠いですし、何だから凄い出費になりそうですよ。
▽え、今はそんな話をしている間もなく、週末の試合を考えないといけないんじゃないかって?そうですね、木曜にはスポンサーのプーマのイベントに出席したグリースマンも「Si pensamos en la final fallaremos en la Liga/シー・ペンサモス・エン・ラ・フィナル・ファジャレモス・エン・ラ・リーガ(決勝のことを考えていたら、リーガでコケる)」と言っていたように、CLで気がそれてしまったものの、リーガ優勝争いの三つ巴状態は現在も続行中。しかも首位のバルサはミッドウィークに試合がなく、じっくり調整してエスパニョールとのカタルーニャダービーにカンプ・ノウで臨むとなれば、今回も絶対、後れを取ることはできないかと。
▽ちなみにこの37節にはリーガ協会による試合日程のuificacion(ウニフィカシオン/統一)がかかっていて、10カード全てが日曜午後5時(日本時間翌午前零時)にキックオフ。アトレティコは前節に2部降格が決まったレバンテとのアウェイ戦、マドリーは残留を達成してそれ以上の目的もないバレンシアとのホームゲームとどちらも基本、楽な対戦相手なんですが、チーム状況は対照的です。そう、木曜にはとうとうチアゴもalta(全快通知)をもらい、選手全員がプレー可能となった上、ミュンヘンから帰った日から休みなしに調整を続けていた前者に比べ、後者は木曜を休養日に設定。しかもシティ戦でお手柄だったベイルがヒザをケガ、GKケイロル・ナバスもラモスとの接触プレーで左足を痛め、欠場予定というから、ちょっと不安じゃないですか。
▽ただ、カセミロとベンゼマが練習に復帰したという朗報が入っていますが、CL狙いをキッパリ貫いているジダン監督としては彼らも出したくはないかも。とはいえ、マドリーには「Yo recupero rapido/ジョ・レクペロ・ラピド(自分は回復するのが早い)」と、頑健な肉体を自慢していた.ロナウドがいますし、基本がgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)のベルナベウでの試合ですから、特に問題はないのかもしれませんね。
▽一方、趣旨は正反対なものの、やっぱり絶対勝たないといけないマドリッドの弟分チームたちは、ラージョがレアル・ソシエダとのアウェイ戦。こちらはすでに2000人近いファンがサン・セバスティアン(スペイン北部のビーチリゾート都市)まで応援に行くことが決まっているそうです。ヘタフェはやはり、残留争いの渦中にあるスポルティングとコリセウム・アルフォンソ・ペレスでガチンコ対決するんですが、ラセンなどに言わせると、同じく最後まで先がわからなかった2年前と比べれば、今季はまだいいそう。
▽うーん、残留が確定していなくてもエスパニョールやデポルティボは比較的、勝ち点があるので実質、今はグラナダを含めた4チームであと2つの降格席を押し付け合っている状態なんですけどね。スポルティングファンもヒホン(スペイン北部のビーチリゾート都市)から4000人近くやって来るらしいですけど、さて。どうやら日曜の夕方は私もオンダ・マドリッド(ローカル・ラジオ局)の多元中継を聞きながら、ハラハラドキドキする運命にあるようです。
▽結果、2006年からアイントホーフェン、グラスゴー、トリノ、ワルシャワとヨーロッパ各都市でチームがEL優勝杯を掲げるのを楽しんできたセビージャのファンたちがまた1つ、応援旅行記にバーゼルを付け加えることになり、ビジャレアルはCLと合わせて3度目になる、あと1歩で決勝進出を逃すという経験をしたんですが、大丈夫ですよ。EL決勝でリバプールを18日に倒さない限り、来季はCLには出られず、更に21日にコパ・デル・レイ決勝でバルサを退けない限り、EL出場もかなり難しいセビージャと違って、すでに彼らはリーガで4位が確定。CLプレーオフから参戦できることが保証されているんですから、きっと来シーズンはもっと楽しい思いができますって。
▽まあ、そんなことはともかく、まずはマドリッド勢のCL準決勝2ndレグがどうだったのかお伝えしておかないと。先週とは逆に今週、先にプレーしたのはアトレティコの方で、いやあ、彼らがアリアンツ・アレナでの前日練習をした時にはピッチの芝を刈っておらず、試合当日に剪定。おまけにキックオフ前10分に水を撒くというのは、ある意味、あこぎなやり方じゃないかと呆れたんですが、敵の思惑通り、前半はバイエルンのなすがままだったから、とにかく1stレグでのリードが1点しかなかったアトレティコが気の毒だったの何のって。
▽でも捨てる神あれば拾う神ありとはまさにこのこと!何とミュラーが蹴ったPKをオブラクが弾き、更にアロンソのシュートも防いで、敵の勝ち越しを防いでくれたから、すでに絶望しかけていたアトレティコファンがどんなにホッとしたことやら。それは選手たちも同じだったようで、その後は気を取り直し、ハーフタイムまでそれ以上の失点を避けることに専念。そしてロッカールームで「Charlamos de los que somos y de lo que queremos ser/チャルラモス・デ・ロス・ケ・ソモス・イ・デ・ロス・ケ・ケレモス・セル(自分たちが何者なのか、何者になりたいのかを話した)」(シメオネ監督)のと、後半頭からアウグストをカラスコに代えたことが相まって、落ち着きを取り戻した彼らにとうとうチャンスがやって来ます。
▽それは後半8分、コケが自陣から送ったボールをグリースマンが頭で落とし、フェルナンド・トーレスが出したスルーパスがバイエルンDF陣の間を通ったんですよ!ドリブルで一気に敵エリアに駆け上がったグリースマンが、「a que ibamos a tener habia que intentar meter gol/ア・ケ・イバモス・ア・テネール・アビア・ケ・インテンターウ・メテール・ゴル(あるだろうチャンスにゴールを入れないといけなかった)」という決意を持って撃ったシュートがGKノイアーの左足上を越え、アトレティコに待望の1点が決まってくれたとなれば、思わず私が目をこすってしまったとしても仕方なかった?
▽ただまあ、おかげでますます必死になったバイエルンが怖かったのは当然で、29分にはアラバのクロスをアルトゥロ・ビダルがゴール右横からヘッドで繋ぎ、レバンドフスキに2点目を奪われてしまったんですけどね。それでもアウェイーゴールのおかげで勝っていたアトレティコでしたが、最後まで苦しみたがるは彼らのDNAに刻み込まれた習性?だってえ、グリースマンが守備固めのトーマスに代わった後、トーレスがハビ・マルティネスにエリアギリギリで倒され、鷹揚な審判がPKをくれたにも関わらず、お情けを受けるのはイヤだったんですかね。トーレスのキックがノイアーに弾かれてしまったから、残りの6分間プラス、ロスタイム5分間、どんなに胃がキリキリさせられたことか。
▽おかげでシメオネ監督など、最後の守備増強でサビッチをピッチに送りだしたかったのに審判の許可がなかなか下りず。八つ当たりでクラブの係員をど突いていたりもしたんですが、良かったです!とうとう試合終了の笛が鳴って、「Pense que no volveria y ha vuelto, ahora podemos cambiar la historia/ペンセ・ケ・ノー・ボルベリア・イ・ア・ブエルトー、アオラ・ポデモス・カンビアール・ラ・イストリア(もう2度とないと思ったのにまたあった。今のボクらは歴史を変えられる)」(フィリペ・ルイス)という、ここ3年で2度目のCL決勝進出が決まってくれたから、感心したの何のって。
▽もちろんそれにはバルサ、バイエルンという、「Hemos eliminado a dos de los tres mejores equipos del mundo/エモス・エリミナードー・ア・ドス・デ・ロス・トレス・メホーレス・エキポス・デル・ムンド(ウチは世界の3強のうち、2強を倒した)」(シメオネ監督)ということもありますけどね。「La única vez que vieron la pelota fue la del gol/ラ・ウニカ・ベス・ケ・ビエロン・ラ・ペロータ・フエ・ラ・デル・ゴル(唯一、ボールを持ったのはゴールの時だけ)」(ビダル)なんて言われてしまうサッカー力にも関わらず、全員の努力と献身で才能の足りない部分を補ってしまうのは凄いことかと。
▽その後の彼らの喜びようはアトレティコのオフィシャルウェブでのインサイダービデオ(http://www.clubatleticodemadrid.com/videos/atminsider-asi-vivio-el-vestuario-la-clasificacion-para-la-final-de-milan-2)を見るとよくわかるんですが、やっぱり懲りないのはカンテラーノ(アトレティコ下部組織出身の選手)たち。カメラを向けられたサウルがトーレスに「Nos queria hacer sufrir un poco/ノス・ケリア・アセール・スフリル・ウン・ポコ(ちょっとボクらに苦難を与えたかったんだよね)」と言ったのに、大先輩の方は「El gol lo guardamos para la final/エル・ゴル・ロ・グアルダモス・パラ・ラ・フィナル(ゴールは決勝のためにとっておくんだ)」と応えていましたが、ちょっとそれ、ホントに実行してくださいよ。
▽そして翌日はサンティアゴ・ベルナベウにお隣さんのマンチェスター・シティ戦を見に行った私だったんですが、感動の程度はあまりに対照的。いえ、チームバスのスタジアム入りには1万5000人のファンが駆けつけて声援を送り、キックオフ前はスタンド全面を覆うモザイクで雰囲気は盛り上がっていたんですけどね。シルバがケガで欠場したせいか、アグエロがまったくパッとせず、シティがあまり攻撃しなかったのはともかく、復帰したクリスチアーノ・ロナウドも今イチだったせいか、前半20分にベイルのシュートがフェルナンドに当たってオウンゴールにならなければ、「どちらも勝つに値しなかった。Lo mas justo habria sido una definicion a penaltis/ロ・マス・フスト・アブリア・シドー・ウナ・デフィニシオン・ア・ペナルティス(より正当だったのはPK戦による決着だったろう)」というシティのペレグリーニ監督の言葉通りになっていたかと。
▽それでももちろん、「一番大事なのはゴール。誰が入れたのかは関係ない」(ベイル)というのは正しくて、私も延長戦やPK戦で神経を削るのはイヤでしたしね。1stレグが0-0だったため、1-0のままでだと、シティが点を取ったら、マドリーの敗退になるという緊張は最後まであったものの、幸い相手は一矢も報いることなく試合は終了。これで2年前同様、CL決勝ダービーが決定しました。え、リスボンでは後半ロスタイム3分にセルヒオ・ラモスの起死回生の同点ヘッドが決まり、延長戦でアトレティコをボコボコにやってつけているだけに、試合後のマドリー選手たちは強気じゃなかったかって?
▽うーん、「Esperamos el mismo partido y ojala el mismo resultado/エスペラモス・エル・ミスモ・パルティードー・イ・オハラ・エル・ミスモ・レスルタードー(同じ試合と同じ結果を期待しているよ)」(モドリッチ)という意見もありましたが、ラモスなどは「Quiza el Atletico sea mas incomodo que el Bayern/キサ・エル・アトレティコ・セア・マス・インコモドー・ケ・エル・バイエルン(多分、アトレティコはバイエルンよりやりにくいだろうね)」と殊勝気なコメントでしたけどね。
▽ただ、その日、パルコ(貴賓席)に応援にきたスペインのフエリペ6世陛下がロッカールームに来てくれたことについて、「王様はボクらを祝福してくれたよ。アトレティコファンだけどね。でも娘さんはマドリーファンだと思う」(ラモス)というのはちょっと早合点。ええ、その日、国王が連れていた次女のソフィア姫はマドリーびいきなんですが、先週ビセンテ・カルデロンでのバイエルン戦1stレグに来ていた長女のレオノール姫はアトレティコファンだそう。きっと決勝で国王が王女2人をミラノのサン・シーロに連れていったら、2対1で負けていますよ。
▽そして翌日からは2年前のデジャブのように決勝チケットを巡ってのフィーバーが始まり、いえ、金曜にはUEFAと両クラブの会合で各チームのファン向け割り当ては1万9500枚ずつということになったんですけどね。当然、これらはソシオ(協賛会員)にしか販売されませんから、それ以外に決勝に行きたい人はすでに一般向けチケットをUEFAのサイトで購入済みであるか、旅行会社が用意する2000ユーロ(約24万円)以上するパックに乗るか、同じく高値のダフチケットを探すしかないことに。
▽おまけにマドリーの決勝進出が決まった直後から、マドリッドーミラノ間の航空チケットが高騰。いえ、だからっていくら、準決勝2ndレグでもマドリーより15キロ多い約120キロを走行、CL12試合のチーム合計でミラノまで走って到達できる距離になっているというアトレティコでもフライトには苦労しないはずですし、料金が28日の週末は暴利状態になっているホテルもメリア・ミラノ、マドリーもラディソン・ブル・ミラノとUEFA手配で決まっているため、当事者たちは大丈夫なんですけどね。観戦希望のファンにとっては、車でも行けるとは言っても隣国ポルトガルのリスボンより全然、遠いですし、何だから凄い出費になりそうですよ。
▽え、今はそんな話をしている間もなく、週末の試合を考えないといけないんじゃないかって?そうですね、木曜にはスポンサーのプーマのイベントに出席したグリースマンも「Si pensamos en la final fallaremos en la Liga/シー・ペンサモス・エン・ラ・フィナル・ファジャレモス・エン・ラ・リーガ(決勝のことを考えていたら、リーガでコケる)」と言っていたように、CLで気がそれてしまったものの、リーガ優勝争いの三つ巴状態は現在も続行中。しかも首位のバルサはミッドウィークに試合がなく、じっくり調整してエスパニョールとのカタルーニャダービーにカンプ・ノウで臨むとなれば、今回も絶対、後れを取ることはできないかと。
▽ちなみにこの37節にはリーガ協会による試合日程のuificacion(ウニフィカシオン/統一)がかかっていて、10カード全てが日曜午後5時(日本時間翌午前零時)にキックオフ。アトレティコは前節に2部降格が決まったレバンテとのアウェイ戦、マドリーは残留を達成してそれ以上の目的もないバレンシアとのホームゲームとどちらも基本、楽な対戦相手なんですが、チーム状況は対照的です。そう、木曜にはとうとうチアゴもalta(全快通知)をもらい、選手全員がプレー可能となった上、ミュンヘンから帰った日から休みなしに調整を続けていた前者に比べ、後者は木曜を休養日に設定。しかもシティ戦でお手柄だったベイルがヒザをケガ、GKケイロル・ナバスもラモスとの接触プレーで左足を痛め、欠場予定というから、ちょっと不安じゃないですか。
▽ただ、カセミロとベンゼマが練習に復帰したという朗報が入っていますが、CL狙いをキッパリ貫いているジダン監督としては彼らも出したくはないかも。とはいえ、マドリーには「Yo recupero rapido/ジョ・レクペロ・ラピド(自分は回復するのが早い)」と、頑健な肉体を自慢していた.ロナウドがいますし、基本がgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)のベルナベウでの試合ですから、特に問題はないのかもしれませんね。
▽一方、趣旨は正反対なものの、やっぱり絶対勝たないといけないマドリッドの弟分チームたちは、ラージョがレアル・ソシエダとのアウェイ戦。こちらはすでに2000人近いファンがサン・セバスティアン(スペイン北部のビーチリゾート都市)まで応援に行くことが決まっているそうです。ヘタフェはやはり、残留争いの渦中にあるスポルティングとコリセウム・アルフォンソ・ペレスでガチンコ対決するんですが、ラセンなどに言わせると、同じく最後まで先がわからなかった2年前と比べれば、今季はまだいいそう。
▽うーん、残留が確定していなくてもエスパニョールやデポルティボは比較的、勝ち点があるので実質、今はグラナダを含めた4チームであと2つの降格席を押し付け合っている状態なんですけどね。スポルティングファンもヒホン(スペイン北部のビーチリゾート都市)から4000人近くやって来るらしいですけど、さて。どうやら日曜の夕方は私もオンダ・マドリッド(ローカル・ラジオ局)の多元中継を聞きながら、ハラハラドキドキする運命にあるようです。
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