【原ゆみこのマドリッド】もう目が離せない…

2016.04.19 13:40 Tue
▽「まさか、優勝争いが再開するなんて」そんな風に私が当惑していたのは月曜日。一番上には変わらずバルサがいるものの、同じ勝ち点76でアトレティコがcolider(コリデル/首位タイ)、レアル・マドリーがたった1差の3位となっている順位表を見直していた時のことでした。いやあ、一時、3月半ばに首位との差が勝ち点8に開いた際など、「もうウチはリーガにサヨナラしたと思う」とフィリペ・ルイスが詫びれもなく言っていたり、さらに勝ち点12と開いていたお隣さんなんて、ジダン監督から諦め発言が聞かれたりしたものでしたけどね。

▽それがここ4試合でバルサが1分け3敗と滅多にないスランプに突入。もちろん、絶対勝つと思っていたクラシコ(伝統の一戦、バルサvsマドリー戦のこと)で逆転負けを喰らったり、CL準々決勝でアトレティコに逆転突破されたりしたのもショックだったんでしょうけどね。その間、マドリーは4連勝、アトレティコも3勝1敗と勝ち点を積み上げたせいで、三つ巴の戦国時代に逆戻りするなんて一体、誰に想像できた? ええ、しかも今週はミッドウィーク開催のリーガ戦もあるとなれば、週末の終わりには逆にどこかが独走態勢に入っていることだって考えられるのですから、気の弱いファンにとってはかなり心臓に悪い状態かと。

▽とりあえず、その上位3チームが急接近することになった試合をここでお伝えしておくことにすると、先陣を切ったのはマドリー。土曜日に雨のコリセウム・アルフォンソ・ペレスを訪れて、弟分チームとのミニダービーだったんですが、やはり今の刀折れ、矢尽きたようなヘタフェでは、いくらエスナイデル新監督になったからといって、選手が変わった訳じゃありませんからね。必死の抵抗も30分まで持たず。まずはリーガ要員として先発したハメス・ロドリゲスのクロスをベンゼマが撃ち込んで先制点を奪われたかと思いきや、38分にも同じく放出候補と噂されるイスコのゴールをお膳立てする活躍。
▽後半もすぐにベンゼマのロングパスからベイルがマドリーの3点目を決めて、これはまたgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)が始まったかと、ヘタフェが気の毒になったんですが、その後の失点を何とか凌ぐと、終盤にはやっと彼らも反撃。いえ、75分のバックパスのミスからもらったエリア内のFKはGKケイロル・ナバスに弾かれてしまったんですけどね。83分にはRMカスティージャ時代の同僚、カルバハルやルーカス・バスケス、ヘセらにいいところを見せたいと、チームでただ1人、覇気を示していたサラビアが見事なgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)で一矢を報いることに成功することに。

▽とはいえ、その後、ルーカス・バスケスはハメスの、ヘセはクリスチアーノ・ロナウドのゴールをお膳立てして、結局、最後は1-5の大敗で終わってしまいましたけどね。順位も最下位になってしまったヘタフェですが、幸いなことに翌日、兄貴分のアトレティコが協力してくれたため、17位との差は勝ち点2のまま。過去には最終節で残留を勝ち取ったこともある彼らですから、ここは諦めずにまずは木曜日のレアル・ソシエダ戦、日曜日のバレンシア戦で巻き返しを図ってくれるといいのですが。
▽一方、この試合が終わった時点でバルサと勝ち点差1に迫っただけに、マドリーサイドは「No firmo ganar la Champions y no lograr la Liga/ノー・フィルモ・ガナール・ラ・チャンピオンス・イ・ノー・ログラル・ラ・リーガ(CLに優勝してリーガに優勝しないという妥協はできない)」というジダン監督を始め、「tenemos opciones del doblete/テネモス・オプシオネス・デル・ドブレテ(ウチには2冠優勝のオプションがある)」(ルーカス・バスケス)と、かなり楽観的だったんですが、中には「en el Madrid siempre peleamos aunque estemos a 15 puntos/エン・エル・マドリッド・シンプレ・ペレアモス・アウンケ・エステモス・ア・キンセ・プントス(差が15ポイントあってもマドリーは常に戦うよ)」(マルセロ)という威勢のいい意見も。

▽まあねえ、本来ならあんなに差がついていたのがおかしいんですが、マルセロは2006-07シーズン、カペッロ監督下での奇跡のremontada(レモンターダ/逆転優勝)経験者。となれば、ここまでライバルに近づけば追いついたも同然に感じて不思議はないかと思いますが、ちょっと気になるのはバルサにはもうCLがないため、来週からは週1ペースでリーガに集中できること。何せ、ヘタフェ戦の途中ではカルバハルが左の太ももを負傷していたとかで交代。水曜日午後10時(日本時間翌午前5時)からサンティアゴ・ベルナベウに4位のビジャレアルを迎える一戦に出られないようなのは心配かと。

▽その次、土曜日のエスタディオ・バジェカスでのラージョとのミニダービーも、来週火曜日にはデ・ブライネが復活してから復調したマンチェスター・シティとのCL準決勝1stレグがあるとなると、無理はさせられないところですが、そんな折、ファンにとって頼もしいのはBBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウドの頭文字)が絶好調なことでしょうか。

▽ええ、この日も後半ロスタイムにヘセからのregalo(レガーロ/プレゼント)でリーガ今季31得点目を挙げ、2位のルイス・スアレスに5点差をつけたロナウドは翌日のオフにも自宅でトレーニングに余念がありませんし、ベイルもカディス(スペイン南西部)まで出向いて、ゴルフのスペイン・オープンを観戦して気分転換。懇意のスペイン人ゴルファー、セルヒオ・ガルシアとも記念写真を撮れましたし、ベンゼマにもユーロ大会のフランス代表に招集されないことが決定したショックは見られなかったため、きっと彼らのゴールはまだまだ増えますよ。

▽変わって晴天となった日曜日、午前中からビセンテ・カルデロンの近辺でクラブ主催の毎年恒例行事、El Dia del Niño(エル・ディア・デル・ニーニョ/子供の日)のアクティビティを楽しんだ家族連れがそのままスタンドに流れ込み、満員御礼で始まったアトレティコvsグラナダ戦はどうだったのかというと。14分、その日は出場停止だったフィリペ・ルイスの代わりとして左SBに入ったルーカスの折り返しをフェルナンド・トーレスが撃ち損じ。しかし、開始早々に絶好のチャンスを外していたコケがリベンジとばかりに先制ゴールをゲットします。そこまでは良かったんですが、やはり先週のCLバルサ戦2ndレグの疲れがあったんですかね。

▽シメオネ監督も後で「El equipo no estuvo bien despues de conseguir el primer gol/エル・エキポ・ノー・エストゥーボ・ビエン・デスプエス・デ・コンセギール・エル・プリメール・ゴル(1点目を取ってから、チームは良くなかった)」と認めていたように、残留を求めて必死なグラナダに反撃されていたから、スタンドの小さなファンたちもどう応援していいのか、途方に暮れたかと。いえ、単に遊び疲れていただけかもしれませんけどね。33分にはロチーナのシュートがゴールポストに当たるなど、大人たちまでドッキリさせられてしまうようではいただけません。

▽でも大丈夫。ハーフタイムに「El Cholo nos dijo que no eramos el Atlético de siempre/エル・チョロ・ノス・ディホ・ケ・ノー・エラモス・エル・アトレティッコ・デ・シエンプレ(チョロにボクらはいつものアトレティコじゃないと言われた)。同じガッツがない、いつも大事にしていることを忘れてはいけないとね」(サウル)と、監督に檄を飛ばされたチームは後半に復活。いえ、その日はあまり効率的でなかったカラスコを早めに見限って、アウグストを入れたのも良かったのかもしれませんけどね。59分にはコケのスルーパスを追ったトーレスがGKアンドレス・フェルナンデスの頭を越えるシュートで2点目を入れてくれたから、もう安心です!

▽そう、こうなれば、相手はエースのアル・アラビもいないグラナダですから、勝利は固かったんですが、82分には途中出場のコレアもGKオブラクの蹴ったゴールキックをサウルが頭で流したボールを追って、3点目を追加。3-0の勝利なら、子供たちも強いアトレティコに満足して家路をたどれたのでは?

▽え、試合後、シメオネ監督は「また来季もCL出場権が確定して自分は満足だ。El objetivo era ese/エル・オブヘティーボ・エス・エセ(目標はそれだったからね)」と、この日の勝ち点3で3位以上として終われることが決まったのをとても喜んでいたけど、だったらこの先、もうアトレティコの目標はないのかって? いえいえ、ご心配なく。むしろこれはマストを果たしたということで、彼も「ウチは日程に従ってプレーするが、それはganar, ganar y ganar/ガナール(勝つ、勝つ、そしてまた勝つ)」と、カンプ・ノウでバルサvsバレンシア戦が始まる前から宣言していましたしね。よってリーガにもバイエルンとのCL準決勝にも気を抜くことはないかと。

▽実際、自分が出場停止でいなくてもバルサを敗退に追いやってくれたチームメートに感謝して、ここ4試合連続得点を挙げたトーレスも翌日、出席したLG(韓国の情報機器メーカー)の新商品プレゼンでは、「Ganar un título es lo único que me falta en este club/ガナール・ウン・ティトゥロ・エス・ロ・ウニコ・ケ・メ・ファルタ・エン・エステ・クルブ(このクラブで唯一、自分に足りないのはタイトルを獲ること)」と、最初は単数系で話していながら、そのうち「1996年のdoblete(ドブレテ/2冠優勝、この時はリーガとコパ・デル・レイ)はカンテラーノ(下部組織の選手)としてよく覚えているし、選手としての夢だよ」と、いつの間にか、望みが大きくなっていましたしね。

▽もちろん、「pero queda muchísimo/ペロ・ケダ・ムシシモ(でもまだ沢山、試合が残っている)」(トーレス)と用心はしていましたが、最初の在籍時にはUEFAカップ(現在のヨーロッパリーグ)出場すら、手の届かなかったアトレティコが当然のようにCL出場権をゲット。しかも2つの大会で優勝を狙える位置にまだいるというのは、本人的に天にも舞い上がるような心持ちじゃないかと推測しましたが、さて。

▽となれば、是非ともその夢に向かって邁進してくれるといいのですが、彼らは今週、水曜日午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からサン・マメスでアスレティックと激突。何せ、相手はEL敗退の傷を乗り越えて、日曜日の試合でマラガに0-1と勝利、今は5位か6位を死守して、来季もヨーロッパの大会に戻ることしか考えていませんからね。その残念に終わったセビージャとのEL準々決勝2ndレグでケガをしたアドゥリスは出られませんが、若手FWのウィリアムスが回復したという情報もあります。対するアトレティコはシーズン終盤恒例の累積警告ローテーションでこの試合はキャプテンのガビが出場停止というのが悪い知らせ。

▽それでも残り5試合全勝してもバルサが勝ち点を1つ落とさない限り、直接対決で負けているため、優勝できない彼らですからね。まずは自分たちの責任を果たして、グラナダ戦は試合後のミックスゾーンでサウルなどもバレンシアがバルサに先制したことを記者たちから教えられたように、水曜日は45分早くキックオフするリアソル(デポルティボのホーム)から、ハーフタイムに朗報が届くのを待つしかないかと。ちなみに日曜日の夜はスタジアム近くのバル(スペインの喫茶店兼バー)でアトレティコの勝利を祝いながら、バルサ戦をTVで見ていくサポーターを多数目撃。レンタル移籍中のシケイラのシュートをラキティッチがオウンゴールにしてしまったのは運が悪かったとしても、前半終了間際にサンティ・ミナに2点目を奪われ、後半メッシのゴールで1点しか返せなかったのは最高の酒の肴になったことでしょうね。

▽え、まだマドリッドのもう1つのチーム、ラージョの話が出てきてないって? それが実は彼らはアトレティコと同じ時間帯でのホームゲームだったため、私は見られなかったんですが、オンダ・マドリッド(ローカル・ラジオ局)の2元中継のおかげで、「Esta victoria puede ser el 90% de la salvación/エスタ・ビクトリア・プエデ・セル・エル・ノベンタ・ポル・シエントー・デ・ラ・サルバシオン(この勝利で残留が90%達成できたかもしれない)」(パコ・ヘメス監督)という嬉しい結果だったことはオンタイムに判明。いえ、7分にハビ・ゲラのゴールで先制しながら、こちらも元アトレティコのアドリアンに決められて、ビジャレアルが同点に追いついた時はどうなることかと思ったんですけどね。

▽幸いにもヘメス監督の積極攻勢が功を奏して、敵も先週はEL準決勝進出を決めるためのプラハ遠征などがあって、疲れていたせいもあるんでしょうか。81分にはミクが勝ち越しゴールを挙げてくれたから、助かったの何のって。この2-1の勝利のおかげで順位は16位と変わらぬものの、降格圏と勝ち点5差をつけることができたとなれば、そろそろゴールが見えてきた? 次の水曜日もラージョはすでに残留は決まり、かといってヨーロッパの大会出場権に届く訳でもないマラガとの試合ですからね。弟分チームの片割れが危うい今、せめて彼らだけでも早く安全圏に入ってほしいかと。そんなこんなで平日もリーガで一喜一憂することになる今週、やっぱり私も気が抜けそうにありません。

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